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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第?章 ????編
67/88

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 勝利を確実に手にし、暗黒星の爆風で吹き飛ばされた四人の猛者たちが俺の元に急いで集まった。

「レハベアムー! やったね勝ったね!」

「全く、呆れた魔法だ」

「なんだあの呪術はっ!? ヤバすぎかよ」

「かっ、かっこよかった……」

トドメを刺す役割が俺に回ったということで、第二部の魔法で倒したが、やはり世界を壊す禁忌魔法。味方に凄い迷惑をかけてしまった。おかげで皆の姿は土埃だらけだ。思えば俺の恰好も大分汚れている。

「皆すまない。派手な魔法で皆にも迷惑かけてしまって」

「いいや、構わない。お前の魔法は闇だけあって非常に危なっかしいが、最初に戦った魔獣の生命力を覚えているか? あれほどの力の持ち主は細胞まで滅するべき。また復活する可能性がある以上、完膚なきまで消すため、危険を顧みず詠んだのだろう」

流石はリーダーシップに優れ、洞察力も高い厳格な女騎士スキールニリ。俺の思考まで読まれていたか。魔術師の俺が他人から思考を読まれるとは、俺もまだまだ猛進しなければな。

「ああ。だが、勝ったはいいものの……」

ここは元々博多はかたという名前の駅があった都会。立派なビルが立ち並び、車道や歩道を通る車や人で賑やかだった。だが、突如現れた魔獣によって、木端微塵に砕け、あまつさえ自分たちも魔獣を倒すために能力を全力で使い、全壊された駅や都会に拍車をかけた。おかげで、今俺が立っている元々の駅前広場は、大きく陥没し、深いクレーターになっている。駅はもはや見る影もない。

「……読者世界に現れた謎の魔獣と、小説世界の住民俺たちのせいで……」

一言に魔獣が現れたから、だけでは済まない。俺たちも大きく損害をかけた。とはいえ、魔獣を倒さなければ読者世界の住民たちは全滅していただろう。だから俺たちはこの世界の人々を守るために戦った。いや、もう何も言うまい。言い訳して、自分が虚しいだけだ。

「レハベアム……」

重大な過ちに表情を力みさせる俺に気を遣い、ワユはそれ以上、口に出せなかった。彼女の表情も分かりやすいほど悔しさが滲み出ていた。歳弎やアンナも、広がる荒れ地に言葉が生き詰まっていた。

「……そうだな、俺もちとやりすぎたかもな。だが、ああもしないと勝てなかった」

対して、スキールニリは表情は冷たいか、未だ厳格の思付きを保ったまま。だが、ポーカーフェイスを気取っているのか、バレバレにも瞳や口角は僅かに下がっている。

「護れなかったのは我が騎士の名に恥じる。だが、全てを護ることは神か何かの所業。我々は神ではない。我々の全力を尽くした結果がこれだ。今はただ我々ができるのは一つ。この地に住んでいた人間たちの冥福と、再建復興を強く祈ること」

勝利の金猪王イノザグリンブ魂剣テインを黄金の鞘に戻し、合掌。瞼も閉じ、頭も軽く下げた。

「強いんだね、スキールニリは……」

ワユはスキールニリの精神的強さに感動し、彼女もアマノエクスツルギを黄金の鞘に納めた。ワユの一言に、スキールニリは合掌を終え、瞼を開け、ワユを見た。

「強い? お前も十分恐ろしいほど強い。恐ろしいほどにな」

炎が弱点の絶対防御の氷に加え、相手を操る詩と神速の韻律の三つの能力を持つ、女騎士セロコック・スキールニリ・ストゥルルソン。できれば俺も敵に回したくない相手だ。

「ええそう? だったら嬉しいな……」

斬撃を巨大化させたり、好きな位置にワープさせたり、一度の振りで複数の斬撃を放つ女剣士ワユ・アースサノ。自分がどんだけ強い能力者なのか自分が理解していないようだ。

「はい、だって鎧を叩斬ったんですから。凄いですよあれ」

撃った相手を眠らせ、夢の中で悪夢攻撃、起きない相手に現実攻撃の双方を与え、最後は夢を喰らう一撃を与える、リボルバー式銃剣使いアンナ・ジークフリーネ・レンナー。眠らされたら生涯消えぬトラウマを根つけられそうだ。

「まっ、俺のこのいついつてんで、羅城門破城鎚らしょうもんはじょうついっ突いたんだ。砕くには至らなかったが、俺の功績あってのものだな! ガハハ」

実に重たそうな金砕棒 いついつてんと纏う鬼火で、パワフルで豪快ダイナミックな戦法を使う鬼武士の土方 歳弎。見てて派手だが、仮に敵対したときは俺が一番対策が悩む相手間違いないだろう。

「ふっ、全く、トンデモありえないぐらい、本当に凄い人たちだ」

呆れるところまである。本当にとてつもなく強い人たちだ。

 俺やワユ、スキールニリは以前に小説の一人称視点、すなわち主人公の立ち位置であることが判明したが、おそらくアンナと歳弎もその作品の主人公なのだろう。主人公に課せられるのは、作家から与えられる過酷な運命。それを次々と越えた猛者だからこそ、この圧倒的強さ。なのに、俺たちは初対面なのに非常に息が合った。互いが初めて見る能力や戦い方なのに、息が合う以上に純粋な戦意がピースのように合致していた。だからこの四人から特別な雰囲気が、肌を越えて心で理解できるのだと思う。

「ってか、おめえ! 陰陽師おんみょうじなのか? なんか妖怪みたいな呪術使うがよ」

歳弎が俺に何かを確認してきた。

「オンミョージ? ヨーカイ? 呪術? なんだそれは」

「えっ、お前人間じゃないのか?」

歳弎から、人間だというのに知らないということを驚かれても、俺はどうすることもできない。ただでさえ小説世界の考え方が違うんだ。だが、右眼周りが蛇の鱗で覆われた獣眼をしているアンナからも驚かれてしまった。

「え、そうなんですか? なんか学校っぽい制服着ているし、てっきり人間界の人かと」

一方で、違う小説世界の住民アンナはオンミョージとやらを知っているようだ。見る限り人間ではないようだが、この差とはいったいなんだ。

「い、いや、俺は至って人間だが、そのオンミョージとやらは知らないんだ。っていうか、俺たちは違う小説世界の住民だ。世界ならではの常識を、違う世界の住民に求められても困る」

さりげなく聞き逃したが、俺が今着ているゲーティア高校の制服は、異世界のアンナから見ても学生服に見えるのか。異世界人同士の常識が、中には通ずるものがあると尚更困惑してしまう。

「ガハハハハハハ、言われてみりゃその通りだな」

豪笑する歳弎。散らかっている部屋はその人の心が荒れているというが、戦い方が豪快な歳弎は性格までも豪快というわけか。

「まず立ち話もあれだ。とりあえず皆の情報を一同にまとめたい。一旦、作家の家に戻ろう」

ほぼ初めて会う俺たちを仕切るスキールニリ。そう言えば戦闘中に、自らをなんとか王国の聖姫騎士団デュラハーズヘッグ団長と名乗っていたな。聖騎士や姫騎士は分かるが、聖なる姫の騎士という、いかにも最上級職クラスの仕事姿。尚且つそれが群れという組織に、何やら神聖さが感じられる。それらの団長となると、確かにリーダーシップが高いとなると納得がいく。

「そうだねぇ。いやあ疲れたよ。もうさっきの戦闘で脇に埃被っちゃっし、シャワー浴びたい」

ノースリーブを着ているワユが両腕を上げ、生脇に付着した戦闘時の土埃に気を掛ける。毛が一切生えていない、地肌こそ綺麗な脇だ。

「そうだな。俺も魔力が尽きそうで休憩したい」

度重なる詠唱や魔法回数と持続は魔力を使う。俺の中にある魔力ダムは、十が限界だと、残り一しかない。一回の詠唱で尽きること間違いない。

 腹に口が生えた魔獣や、それから生み出された鎧を着、聖なる火と水の双剣使いの竜は無事に倒し、平穏を取り戻せた。魔獣たちの加害度は高いが、俺たち戦士五人による都会の加害度も高い。救世主気取りや自己満足で浮かれるような甘い気持ちは、ひっそりと感じた時点で人格を疑われる。いつも、戦いの後は悔やむ一方だ。だからこそこの悔しさをバネに前へ推進するのだ。

 俺たちは武器を鞘やホルスターに戻し、戦闘態勢を解除。このクレーターからよじ登り、瓦礫一切無い全く平らな地につく。崩壊した数多のビルや建物の瓦礫は、俺たちの戦いで全て無意識にぶっ飛ばしてしまった。だから、元々賑やかだった都会は、もはや見る影もない。まるで一から創り直された国の地形。全く、何もない。

 ここで俺は誰かの視線を感じ、咄嗟に背後に振り向いた。それはこの四人も同様に、元に戻した武器の柄を掴んで警戒し、振り向いていた。

「……今、誰かの視線を感じました」

だが、さっきも述べた通り、焦げ跡が残されている平らな地形。それ以外何も落っこちていない。強いて言うなら紙切れ一枚ぐらい。勿論人の影すらも。思えば視線は一瞬だったような気がして、もう感じなくなった。

「誰もいないし、もう感じなくなったね」

「なんだろうな、殺気でもなかったが、言い難い怪しい視線だった」

紙切れは優しい風に乗って宙を舞い、どこかへ飛んで行った。

 全員一致で謎の視線を感じたんだ。勘違いではない。なのに、謎の視線を感じたのに、もうなくなった。実に不可解な現象を感じた。

「……我々は疲れている。先の戦闘で神経をとがらせたから、こういう気のせいもある」

スキールニリは柄に置いた右手を離し、ゆっくりと前へ振り向き、歩いた。

 真夜中に怖い話を聞いた途端、暗い部屋の中、なぜか神経をとがらせている気持ちと同じかもしれない。ごく自然な物音が発生したら、通常の二倍驚く現象と同様、俺たちはさっきの死闘で神経がまだ尖っている。大したことのない視線ぐらい咄嗟に感じてしまうこともあるのも仕方あるまい。

 皆も柄から手を離し、スキールニリの背を追う。俺たちは、この博多駅とかいう崩壊都市から逃げるように、作家の家へ徒歩で帰った。

 程なくして、作家の家に到着。家内は作家の誰も居らず、留守の状態。避難したのか、帰るまでの道のりは確かに人はいたが、崩壊した博多駅や魔獣たちの様子を見ていたか、恐れてどこか避難所へ目指していたようだった。思えば、読者世界の住民たちは、モンスターは見えるのに、俺たちは見えない。なのに、モンスターと俺たちは互いに見えていた。そもそもモンスターの正体は未だに謎であり、読者世界が一番の謎だ。この差はいったい、何を意味するのだろうか。

 そう思う途中、アンナは倒れるようにベッドにダイブ。そのパジャマ姿に似合い、疲労満帆した身体でベッドに脱力していると本気で寝る勢いだ。ふとんのようなマントのせいで、アンナが背に布団を被せ、うつ伏せ寝しているように見える。

「はああやっぱりベッドが一番……」

それを見たワユは、

「あああ私も寝る!」

アンナの側にベッドに跳び込み、うつ伏せに。寝たまま脱力し、もう寝る気満々だ。

「ねえ、少しマントのお布団貸して」

「い、嫌ですよ。このマントは私専用なんです」

対してスキールニリは、クサムラ アリサが座っていた一番右端の椅子に座り、機械ノートを見ていた。その画面には、『ニュウエルフの性姫騎士団』という題名が中央に載っていた。俺はその隣、カタリキヨ レアが座っていた、『ソロモン校長の七十二柱学校』を書く機械ノートの前に座る。土方 歳弎は、筋肉モリモリの男作家が使っていた、右から四番目の椅子に座った。機械ノートの画面には、『電卓の武士』と書かれている。それぞれの空席の机に置かれている機械ノートは、俺の隣には『アースサノ家の剣士』、歳弎の隣は『夢見る乙女の悪夢旅団』と画面に記されている。『アースサノ家の剣士』がワユ・アースサノで、『夢見る乙女の悪夢旅団』はアンナ・ジークフリーネ・レンナーで間違いないだろう。

「さて、では皆。とりあえず会議を始めたい。自己紹介を交えて」

戦意が綺麗に合致していた俺たちは自己紹介という壁を越え、戦友とも感じ取れる。それに、名前は共に戦う前に聞いた。正直、自己紹介はとても今更感がある。が、出会って間もない俺たちに馴れ馴れしさは存在しない。それに、各小説世界の主人公たちの話を聞いて、今後の読者世界の調査の役に立ちたい。

「とりあえずワユとアンナ、席に座ってくれ。ただでさえ自分たちはいつ元の世界へ帰れるか分からない。あの作家たちの気分次第でもある。現に、今作家たちは小説を書いていない。我々が読者世界に召喚される条件が、『作家が書いているときに現れる』という謎の現象を確認している以上、速やかに皆の話を聞いておきたい」

確かに、今作家たちは留守の状態で外に出ている。俺たちは『作家が小説を書いているときに現れる優しい背後霊』時に小説世界から読者世界へ召喚される。機械ノートの前で執筆作業していない以上、俺たちは本来なら小説世界へ帰っているはずだ。

「今、奴らはスマホで小説書いているぜ」

ここで歳弎が謎の名前を口にし、断言する。

「「「スマホ?」」」

俺、ワユ、スキールニリが口をそろえてスマホとかいうモノに、はてなを浮かぶ。ワユは寝っ転がったまま歳弎に顔を向ける。

「ああ、スマホっていうのはまあ要は、このパソコンが手のひらサイズに小さくなった奴だ」

歳弎が機械ノートを指さし、パソコンという名前で呼んだ。この縦開きなノートの機械はパソコンと呼ぶのか。読者世界にあるパソコンを、小説世界に住む歳弎が知っているということは、共通の認識で間違いないというところか。

 ここでアンナが起き上がり、歳弎の次に説明をした。

「パソコンとスマホは連動しているんです。だから今作家たちは避難所に待機しながら、スマホで私たちの物語を書いていると、土方さんは言っているんですよ」

どうやらアンナもパソコンの知識は小説世界と共通らしい。で、大きい機械のパソコンと手のひらサイズの機械のスマホは、小説を共有しているということなのか。なんとも便利そうだ。

「うううむ、よく分からんが、つまり作家たちは現在も小説を書いているということだな?」

耳が尖がっているエルフのスキールニリには、機械という存在そのものが全くの異世界感と思うだろう。俺は人間でありながら機械は知らず、魔界に流れてくる機械や銃は苦手意識があるぐらいだ。

「ああ、だから俺たちは消えない。何より、この世界は俺が知る地球と同様、蜘蛛之巣インターネットが繋がっている。電子人である俺には、読者世界を囲む蜘蛛之巣インターネットを通じて、奴らのスマホの位置が分かる。確かに奴らは魔獣の出現で怯えながらスマホで小説書いているぜ」

「え? ごめん全然何言っているのか分かんない」

歳弎の解説に、俺とワユとスキールニリの、いわゆるファンタジー系主人公はちっとも理解ができていない。幻想と機械はどうやら交じり合わないらしい。水と油のような感じか。

「つまり、土方さんにはスマホを通じて、作家たちの居場所が分かるようです。電子人というのは少し驚きましたが」

機械系な武器を揃えるアンナは土方 歳弎の説明にきちんと着いてきている。

「アンナ、おめえとは気が合いそうだな。まっ、そういうこった。それに、奴らは安心を求めるために、悔やく小説を書いているんだろ? ならば休む間もなく、奴らは小説を書くべき。そうじゃなきゃ、どうやらあいつらは背後から悪霊を感じ取るようだしな。俺たち優しい背後霊とは違って」

そう、作家たちは小説を書かないと、謎の悪霊を感じ取るらしい。だから書き、対を成すように俺たち主人公がこの読者世界に召喚される。書かないと悪霊が、書くと優しい背後霊、つまり俺たちが現れるということだ。

「そういうわけですから、まだ作家たちは小説を書き続けると思います。だからと言って、あの人たちも集中力には限界があると思います。集中力が切れたら、小説を書くのをやめて、私たちは小説世界へ戻ることになるので、切れる前に話し合いをしましょうか」

そう言うとアンナはベッドから降り、土方 歳弎の隣の椅子、『夢見る乙女の悪夢旅団』と書かれたパソコンの前に座った。

「えええっと、まだよくわかんないけど、とにかく元の世界に戻る前に話したいのはあるね」

ワユもベッドから降り、俺の隣の、『アースサノ家の剣士』と記されたパソコンの前の椅子に座り、これで全員着席した。

「では会議を始める。と、言いたいところだが、まずは自己紹介を始めようか。どうやらアンナや歳弎は小説世界の住民にも関わらず、読者世界の知識も一部共有していることから、皆が居た各世界のことも一応知っておきたい」

確かに、アンナと歳弎は小説世界の者でありながら、読者世界の知識も共有している。つまり、彼らが居た小説世界には、読者世界と連なる物や知識が存在していたことになる。当然、小説世界に置かれている物と、似て非なる読者世界の物は原理は違えど、いわゆる設定が読者世界の現実と同じ。対してファンタジー系な小説世界の俺、ワユ、スキールニリはそういう知識は全く無い。また、会議する以上、名前や印象を覚えておくのも大事だ。それ以前に、まず自己紹介を一言目に言ったスキールニリに、何か考えがあるようだ。

「改めて、私の名はセロコック・スキールニリ・ストゥルルソン。世界樹と呼ばれる宇宙の中で、アルフヘイム王国と呼ばれる世界があるのだが、私は民や王子を護る騎士団の長をしている。スキールニリと呼んでほしい」

名前に限らず、所属の国や組織も口にする。対して俺は魔界に住むただの学生だ。組織の所属は善魔生徒会だが、組織と呼ぶにはとても程遠い。善魔生徒会はあくまで部活動に過ぎない。俺と違って立派な職業につき、佇いは確かに王国の未来を常に案じている、まさに騎士道精神を具現化した存在だ。どうやら王子とイチャイチャしているようだったが。

「はいっ、はいっ!」

スキールニリの自己紹介が終わると、ワユは犬みたいに急いで手を必死に上げ、積極的に名乗る。

「私、ワユ・アースサノ! ボスポロス剣国っていう、剣が栄えている王国で、こう見えて私姫なの。剣の腕なら王国内で一二だと思う。ああ姫だからと言って気は使わないで。フレンドリーに話しかけてくれると嬉しい」

初対面の俺にも、とてもフレンドリーに接しに来る、無警戒にも度が過ぎた剣士という印象だったが、姫であるなら尚更無警戒さはどうにかした方がいいとアドバイスしたい。だが、このように無邪気に明るい者が姫であるなら、その地に住む国民や国そのものも明るいのだろう。偽王国も見習ってほしい。

 控えめに手を上げるアンナ。口恥ずかしそうに話してくれた。

「アンナ・ジークフリーネ・レンナーって言います。私は元々地球じ、いや、異世界風に言うと人間界の人だったんですけど、〝∞〟っていう夢を見て、精神だけが夢世界に飛ばされてしまいました。かくかくしかじかな理由で、この右眼周りに蛇の鱗がついて、能力も得ましたけど、まあ、やりくりしています」

あいまいな表現で詳細は語らない、いたって控えめな性格だ。俺がまず驚いたのは、アンナは人間界の人だということ。そして、ムゲンとかいう夢を見て、精神だけが異世界へ行ったというトンデモ説明。じゃあ残った身体はどうした? その身体はなに? と疑問点がたくさん浮上するが、詳細を語らない辺り、相当な諸事情があるようだ。

 俺と同様、ワユが一番先にアンナに驚きを表情にし、質問した。

「え、え、精神だけが夢世界に飛ばされた? えっ、じゃあアンナは何者? その身体はなに?」

俺と違って想ったことは素直に口にするタイプなワユ。俺は敢えて質問しまいとこらえたが、結局ワユが聞いてしまった。

「かくかくしかじかということで」

素直に飛んできた質問にもあいまいな表現で逃げた。

「えええええそんなぁ」

「まあ要は、話せば長くなるということ、なんだな」

「はい。すみません……」

別にアンナは悪くないのに謝ってしまうあたり、とても控えめなんだなと思う。少し、シトリーを思い出してしまった。精神だけが夢世界へ行ったのなら、今のアンナは精神のみが確立された生体という推測はできるが、彼女が話したくないというのなら、無理に聞くまい。

「それについては、実は俺も奇妙な生体なんだぜ。さっきも言ったが、俺は電子人なんだ」

「「「デンシジン?」」」

ファンタジー系な俺たち三人がまた、歳弎の発言に口をそろえた。そう言えば電子人についての発言は、アンナも驚いていたようだった。

「簡単にやぁ、さっき言ったパソコンやスマホ。それら電子機器の中に住む、意志や感情を持った非生物と思ってくれていい」

ごめん、言っている側から簡単に理解できない。やはり俺と機械は交じり合えないようだ。その後も歳弎は詳細を語ってくれた。

「電子機器の中は、ほぼ地球全体に広大な蜘蛛之巣インターネットが張り巡らされてる。それを総合的に言って、電脳世界デンノウガルズって呼ばれてる。まあ、要は地球、人間界を囲んでんのが、電脳世界デンノウガルズってわけだ」

歳弎の説明に、ワユやスキールニリは開いた口が塞がらず、必死に理解しようと頑張っているが、その努力が叶わず、完全に上の空だ。俺もちっとも理解できない。俺が目指していた小説世界内の人間界も、このような設定が施されていると思うと、なんだか行く気が失せていく。

「でっ、俺のような電脳世界デンノウガルズ生まれの電子人が、人間界の地に降り立つことなんて、まずありえねぇのよ」

「な、なんでだ?」

「そりゃおめえ、たかが伝承だけが残ってる悪魔が人間界に本気で存在すると思うか? それと同じだ。動物を省けば、人間界には人間しかいねえ。ゲームの中にはキャラクターしかいねえ。電脳世界デンノウガルズには電子人しかいねえ。なのに、電子人である俺が世界を越えて人間界に居る。だから俺も戸惑ってんだ」

確かに、一つの世界には動物を省けば、その世界に住む種族が住む。人間界には人間、魔界には悪魔、天界には天使やら神やら。もっとも、俺は魔界に唯一住む人間だが、本来なら人間が魔界に居るはずがないのだ。それと理屈は同じということか。

「他のファンタジー小説ならあるあるですけど、確かに電脳世界でんのうせかいの人が人間界に来れるはずないですね」

「そうそう、そういうこった。おめぇ分かってんな……!」

元々人間界人のアンナには、歳弎の話についていけてる。俺も人間界の人だというのに魔界育ちのせいで話についていけてないが、どうやら人間界と電脳世界は親密な関係があるということは分かった。比べられるように、元々人間界人のアンナと電脳世界デンノウガルズの電子人の歳弎は、早速意気投合している。

「えへへ……」

リィ。脱線したな。俺は土方 歳弎。電脳世界デンノウガルズ葦原中国ディープウェブ、及び黄泉国ダークウェブの警察機関SSGの副長だ。今はとある理由で休職しているがな。俺は鬼だが、別に悪リィことはしてねえから安心してくれや。正義に熱盛アツモリな奴だ俺は」

肩に羽織る青い警官服を見る限り、やはり警察官だったのだな。

 四人の自己紹介が終えたところで、最後に手番が回ってしまい、全員俺を注目する。

「お、俺はレハベアム・モーヴェイツ。魔界に住む人間」

魔界という世界の名にスキールニリは聞き逃さず、質問してきた。

「魔界? 悪魔が住む世界ということか?」

「ああ」

「あ、悪魔存在してたのかよ……!」

悪魔は伝承に記された架空の生体と言っていた歳弎だが、どうやら他の世界から見れば、悪魔とはそのように見られるようだ。俺から見れば視界に映っている悪魔は全うな現実なため、さっきの発言で俺の常識は覆されていた。

「悪魔が住む世界で、お前は闇魔法を操る魔術師。お前はもしかして悪なのか?」

高潔な正義を持つ姫騎士から警戒心を抱かれてしまったが、まあ誰だってそう思うのは当然か。しかしこうなってくると、俺が悪ではない立場を説明した方が良さそうだ。

「いや、俺は善魔生徒会という、善の心を持つ悪魔が集うグループの人間。悪魔の悪の心を変えるため、グループで革命活動をしている。まだ学校の範囲だが……」

スキールニリの組織規模に比べて俺が入っているグループは小さく、また、スキールニリが背負っているのは国の未来。対して俺やウァサゴが背負っている宿命は、今はまだ学校という狭い範囲。環境としても、騎士がいるぐらいの立派な王国に対し、偽王国は警察や騎士はおらず、完全な無法地帯。スキールニリと俺は、天と地の差どころか、銀河の果てと真っ暗な底の差。リーダーシップも格上だ。おい、俺はいつから負け犬として歩んできたんだ。

「あっ、だから学校の制服着てるんですね」

元人間界人のアンナは、俺が着用している制服の意味を知る。アンナも小説世界の人間界に居た頃には、このような制服を着ていたのだろうか。見る限りアンナもまだ若い。

「善の悪魔、そのような存在が居るというのか。いやはや、世界は広いと思わされる」

スキールニリはそんな俺を貶さず、自分と俺の立場の差を全く気にしないような言い方。ダメだ、スキールニリが怖すぎる。生まれた瞬間から負け犬として歩み、数多の悪魔から虐げられてきた俺にとっては、産まれた瞬間からエリート騎士として歩んだスキールニリが怖すぎて、目も合わせきれない。

「それに、学生の割には強い殺気と戦闘経験からなる冷静で豊富な判断。魔力の量やその質、どこからどう見ても邪悪さ漂う魔剣や魔術書を平気に扱う。それ以前に使い手の正義感が上回り、確かに強かった。見た目以上に、レハベアムは只者ではないな」

挙句、スキールニリの一方的な分析で断言され、俺を過大評価する始末。ああダメだ、スキールニリと俺を離してくれ誰か。俺を救ってくれ。

「まあいい。信頼たる人物なのは、カタリキヨ レアの執筆が確たる証拠。疑って申し訳ない」

「い、いやいいんだ。俺が悪いんだ」

「なに、やはり貴様は悪なのかっ!?」

「そ、そういう意味ではないのだが……」

意外と頑固で天然だった。

……そろそろ学校から渡された課題レポートを書かないといけない……いけないはずなのにどうしても指が小説に伸びちゃう……誰か僕を救ってください……



そういうわけで、今回も一話だけ送っています。たぶん次回も一話だけ送る予定です。とりあえず謎の章を書き終え、課題レポートをパッパと書いちゃいたい……

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