表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第?章 ????編
66/88

??話 ?ゅ???く け???

「ギュグググググウウ……ギュギギギギギギギガガ……!」

しかし、それでも魔獣は激痛を越え、立ち上がり、アンナを睨みつけてきた。

「そ、そんな……! あれだけダメージを受けて、まだ生きられるの!?」

ワユと歳弎のダイナミック一撃を夢と現実、双方受けて二倍の深手を負い、更に夢喰らいのトドメでより特大のダメージを受けたのだ。それでもまだ死なない魔獣め、その生命力がもはや不死身レベルだ。

「アンナの能力は確かに強力。ワユと歳弎の一撃も強力なのは間違いない。それをも上回るというのかあの魔獣……!」

「でも見ろ。息切れしている。確実に弱まっている証拠だ」

確かに、獣は腹の口から呼吸が乱れている。茶色く濁った息を何度も出している。瞳も泳ぎ疎らだ。

 しかし、突如として腹口獣の身体が萎み始めた。

「なんだあいつ、急に萎んだぞ!」

「え、萎むってことは、倒れるの、倒れるの?」

今、戦前にはワユと歳弎とアンナが立っている。後方は氷の壁を張るスキールニリと遠距離から攻撃したい魔術師の俺。戦前に立つ彼らは、危険な魔獣の行動一つ一つに厳重な注意を払うべき。弱り切っているとはいえ、勇敢故の慢心は不要だ。

「死に際の能力を出すかもしれない。用心しろ!」

彼らは俺の声にしっかりと頷き、最後まで気を引かない心意気を持った。

 萎む魔獣は仰向けに倒れた。萎んだことで奴の身体は穴が開いた風船のようにシボシボと皺だらけだ。口腔も萎んだ。だが、萎んだ口から、黒い巨大な卵が現れた。

「これは……?」

黒い大きな卵が萎んだ口から現れたことで、戦前に立つ三人は警戒を強化。

「やはりだ。あの魔獣め、ただでは死なんようだ」

まるで身体全体の養分を卵に集中させたかのような死に方だ。だから奴は身体を萎ませた。魔獣は己が死ぬ代わりに道連れかとっておきの能力を発動させたか。

「お前ら、一時撤退するのだ!」

ワユと歳弎の強烈な衝撃にも耐える頑丈な氷の壁へ、退避命令を発するスキールニリ。もしかしたらあの卵から生物が誕生するのではなく、爆発するかもしれない可能性だってある。卵の破片が散弾して命取りになる可能性もある。一旦退避して、間合いを取るのが最善だ。

「はい、一旦下がりましょう」

アンナとワユ、歳弎は、氷の壁へ一旦退却。しかし、その最中に卵が上から割れ、卵から天空へ暗黒エネルギーの柱が昇った。天空へ到達すると、暗闇の雲が広がり、大空を染め、辺りは一気に薄暗い都市と化した。

「なんだ今度はぁっ!」

とりあえず氷の壁へ退避を完了し、間合いを再度取ることに成功。しかし、どうみても状況はより悪化。魔獣は最期に、この崩壊された都市を闇に染めたかっただけが目的ではない。

「ちっ、どうやら、ラウンドツーのようだぜ」

この状況を俺たちはなんとなく察し、歳弎の口から分かり切った一言が零れた。

 卵から放たれる暗黒エネルギーが止まると、その全てがゆっくりと割れた。卵から誕生したのは、漆黒の肌を覆う人型の巨大な竜。だが、ただのダークドラゴンではない。機械的な装甲を纏う兜や鎧を着用し、両肩には大型のキャノン砲が備わっている。そして両手には白く燃える剣と、輝きを放つ聖水にしたるる剣を握っている。

「なに、炎の剣だと……?」

「おいおいなんだあの綺麗な水の剣は!?」

炎に弱い氷を操るスキールニリと、水に弱い鬼火を操る歳弎が、剣を覆う属性に注目。苦い表情を浮かべる。

「ただの火と水ではない。光属性まで融合させている」

俺はその両方に注目していた。白い炎は初めて見たが、ただの炎ではないのは火を見るよりも明らか。おそらく光属性を融合させた聖なる炎だろう。聖水を覆う剣も備えているとなると、歳弎の火や俺の闇を上からたたき込む戦法に出たか。

「俺たちの弱点を突いて攻める気だ! くそ、魔獣の学習があの竜に受け継がれていたか」

腹口獣が受けたダメージは学習として、二刀竜に引き継がせた。つまり、俺たちの戦法が二刀竜に知られている。でなければ俺たちピンポイントな属性を備えた魔法剣は装備してこない。兜だって、ワユの巨大な唐竹やアンナのマグナム防止と見受けられる。腹口獣は、二刀竜を安全に着空させるためのお膳立てというわけだったのか。

「ギュガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……!」

二刀竜は翼を羽ばたかせて、氷の壁へ急降下。肘を引いて聖なる炎の剣を氷の壁ごと突く構えだ。

「くっ、私の氷は炎に弱い。皆、一気に後ろへ逃げるのだ!」

物理には滅法強い頑丈な氷の盾だが、火に弱いのは当然の摂理。スキールニリの言う通りに後方へ退避するが、歳弎だけが後ろへ引かず、武器をクロスにして防御する構えに入る。依然として氷の壁の前に立っている。

「トシゾーっ?! 何をしている。今は引くのだ」

「俺の鬼火は火に強い。それに、あんな見え見えの突き、俺が余裕で受け流してやる……!」

竜が持つ剣はビルやタワーをスライスできるほど大きい。それに比べて蟻のようなサイズの俺たちが、あんな巨大な剣を受け止めきれるとは思えない。

 だが、加具鬼炎かぐきえんが土方 歳弎の全身を燃やすと、火事場の馬鹿力を発動させ、筋肉が厚くなった。その太さときたら、肥満体のウエストどころではない。

 二刀竜は右肘を放ち、聖なる炎の剣を氷の壁へ突いた。燃える剣先は氷を貫くが、クロスさせていた刀と金砕棒で巨大な突きを受け止めた。凄まじい強烈な金属音の衝突と共に、歳弎が押されている。

「うぐぐぐぐぐ……おめぇの突きはその程度か。もっと、力強くっパせることができねえのかよお。巨体の割にはっ!」

巨大な突きにも臆しない歳弎は、刀と金砕棒を筋肉で振るい、聖なる炎の剣の斬撃を弾いた。

「なんていう呆れた馬鹿力だっ!」

右腕ごと怯ませたが、左手に持つ聖水の剣を歳弎へ振るってきた。大地ごと歳弎へ巨大な唐竹が下ろうとした。

「任せろっ!」

一時撤退を命じたスキールニリだが、彼女は前に走り、聖水の剣の軌跡へ跳んだ。その冷える黄金の細剣で聖水の剣を受け止め、聖水を凍らせた。

「この私を……舐めるなっ!」

剣身ごと聖水を凍らせた水の固体をスキールニリは蹴り上げ、唐竹を防いだだけでなく、弾いた。その勢いで二刀竜も後方へ少し押され、引いた。

 スキールニリは地上へ着地。歳弎はすぐさまスキールニリへ立ち寄り、安否を確認する。

「大丈夫かスキールニリ。助かったぞ」

「いいやこの程度。だが、斬撃を防いだどころであの化け物は止まらないようだ」

剣身を覆う凍らせた聖水に、聖なる炎の剣を近づけ、氷を溶かした。二つの剣を叩き合い、ルーティンを見せつけ、俺たちを警戒し始めた。

「くそ、せめてあの光属性さえ無ければ、俺の闇で無力化できるのに」

聖なる炎と聖水を覆う剣の斬撃は正直苦しい。光属性も一緒にして、闇による無力化を防いでいる。もはや相手に第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』は効かない。

 そのとき、二刀竜の肩に装備している二つのキャノン砲が、俺たちに向いた。その砲口から大きな球体の砲弾が俺たちに放たれた。思ったより高速に砲弾が飛んでくる。回避が間に合いそうにない。

「任せてっ!」

咄嗟にワユが戦前に走り、黄金の刀でくうを右薙ぎ。一見、横に空振りしているようだが、その刀に斬撃の軌跡は生じなかった。

「ムラクモカリバー。アマノエクスツルギの斬撃を分けてっ!」

ワユの能力ムラクモカリバーによって、飛んでくる二つの弾道の前に、二つの斬撃が現れた。それぞれの砲弾を斬り、爆破。俺たちに当たることなく、防いでくれた。

 ワユは一閃した斬撃を分け、二つの弾道の前に二つの斬撃を出した。斬撃を巨大化させるだけでなく、一振りの斬撃を分けたり、ワープさせることも可能なのか。

 今、俺たちと二刀竜の間は爆発による煙で視界が塞がれている。それを狙ったのか、ワユはアマノエクスツルギと呼んだか、黄金の刀を地に刺し、前に走った。

「これでもどうかなっ!」

ワユが走ることでアマノエクスツルギも地を斬りながら前に進み、助走の勢いがついたところでアマノエクスツルギを逆風。下から振るい上げた。すると、斬撃の軌跡がドリル状に変化し、まっすぐ放たれた。煙を貫き、払った。そしてドリル状の斬撃は、二刀竜を突いた。

 だが、二刀竜が装備している鎧は硬く、二刀竜の胸を貫通するには至らず、ドリル状の斬撃が通用しなかった。

「むう……硬いねあの鎧」

見るからワユが持つ刀の切れ味は抜群のはず。それすら頑なに受け止める鎧はやはり硬すぎる。

 アンナも右手に持つ回転式大拳銃の銃口を向け、引き金を引いた。大きなマグナムが放たれたが、それすらも鎧を通らなかった。

「私のノートゥングが通らないなんて。これでは相手を眠らせられません。夢を見せられないです」

そのリボルバーガンはノートゥングというのか、大型マグナムでも鎧が通らないとなると、眠らない限りアンナのトラオム夜想曲・ノクターンが発動させられない。

 俺もレメゲトンの第一部『ゴエティア』を開き、詠唱する。

「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり」

俺の背後にホロスコープ型の魔法陣が出現し、そこから七十二本の柱槍を放つ。勇猛果敢に放たれた七十二本の柱槍だが、流石に見え見えの軌道だったか、二刀竜は二本の剣で防御し、七十二本の柱槍を受け止めた後、打ち払った。

「ちっ、攻守共に優れた賢い竜だ」

聖なる火と水を纏う巨大な剣による派手な近距離、大きなキャノン砲から放ち中距離、反撃しようにも鉄壁の鎧。どこを攻めても隙が見当たらない。

「どうすれば奴に勝てるんだ……」

せめてあの鎧さえ剥がせられればどうとでもなるが。とそのとき、ここで俺は腹口獣に与えた大打撃を思い出す。都会の瓦礫さえも吹き飛ばした威力を、鎧に叩き込めれば行けるのではないかと策を思いつく。

「……っ、ワユと歳弎。提案がある。あの一撃をあの鎧に叩きこめないか?」

ワユと歳弎が俺の提案に耳を貸してくれた。

「一撃って、俺の突き技、鬼門破城鎚きもんはじょうついのことか?」

ワユの巨大唐竹と、歳弎の鬼門破城鎚を鎧に叩き込めば、流石の頑丈な鎧も打ち砕けられそうだが、果たしてどうだろうか。

「いいが、あの技は加具鬼炎かぐきえんを大幅に使う。もう一発奴にちかませば、油を補給するまで加具鬼炎かぐきえんが出せなくなるがいいか?」

「私も構わないけど、少し時間を稼いでくれないかな。あの巨大な斬撃は斬撃チャージを要する。さっきよりもデカい斬撃を与えるのなら尚更」

大打撃ならではの、力の大幅消費に力の集中時間。だが、今はその方法しか鎧を貫通することが出来ない。

「ああ構わない。時間稼ぎならいくらでもやる。それに油なら、ここは元々都会。適当にそこらへんに転がっている可能性はある。俺の魔法なら油を拾うことぐらい容易い」

ここはワユと歳弎の大技にかけて、俺の魔法で時間を稼がなければならない。油が必要ならば、紙ドクロに持ってこさせれば問題はない。

「魔法って、あの紙のドクロの群れか? あんな細いレーザーじゃダメだぜ」

「群がるだけではない。合体することも可能だ。見ていろ」

レメゲトンの第三部『アルス・パウリナ』を開き、詠唱を始める。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ……そして、合体しろ」

レメゲトンから七千二百万ページ分の紙を放ち、紙一枚一枚が張り付き、大きな白い翼竜へ形作る。アンナが悪夢には悪夢と言うのならば、こちらは竜には竜を、だ。

「おおおおすげぇ……」

竜の背へ跳び、俺も一緒にあの二刀竜の注意を集める。

「俺の魔力を大きく消費するが、くらえ、バーストビームを!」

紙で作った竜は全ての紙から闇を口腔へ送り、溜める。そして口を開けた。レーザーが七千二百万枚分束になった、極太なバーストビームを放つ。

「……ッ!」

二刀竜は二つの剣をクロスして防御態勢に入ったが、バーストビームを正面から受け、その勢いに押されていく。そのまま闇の咆哮へ身体が流され、吹っ飛んで行った。

「おおおおおあの二刀竜が飛んで行っちまったぜ!」

「これならいけますよ!」

「よし、これでワユの時間稼ぎにはなるだろう。さあ今のうちだ!」

「うん、了解したよ!」

二刀竜の鎧を叩き割るには、ワユと歳弎の一撃が必要だ。ワユは、アマノエクスツルギの柄を指で回転させ、斬撃とやらのチャージに入った。巨大唐竹を放ったときと同様、高速回転するアマノエクスツルギから、微小な斬撃波が辺りに散りばめられていく。

「それから土方 歳弎。油だ」

土方 歳弎に、油塗れの紙ドクロ一体が降りてきた。

「油? お前いつの間に……」

歳弎は刀を地に刺し、油を含んだ紙ドクロを掌に乗せる。

「先に詠唱していた一体の紙ドクロだ。脳内で先に油の調達を命令していた。紙を絞れば油が出るだろう。厨房から盗んだ油だ、腹は壊さない」

加具鬼炎かぐきえんが尽きれば歳弎は本来の力を発揮できない。炎を再活動するには油が必要ならば、生き残った紙ドクロに油の調達に命令を送ればいい。事前に命令を送っていたことで紙ドクロは厨房の油に浸かり、歳弎まで運んできてくれた。あの鬼門破城鎚をもう一発打っても、加具鬼炎かぐきえんが復活してもいいように。

「お前の魔法、ホッント便利だな」

「俺の魔法は魔力が尽きればそれまでだ。無尽蔵にあるわけではない」

度重なる詠唱に魔法の持続時間、大量の紙ドクロまでやれば、魔力が尽きるのは時間の問題。要はそれまでにこの四人の力で二刀竜を倒してくれればそれで構わない。

「レハベアム、この私も乗せていただこう」

「私も手伝います!」

スキールニリとアンナが竜の背へ跳び、時間稼ぎに協力姿勢を示してくれた。

「スキールニリにアンナ、感謝する」

今から二刀竜相手に空中戦を繰り広げる。その場合、遠距離や中距離にはバーストビームが強い分、近距離には容易く避けられる。その場合は俺の剣で太刀打ちしようと思っていたが、スキールニリやアンナのような剣を使うものがいれば安心だ。それに、そう何度もバーストビームは打ちたくない。俺の魔力を根こそぎ消費するからだ。だからいざという時に放ちたい。

「要はあの鎧の装甲を崩せばいいだけの話。近距離には自信がある」

「私が今できることは、この竜に乗って一緒に戦うことだけですから」

ワユと歳弎の一撃を放つには時間が要する。その時間を稼ぐのに名乗り出てくれた。俺たち三人なら奴に攻められる。

「ああ、では行くぞ」

第三部『アルス・パウリナ』の紙は常に浮力を持っている。紙竜は翼を羽ばたかせて宙に浮き、二刀竜へ飛んで行く。

「頼んだぞ二人ともっ!」

「お願いしますね!」

地上に残ったワユと歳弎は、スキールニリとアンナの声に頷いた。ワユの斬撃チャージが十分に溜まるまで、二人を援護だ。

 一方、闇のバーストビームを受けて吹っ飛んで行った二刀竜が立ち上がり、再び翼を羽ばたかせて、宙に舞った。

「レハベアム。悪いが、あの竜へ接近してくれないか? あの鎧に少しでも傷をつけたい」

無茶な要望をはっきりと言うスキールニリ。だがその表情は大真面目だ。

「傷と言っても、あの鎧は私のマグナムですら傷がつきませんでしたよ。流石に無茶なのでは……」

アンナが持つリボルバーガンは、俺が小説世界で見た拳銃より二回りも大きい。その分威力は抜群のはず。それすら鎧を貫通することができなかったとなると、細剣の切れ味はもっと不安だ。

「ワユと歳弎のあの一撃を叩き込み、鎧を打ち砕くのが今の作戦。だが、もし打ち砕くことができなかったら、我々の敗北は決定的だ。だから少しでも鎧に傷をつけ、耐久性を下げたい。それに、私の能力は氷だけではない」

「こ、氷以外にも能力があるのか?」

「ああ。私は、スノッリエッダという能力を持ち、その一つが氷。あと二つの力を持っている」

「あと二つもあるのですか!」

「奴に叩き込みたいのは韻律。つまりリズムだ。その力であの鎧に超高速の連撃を全体に与え、装甲を傷だらけにしてやる」

スノッリエッダは三つの能力を持ち、その一つが氷というわけだったのか。能力を三つ持つとは、なんとも逞しい存在だ。これは期待できる。しかし、韻律という力が具体的にどのような力なのは、パッと聞いただけではまだ理解できない。しかし、スキールニリは確固たる自信で言う。彼女に託すしかない。

「分かった。俺もあの鎧の頑丈さには驚いていたところだ。少しでも傷をつけて、勝利を確たるものにしたい」

「そうですね……この読者世界では死に切れません。まだ、小説世界で成すべきことがありますから」

皆、見ず知らずの読者世界の人々を守るために戦っているのだろうが、何より一番の理由は、小説世界でまだやるべきことがあるから、死なないためにも戦っている。

「ああ」

俺は小説世界に戻って、メナリクを救い出し、裏歴史の魔王ヤロベアムを倒す。奴は何を企んでいるのかは現時点では不明だが、計画性ははっきりしている。そして、人間界を守るために魔界の革命活動をすることが戦う理由だ。誰が骨を拾ってくれるか知れない異世界なんぞで死ぬわけにはいかない。

「さあ、二刀竜が向かってくるぞ。用心しろ」

前方の二刀竜が二本の剣を叩き、俺たちに戦意を示す。そして翼を羽ばたかせ、紙の竜へ向かってきた。近づく互いの間合い。スキールニリとアンナは二刀竜にまっすぐ見据え、構える。

「突撃するぞ」

「ああ!」

紙の竜は二刀竜へ突進を開始。対する二刀竜は両肩のキャノン砲を俺たちに向け、球体の砲弾を発射。

「私が打ちます!」

アンナがノートゥングというリボルバーガンで高速にニ連撃ち。二本のピンク色の弾道は二つの砲弾の真ん中に衝突。そのまま貫通し、爆発。

「助かった。俺の魔力が節約できた」

魔力ダムが十とするなら、残っている魔力は四。紙の竜の持続で魔力は大きく消費する。少しでも節約したい。その分、アンナのマグナムが減ってしまうが、平気と言わんばかりに笑顔で頷いてくれた。

「えへへ、今は無賃乗車していますからね。このぐらい役に立たないと」

「いいや、十分に役に立ってくれている」

一方、俺たちと二刀竜の間に砲弾の爆発による煙で視界が塞がった。奥の二刀竜が今何をしているのかここからでは見えない。

「ここで択が発生だ。煙に突っ込むか、ここで待機して反撃を待つかだ」

勇猛果敢に煙に突っ込み、一気に二刀竜へ攻寄るか、冷静沈着に待ち、突っ込んできた二刀竜を返り討ちにするか。ここは攻めると不利であり、待つのも相手に猶予を与えてしまうことで不利。それに、腹口獣や二刀竜は知性を持つ。下手に突っ込みはしないだろう。

「二択ではない。三択の間違いだ。奇襲を仕掛けるっ! ただそれだけだ」

スキールニリは黄金の細剣をくうに逆風。空気を斬りながら氷で作った階段を形成し、スキールニリは階段を駆ける。上段まで上がると、その勢いで高く跳んだ。漂う煙を跳び越し、真上から二刀竜へ先手を仕掛ける。

「あのスキールニリさんもなんて猪突猛進な……」

煙が晴れると、スキールニリは二刀竜の間合いの懐に既に入っていた。猪突猛進に相応しい、猪を模した黄金のヘルムを被る女騎士スキールニリ。その仕事の速さはプロか、二刀竜が被っていた兜が二つに割れており、頭が外に表れている。

「もう兜を割ったのか!」

スキールニリは落下しながら鎧の胴体の前で、黄金の細剣で、超絶神速の突き連撃を鎧にかましていた。

「流れる……最高最速のリズムっ!」

その速さは、人間の動体視力では到底見切れないほど。俺の眼には、一秒の突きが軽く千本に見える。それほどの残像を生み出す圧倒的な神速の連撃。二本の巨大な剣を持ち、尚且つ巨体の重い二刀竜を力強く押している。

「えっ、なんて速い突きなんですか! とても見切れませんよ」

「ダイナミック理解した。韻律リズムを速めているんだ」

「えっ、つまりどういうことですか?」

「スキールニリは韻律を操る。つまり動きに速いリズムを固定させ、リズム通りに体を動かしている。ざっと、一秒に千回の手拍子感覚と見ていいだろう」

「一秒に千回の手拍子で突きをしているんですか?! 神速の韻律って凄いですね……」

勿論、一秒に千回の手拍子は馬鹿げた業。たとえ動きに自信がある人でもこなせるわけがない。物凄く恐ろしい能力を身に着けたものだ。

 神速の突き連撃で圧倒し、それすらも耐える鎧も凄いが、流石に全体に亀裂が生じている。これならワユと歳弎の一撃で壊れ、二刀竜へダメージが届きそうだ。

 反撃を始めた二刀竜は、鎧を突くスキールニリへ聖なる炎の剣を振るった。

「我が韻律。その程度の反撃で崩せると思うなっ!」

スキールニリは亀裂を表する鎧に壁キックし上昇。聖なる炎の剣の手首へ跳び、同じく超絶神速の突き連撃をかます。剣身は幾度も手首を串刺し、貫く。一秒も掛からないうちに手首を切断し、剣ごと右手が切り落とされてしまった。

「な、なにっ! 強いなスキールニリ」

氷を溶かす聖なる炎の剣でも、スキールニリは畏れず果敢に真っ向から立ち向かった。まるで、如何なる恐れもスキールニリの精神的リズムの前には無駄のようだ。

「まだだ」

切断した手首を越え、右腕に着地。スキールニリは右肩を目指し、右腕を斬りながら走る。スキールニリが通った道はまるでもぐら叩き盤の複数の穴。止まらない突き連撃により右腕が次々と貫通されていく。もはや、あの右腕は筋肉がズタボロで使い物にならない。あっという間に右肩に着くと、黄金の細剣でキャノン砲に唐竹。あれほどの突きをしておきながら切れ味は衰えていないのか、いとも簡単に一刀両断し、キャノン砲が爆破。二刀竜の顔に直撃し、宙のバランスを崩した。そのまま地上へ仰向けに倒れてしまう。

「さあ今だ。トシゾーにワユっ!」

スキールニリは宙返りしながら紙の竜へ戻り、号令を言う。大きな鬼火を纏う歳弎と、斬撃波の竜巻を刀身に纏うワユが既に跳び、二刀竜の頭上で合図を待っていた。

「ああっ! 分かってるぜ」

歳弎が再び、分厚い筋肉の脚でくうを蹴り、二刀竜へ急降下。鬼門破城鎚を打ったときの動作は同じで、右肘を引いて金砕棒で突く構えだが、それとは比較にならないほど加具鬼炎かぐきえんが大きく纏っている。紙ドクロが補給した油を使い、加具鬼炎かぐきえんを更に倍増させたか。

ちかますぜっ! 羅城門らしょうもん……っ!」

加具鬼炎かぐきえんを多く纏う金砕棒で、亀裂に覆われた鎧を激しく強く突いた。

破城鎚はじょうつい……っっ!!」

鬼門破城鎚よりももっと強力な突き技の羅城門破城鎚。その威力は、比較にならないほどの突風と地に流れる衝撃波で、こちらも立っているだけで骨が折れそうだ。

「本当に派手な一撃だ……!」

しかし、そのような大きい一撃でも鎧は砕けるには至らなかった。だが、全体に深い亀裂が覆った。これなら、次なるもう一手で崩せるはずだ。

「ワユっ! 次の斬撃で真っ二つにしてやれ!」

鎧を突いた歳弎は、上空にいるワユの軌跡に入らないよう、急いで鎧から降りる。そして、ワユはアマノエクスツルギを天へ差しながら、上空から一気に攻寄る。倒れる二刀竜へ重力に従って高速に落ち、互いの間合いが重なった瞬間、アマノエクスツルギを振るった。

「巨」

その声と共に、鎧には斬撃で書かれた巨大な『巨』が出現し、鎧を強く斬った。

「大っ!」

二撃目も同様、アマノエクスツルギを振るい、次は『大』の巨大な斬撃で派手に斬り、

「斬っ撃ぃぃ……!」

三撃目、四撃目には『斬』、『撃』の、斬撃で作った巨大な文字で鎧を叩斬たたきった。

「斬撃を操る能力ムラクモカリバー、斬撃を大きくしたりワープさせるだけでなく、漢字にして斬ることも可能だというのか……!」

斬撃を漢字にして斬れば、画数が多ければ多いほど相手を複数、一度に斬る。ワユはアマノエクスツルギを四回振るったが、斬撃の数は『巨大斬撃』、つまり合計三十四回斬った。しかも斬撃一つ一つが巨大。威力は計り知れない。

「ギュガガガガ……!」

深い亀裂を覆った鎧が遂に打ち砕かれた。歳弎にワユの派手な大技で砕くことに成功した。

 しかし、ワユと歳弎は能力を最大限に使い切ったか、二人とも息が切れている。歳弎に至っては、油を補給したとはいえ、身体中の鬼火が弱まってきている。

「あとは、お願いね……! 私はちょっと疲れちゃった……」

「お前らにトドメを託す。思う存分、ちかましてやれ」

スキールニリが鎧の耐久性を弱め、二人が砕いてくれた。確かに、バトンは繋いだ。あとは俺たちを葬る。

「ああ!」

「任せてください!」

「我々に勝利を……!」

鎧無き竜に、もはや恐れはない。こちらはまだ戦闘能力が残っている。ここから負けることなどありえない。

「ギュガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

二刀竜は立ち上がり、翼を羽ばたかせて突風を引き起こす。地上にワユと歳弎は容易く吹き飛ばされてしまう。

「きゃああああ!」

「ぐああ……!」

己の能力を最大限に使った二人は力を使い尽くしたと判断したのか、吹き飛ばした相手を無視し、紙の竜に立つ俺たちを睨み付ける。

「スキールニリとアンナ、悪いが、俺の詠唱の時間稼ぎを頼まれてくれないか?」

俺の頼みに、二人は咄嗟に振り向き、俺の要件に耳を貸す。

「どういうことだ。何か秘策が」

「ああ、大魔法で奴を葬る。だが、その詠唱には多少時間がかかる」

レメゲトンの大魔法と言えば、第二部『テウルギア・ゴエティア』だ。暗黒星を召喚させ、世界にぶつけて破壊する禁忌魔法。勿論、読者世界を壊す気はない。二刀竜は宙に浮いているため、暗黒星を当てやすい。それでも多少、読者世界全体にダメージが来るが、もう既にこの都市は全壊。ならばもはや気を遣う必要はない。徹底的にあの竜を滅ぼし、この世界を救う。

「どんな魔法なんです? 事前に説明してくれれば、夢の中でも大魔法を繰り出せます」

俺のとっておきをアンナは夢の中でも再現し、精神攻撃を与える前提として聞いてくれた。二刀竜からすれば、夢の中で世界を破壊する勢いで暗黒星が落ちてくれば、如何なる生物でも恐れ入ることだろう。とてつもなく怖い悪夢を見て、現実でも正夢が発生し、これで二刀竜は完全に撃破だ。

「上空に巨大な暗黒星を落す魔法だ」

「「あんこくせい?」」

「まあ、要は暗黒だけで出来た衛星を落すわけだ。超巨大な隕石と想像してくれていい」

「って、貴様っ!? この世界を滅ぼすつもりかっ!」

俺の説明に、スキールニリが仰天しながら怒鳴ってきた。まあ、世界を救うために戦っているのに、世界を破壊しては意味がない。それは怒るだろう。立場が逆であれば俺も怒る。

「問題ない。読者世界は壊さない」

一方アンナは、俺のトンデモ説明にまだ理解していないのか、驚きはせず、頭の中でイメージを考える。

「分かりました。なんとなく想像はできました。ゲームとか漫画とかでよくある、ラスボスの奥義みたいな感じですね」

それを言われても人間界人ではないため、さっぱり理解できていないが、とにかく俺の大魔法を夢の中で再現してくれればそれでいい。

「だ、大丈夫だろうな……? 信じていいのだな?」

「当たり前だ。作戦会議はこれまでだ。二刀竜が来る」

俺の作戦に耳を貸してくれただけで、もはや勝利は決定的。あとは俺が詠唱をするのみ。アンナとスキールニリは武器を構え、二刀竜に注意を引く。

「では二人とも、任せた」

俺はレメゲトンの第二部を開き、詠唱する態勢に入る。

「はい信じてます、私は!」

「こうなればヤケだ。私が戦前を斬る!」

スキールニリは紙の竜の背から頭上へ走り出し、頭上に立つと、

「我こそは、アルフヘイム王国 聖姫騎士団せいききしだん首無デュラハー蛇女ズヘッグ』団長セロコック! この世界に襲来した竜よ、一騎打ちを所望する!」

騎士らしく名乗り、二刀竜に一騎打ちを挑み始めた。一騎打ちを受ければ、それはつまり、二刀竜は俺たちに注意を引かなくなる。俺の絶好の詠唱の時間だ。しかし断る権利もある。ただでさえ二刀竜は鎧を砕かれ、右腕も無くなっている。対してセロコック・スキールニリ・ストゥルルソンはほぼ無傷。一騎打ちを受けるには、二刀竜にしかデメリットがない。

「貴様の右腕は私が切断した。だが貴様は都市や人々の平穏を壊した。その右腕はいわばハンデ! ならば我もハンデを背負おう」

冷える黄金の剣身を自身の右腕に近づけ、冷気が右腕を凍らせた。二刀竜の右腕みたいに自身の右腕を切り落とすわけにはいかないにせよ、右腕が凍ればもはや戦場に置いて使い物にならない。実質あの右腕は無力化だ。最悪、二刀竜が凍った右腕を砕けば、それこそ永遠に無力化となってしまう。

「我が王に託されし剣、勝利の金猪王イノザグリンブ魂剣・テインで、貴様に打ち勝ち、この世界に元の平穏を取り返す!」

同じ右腕が使えない二刀竜とスキールニリ。これでハンデは平等だ。鎧もスキールニリは身軽な分、多く肌をさらけ出している。急所が当たりやすいのも平等だ。

 それを見た二刀竜は口角を上げ、左手に持つ聖水の剣の柄を強く握った。

「ギュギュギュガ……ギガアアアアアアアアアアア!」

二刀竜は一騎打ちを受け入れたか、宙を舞い、紙の竜へ突撃した。対するスキールニリは竜の頭上を蹴り上げ、高く跳んだ。

「スキールニリと二刀竜の間合いが重なったら最後、決着がつくはずです」

騎士と竜の決闘を見守るアンナ。決着がつくまで他者からの妨害は許されない。

 徐々に高速に、互いの間合いが近づく。二刀竜の聖水の剣は巨大だ。その圧倒的な間合いを利用し、先手を突くのは二刀竜か。

「……ッ!」

やはりというべきか、二刀竜の間合いに跳んでくるスキールニリが入ってきた瞬間、聖水の剣をスキールニリめがけて突き始めた。しかし、スキールニリは空中で上に宙返りし、突きを回避。聖水を覆う剣身に着水し、更には足元から聖水を凍らせた。そのままスキールニリは聖水を凍らせながら剣身を走り、一気に二刀竜の懐へ攻め込む。そのとき、スキールニリが持つ細剣、勝利の金猪王イノザグリンブ魂剣・テインと言っていたか、細身の剣身には、能力か魔法で作ったような、幻想的で透明な紙が筒状に覆った。その状態で凍らせた聖水から跳び、剣身から鍔に着地。そのまま二刀竜の左手で突いた。

「ギュガ……!?」

突くと、剣身を覆う紙が肌に浸透。だが、二刀竜そのものには何のダメージが無いようだ。しかし、スキールニリは余裕の態度を変えず、鍔に立ち続ける。

「貴様には、『質問』という題名の詩を突いた。我が詩に突かれたものは、詩の題名や文面に無理矢理従ってしまう。詩の命令から逃げられないぞ」

スキールニリの第三の能力が発動したようだ。氷や韻律とは違う、もう一つの能力である詩とは、いったい効果なのか見物だ。

「さて、では質問だ。我が名、反対から読むと……?」

この状況でセロコック・スキールニリ・ストゥルルソンが奇妙な質問を繰り出す。そういえばスキールニリが一騎打ち所望のとき、彼女が名乗ったのはセロコックという名のみ。スキールニリ・ストゥルルソンとは言わなかった。

 二刀竜が口を開いた。何かを喋り始めるぞ。

「せ、セロコッ、せろこっく……クッコロセ……『くっころせ』? ハッ」

この戦場に似つかず、賢い二刀竜が素直にセロコックの質問に答え、奴は『くっころせ』と言ってしまった。

「では、ころさせてもらうっ!」

スキールニリは再び鍔から、首に向かって跳び、勝利の金猪王イノザグリンブ魂剣テインで喉を突いた。針先は肉を貫き、更には左薙ぎで喉を斬った。

「ぎゅがっ……!」

セロコックの逆から読みに長考し、間抜けにも圧倒的な隙をさらけ出し、あまつさえ喉という急所を突かれる二刀竜。

 一手目に透明な紙のようなものに剣身が覆い、その状態で突いたら、紙が肌に浸透した。それがもしや詩で、スキールニリの詩とは、浸透させた詩の題名や文面で、相手を操作するのが能力の効果なのか。一手目の詩の題名は『質問』。相手に質問し、強制的にシンキングタイムを仕掛ける。その間相手は隙だらけ。その際に攻撃を仕掛けるというわけか。

「質問。『王子様から近づかれたり、想うだけで鼓動が速くなり、メイドの私にとってとても辛く、今にも苦しい。王子様だから謎の症状が私を蝕む。だからこの症状を直接王子様に聞くと、王子様はこう答えた。それは恋に目覚めている証だと』……ふっ、我ながら良き詩だ」

喉を斬られた二刀竜はもはや虫の息。急所を貫かれては息もできまい。

「さあ、今のうちだ。アンナ!」

「はいっ!」

スキールニリが作った時間は有効的だ。アンナは持つリボルバーガンのノートゥングを構え、引き金を引いた。発射されたマグナムはピンク色の弾道を描きながら、瀕死の二刀竜の頭に激突。

「……っ! ……っ……」

二刀竜は呼吸困難下にも関わらず、翼を羽ばたせながら深い眠りについてしまった。頭から夢の映像として吹き出しが出現し、夢の中の二刀竜は、今にも死にそうに息を荒げている。

「眠らせました」

もうこの時点で、俺たちの勝利は確定だ。ワユと歳弎が鎧を砕き、スキールニリとアンナが隙を作り、あとは俺がトドメをさすだけ。確かにバトンは受け取った。

「詠唱は既に終えている。あとはあれを落すだけ」

二刀竜の頭上には巨大な闇の塊、第二部『テウルギア・ゴエティア』の暗黒星が現れている。スキールニリが詩の能力で相手をコントロールしている間に詠唱を完了させた。

「ええ……思ってたよりとても禍々しいですね……」

「悪かったな」

闇魔法とはいえ、使い手によっては善にも使えるだというのに、アンナですら引き、怖そうにしている。だが、心なしかアンナの瞳はキラキラと輝いている。

「いいえ、チョーカッこいいです。正直、中二病くすぐります」

「お、お前もか……」

俺の闇魔法で中二病がくすぐられる者が他の小説世界にも居たとは驚きだ。意外と世界とは狭いものかもしれない。

「え?」

「いいや、こっちの話だ。それよりトラオム・ノクターンの操作を頼む」

「は、はい」

アンナの身体からピンク色のオーラが湧き出た。同時に、吹き出しに映る夢の映像には、大空に暗闇の雲を破る暗黒星が出現し、二刀竜はそれを見て慄き、身体中が震えている。精神の恐怖が身体にも表れ、奴は暗黒星の悪夢に魘されている。

「さて、では皆っ! 暗黒星を落すぞ。できるだけ離れてくれっ!」

吹き飛ばされたワユや歳弎、二刀竜の近くにいるスキールニリらに、できるだけの大声を出し離れるよう命令する。各遠い地にいる二人は急いでその場から逃げ、スキールニリもダッシュして逃げる。

「謎の竜よ、俺たちはお前に恨みがあるわけではないが、この謎に満ちた読者世界の人たちに恐れを入れる行為は決して許されるものではない。俺たちは訴える。それ相当の裁きを」

右手を下ろし、暗黒星を落す。同時に夢の中でも暗黒星が二刀竜へ落ち、現実と夢、その両方に暗黒星が迫ってきている。恐ろしい悪夢から逃げられない上、悪夢と同時進行に現実は正夢と化す。

「ギュ……ギュガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!!!」

迫る暗黒星に大きい魘り声さえ上げ、二刀竜は完全に恐怖に飲み込まれている。そんな無慈悲な暗黒星は、現実と夢、同時に二刀竜に激突。暗黒星の巨大な爆発により、二刀竜は悪夢を見ながら身体が闇に飲み込まれ、塵々になっていく。そして、圧倒的な爆風は、クレーター地帯を更に圧し、その外にまで強く吹き飛ぶ。この全壊された都市を更に完膚なきまで崩すような悪意のある爆風や衝撃は、読者世界を壊すまでに至る。二刀竜を闇に消した以上、暗黒星はもう無用だ。

 俺たちが乗る紙の竜も闇の爆風に消し飛びそうだが、俺は暗黒星を止めるため、第二部『テウルギア・ゴエティア』の召喚獣である、暗黒星を出した上空に浮く緑色の酷女を魔力で消す。そいつに右手を差し、魔力を送る。

「し、鎮まれ……!」

緑色の酷女は術者の俺の命令に従い、魔法陣の中に消え、同時に暗黒星もパッと消えた。

「勝った……」

二刀竜は無に消え、大空を覆った暗黒の雲も消え、すっかり水色がどこまでも続く晴天になった。読者世界に突如現れた魔獣は、無事に倒すことに成功した。

たいていは二話投稿している自分ですが、すみません。今日は一話だけ送らせていただきます。

 コロナにより学校に復帰できたものの、延期となり、手続きや延期の間の学校からの宿題、バイトらに相当手こずっています。とはいえ、執筆に置いてそれらはただの言い訳に過ぎないと自分はそう思っています。

 誤字脱字も多い僕でもあり、本当に自分の力の無さに痛感しています。でも、まだまだ頑張る所存ですのでよろしくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ