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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第六章 エチオヴィア大狩猟大会編
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六十七話 夏休みの旅行計画

……二ヶ月も投稿が遅れてしまい申し訳ございません……! ちゃんと生きてますし、なんならコロナにかかっていません!


 はい、投稿はしっかりと行いました! 読んで頂ければとんでもなく幸いに存じますゥゥゥゥゥゥゥウ!

「……と、いうことなんだ。俺が見た夢の内容は」

グラシャ=ラボラスが休む部屋で、善魔生徒会の新入りカイトロワ・アンリデウス・サンソンと女神王アプロディーテを招き、善魔生徒会メンバー全員に俺が見た朝の悪夢について詳細を語った。グラシャ=ラボラスはベッドで横になりながら、皆は椅子に座って机を囲んで俺の話を聞いてくれた。

「なるほど。だから七月の二十七日に、エルタアレ火山なのね。エチオヴィア王国の」

朝の悪夢にて人質交換の約束を言い渡された日にちと指名場所。それを現実の方でも確認されるとは思わなかった。

「まさか、レメゲトンが小さき鍵と大いなる鍵に分かれ、更に新創世記を開く鍵になるとは……」

流石のアプロディーテや、裏歴史からやってきたアンリデウスもレメゲトンの秘密は知らなかったようだ。

「そのエルタアレ火山で、レハベアムさんの妹との交換ですか。大切な人質と交換なんて最低です……!」

心優しきグラシャ=ラボラスがヤロベアムのやり方に表情を濁らせる。

「でも小さき鍵を渡すわけにもいかない……そうですよね、アプロディーテ様」

「天界の意見としては、そのような罰当たりな極まりない愚行は絶対に阻止せねばなりません」

死を司る天使アンリデウスや女神王アプロディーテの言うことも確かな事。だからといって、俺の大切な妹を渡したくはない。

「つまり、今のアンタには二極端な選択肢が言い渡されているってワケね。妹と余生を過ごすか、奴の企みを見過ごすか」

相変わらず耳が痛いことを言ってくれるセーレだが、今の俺にはセーレの言うことが事実になっている。受け止めるしかあるまい。

「はっきり言って、俺にレメゲトンは不要だ。レメゲトンは元々魔王になる者が所有するべきものだが、俺は別に好き好んで魔王になりたいわけではない」

俺が魔王になる理由は、あくまで王の権限で悪の意思の脱却を図ること。魔王制裁は興味がない。今まで俺を守ってきた武器で、肌身離さず持っていた愛着ある魔術書だが、妹の命の方が大優先だ。

「魔王? 何の話してるか意味分からないけど、それじゃあレハ、レメゲトンをヤロベアムに渡すつもり?」

「渡すか渡さないかと言われれば、渡す方を選ぶ」

俺の正直な回答にアプロディーテが表情を青ざめて驚くように立ち上がった。

「まあっ! レハベアム様までそんな恐ろしいことを……」

「まあ待て。俺とてヤロベアムの思惑に付き合いたくない。レメゲトンを融合させた真の魔王なんかに、未開の扉を開かせはさせない」

俺の中では、天秤に掛けたら妹の方が遥かに重い。しかし世界全体の命運では、当然鍵の方が重いのだ。勿論、ヤロベアムの思惑通りに事を進ませるのは俺としても物凄く嫌だ。矛盾なのは俺も承知しているうえでそう思っている。

「じゃあどうするんだレハ後輩。レメゲトンがいらないとか言われたら、お前の中二病センスはどうなる!」

「問題ない。俺には、これがある」

右手に魔法陣を出し、掌に天界の王子の冠を落す。それを皆に見せつける。

「なにそれ。冠?」

「綺麗ですね」

セーレやヴァプラ、グラシャ=ラボラス、シトリーにはこれが初のお披露目で、天界の王子の話をあまりしていなかったから、ここで改めて説明しよう。フェニックスも冠を見るのは初めてだ。

「昨日から、俺は天界の王子に就任した」

「なななななななななななななななな、なにぃぃぃぃぃぃ?!」

「え、ええええええええええええええええええ?! レハさん天界の王子になったんですか!」

ウァサゴやアンリデウス以外の善魔生徒会メンバーが椅子から跳んでしまったほどの仰天を見せつけ、皆、大袈裟に床に転げ落ちる。ウァサゴは昨日、天界にて俺が天界の王子に就任したことは目にしているからな。反応は静かだ。流石のクールなセーレも驚き過ぎて表情が変形している。シトリーに限ってはご無礼に気を遣ったか、俺に土下座し始めた。

「あっ、同じ空気吸ってしまって失礼しましたぁあ!」

更には王子と同じ空間に居吸わせてしまったことに深く深く謝罪してしまう始末。

「って、どういう経緯でそうなったのよ! 話こんがら過ぎでしょ! だから昨日は天界に行くっつってたのね!」

セーレが急いで立ち上がり、激しく俺にツッコむ。まあツッコミ入れたくなるのも気持ち分からなくはない。天界に行くという話や暗殺部との攻防戦の裏は冠であることは、一応話しておいたものの、天界の王子になるという話は無視していた。一気に多い情報量を皆に話しても混乱するだけだから、細かく話していくつもりであった。

「あっ、だからヤバイおばさんもいるのね」

天界に行ってきたことで、俺が女神王アプロディーテをこの会議に招待した理由も副次的に納得した。

「誰がおばさんですって!」

ニップルシールで乳首を隠し、透明なビキニを着たヤバイ恰好の女神王アプロディーテに、セーレの正論な毒が炸裂。だがおばさんは余計だったか、アプロディーテがセーレに睨み付け怒鳴る。もっとも、創世記の始まりと同時に誕生したのだから、年齢はおばさん以上かもしれないが。俺はそんなやつに犯されたと思うと悲しくなってきた。とはいえ、超長寿である天使や神とたかだか十代の歳は、若さ的には差はないと思う。そう思いたい。

「レメゲトンを扱う闇の血と天界の王子のハイブリッド……! 中二病過ぎる……!!!」

中二病大好きヴァプラは俺に膝立ちし、神に祈るように両手を合わせた。魔界を統べし魔王一族モーヴェイツ家が天界の王子になってしまったという、謎の芸術に涙を流してしまっている。もっとも、ウァサゴとシトリーとアンリデウス以外は俺が魔王の一族であることは教えていないが、これを余計に教えれば、きっと涙腺が崩壊し永遠に泣き続けるだろう。そんな俺を、アプロディーテは微笑ましく見つめる。とりあえずセーレとシトリーとヴァプラの反応が思ったより凄くて、むしろこっちも反応に困る。

「この冠を被ると光の力が手に入る。これで戦っていけばいい。悪魔を容易く両断できる光の剣も作ることが可能だ。持続時間は魔力が尽きるまで」

邪悪な闇魔法が載っている魔術書レメゲトンと対する、聖なる光を形成することができる天界の王子の冠。光の剣以外にも、光速移動や聖域展開もでき、フルに光の力を使うことが出来る。

「今はまだレクスカリバーに認められていないがな……」

天界の王子の冠は俺が被ることを前提に創られたものだが、その一つの能力として実体化する聖剣レクスカリバーにはまだ選ばれていない。せめて認められれば、持続するだけ魔力を消費する光の剣無しで戦えるが。

「ええっと、一昨日はサキュバス専門学校に行ってた間、なんで天界の王子になっちゃってるのか、意味不明なんだけど……」

セーレやフェニックスは冷静に椅子に戻り、同じ机の同じ視線に戻した。

「はい意味不明ですけど先輩になってなんかすみませんでしたぁぁあ! どどどどうか命だけは……!」

シトリーが未だに俺に土下座し、命乞いする。いや俺殺さないが。

「まあ、この際どうでもいいわ。それより、その天界の王子になって光の力が手にしたわけね。でっ、レメゲトンはもういらないと、そう言いたいわけね」

まるで新しいペットを買えたから、古いペットをあっさり捨てるみたいな棘のある言い方だが、まあ、何の間違いは無し。要は俺に戦う力さえあればそれでいい。レメゲトンは渡してもいいが古いペットを捨てるようなことはしないぞ。

「ああ。レメゲトンは俺からすれば戦う道具に過ぎない。妹の方がもっと大切だ」

「だけど結局は問題の解決にもならないわ。アンタが妹の方がレメゲトンより重いのは分かってるけど、ヤロベアムが創世記を創り始めれば、あっちの大陸じゃ魔王なんでしょ? 絶対多くの民が苦しむわよ」

俺がヤロベアムにレメゲトンを渡せば、ヤロベアムは究極の鍵を完成させ、未開の地で創世記を始める。奴は魔神となって、悪の制裁や導きで必ず民は苦しむ。俺の我が儘な選択一つで、未開の世界に住む大勢の民が苦しむ羽目になってしまう。その絶望の毎日は、何世紀にも渡る可能性も十分にある。

「アンタが妹大事なのは当たり前だけど、アンタの身勝手で宇宙全体の未来は任せられないわ」

セーレのごもっともな正論には、流石の俺も何も言い返せない。それは全員がうなずき一致であった。

「私としても、セーレさんの意見は賛成です。しかし、メナリク様をヤロベアムの手元に置かせておくのも嫌です。レハベアム様の大切な妹君ですから……」

天界の女神王としては、魔王に未知なる創世記の扉は開かせない意見は、下民の俺たちもご最もだ。だが、メナリクを渡したくないという気持ちの余地もある。そう言ってくれるだけでも嬉しいが、一番は世界の命運だ。王たる者、俺みたいな下民に気持ちを合わせる必要は無い。

「……さっきから面倒な話わね」

ここでウァサゴが議論に面倒だと断ち入った。その印象な一言に、全員の視線がウァサゴに注目する。

「メナリクちゃんは渡したくない。でも鍵も渡したくない。なら、ヤロベアムの手元からメナリクちゃんを強奪すればいい。わざわざ交換なんてしなきゃいいわ」

人質交換の約束を破り、人質を奪うという、なんとも無茶苦茶な案だ。破天荒な提案だが、それが一番望ましいというのは誰にでも理解できることだ。

「それができていたらこんなに悩むことではない。それに、もしもそんな救出作戦が失敗して、ヤロベアムを怒らせたらどうなる。メナリクは殺されてしまうかもしれないんだぞ」

「殺されるまえに救出すればいい」

成功する前提しか前を向いていない、非現実的な言い分に俺の妹の命は任せられない。だが、ウァサゴの瞳は真剣だとしている。

「なに、私なら秒速以上の動きで直接救出することができる」

時の流れに身を任せた時速移動で、圧倒的超スピードでヤロベアムに接近し、メナリクを自ら救いに行く作戦か。ウァサゴの移動速度は信用できるが、それでもヤロベアムに接近するのは心配だ。なにより兄貴も敵に回っている。

「アンドロマリウスがいたらどうするんだ」

ウァサゴの兄、暗殺部の部長アンドロマリウスは光の力を持ち、我らが会長ウァサゴが苦戦していた相手。そんな相手がヤロベアムの下についたんだ。ウァサゴがいくら素早い神速でメナリクに接近しても、同等、或いはそれ以上の素早さを誇るアンドロマリウスがそれを防ぐ可能性もある。アンドロマリウスが居る限りその作戦は通用しない。

「兄貴がいたら、今度こそ勝つ」

ウァサゴらしい、堂々とした無計画で無責任な発言。そんな通用しにくい作戦でヤロベアムの怒りを買えば、メナリクは無事にはならない。

「そんな無責任な作戦は採用しない。俺の妹の命が掛かっているんだぞ」

「失敗を恐れたら成功しないわ。成功する前提でやるから作戦なのよ」

「成功する保証はない安易な行動は身を滅ぼすぞ」

「失敗するかもと思うから恐れて動きが鈍くなる。それが失敗に繋がるのよ」

ここで慎重派とガン攻め派の意見が衝突する。俺はメナリクの命が大優先だが、ウァサゴの作戦が必ずしも成功するとは限らない。しかし失敗を恐れ肉体が拘縮すれば動きが鈍くなるのは確か。ウァサゴが大得意の成功する前提しか見ない前向きな言霊は意外と侮れない。

「分かりました。ここはウァサゴさんを信じましょう」

俺とウァサゴの論争に女神王の横やりな判定が下った。

「なに」

「我々にとって一番良い結果がメナリク様とレメゲトンの死守。どちらかが失ってはいけません。両方とも守りましょう」

アプロディーテの審判はウァサゴを選んだ。俺としてもその二つを守れれば一番良い結果だということは分かっている以上、女神王の判断なら従うしかない。

「お願いしますね、ウァサゴ・ロフォカレさん」

女神王直々の重圧な期待にも、ウァサゴは姿勢を崩さず、その瞳は頑なに揺るがなかった。

「ええ」

その瞳の奥には、昨日、兄双子のアンドロマリウスに敗北してしまったからか、リベンジに燃える決意が垣間見えた。今度こそ勝つ、という言霊も、燃える決意の一部だと感じた。

「レハベアム様もよろしいですね?」

反対派の意見を出した俺にも承諾を聞いてきた。

「ああ。ウァサゴは、やると言ったらやる先輩だ」

既に決まった議題の答えに後からつべこべ言わない。決まった事項はこちらからも強い否定が無ければ、あとは責任者を信じるしかない。俺の妹を救ってくれることに賭けよう。

「さて、レハベアム様が天界の王子になったこと。ヤロベアムと裏歴史の大陸の出現、メナリク様の救出作戦、とこれで話すべきことは話し合いましたね。あとは……」

会議の終わりに俺は席を立つ。瞬時に全員の視線が集まったところで、俺から一言を皆に出す。

「とりあえず夏休みを迎えよう。学校の支度だ」

夏休みというワードを言った途端、ゲーティア高校の生徒らは全員、気伸びしたか、心底嬉しそうな表情をする。

「やったぁぁぁぁ、今日から夏休みだぁ」

ヴァプラやウァサゴは椅子から立ち上がり気持ちそうに背伸び。夏休みという生徒にとって天国のような期間が嬉しいというのは俺にも分かる。

「あああやっとかあ」

セーレやシトリーは、夏休み開催という、辛い学校生活から一時期離れるという嬉しさのあまり、脱力までしている。

「何して遊ぼうかなぁ」

フェニックスやアンリデウスは夏休み定番のお遊びまで考え始めた。まるで会議後とは思えない安堵で楽観的だ。

 そう、今日は七月一日。夏休みは今日の終業式から始まり、二か月間後の九月まで。それまでは何をしてもいい休息の期間だ。厳しい雰囲気に包まれていた会議の空気から一変、全員は夏休みという希望に気持ちが晴れている。皆それぞれ夏休みを何に思うか、一気に思考が働いているのが見える。

「遊ぶ計画は既に立ててある。エチオヴィア王国へ旅行だ」

会議における一番の答えは、メナリク救出ではなく、エチオヴィア王国への旅行。その大狩猟大会への参加だ。メナリクの救出は俺たちにとって大狩猟大会のいわばメイン。大会の目的である狩猟は俺たちからすればついで程度だが、どうせだ。夏休みを利用し、狩猟を楽しもう。

「「「おおおおおっ!!」」」

善魔生徒会メンバーは外国へ旅行に期待を踊らせ、その青春色な若い声が一つに集り、この部屋に心地よく響いた。


投稿を遅らすのは、読んで下さる方々に不安を与えたのではないかと思い、かなり怖かったです! 

 っていうか、今まで執筆が遅れてしまった理由が『学校』だの『宿題』だの言い訳していた自分がみっともないです!


 作者としてもっと昇進したいので、投稿スペースはここから取り戻し、より完成度を高めていきたいです!

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