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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第死章 淫魔護衛編
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六十話 聖なる剣を振るう闇の魔術師

「そうそうレハベアム。その偽王国討伐について肝心の目的を忘れていました。あなたが天界の王子となる儀式を」

ヤロベアムの正体が判明したところで、偽王国討伐や裏歴史の魔王ヤロベアムへの対抗策として、天界の王子の冠の奪還が完了した今、本来の目的を果たすとき。依頼完了という時だ。

「……その儀式の前に一個、念のため聞いておく」

「はい、この女神王アプロディーテが何でもお答えしましょう」

「王子となるからには、俺は天界に居なくてはならないのか?」

王子は王国の要の一つ。その要員が王国を越えて異世界で学校生活しては、王子としての役割や使命はどうするという話。だが俺はあくまでメナリク救出のためだけに王子になるだけで、ずっと天界に居残るというのはとても嫌だ。ずっと暗い世界で生きてきた上に闇の属性を持つ以上、この光を長時間浴びるのは辛い。

「はい」

迷わず即答。まるでなんのことかさっぱりとでも言いたげな表情だ。

「こんな肌をさらけ出しまくったような破廉恥軍団に囲まれてなんて、セクハラもはなはだだしいところだ」

「肌だけに」

隣のウァサゴが俺の無意識なダジャレに反応し、小言を漏らす。

「正直言うなら、王子になるという話はあまりおうじたくない」

「王子だけに」

「うるさいウァサゴ」

天界の環境に適合できない理由を話すと、アプロディーテがとても信じられないような驚きの表情を出した。

「な、なぜですレハベアム様……! 忘れたのですか? この天界は創世記からずっっっっと、孤独に心が育っていないレハベアム様を温かく……! 癒すために生まれたのですよ。女神たちの究極の聖なる母性を拒否するということですか……!」

するとアプロディーテや周りの爆乳天使共が俺を甘い瞳で見つめ、自らの乳を揉み始めた。もう自分らの指が乳肉に沈んでいる。彼女らの性欲が爆発する直前まで来てそうな態勢に入ってしまった。

「大袈裟すぎるんだよ。お前らが心配するほど、俺はそこまで寂しい人生を送っていない。家族だとか母だとか母性だとか、俺にはいまいち分かっていないが、こんなセクハラ受けるぐらいなら母性はいらない」

確かに俺は誰からにでも育ちや愛は受けていないが、自分一人で育った以上、もう今更母性や母の温もりとやらは不要だ。自分一人でもやっていけてるから。寂しいというよりも、独りの方がずっと気が楽。俺に対するセクハラが大袈裟すぎる天界に居ては、この爆乳天使や女神たちが俺の周辺に居続け、完膚なきまで犯されそうだ。

「かと言って、俺の妹のメナリクが人間界で危険な目に会おうとしているんだ。それを阻止するにはどうしても天界の王子の冠が必要。甘んじて受け入れるしかないか」

たいせつな人を救うには多少の運命ぐらい立ち向かうしかない。わがままばかり言いようでは、大事な運命の場で肝心な判断ができないというもの。

「郷に入っては郷に従えって言うしね。こんな破廉恥な世界、私じゃとても駄目だけど、仕方ないものね」

「レハベアム様はどうしても魔界で居たいということですか?」

「確かに魔界は嫌いだが、多少たりとも、あそこの環境に慣れてるんだ。魔界あっちの方がまだ住みやすい。そのための城と聖域を用意してくれたんだろ?」

元々は俺が住んでいる城は、天界を生み出した創造神が未来予知して用意してくれたものだ。その母性がどうのこうので俺が安心して暮らせるようだとか。ならば天界の人的環境を嫌う俺は、魔界の聖域があり、何より安心感のある実家ならばのんびりと暮らせる。

「……分かりました。私たちとしてはレハベアム様はずっと永遠に私たちの肉体に囲まれて、肉体的な関係をより更に進展させたかったのですが、そこまで嫌がるのであれば、無理にとは言いません」

「本当かっ!」

「しかし、私たちはずっと……寂しい想いをしてきました。何せ、ここは男性がいない世界。勿論、レハベアム様以外の男は強烈にNGですが、私たちも性欲の限度があります。この肉体美を全て集めてレハベアム様一人に全力でズリズリしたくてたまらない。そう、創世記から溜めてきているのです。皆は」

アプロディーテ率いる天使たちや女神たちの性欲が高すぎるのは十分分かっている。それを数の暴力で俺一人でどうにかしろという無茶難題もいい加減なところだが。

「なので、一日一回は天界に遊びに来てください」

つまり一日一回は犯されに来いと、そう女神王は俺に無慈悲な天罰を下すというわけか。

「あ、ちなみにレハ。私たちのサキュバスたちなんだけどね、彼女らも性欲が溜まりに溜まっているのよね。彼女らもお願いね」

サキュバス専門学校の生徒会長にして天使のアンリデウスが、ついで感覚でサキュバス三億人の性欲晴らしを注文。つまりこの俺に腹上死という処刑を下す気かこいつら。流石は処刑執行人。

「ふざけんな! だいたい俺一人でそんな膨大な性欲の数、どうにかしてできるわけないだろっ!」

「「えええええそんなあ」」

「なにがそんな、だっ!」

「お乳がこんなにも大きくて、肉体美で眩しいはずのこの女体が何億体もあるんですよっ!? それもレハベアム様のみ肉を求めている。普通なら今どきの男子高校生なら大いに喜ぶはずなのに」

「そうですよねアプロディーテ様。やっぱりレハベアム様はどうかしてます」

「ホントですよ」

「お前ら意気投合早いなっ!?」

見る限り、この天界には女性同士の醜い争いは無さそうだ。だから天使たちや女神たちは非常に仲がいい。俺が混浴で犯されていた間、誰一人の怒り声や怒りの気が全く無く、和やかムードが終始保たれていた。アプロディーテを慕う天使たちも、心から尊敬の念を抱いておりながらも、たまにタメ口を使うミカエル然り、アンリデウスも裏世界の天界ではアプロディーテとこのように話していたと思われる。

「まあそういうことです。特別にレハベアム様は今まで通り、魔界の聖城でお過ごしください。一日天界へ入浴以外は」

こうして、俺の魔界暮らしにて、二つの嫌なスケジュールが追加され、もう生きる気力が根こそぎ失われるのであった。

「はあ、もういっそ、メナリク救出だけ成功したら死にたい」

「死なせはしませんよ。あなたには今から天界の王子として認めるための儀式があります」

「大分、話の路線がずれたがやっと本題か」

「と、言うのも実は、もはや必要ありません」

「なに?」

「なにせあなたはもう既に天界の王子の力を習得しました。よく咄嗟にその力を自在に扱ったものです」

確かに俺は咄嗟に天界の王子の冠を被ったことで、自在に聖域を創ったり光速移動できたりと、ほぼ天界の王子の力を手にしたが、言うならば儀式すっ飛ばしでやってしまったんだ。だから儀式を受けるために天界へ足を運んできたが、必要ないとならば好都合だ。

「いや、あれは全くの無意識。説明書見ないで設計図を組み立てたようなもの。そのせいで、その力の大半を理解していない。聖域を創るという点以外は」

あの時は俺自身驚いた。ミサイルしこたま撃たれてきたのに、気が付けば俺が瞬間的に移動していたから。ただ、聖域を創るという力に関してはおおよそはついてた。天使たちは聖域から魔界へ出れないという理由上、言うならば俺が架け橋としてその場に聖域を創れば、天使たちも進撃がしやすくなるからだ。だから天井が壊れた運動場にオロバスを誘導し、その陽光を浴びせた。俺の予想が戦局に傾き何よりだった。

「まあなるほど……逆に無意識で使いこなせたというのが驚きです。良いでしょう、この天界の最高傑作である冠の力を教え致します」

「ああ」

ということで、冠を魔法陣の中から出し、俺の頭上に乗せる。いざ天界の王子の力をレクチャーだ。

「まず、その冠は、我々の母、創造神様が未来を予知して創られたもの。全てはレハベアム様が被る前提に創られたものです。まさか悪魔が被ろうだなんて恐れ多いことでした。一人は淫魔街の王子に、もう一人は自らを王子に」

アスモデウスは俺を淫魔街の王子にさせようとし、オロバスは自らを王子にしようとし、サキュバスを巡る戦争の中心がその冠であった。そう聞くと、冷静に考えれば、この冠は創世記前から創られた超神聖なものになる。それを悪魔が悪用するというのは、どこをどう聞いても罰当たり過ぎてこっちまで耳が痛くなる。それに、創造神様とやらが俺を予知し、天界や女神、天使、聖城まで何から何まで手厚く支援してくれてた。手厚過ぎて頭が上がらないほどだ。

「それほど、俺専用なほどにまで影響を与えるということだな」

「はい。レハベアム様の血が属性が闇に対し、その冠は光。本来は打ち消し合うはずです。ですが、レハベアム様の肉体は人間。冠は人間という肉体のみに光属性を齎したようです」

「つまりはアスモデウスとアンリデウスの、血と肉体というわけだな。俺の血は悪魔。レメゲトンを扱ううえで重要な闇の血。肉体は人間ゆえ無属性。それに冠をプラスすることで、俺の肉体は光属性を得たということか」

アスモデウスは血が天使、肉体が悪魔、アンリデウスはその逆で、光と闇が打ち消し合い、アスモデウスの肉体に闇属性が消えてしまっている。だから悪魔でありながら聖なるベールを触れた。

「だがその言い方だと、俺の血に含む闇が消えてしまうんじゃないのか? これを被ったあとでもレメゲトンは使えるのだが」

「アンリデウスは悪魔の血を引きながら天使の翼が生えますが、天使の肉体は光属性です。だからお互い消し合うのですが、レハベアム様の肉体が元々が無属性。その無を光に変えるのがこの冠です」

「なるほど。悪魔の闇の血と天使の光の身体が加わることで無属性のアンリデウスが誕生したが、俺の身体が元々無属性。その無に冠を被ることで、無を帳消しし光に変えたということか。どのみち闇と光が打ち消し合いそうなものだが」

だが実際はそうはならない。きちんとレメゲトンを詠唱できた。天界の王子の冠を被ったことで俺の身体は、闇と光が両立できている。

「絶妙なバランス加減で創造神様が創られたのです。全てはレハベアム様が被る前提で。なので光を得て闇をも使えるというのは当然です」

「俺は光の速さで回避ができたのだが、それも考えて創られたんだな」

「ええ、冠の力はレハベアム様の魔力を消費します。ただ光速移動は大きく魔力を使います。だからあの時、逃げるアンドロマリウスを追えなかったのでしょう」

「……! なるほど。光という一瞬で俺の魔力が根こそぎ使ったから、俺自身気が付いていなかった」

戦車や暗殺部部員の群れ、ブネの飼物かいぶつ、ロボット兵器、オロバス、度重なる消費の末、光速移動は一回しか使えなかった。魔力が完全に回復して、尚且つ詠唱を一度もしない状態で使う場合、だいたい七回が限度というわけだな。

「そして一番の目玉効果があります。それは、聖剣です」

「聖剣だと?」

俺が持つダーインスレイヴやオロバスが持っていたレーヴァテイン、それらをまとめて魔剣と呼ぶが、それに対を成すというのが聖なる剣、略して聖剣だ。読んで字のごとく光や聖の魔力を使う剣だ。聖剣の中で群を抜いて一番よく知られ、そして一番強いというのがエクスカリバーだ。

「はい、その天界の王子の冠には、聖剣、その名もレクスカリバーが使えるよう設計されています」

「レクスカリバー?」

エクスカリバーではなく、レクスカリバーか。魔剣には四つの剣があるが、同じく聖剣にも四つ存在する。その内の二角が、エクスカリバーと、俺に渡されたレクスカリバーというわけか。

「試しに左手を差し伸べて、魔法陣から出してみてください」

アプロディーテの言う通りに左手を差し伸べ、ダーインスレイヴを出す感覚で魔法陣を出す。だが、何も変化が起きず、レクスカリバーとやらは現れない。あるのは無の空気感のみ。

「……出ないぞ」

「あっれぇぇぇおかしいなぁ」

アプロディーテが首を傾げる。女神王ですらこの謎にどうすればいいのか分からないようだ。

「おい、どうすればいいんだ」

天界の王子として認められたはずではないのか。なぜ聖剣レクスカリバーが出ないのだ。創造神の意図が不明だ。

「……そもそも、俺はこの冠に認められているのか? 俺が王子として」

儀式が不要なほど、俺は無意識で冠の力の一部を咄嗟に使ってしまったが、説明を受ければ意識的に光速移動や聖域創りはできそうだ。だが、女神王が目押しする聖剣が出ないようであれば、ただでさえ超神聖的な冠。魔界育ちの下民、それも一般的な人間がすぐに認めてもらうにはなんとも。

「もしかしたらその可能性もあります。ただで被るだけでは聖剣が発動させないようにしたのか、創造神様の意図は不明ですが、何かしらの試練で使えるようになるかと」

つまり、聖剣レクスカリバーを扱えるのにはまだ時間がかかるというわけだな。聖なる剣と闇の魔術書の二刀流を再現してみたかったものだが、俺には魔剣がある。そう焦ることではない。

「その試練ってのも分かるのか?」

「いえ……申し訳ございません」

女神王アプロディーテが俺なんか魔界の一般市民に深く頭を下げる。

「ああいやいや頭なんか下げないでくれ。これを被らせてもらうだけでも十分。それに、聖剣が今が出せなくても、左手から光が勝手に溢れ出てくる」

俺の左手から光状の霧が出てくる。第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』の闇の形状変化のように、この光も矢や剣など形作ることはできそうだ。

「ほら」

光の霧が左掌に集結し、真っ白なレーザーソードを実際に形作り、その柄を握る。するとまるで空気を掴んでいるかのように軽い。それに、光とは掴めるものではないのに、確かに感触があり掴めている。要は第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』と同様、光の形状変化はマスターしたということだ。

「おおお流石ですレハベアム様」

「すっげぇカッコいい……その剣で悪魔斬ったら、もうあっという間じゃない?」

悪魔は光に弱い。この光の剣で悪魔の身体に振るえば致命傷だろう。下手したら輪切りもできてしまうかもしれない。ギロチンよりも恐ろしい切れ味となる。

「ああ。だが、出し続けている間は魔力が吸い取られてしまう。燃費も悪い。長期戦でこれを使うのは不味い。いざという時にこれは使わせてもらおう」

光の剣がバラバラに散り、それらの破片がまるでタンポポのように宙に浮き、舞いながら控えめに消えていく。空いた左手で冠を取り、装備を外すと途端に俺の肉体は光属性を失った。

 だが感覚は掴んだ。ダーインスレイヴを手に入れる前は第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』で闇の剣を使い、それを振るっていたが、操作はそれと一緒。むしろ詠唱無しで光の剣を出せるものだから、上位互換と言えよう。ただ、出している間魔力を使い続けるのは同じだから、それだったらダーインスレイヴで使った方がまだいい。厄介な悪魔が現れたときに冠を被り、天界の王子モードになって光を振るおう。

「完璧に使いこなせば、単独で魔界の各国の一つや二つ崩すことは容易でしょう。しかしレハベアム様の戦闘能力の源が魔力。一気に消費しては負いやられてしまいますね」

「ああ、そうだな」

左手の冠は魔法陣に置き、冠は魔力ダムの中で隠し入れよう。

「さて、あとは偽王国を倒すだけだが、アプロディーテたちは戦う準備はできているのか?」

俺の一番の目的である偽王国の国落し。俺が女神国軍を率いて偽王国に戦争を仕掛ける役割となる。当然、天使たちも兵士となり、戦ってくれるわけだが、あの乳の大きさやビキニという恰好。戦う時相当邪魔にならないか、いきなり心配だ。ビキニの紐でも斬られたら即効戦闘能力ダウン間違いない。

「私は戦えませんが、天使たちならもう準備万全です」

そう自慢げに言うと、後ろの天使たちが喜んで、各々が各武器を右手に持ち上げた。

「はい戦えますともっ!」

「我々ワルキューレの恐ろしさを悪魔共に教えて差し上げますっ!」

「今こそ闇の勢力に光をっ!」

「悪は許さないんだから。レハベアム様を酷くした悪魔は尚更」

戦意に満ち溢れ逞しいが、やはり戦闘服はまともなの来てほしい。ビキニのあの細い紐と言えば、乳の重さや耐久性がどうも頼りない。

「まさか戦闘服はあのままなのか?」

「ンンー、本当はビキニを着せたいまま戦わせたいのですが……実は少し問題がありまして」

流石のセクハラ女王アプロディーテもビキニで戦場に向かうのは好ましくないと、ちゃんと理解できて安心した。

「何せここの天界は女性しかいないものでして、ビキニでさえまだ着慣れていないんですよね」

「え?」

思わず俺の口から間抜けな一言が零れ落ちる。

「ええ? じゃあ、今まで全裸だったことですか?」

ウァサゴが試しに聞いてみると、アプロディーテは即答で頷いた。

「はい。だって、レハベアム様以外の男性招くことなんてまずありえませんから。ウァサゴさんは女性ですが、本来は善魔であろうとも天界へ来ること自体まず想定外。ここに来させることそのものが考えていなかったものですから」

善魔生徒会会長のウァサゴは本来、天界へ来てもらうことは無いはずなのに、俺が連れてきてしまったものだから驚いているのか。では天界は俺という男のみ招待するはずだったのか。尚更セクハラハーレムだ。

「破廉恥……」

「てっきり、城に白ビキニが超大量に置かれているものだから、普段も着ているものかと思っていた」

「あれはレハベアム様と同居生活するという可能性を込めて置かせていただきました。レハベアム様が来るまで全裸で幾億年過ごしていた私たちですが、ただでさえレハベアム様はまだ高校一年生。過激でエロい私たちといきなり会えばレハベアム様は驚かれるだろうと思い、ビキニを作ったのです」

俺が幼い頃から城の中には超大量に白ビキニが置かれていたが、同居生活するという前提でビキニを作り置きしていたということか。相変わらず破廉恥な生き物だ。もう怖い。

「いやいや驚きすぎて既に怖かった」

道理で天使たちは己の破廉恥に無頓着なわけだ。汗だくの俺に脱ぎたてホヤホヤのビキニをタオル代わりに差し出す天使もいるから、恥という感情すらない怖い生き物だと、とても慄いた。

「まあ、そういうことですので、まだ彼女らはビキニすら着慣れていないのです。それがいきなりビキニアーマーにチェンジすると、動きにとても困惑するでしょう」

「早めのうちに慣れさせてほしかった」

ビキニアーマーにする前提なのか。確かに恥ずかしいという感情がない天使たちなら、ビキニアーマーで戦場に向かっても、男共の視線に恐れず戦っていけるだろう。むしろ視線に夢中で隙をさらけ出してくれるに違いない。

「ウァサゴ、俺の我が儘に無理矢理付き合わせて申し訳ない。善魔生徒会の連中には俺からしっかりと説明するから、どうかウァサゴも一緒に戦ってほしい」

善魔生徒会メンバーには、俺が天界の王子となって偽王国を倒すという話はしていなかった。さっき、俺が偽王国を倒すという話にウァサゴは『早い』と反応した。とても困惑していることに違いないだろう。だがウァサゴほど頼りになれる戦士は他にいない。

「も、勿論戦うわよ。むしろ好都合だわ、魔界を平和な世界へ変えるという私の目標が遠ざかるどころか近くなったもの」

ウァサゴと俺の協定は二つ。魔界を平和な世界へ変えることと悪の意思の脱却。そのためには偽王国を倒し、平和の種を広めること。善魔生徒会の最終目標が少し早まっただけだ。

「……すまない」

「それに、アンドロ兄貴が裏歴史に寝返ったというのは間違いないこと。兄貴は魔界の負の平和のために戦うつもりだわ。だったらそれを止めるのが私しかない……!」

アンドロマリウスも平和のために戦う善魔。この兄妹ふたごは、目指す平和が対極の立場にある。奴はとても強かった。一度敗北したウァサゴは、再戦に強く闘志を燃やしている。

「レハベアム様の妹君メナリク様に、ヤロベアムが送った暗殺部の魔の手が当たる前に、一刻も早く偽王国を倒しましょう」

「ああ」

これで俺とウァサゴとアプロディーテの戦略関係図が成り立った。これからはウァサゴも聖魔戦で猛威を振るってくれることだろう。

「ああ、それともう一つ、アンリデウスは先ほど善魔生徒会メンバーに入れたということですが、アンリデウスはこちらの女神軍の隊長にさせます」

アプロディーテがカイトロワ・アンリデウス・サンソンをスカウトし、誇らしき隊長に任命。

「え、よ、よろしいのですか? アプロディーテ様……」

裏アプロディーテの命令と言えど、冠の強奪という罪は完全にアンリデウスの判断。更に血は悪魔であり、魔界の地でサキュバスに囲まれて生活してきた。そんなアンリデウスにとって自分は天使でありながら、天界においては憚れても当然と言えるほど異質な存在のはず。それを自覚したうえでアンリデウスは聞いて疑った。

「ええ勿論です。盗みという罪は確かに重いです。如何なる理由と言えども到底許されるべきではありません。ですが、アンリデウスは死神の血族。死神は本来、女神たちの中でも総合的な格は二番目であると、とてもとても高い地位と権利を持っています。なぜならば、悪しき民に罪を裁く処刑を決める神だからです。つまり、私と言えどもアンリデウスに処刑を下すことは不可能なのです」

死神と言えば悪しき神、不吉な神と聞こえそうだが、実はその逆。アプロディーテが言うように、神たちの中でも位が非常に高く、一番目が最高神であり、次いで二番目だと言われている。また、死神が下す死とは、一度死んで新たな誕生を司る意味もあるため、むしろ有難い神様なのである。場合によっては、アンリデウスが殺した悪魔たちは、あの世で改心する可能性だってあるほど。

「へえええそうなんだぁ」

「初めて女神の制度聞いた」

「あのアプロディーテ様でさえできないことあるんだ」

後ろの天使たちが『へえええ』と呑気に一つの知識を吸収している。

「っていうか、アンリデウスって死神だったのおおおおっ?!」

ウァサゴが派手に驚くが、俺自身驚きが隠せない。自身で天使だと言っていたはずだが。

「いえ、あくまで死神の血族であって、まだ正式に神様にはなっていないわ。認められたら晴れて死神になるけどね」

天使が死神になる制度があるのか。だが、ギロチンを出すアンリデウスの絶対的な死の能力において、死神の血族というのはダイナミックなるほどだ。

「なにより一番の理由は、アンリデウスもエロ可愛いからです」

「「はっ?」」

アプロディーテの一番の理由に、もはや驚きすら飽きてしまうほど。それにアンリデウスは頬を赤く染めて照れ始めた。

「えへへそんな……」

「この天界において、バスト百六十センチは女神の領域。ほら、他の天使たちに比べて大きいでしょう?」

天使たちやサキュバスたちのバストはせいぜい百十センチほどだが、確かにアンリデウスが群を抜いて一番大きい。なんならアプロディーテよりもちょっと大きいぐらいだ。流石はアスモデウスの天使バージョン。アスモデウスもバストが百六十センチあるからな。

「こんなエロを究極に体現している死神に罪を着せる方が恐れ多いですわ」

そう言うと他の天使たちが一斉にアンリデウスに集まり、群がった。

「あああもう大きいっ!」

「なんてこんなムチムチなのっ!」

「張りがあるのにマシュマロみたいに柔らかい……!」

「ビキニの方がエロいわ!」

サキュバスたちに好かれる才能がまさか天使たちにも好評とは。さっきまで泥棒だと批判していたのに、思いっきり手のひら返しでアンリデウスも困惑している。いきなり知らない天使が隊長に任されて非難でも浴びせられそうなのに、女の醜い喧嘩は文化として存在しないのだな。平和だ。

「と、いうことですので、アンリデウスは私たち天界が大事に大事に可愛く預からせてもらいます。勿論、レハベアム様たちの仲間だということは忘れませんので」

「お、おう……」

サキュバスにせよ女天使たちにせよ、どうも淫女の群れというのは仲良しらしい。普通はその逆で仲が悪そうだが、一人の男子を群れで好む習性があるサキュバスと女天使は、意外と仲良くなれるかもしれない。もしそうなると俺の命や肉体がどうなるのか、とても恐ろしくてよちよち眠れなさそうだ。

「さて、じゃあ俺たちは魔界の聖城へ戻る。もし何かがあれば連絡してくれ」

天使に囲まれ可愛がられるアンリデウスをほっといて、俺とウァサゴは王の間から廊下へ向かう。

「レハベアム様、絶対に一日に一回は犯されにきてくださいね」

そういうセクハラ発言は無視だ。

「あ、レ、レハっ! サキュバスたちのも絶対に犯されてねっ!」

囲まれて行動が出来ないアンリデウスも、ついで感覚でサキュバスたちの性欲晴らしを再度注文だが、それも無視。もう二度と集団逆強姦はごめんだ。

 俺とウァサゴは廊下の奥にある黒い台を踏み、光に包まれたあと、魔界へ戻っていった。

 およそ五秒ほど、魔界の聖域、城前広場の白い踏み台に戻り、台から茂地へ降りる。

「しっかし、まさかこの森まで、その創造神? が用意してくれたのね」

「ああ、まるでこの森そのものが異世界だ。この森の南側に海があるとは俺も知らなかった」

森の中に海。まるで意味が分からないような話だが、そもそも魔界にとって聖域とは、陽光が差して光に満ちている空間なら聖域と呼べるのほど、到底悪魔が立ち寄れる場所ではない。そのうえ、森の中に侵入者が入ると、木々が自動的に蠢きだし、迷いの森と化す。最後は、疲れ果てた者を食す恐ろしい森なのだが、要は俺を護ってくれる場所でもある。それは魔界全土に安全地帯が無い環境の中、城と聖域のみならず迷いの森まで用意してくれた創造神は、なんと、この広場から南の方向に、海や浜辺まで創ってくれたそうだ。更には、当然のように森の中に海というのはとても地形的におかしいはずなのに、森の外側には海は無く、そもそも外側が道路になっている。だから、この森に入るといつのまにか異世界へ移行してしまっているのだ。当然、この森は俺が許す者以外立ち入ることが難しいであるため、簡単に異世界へは入れないが。

「淫魔街やサキュバス専門学校がもう崩壊しまくっているし、何より制服がビキニのサキュバスたちにとって、浜辺という避難所ができてよかったわね」

どこまでも用意周到な天界の母だが、どのみち森の所有者である俺がアプロディーテに教わるまでは知らなかったため、誰の一人も立ち入ったことがない未開地であった。そこを利用しないかと考えた俺は、先の戦争によって淫魔街とサキュバス専門学校がほぼ壊れ、住む場所を失った淫魔たちに、その浜辺へ引っ越しの案を出した。すると男淫魔インキュバスたちはともかく、ムチムチな黒ビキニを着ているサキュバスたちが大いに喜び、はしゃぎまくった。淫魔街の全住民は失った街を背に向け、森を越え、聖域広場から南の方向を進んだ。ナイスバディなサキュバスたちは、初めての海らしく、地平線の彼方が続く海と未開浜を気に入り、避難所、及び本拠地とした。

 まさか天界の母である創造神が用意してくれた海を、悪魔、それも淫魔に譲るとは思いもしなかっただろう。当然アプロディーテも険しい表情を浮かべていたが、慈悲を持って許してくれた。サキュバス専門学校の生徒会長のアンリデウスも、サキュバスたちに身分を騙していたとはいえ大事に可愛がっていたものだから、サキュバスたちの安全圏が確保できてホッと安心してくれた。淫魔の占拠地が森の海ならば再度悪魔の手が届くことも無かろう。これでやっと、淫魔たちに平穏が戻ってきた。アスモデウスの依頼も無事に完了できたわけだ。

 すると、南の方向、淫魔の海へ続く森の出入口からフェニックスが帰ってきた。

「おかえり、フェニ」

「……改めて言おうか、お悔やみ申し上げるって」

「……うん、ありがとう、レハ」

アスモデウスの死体は淫魔の浜辺に埋葬したようだ。墓を建てて、フェニックスはお参りに行ってくれた。

「ちゃんと言ったよ、墓の前で。『サキュバスたちはきちんと護れたからね』って。『だから休んでね』って」

依頼は完了したものの、当の本人が暗殺部の襲撃によって殺されてしまった。それも、サキュバス専門学校初の男侵入者に犯されたのだ。とても許し難い不名誉な死を迎え、フェニックスは今でもその瞳に強い怒りと憎しみを染め、そして悔しさと悲しさの涙を流している。

「ああ。このような悲劇が当たり前のように各地で繰り返されている。そして、人間界にもだ……。一刻も早く、魔界を変えないとな」

ウァサゴとフェニックスは力強く頷く。

 迫りくる聖魔戦の前に、偽王国の国盗り大作戦や人間界進出など、俺にはやることが山ほどある。善魔生徒会の最終目標もいよいよ近くなってきたわけだが、ゴールに近づくほど過酷な試練が俺たちを襲う。今回の戦争ですら、俺やウァサゴ、アンリデウスにフェニックスは、己の無力感や力不足に悔やんだだろう。だが、それが糧となる。悔しさをバネにして、また強くなればいい。だから俺はまだ、前に進む。魔界を変えるため、メナリクを救うため、ヤロベアムという悪魔の俺を倒すため、人間界を護るために。

「ところで、レハとウァサゴ先輩とアンリデウスさんは天界に行ってきたんですよね? どうでした?」

俺の妹メナリク救出作戦や偽王国国盗りの詳細こそは話していないが、アンリデウスが善魔生徒会に入ったことや正体は天使であること等々、今回の淫魔護衛依頼の裏側の詳細は皆に話しておいた。一般市民からすれば、知り合いや仲間が天界へ行ったという話は当然聞いて耳を疑うだろうし、にわかには信じてもらえないだろう。だからフェニックスは俺たちが天界へ行った感想を求めてくるのは分かっていた。

「……悪いが、今は話せない。いや、話したくないな」

「そうね、あんな破廉恥。話すだけで嫌になる」

俺たちの反応に、天界の人的環境を見ていないフェニックスは頭にはてなを浮かべる。首を傾げ、意味が分からないような表情に。そうだ、意味不明でいいんだ。世の中、意味が分かってはいけない話があるのだ。

「……ん? どういうことなんです?」

「話したくないと言ったら話したくない」

と俺が言った瞬間、背後の白い台に突如として太い光の柱が降りてきた。

 振り向くと、白い台には女神王アプロディーテが魔界の聖域へ降り立った。この世で一番お偉い王たる存在が魔界へ降り立つことなんてあってはならない。いったい何事だ。

「ううわなんですこの恰好……」

フェニックスは白い光の柱やその登場よりも、アプロディーテの破廉恥な恰好を先に反応し、ドン引きしている。まるで一億年意味が分からない事が、やっとこさ謎が解けたかのような、悟った表情に。

「レハベアム様……っ! 大変です」

母性という感情がそのままマズい方向へ具現化したような女神が、慌ただしく俺に走り寄った。そのとき、大きな乳がブルンブルンと大地震のように揺れ揺れ、それを見ていたフェニックスの瞳が、まんまと釣られている。

「ど、どうしたんだ。そんなに慌てて」

創世記時代から祀られ生きているほどの女神王が驚きに満ちるとは、とんでもない事が発生したようだ。

「アムドゥシアスが遂に……日本へ着いてしまいました。魔の手がいよいよメナリク様に接近していきます……!」

「な、なに……!?」

二ホンという国は知らないが、そこにメナリク様が住んでいたというのか。その国に悪魔が到着したということか。今から国落し始めても到底間に合えそうにない。



           ~淫魔護衛編 完~




























































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































「かぁぁどうしよ書き終えちゃった淫魔護衛編……!」

私こと語聖 澪亜が書く『ソロモン校長の七十二柱学校』の第四章、淫魔護衛編を書き終えた。いや、ここは終えてしまったとでも言おうか。この状況の中、書き終える喜びがむしろ恐怖になってしまう。

 書いている間はたまに優しい気配が背後から見守っている。が、その逆、書いていない間は邪悪な気配が睨みつけられている。悪霊と呼べるほどだ。

 私の一言をガン無視するお隣の小説家、『ニュウエルフの性姫騎士団』作者の草村 有紗は黙々と指を踊らせて執筆する。

 お隣のお隣の剣ヶ道 紋刃は勿論、今日から私の部屋に避難し、書くこととなった男作家の、『電卓の武士』の武藤 武。『夢見る乙女の悪夢旅団』の夢見 時朝。計五人の作家が集まってしまった。全員、ひたすら黙々と自分の作品を仕上げるために執筆を続けている。

「……皆集中してるわね……」

「当たり前でしょ。ちょっと黙ってて」

私のうるさい独り言に苛立つ隣の草村 有紗は冷たく注意。

「そ、それもそうね。作品に対する集中力は勿論だけど、書かないと悪い気配に睨みつけられちゃうものね」

この五作家の全員の悩みが、執筆の休憩中や書いていない間は、背後から何かしらの悪い気配が睨みつけてくること。私たちの集中力は人より一倍凄まじいのだが、一度途切れてしまえばその間ずっと悪い気配が居座り続ける。

「そういうことだから書き続けなさいよ。こっちまで不愉快じゃない」

「そうなんだけど、肝心の第五章のシナリオまだ考えてないのよ」

淫魔護衛編というシナリオを書き終え、最後にメナリク・モーヴェイツというキャラクターが住む日本という国に、悪魔のアムドゥシアスが着陸したというところで第四章は完で区切った。だから必然と、今度はメナリク・モーヴェイツを中心とした、悪魔が住み着く人間界が舞台の第五章を書く予定。だが、肝心のシナリオはまだ考えていないのだ。

 このままでは背後から悪い気配が睨んでくるが、この私が手を休めなければ気配は逃げ、その逆の優しい気配が見守ってくれるときがやってくる。だから私たち作家は、気配をどうにかしない限り休む間もなく書かなければならないのだ。

「はぁ? アンタ馬鹿じゃないのっ! アンタが私たちを招いておいてアンタが書かないと私たちまで悪霊に睨み続けられるじゃないっ!」

苛立ちから怒りへ昇華させ怒鳴り散らす有紗。その怒鳴り声は他の作家の集中力までへし折るはめに。

「お前らうるさいぞっ!」

怒鳴り声には怒鳴り声で対抗し、お前までうるさいぞとブーメラン発言をする『電卓の武士』作者の武藤 武。筋肉モリモリの肉体マッチョだ。

 人間界を囲うインターネットの蜘蛛の巣。いわゆる電脳世界は三つの層に分かれる。最下層は妖怪が集う黄泉国ダークウェブ、中層は電子が集う葦原中国ディープウェブ、最上層は神が集う高天原サーフェイスウェブ。主人公は黄泉国ダークウェブ出身の鬼で、身分を隠して警察官となり、その地で悪事を働く妖怪たちを取っ捕まえるという物語になっている。

 彼曰く、『電卓の武士』というタイトルの中に入っている電卓とは、優れた電子であるということであり、計算に使う電卓ではないようだ。

「いったい何事ですか、ちょっと」

その隣、慌ただしい私たちを遠くから見守る『夢見る乙女の悪夢旅団』作者の夢見 時朝。太っちょの体系の上から電子アイドルの姿が様々なポーズをして貼られている。

 二人はネット上のカップル。まだ顔も知らない仲であるが、次の日に現実で会いデートしようと約束し、夜に瞼を閉ざした。だが、突如として〝∞〟と呼ばれる夢を見てしまい、女性と男性は夢世界へ落ちてしまった。二人は記憶を失ったが、女性はデートの約束を思い出し、それを果たすために夢世界を脱するために冒険する物語となっている。

 武藤 武や夢見 時朝は私や剣ヶ道 紋刃、草村 有紗と同期の作家で、私たち五人の作家はそこそこ名が売れている。そしてその二人も、ここ最近私たちと同じく、書いているときの気配と書いていないときの気配に悩んで、一人では心細いから私の家に避難し、共に執筆活動している。

「いやね、澪亜がシナリオ思いつかないから書けないっていうの」

草村 有紗が座る椅子を回転させたまま武藤 武らに振り向き、愚痴をばらまく。

「ちょっとそんなこと言わないでよ。まだだいたいがあるだけで、ここからプロット作る予定なんだから」

プロット。それはいわゆるシナリオの設計図。この後の展開はどうするとか、ここの戦いはどんでん返しをさせよう、この場面はどうヒッカケやトリックを仕掛けよう、だとかシナリオを良くしていくもの。設計図がないと建物が作れないように、シナリオにもそれがないと、例えば前期と後期では矛盾が発生したり、見え見えの後付け設定が発生したりしてしまう。

「その……実は私も」

ここで沈黙を破り騒動の横やりを控えめに口にする剣ヶ道 紋刃。

「紋刃、まさかアンタも……」

草村 有紗が嫌々と聞くと、剣ヶ道 紋刃は素直に「はい」と答えた。つまるところ、剣ヶ道 紋刃もシナリオ制作に手が止まってしまったということか。

 すると剣ヶ道 紋刃はこっそりと私にウインクしてくれた。なんと可愛く健気なウインク。はっ、まさか紋刃はシナリオに手が止まってしまった私に避難が集中しないように、紋刃まで嘘を言ってしまったのか。

 紋刃の圧倒的優しさにもう涙が溢れてしまい、とても女神としか思えなくなってきた。もう、必死に拝むように両手を合わせ、頭を下げる。

「アンタたちなにやってるのよ。紋刃はウインクしだすし」

私たちの意図会話がバレバレだったか。だがここで剣ヶ道 紋刃は反撃に転じ、草村 有紗のパソコン画面を堂々と覗き込み、少しだけ罵った。

「あっれぇ? でも有紗もフレイくんとスキールニリちゃんのイチャイチャシーンが一時間ずっとそのままですねぇ。一文字も加わっていないというか」

すると有紗は顔面を赤々と染め、非常に恥ずかしがる。サボりがバレてしまったことで、有紗は強気な態度から一気に慌てて、言葉がしどろもどろに。

 フレイとスキールニリとは、草村 有紗が書く作品『ニュウエルフの性姫騎士団』の登場人物である。フレイは王子で、スキールニリは女騎士団長兼臣下。彼女が主人公である。この作品の醍醐味、もといほぼと言ってもいい定番シーンが、スキールニリや他の女騎士が主従関係を忘れ、王子のフレイを性的に嫌がらせをするというものであり、R十五指定を受けてしまった。多くの子供読者がこれを見て性欲に目覚めたという健全な作品だ。

「ちょ、ちょちょとっ! 人のパソコン勝手に見ないでっ! その、わ、私はその……」

強気は瞬く間に崩壊し、有紗が必死に言い訳を探している。

「おめぇもじゃねぇかっ!」

怒鳴り気味のツッコミをかます武藤 武。草村 有紗はもはや口から何も言い出せなかった。

「ご、ごめんね有紗。余計な事言っちゃって」

「あ、謝らないで。事実悪いのは私だし」

「でも、そんな強気で頑固な有紗と、有紗が書くエッチな作品の釣り合って無さがもう可愛くて可愛くて……! つい弄っちゃうんだ!」

「うっさいわねこのドSっ!」

だが、この私の一言が原因で、もはや執筆する空気ではなくなったことは言うまでもなかった。

「ねえ皆。集中力が途切れたことで、悪霊に睨まれるのを逃げるついでに提案があるんだ」

ここで太っちょのオタク感丸出しの夢見 時朝が椅子から立ち上がった。

「僕たち作家が苦労しているのはツクヨレーネ校長の仕業なのは間違いない。それに、もうすぐ卒業式だ。ということはつまり、ぼくたちクリエソウラーが犠牲となり、クリエソウターが始業式を迎えることになる」

夢見 時朝の言葉に、皆は沈黙の頷き。

「どのみち僕たちは殺されてしまうんだ。極極 極極くんに。いや、殺されて当然のことをしたんだ。彼の怒りはごもっともだ。僕たちクリエソウラーは神でもあるまいし。そしてクリエソウターもこの地に降り立つのも時間の問題。僕たちクリエソウラーの最期のお仕事は、僕たちが宿すクリエソウルを誰に譲るかってことだ。それを決めるために、今から仁の翼高校に行かないか?」

夢見 時朝の真剣な案に、皆は迷いなしの衆意一致。武藤 武が立ち上がった。

「そうだな。それに、俺たちのクリエソウルは他の作家よりも輝きが高い。極極 極極の野郎に殺されてもシャーねえ罪を背負ってんだが、あの野郎に譲る気はねぇ。歴史という人類最強の物語が今度も続くように、アニメーションという文化を閉ざさせる気はない。それだったら、未来に花を咲かせるかもしれねぇ作家希望士に渡してぇな。そして伝えるんだ。『アニメーションは人を笑顔にする』ってことをな……!」

武藤 武の熱い意気込みには、剣ヶ道 紋刃、草村 有紗も賛同し、立ち上がった。勿論この私も不満点一切無しの気持ちで立ち上がる。

「……わがまま言うなら、私のキャラクター、レハベアム・モーヴェイツにきちんと謝罪したいな。この私が、『ソロ校』を書いてごめんねって」

レハベアム・モーヴェイツは、私が書く小説『ソロモン校長の七十二柱学校』の主人公だ。

 魔界にただ独り、人間が存在し、彼は長年悪魔に虐げられてきた。だが、彼はめげず、人間界へ帰るために、異世界へ渡れる卒業証書を得るため小学校から通い、勉学に努力を積み重ねてきた。そして高校へ進学したが、善魔生徒会の強引なスカウトと蠢く暗殺部、それに協力する謎の魔王によって学校生活が大きく狂わされる物語である。

「当然間に合わないだろうね。なにせ極極 極極に殺されるのは明日かもしれない。明後日かもしれない。下手したら今日かもしれない。どのみちキャラクターがクリエソウターになるとき、始業式が始まる前には私たちはもうこの世にはいない。会ってきちんと謝れるのはありえない」

「……それもそうね」

キャラクターと人間が会えるわけがない。人間がアニメの世界へ行けるわけがない。その逆も然り。この私が会えるはずもない。きちんと謝れないまま、私は死ぬことになる。そう思うと私の好きなキャラクターには申し訳ないと、己の罪を思う。

「……私は残るわ」

ここで草村 有紗が口を開いた。皆は草村 有紗に注目し、次に言葉を発する。

「私のクリエソウル伝承者はもう決めている。八村 白奈っていう、高校地下集団逆強姦事件の張本人よ」











         ~第四章 本当に完~


投稿が遅れて申し訳ありません……!!

 はい、三話送らせていただきました。これにて淫魔護衛編が終了いたしました。ここまで読んでいただき、口から心臓が吐き出るほど嬉しいですっ! これからも頑張ります(っていうか投稿頻度上げたい……)

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