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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第六章 エチオヴィア大狩猟大会編
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六十九話 出発

 フェニックスの悩みを聞いたところで、一時間後、フェニックスとシトリーとウァサゴと一緒に、グラシャ=ラボラスの部屋へ寄る。これからかなり長い旅になり、夏休みの間は体力のないグラシャ=ラボラスをこの城に置いていく形となるので、お出かけの挨拶をしに行った。

 グラシャ=ラボラスの部屋の前に立ち、ドアにノックする。

「入るぞ」

「はい」

ドア越しにグラシャ=ラボラスの声が聞こえ、了承を得たところでドアを開ける。その先には、窓の近くのベッドに寝ている彼女が、俺たちの入室を見つめていた。部屋には既にセーレも入っており、窓際の壁に寄り掛かっていた。俺たちは貧弱な彼女の元へ寄り、ベッドの横に置かれている椅子に腰を掛ける。

「……もう、夏休みが始まったんですね」

ブネの身体の改造により、桁違いな再生能力が植え付けられた後遺症で、彼女の肉体は貧相なほど細く弱まっている。殺害が当たり前のように起きる高校ではとても生き残れない弱者の身体となっているため、グラシャ=ラボラスは俺の城で安静にし、回復の時を待っている。そのため、しばらくグラシャ=ラボラスは学校に行けていないから、学校行事がどう進行しているのか実体で経験していないのだ。だから、今日が修了式であることを事前に告げ、午前十一時に帰ってきた俺たちを見て、夏休みが始まったということを認識した。

 修了式が終えた時点で夏休みが始まったのだ。グラシャ=ラボラスからすれば、ブネに改造されるまでが健全な学校生活だったため、気持ちとしては夏休みの始まりを実体で体験できないので、とても置いてけぼりで憂鬱な気分であろう。夏休みの始まりというのは、学生の九割が大喜びなものだ。

「ああ。……俺の妹が外国に現れるから、俺は妹と会わなければならない。助けないといけないんだ。だからしばらくお留守を頼むときが来た……」

というのも、今日の朝に、グラシャ=ラボラス含めて生徒会会議によりエチオヴィア王国に行くということが決まったんだ。グラシャ=ラボラスからすれば急な出来事の発展に驚いたことだろう。ただでさえグラシャ=ラボラスは歩くことすら困難なため、お留守を頼まざるを得ないのは苦渋の決断だ。本当に申し訳ない気持ちで溢れるばかりだ。

「今日の朝に決まってしまったというのもある。本当にすまない……」

とても目を合わせられず、顔を下げてしまう。申し訳なさに声を絞り出すのも精一杯だ。

 ウァサゴもシトリーとフェニックスも、俺と同様に申し訳ない気持ちを抱いてくれており、謝ってくれた。ウァサゴはグラシャ=ラボラスの瞳をまっすぐ見詰めた。

「グラシャ、もしかしたら私の兄のアンドロも現れるかもしれないの。私は兄を止めたい。今っ度こそ勝ちたいの。だから私も行かせていただくわ。ごめん」

人間の俺や善魔は、申し訳ない気持ちが芽生えたら、謝ることができる心の持ち主だ。悪魔には芽生えない感情だ。グラシャ=ラボラスも善魔であり、俺たちの謝罪は形だけのものではないというのは伝わる。だから謝れるのだ。

 ここで俺の右肩にやや冷たい手が乗った。この手の感触はグラシャ=ラボラス。顔を上げると、グラシャ=ラボラスはベッドから上半身を起こし、椅子に座る俺や、左肩に冷めた手が置かれたウァサゴへ背を伸ばしていた。間近に迫った青い瞳は、鏡のように俺の顔が反射している。

「謝ってはいけません。あなたたちは、あなたたちの家族を助けてください」

「……!」

グラシャ=ラボラスという元々は二重人格者だった特別な存在。ブネによってもう片方の人格であるラボラスを失い、残った人格はグラシャのみ。そんなグラシャにとってラボラスは家族以上の存在であっただろう。何しろ生まれたときから、一つの身体に二つの人格が宿ったんだ。大切なヒトを失ったからこそ言える、この重みのある説得力。グラシャは本心から、俺の妹の救出、ウァサゴの兄の阻止を望んでくれている。

「……ああ」

「任せて。あなたの期待に応えてみせるわ。あなたの生徒会長として」

グラシャ=ラボラスの本心から突いた優しさには、感服させられる。感服するからこそ、その声に応えたい。そして、彼女の心意気に甘えたいと思う。

「まっ、私は城に残るから私に世話を任せることね。誰が好き好んで外国へ行くわけよ」

セーレの冷たい言い草が、悔やむ俺たちに強く突き刺さる。が、今は城に残ってくれる存在がいてくれるのはとても助かるところ。毎日俺がグラシャ=ラボラスの看護と介護をしていたわけだが、夏休みの間は外国旅行なんて真っ平御免なセーレに任せていただくことに決まった。元々、セーレとグラシャ=ラボラスは相性が良い関係でもあるし、グラシャにとってはラボラスの看取りを手伝ってくれた恩もある。

「セーレ先輩、すみませんがよろしくお願いしますね」

グラシャ=ラボラスはセーレに視線を移しながら、俺とウァサゴの肩に差し伸べた手を自分の布団の上に戻した。上半身を起こしたまま、壁に寄り掛かったセーレに頭を下げた。そんな律儀なグラシャ=ラボラスに、セーレは笑みを浮かべた。

「いいのいいの。船に乗るつもりで世話してあげるからね」

俺たちには毒入りの吹雪のように蝕む冷たさで言ってくれるのに、グラシャには心優しい言葉を言うこの差。弱ったヒトに優しいというのは善魔の特徴と言えば特徴なのだが、もう少し毒を抑えてほしいところだ。

「あっ、私も城に残りますからね!」

シトリーもこの城に残ることが決まった。元々は朝の会議では、初めての外国旅行には乗り気だったのだが、修了式後、『初めての外国は不安で怖いです……やっぱり行くのは辞めます』という心の準備不足で断念した。心の準備時間に関しては、先程言った通り今日の朝に決まったことなので足りないのは致し方ない。むしろ俺の我が儘に無理に付き合う必要性はない。城に残ってくれるのであれば大歓迎。ぜひ城を護ってほしいものだ。

「シトリー先輩もお願いいたしますね……こんな効かない身体を先輩方に世話させていただくだなんて、本当に感謝しかないです」

グラシャ=ラボラスは俺とフェニックスと同じ一年生だ。一年生の世話を二年生のシトリーや三年生のセーレが担ってくれるのだ。一年生としての気持ちは、偉大な先輩らに世話をさせていただくというのは身が潰れるぐらい申し訳ない気持ちだろう。

相互扶助(そうごふじょ)し合うのは仲間の基本です! ねっ、ウァサゴ先輩」

「え、なに、相互腐女? どういう意味?」

行動では相互扶助はできているというのに、言葉の意味が分からない脳筋三年生がここに居ました。

 ここでフェニックスが、グラシャ=ラボラスに手を差し伸べ、手の甲を触れた。その手から黄緑色の鮮やかな炎が点火した。フェニックスの能力である回復の炎だ。

「温かい……」

グラシャ=ラボラスのやや青冷めた手を、フェニックスの炎で温めてくれた。

 フェニックスの回復の炎は火傷効果が全くなく、無害無傷の癒す炎だ。炎に包まれているはずなのに温かい。しかし、フェニックスの回復の炎でも、過度に再生能力を引き出された挙句空っぽとなり病弱となった身体を、元の肉体へ回復させるには至らない。それは前にも、グラシャ救出後の時の治療もそうだった。治療は成功しなかった。

「私、絶対にお土産買ってくるからね。だから待っててね……」

フェニックスはグラシャ=ラボラスに、お土産を買ってくる約束という、遠回しの帰還の誓いを交わした。

 今回の旅は道のりが長く長く、エルタアレ火山に行くためにも大狩猟大会に参加しなければならない。全ての過程には敵や魔物が多く、この聖域や城のように安全地帯がないから、常に危険が伴う旅になる。一ミリの油断もできない旅になるのだ。フェニックスは不死鳥、決して死なない能力なので死去はないだろうが、それでも安全を願うことに越したことはない。それに、仮にフェニックス以外の我々旅団が全滅して、フェニックスだけが城へ帰還しても、それは帰還の誓いを果たしたことにはならない。全員で生きてこの城へ戻るのだ。俺の妹も連れてな。

「はい、待ってますからね……」

 こうして、グラシャ=ラボラスとの約束を結んだところで、一行は部屋を出て行った。


 グラシャ=ラボラスを除く善魔生徒会の面々は城の出入り城門前に集合。旅チームであるウァサゴ、俺、フェニックス、今回の任務で初の同行する生徒会新人のアンリデウスと、なぜかついてくるヴァプラはリュックやバッグを背負い、円になった。荷物チェックを行うため、旅チームはリュックやバッグを床に置いた。一時間前に白ビキニだったアンリデウスは、元の黒コートに着替え直して出向いてくれた。ホッと安心だ。誰にも見られてなければいいが……。

「皆、準備はいい? 忘れ物はないわよね」

善魔生徒会会長ウァサゴが指揮り、準備や忘れ物などを確認する。

「はい!」

「問題ないっス!」

根は真面目なフェニックスはともかく、目立ちたがり屋でガサツな性格のヴァプラは、忘れ物がありそうで心配だ。当然長旅になるので、忘れ物が途中で判明しても城まで引き返さない。

「皆さん、宿題もきちんと持ってきましたよね?」

「ギグッ」

城に残る担当のシトリーが宿題の有無を確認すると、ヴァプラの表情に苦みが現れた。図星の擬音をわざわざ口に出すほどだ。こいつ、意図的に宿題を城へ置き忘れたな。

「ヴァプラさん……!」

シトリーがヴァプラに指摘すると、隣でウァサゴが苦笑いをする。今日の在校生代表挨拶でウァサゴが皆に対し、宿題は早めにやっておくよう促したんだ。ましてや生徒会メンバーが、在校生代表挨拶の内容に反しては、ヴァプラは生徒の手本には適していないということになる。生徒会メンバーとしての自覚がないな。

「シトリー……許してやってくれない?」

ここでウァサゴがシトリーに許しを乞う願いをする。あのウァサゴがヴァプラを庇うつもりか。珍しいこともあるものだ。シトリーはウァサゴに顔を向け、理由をうかがう。

「え?」

「だって、私も宿題を置いてきたもの」

ウァサゴがヴァプラを庇った理由が、ろくでもない魂胆が隠れていたとは。生徒会長自ら発した宿題の促進を、自らが破り挙句開き直り。

「ウァ、ウァサゴ……! アンタったら馬鹿じゃないの? 自分の発言に責任持ちなさいよ」

流石のセーレも発言責任能力の低さを罵倒し、善魔に対し正論を言った。こればかりはセーレに賛成せざるを得ない。正しきを目指す善魔に、正論をぶつけられるのはなんだか虚しささえ覚える。

「そうは言ったけどね、あの宿題はそもそも悪魔のためのものよ。私たちは善魔だからやる必要は端から無いのよ」

『悪魔は〇〇だけど、私たちは善魔だから』を相変わらず主張する、お得意の善魔論が飛んできた。

 夏休みの宿題は全ての学生に平等に贈られたのだが、内容は悪知恵を高めるものばかり。足跡がないよう、どう効率よく盗められるか、ヒトを殺したとき、刺した個所によって血の噴き出しから異なり、血痕を最小限にするにはどうすればいいのか、等々。人間の俺から見て下らない宿題ばかりだ。それを次の登校日に提出するため、宿題に時間を費やさなければならないというのが憂鬱でしょうがない。それを旅の合間にしなければならない。我ながら馬鹿げた話だ。

 ウァサゴの善魔論は、悪魔のための宿題はやる必要はない、という正論なのかこじつけなのか判断しにくい思考のもと、ウァサゴは宿題を置いてきたというわけか。

「そ、そうだぞ皆! お、俺はウァサゴ先輩の考えの元、いや、誇り高き善魔だから宿題を置いてきたのだ!」

ヴァプラは、本当に善魔論の思考に従ったのか、『めんどくさい』と思った気持ちに素直に従ったのか疑わしいものだ。彼の性格上おそらく後者だろうが、どうか前者でいてほしい。どちらにせよ、この長旅となる期間において、ふたりが城へ宿題を置いていくということは、放棄することを意味する。学校からすれば上等の覚悟と見て、成績を引くであろう。

「で、でもウァサゴ先輩! 担任は減点の幅が広いですよ。もし仮に宿題をやらなかったら、留年の可能性だってありますよ……!」

成績が悪ければ、留年、或いは退学の処遇を受ける。成績が良い優秀な学生なら無関係な世界だが、成績不良(バカ)素行不良(ヤンキー)にとっては、留年の処遇は綱渡りのような感覚であろう。もしテストで赤点を取ってしまえば、綱から足を滑らせ、留年というどん底へ落ちてしまわろう。再び進級へ一から一年かけて這い上がらないといけないのだ。一年の差はとても大きい。

「うっ……」

素行不良(ヤンキー)の代表格でもある素行不良(そこうふりょう)な生徒会長でも、教師が下す減点には恐れがあるようだ。ウァサゴも理性は馬鹿ではない。本能に従えば留年は間近な存在であることは知ってくれている。

「ヴァプラは別に留年してくれても結構ですけど、流石にウァサゴ先輩が留年するところは見たくないですよ……!」

「シトリー!? 流石にそんなことをド・ストレートに言われたら傷つくぞ!」

ウァサゴ信者のシトリーにとっては、憧れの先輩が無様に留年していく姿は見たくもないか。尚、同級生のヴァプラは留年しても全然平気らしい。仲間意識を持たない善魔はなんと無慈悲か。

「うううしょうがないわね……ここは仕方なく宿題をやってさしあげるわ」

ペラッペラな宿題(かみ)如きに上から目線で物言いながら、ウァサゴは大人しく自分の居室へ戻って行った。

「ままま、待ってくださいよぉ!」

宿題を取りに行く先輩の虚しい背中を追いかけるヴァプラ。その姿もああなんと悲しい背中やら。一同は全員、二人の背中を哀れみを込めて眺めた。

「……なんか、グダグダな生徒会ね」

善魔生徒会所属だが正式にはゲーティア高校生ではないアンリデウスは、今回の任務で初めて同行するのだが、善魔生徒会の関係を見た率直の感想が、実にまとも過ぎる。元々サキュバス専門学校の生徒会長だったアンリデウスだからこその発言だろう。

「いつもこんな感じなんです……なんか申し訳ないです」

生徒会の書記であるシトリーが代わりに、情けない集会であることに謝ってくれた。

「い、いやいや。私は元々サキュバス専門学校の生徒会長だったということもあるし、うちの学校もこんな感じでグダッてたわよ。会議とかはとくに」

「ああ、どうせ俺のことばっか話してたんだろう。想像がつく」

「あら、本人が既にお分かりで。オホホ」

人間の精子が大好きなサキュバスが集うサキュバス専門学校では、多くの女子生徒が人間や俺のことを噂していた。ましてや、サキュバス専門学校のスパイである、性欲の大罪ことアスモデウスが、俺を専門学校へ連行するためゲーティア高校へ忍び込んできたのだ。サキュバス専門学校は俺を強く歓迎した。そんな学校のトップである生徒会の会議なんざ、どんな内容なのかは想像がつくもの。十八禁レベルの卑猥な言葉多めの会議であっただろう。

「まあだが、ゲーティア高校の男子生徒がサキュバス専門学校周辺でスケベ行為が多発していたことから、サキュバス専門学校の外周には要塞を建てたんだ。サキュバス専門学校の生徒会はきちんと仕事をしている」

淫魔街にかつてあったサキュバス専門学校の外周には、全ての男から頑なに護る鉄壁の要塞があった。サキュバス専門学生を護るための対策として、生徒会はよく仕事をしたものだ。

「それに比べて、私たちの生徒会業務って、ただ綺麗事を押しつけがましく宣伝してるだけものね。宗教勧誘となんら変わらないわ」

セーレの舌から毒が吹いた。善魔生徒会の業務は、生徒の不良行為を注意していることと、ウァサゴが目指す『悪の意志の脱却』を政治家や宗教人のように語っていること。勿論、悪魔は誰も耳に入れてくれないどころか反感を買ってしまうも多々ある。それをセーレが言っているのだが、その内容にシトリーが眉間に皺を寄せて反論した。

「いいえセーレ先輩それは違いますよ。私たちの大きな実績は、暗殺部を滅ぼしたことではありませんか。しかもあのゲーティアで一番人気で存在力が大きい暗殺部を」

ヒトを殺せるからという理由で暗殺部に入部する悪魔が多く、組織力も兵力も大きかった人気の暗殺部を、少数精鋭である俺たち善魔生徒会が打倒したのだ。人間界の兵器である戦車を引っ提げてきたにも掛からわず、俺たちは勝利を収めた事実がある。シトリーは、セーレの毒舌の内容である業務や実績の中に、暗殺部打倒がなかったことに苛立ちを示したのだろうか。それに、シトリーは弱気な性格なのに、普段から冷たいセーレに反論する辺り、それほど暗殺部打倒の実績には誇りがあるようだ。

「滅ぼした、というよりは、単純に部長とか三年生がいなくなったから滅びたように見えるけどね」

シトリー必死の反論にもクールに返され、シトリーも次の言葉は出せなかった。

 ウァサゴよりコンマレベルで先に誕生した兄にして、暗殺部の部長アンドロマリウスを筆頭に、肉体実験が大好きなサイコヒーラーのブネ、太陽光で完全に身体を溶かしたはずサイボーグのオロバス。この暗殺部の三年生が裏歴史に移動したことで、暗殺部は統制を失い、自然に解散となった見方もある。どちらにせよ、善魔生徒会が先の戦争で暗殺部の兵力を叩き潰し、暗殺部の三年生がいなくなったことで統制は失せ、二つの要因で暗殺部が消えたのだ。善魔生徒会の暗殺部打倒という実績はきちんと存在するのだから、シトリーが落ち込む必要性は全く無い。

「でも、暗殺部がいなくなっても、私はブネが一番怖い……ブネがこの歴史にいなくても、生きているというだけでまた私を狙ってこないか不安です」

フェニックスは、生き血を体内に取り入れる魔剣を持ったカイムに、不死鳥の血を狙われた経験を持っている。おそらく不死鳥となったカイムから、ブネが造った飼物(かいぶつ)に輸血させ、不死身の飼物(かいぶつ)を作ろうと計画を持っていた。一番間接的に狙っていたのはブネということになる。不死鳥の血とブネが造る飼物(かいぶつ)の軍団が合わされば、どんな軍も形無しの破壊力がある。それに、ブネ製の飼物(かいぶつ)には、驚異的な再生能力がある。ラボラスを人体改造した結果、ケロべロスが完成した。その首を切断しても、その断面から肉が生成するほどだ。しかし、再生能力には限界があり、ブネは戦いの続行を断念し退いたことで、ラボラスをベースとしたケロべロスはまだ生き残っている。当然そいつも裏歴史に移動し、更なる人体実験で回復と強化をして、再び俺たちの前に現るであろう。ブネの能力も魂胆も飼物(かいぶつ)も、全てが狂気にして恐ろしいもの。フェニックスは何が何でも死守したい。

 そんな末恐ろしいブネの存在に恐れ、顔も気持ちも落胆したフェニックスの肩に手を置いた。フェニックスは顔を上げ、不安に染まった弱い瞳を俺に向ける。

「大丈夫だ。フェニックスは俺たちが絶対に護る。ブネは、俺が必ず倒してやるからな……」

何より、ブネによる第一の被害者はグラシャ=ラボラス。第二の被害者も、ブネの能力バーゲストによって無理矢理黒犬に化身させられた多くの生徒だ。化身能力者に秘める野生の暴走で暴れる黒犬の群れから、命ごと絶った生徒も居れば、命からがら助かったものの化身の後遺症で未だに苦しむ生徒も少なくない。それほどブネの能力や存在があまりにも危険だということ。

「ありがとうレハ……。でも、頼られまくりも勘弁だからね」

俺の声に活力を取り戻し、瞳から不安が退いた。

「ああ勿論だ」

恐ろしい存在はブネだけではない。産んだ子に兵器の一部が生える兵器の遺伝子を持つ魔神(マシン)サイボーグのオロバスや、俺よりも早く光速で動ける悪の善魔アンドロマリウスも危険かつ超強敵。この暗殺部三年生がもたらす悪い影響力は、人間界にとっても魔界にとっても甚大だ。この三人は、必ず倒さなければならない。

 程なくしてウァサゴとヴァプラが戻り、

「いやぁごめんごめん。じゃあ、出発としましょうか」

今回の旅でもリーダーを務めるウァサゴが合図を出し、リュックを背負った。続けて俺やヴァプラもリュックを背負い、フェニックスとアンリデウスはバッグを持ち、旅立ちの時が来た。

 巨人でも安心して潜り抜けることができるほど巨大な城門がゆっくりと開かれる。扉間が徐々に開かれる度、床に伝う振動で少し揺れる。同時に、眩しい陽光が城内を差し、広がっていく。

「眩っ」

魔界では珍しい陽光が、記念すべき旅立ちを祝福するように照らす。しかし、善魔としての自覚がまだ足りないセーレやシトリー、ヴァプラ、フェニックスは、悪魔の身体として光は苦手なため、陽光が届かない影に避難した。一方、善魔として格が高いウァサゴと、サキュバスではなく実は天使だったアンリデウスは陽光を浴び、日向ぼっこでもしているようにリラックスをしている。勿論、俺も太陽光を浴び、ついつい背伸びをした。それほど温かい日光だ。

「んんんんん、良い出発日和ねえぇ」

「やっぱり、私は暗い影よりも明るい光が好き」

アンリデウスはサキュバスとして、専門学校の要塞の中で学校生活を長らくしていた分、暗い影も慣れっこのようだが、やはり天界(こきょう)の明るい光の方が好みなようだな。俺も、悪魔と違って光が好きな人間だ。たまには光を浴びないとな。

「さあ、行くか。メナリクを救いに、エチオヴィア王国へ!」



ということで、二話を投稿させていただきました。


二月に施設の実習が始まり、このコロナ禍の中施設へ学びに行かせていただけるのですが、前月である一月は実習に備え感染しないため、バイトがなるべくしないでほしいという伝達がありました。なので一月は全力でお暇です。


ところがどっこい。一月は課題やら実習の準備やオンライン授業があるので、意外と全力で暇ではないようです。二月から後半は尚更小説書けなさそうです。


なので、もういっそ投稿スペースは広くなると事前に伝えておきます。では、よいお年をお迎えください。

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