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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第死章 淫魔護衛編
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五十九話 空へ帰還

 アンリデウスを連れ、暗殺部本部室を抜け、サキュバス専門学校に戻った。するとアンリデウスは涙をたくさん流しながら、要塞や学校の有様に泣くが、それはむしろ嬉し涙であった。「よく持ちこたえてくれた」「よく可愛い生徒を護ってくれた」と繰り返し、そしてサキュバス生徒たちと再会。アンリデウスは必死に力強く、一人一人の生徒を抱きしめ、生きているぬくもりを何度も確かめた。

 死者はアスモデウスのみ。それ以外は全員無事。よく三億人のサキュバスを護れたものだと思える。それほど要塞の鉄壁の壁が頑なに守ってくれた証。俺も要塞には少し誇れる感情が出た。

 こうしてサキュバス専門学校に平穏が戻ってきた。だが、淫魔街や要塞、学校に運動場、どれもこれも傷だらけ。淫魔街全体やサキュバス専門学校が完全に復帰なれるまでは相当な時間を要するだろう。

「さて、アンリデウス。そろそろ行こうか」

サキュバス同士の抱き合いを近くから見守っていたが、あまりにも時間がかかりすぎだ。生存者を抱きしめ、その体温を確かめるのは分かったが、そろそろ立ち続けるの疲れた。

「ええそうね。では行きましょうか。懺悔ざんげに」

そう言うとアンリデウスは引き締まった緊張感のある表情に。

 今から俺は、冠を盗んだ張本人のアンリデウスと、善魔生徒会長のウァサゴを連れて、天界へ冠を持って帰る。冠を被ることで俺は天界の王子となったが、一応儀式は終えていない。それも、アンリデウスの口から懺悔は勿論だが、重大な話があると言い、俺たちのリーダーであるウァサゴも連れていくことにした。

 サキュバス専門学校から俺の城の聖域へ移動すると、中央に天使の翼が生えた白い台が置かれていた。これを三人で踏むと、台から白い光の柱が現れ、俺たちを包み込み、超光速で天空へまっすぐ飛んで行った。

 魔界と反対する光の創世記時代。天界の聖城内へ到達。すると白ビキニを着た卑猥な恰好の爆乳天使たちがぞろぞろと現れ、俺たちを迎えに来てくれた。

「レハベアム様お帰りなさいませ!」

「やったレハベアム様がお戻りになられた!」

「しかも冠を持って帰って……!」

「よくあの地獄からお戻りに……!」

各々が凄まじい歓喜と感動に集中し、王の間へ退けてくれない。

「ええっと……その……この人たち何?」

ウァサゴにもきちんと天界へ行くと言ったが、この卑猥な恰好をした者たちを天使だと見えていないようだ。

「天使だ。白い翼は私生活で邪魔だから隠してるんだとさ」

「ええ天使? ってか、なんでビキニなの?」

「さあな」

俺とウァサゴのお喋りをよそに、天使たちはアンリデウスに注目し、睨みつけている。

「よくもぬけぬけとここにやってきたわね。ドロボー」

「懺悔しに来たのかしら? 言っとくけど絶対に許さないわよ」

天界の王子の冠を盗んだサキュバスのアンリデウスに猛烈な批判の嵐。アンリデウスは何も言えず、ただひたすら反省の念を抱き、黙っていた。

「待てお前ら。アンリデウスは懺悔が最大の理由だが、本当の目的をアプロディーテに話させるつもりで連れてきたんだ。とりあえずそこを退け」

「本当の目的?」

「まさか、盗んだ挙句アプロディーテを暗殺しに……!」

「違う。聖魔戦についてだ。以降、アンリデウスは善魔生徒会のメンバーになる。懺悔が許さなくても処刑は俺が許さない」

アンリデウスは獄立ゲーティア高等学校の生徒ではないが、善魔生徒会の新メンバーとして加えることになった。理由はアンドロマリウスが言っていた聖魔戦というキーワードが中心の重大な話がある。

「善魔生徒会に……!?」

「いったいどういうこと……?」

ざわめき戸惑う天使たちだが、とりあえず左右に列を並び、俺たちは王の間へ続く廊下を渡る。

「かぁぁぁここが天界のお城……なんとも神聖的な豪壮な美しさ」

太陽の温もりが好きなウァサゴは天界の光に包まれ、城の内部の作りに感動している。

「まともな恰好をしていればまだよかったんだがな」

爆乳を強調させたいと言わんばかりにビキニを着て、それが俺を中心に群がっているんだ。サキュバスにせよ天使にせよ、爆乳になったらビキニを着て男を見せびらかしたいのかこいつらは。

 王の間に着くと、ウァサゴは目の前にそびえ立つ高い高い階段に驚く。アンリデウスは相変わらず緊張のある表情だが、高い階段には一切驚かない。

「ウァサゴ、あの階段から現れる女王の恰好には一切驚くな」

「え?」

ウァサゴの間抜けな一言が零れた瞬間。

「ようこそ帰ってきてくれましたわねっ! レハベアム様」

物凄く高い階段の天辺から、何者かが高く跳び、床にダイナミック着地。その者は、ハート形のニップルシールを乳首に貼り、その上に透明なビニールビキニを着て、下半身はパンツを履いてないまま上からパレオを着た、女性しかいない天界の女神王。その名もアプロディーテだ。性格や容姿に関してはどう足掻いても十八禁レベル。高校生の俺にはきつい相手だ。

「うわなんて破廉恥な恰好……」

第二ボタンまで開けて谷間を見せびらかしている破廉恥なウァサゴだが、その破廉恥さにドン引きしている。破廉恥さを嫌う、恰好が破廉恥なウァサゴにとってアプロディーテは最も嫌う相手だろう。

 アプロディーテは着地からの低い姿勢からすんなりと立ち上がり、相変わらずの母性溢れる笑みで俺を見詰めてくる。

「サキュバス専門学校に侵入し、更には暗殺部の進撃を追い払い、更に王子の冠を被り、司令官を倒した。もうこれだけで映画一本作れるほどよく頑張ってくれましたね」

「まあな。だが御託はいい。それよりも大事な話がある」

「ああん……! レハベアム様の多大な功績を自ら御託を言えるその冷徹さ……! そのクールさが私の心を鷲掴みに……!」

アプロディーテが謎に感動すると、後ろに立つ爆乳天使たちも同様に感動して、中には気絶する者まで。隣のウァサゴの表情には、もうこれでもかとドン引きして、引きつっている。

「俺が天界へ冠を届けに来たのは勿論だが、このアンリデウスから重大な話がある」

「重大な話? ああ懺悔のことですね」

「懺悔はもはやどうでもいい、ほれ、アンリデウス」

アンリデウスの背を軽く叩き、緊張を少し解いてあげる。アプロディーテはアンリデウスを静かに見つめ、アンリデウスが自ら何を語るのかを待っている。

「……敢えて、お久しぶりですと申させてもらいます。アプロディーテ様」

冠を盗んだ泥棒のアンリデウスが冠の管理者であるアプロディーテを、敬意を込めて様と呼んだ。

「様?」

当然、アプロディーテは何のことやらさっぱりと疑問を口にする。

「実はな……こんなことがあったのだ」

それは今から大きく過去に戻り、爆弾魔の侵入者処刑が完了した後のこと……。






「……この私を、あそこに連れてって」

「あそこ?」

「ええ、そこでその女王に私から言いたいことが。この私の、本当の計画を」

このアンリデウスにはまだ計画が練っていたのか。どうして悪魔は計画力が高いのだろう。悪事を進める事に計画力をフルに使う姿勢は、他の勉学や志に使えないのだろうか。

「まず、あそこってどこだ?」

「天界よ」

天界の王子の冠を盗んだアンリデウスが自ら天界へ行きたいとは、これはどういう風の吹き回しだ。これがもし悪意のある計画ならば、天界へ行き再び犯罪をされると厄介だ。

「なぜだ。まさか懺悔でもしたいのか?」

「一応アプロディーテ様に謝罪したいところもあるのだけれども、実はそれはもう一人のアプロディーテ様からの依頼でもあるのよ」

「もう一人の、アプロディーテ?」

アプロディーテにもう一人がいるのか? ただの冗談で言っているような表情ではない。かなり深そうな展開になってきたな。

「そもそも私の正体は、裏歴史という、表と裏に分かれるもう一つの歴史からやってきたアスモデウス。それがこの私、カイトロワ・アンリデウス・サンソンよ」

「裏歴史? もう一つの歴史? どういうことだ」

とても理解できない謎の言葉を真面目に話すアンリデウスに、話がついていけない。だがアンリデウスは俺の戸惑いを無視し、次を語る。

「信じられない話だろうけども、この宇宙には、表と裏の二つの歴史があるの。ここが表歴史で、もう一つが裏歴史に分かれる」

「なぜ歴史が二つある。そんなこと創世記からある天界ですら知られていないことだぞ」

創世記から存在する天界は各世界へ視線を飛ばしており、敵の位置や私生活まで覗き見して情報収集が捗り、まさに全知全能だ。ただヤロベアムの居場所が分からないという点があるが、歴史が二つあるという話はアプロディーテから何も聞かされていない。

「歴史がなぜ二つあるかって? その基準があなたのレメゲトンの秘密にある」

「俺の……レメゲトンが?」

「レハベアムは、もう一つのレメゲトンに心当たりはない?」

「……ッ!」

その発言に俺は咄嗟に鳥肌が立ち、瞬時に脳内分析でその裏歴史というワードを強く理解した。

「そう、歴史が表と裏が存在する時点で、アプロディーテ様には二人いて、私がアンリデウスとアスモデウスに分かれ、二つと存在しないはずのレメゲトンがもう一つ実在し、それを扱える魔術師も二人……ヤロベアムという悪魔が、魔王として栄えている歴史。それが裏歴史よ」

「ヤロベアムが……魔王として……だと?」

ヤロベアムは自らを歴史を越えし魔王と呼んだ。今まで意味がさっぱり理解できなかったが、今の話で確固たる根拠も踏まえて理解できる。意味はそのままであり、ヤロベアムは裏歴史の魔王で、表歴史に越えてきた、ということか。

「そう、そして、この私は裏歴史から表歴史へ越えてやってきたアスモデウス。つまり、裏が私で、表がアスモデウス。私ことアンリデウスとアスモデウスは、歴史上表裏一体の同一人物なのよ」

このアンリデウスもヤロベアム同様、歴史を越えてやってきたアスモデウスというわけなのか。

「だから顔も似ているのか?」

「ええ、私たちは姉妹なんかじゃない」

「でもなぜ肌の色が違う」

「同一人物とはいっても完全に同じ姿は限らない。コインだって表と裏じゃ模様が違うでしょ? アスモデウスの身体は悪魔であって、実は血は天使。悪魔と天使のハイブリッドなのよ」

「血が天使、だと?」

「ええ、じゃあこの私は? 身体は天使で血は悪魔。私たちの肉体と血が交互に違うのよ」

そう言うとアンリデウスの背後に白い天使の翼が生えた。悪魔に白い翼の翼は生えることはまずない。このアンリデウスは悪魔と見せかけて、実は天使だったと他のサキュバスたちもろとも欺いていたのか。天界や混浴の儀式まで知っているのも納得がいく。

「なるほど、だから聖なるベールを上から触れるのか」

「ザッツライト」

肉体は悪魔、血は天使のアスモデウスと、肉体は天使、血は悪魔のアンリデウス。その体質や血にはくっきりと闇と光に分かれている。肉体が闇でも血が光属性ならば、本来弱点である聖なるベールを光で打ち消し、弱点をカバーしているというわけか。だからアスモデウスとアンリデウスは俺を上から犯すことができる。まさにダイナミック理解だ。

「レメゲトンは魔王の魔術書と呼ばれているだけあって、その血筋の者しか使えない代物なんでしょ? ここで問題。ヤロベアムが裏なら、表は誰か分かる? 賢いあなたなら不正解はありえないわ」

魔王がただ一人とされ、同時にレメゲトンも一つとあるはずの伝説の魔術書が二つ存在し、それを扱えるヤロベアム。レメゲトンには魔王の血を継ぐ者が必要条件だ。そしてたった今歴史が二つあるという点から、もはや、必然と表がいったい誰なのか、シンキングタイムが必要がないほどだ。

「俺……」

暗殺部を使い俺を暗殺しようとする、歴史を越えし魔王。その正体は、俺が悪魔として生まれた存在。俺とヤロベアムは、歴史上表裏一体の同一人物だ。

「そう、あなたは人間の身体でありながら悪魔の血を引いている。対してヤロベアムは悪魔の身体でありながら人間の血を継いでいる。ヤロベアムは、あなたが悪魔として生まれた存在よ」

「俺の血が悪魔……そんなこと……いいや、必然だな。俺がレメゲトンを扱えている時点で、体内に流れる血は悪魔なんじゃないかと薄々思っていたところだ」

血も涙もない外道な悪魔の血が俺の体内に流れていると思うとゾッとするが、薄々気が付いていたのだ。前魔王はソロモンである以上、魔界を統一し支配する悪魔こそが魔王ではないかと。他の種族者が魔界を支配することは不可能。そして魔王の血と魔術書レメゲトンを継ぐ俺は、肉体は人間でありながらレメゲトンを扱えるということは、血は悪魔ではないのかと。

「だがおかしいな。ヤロベアムは俺と逆で、悪魔でありながら人間の血を継いでいるのだろう。それならばなぜレメゲトンを扱える。レメゲトンは魔王の血が必要のはずだ」

魔界を統一した魔王が悪魔ならば、そのご子息でレメゲトンに許される悪魔の血を継ぐことが条件。しかしヤロベアムに流れる血は人間だ。魔王の血を継がない者がレメゲトンに触れると生命力を奪うと同様、ヤロベアムにも同じことが起きるはずだ。

「それに関しては分からなかったわ。何せ私は裏歴史で住んだただの一般住民。魔王ヤロベアムがレメゲトンを扱えるのはなぜか、その真相を掴むことはできなかった」

フェニックス暗殺やグラシャ拉致も、ヤロベアムが裏から手を貸し、第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』でサポートをした。奴がレメゲトンを扱えるのは確か。だが人間の血を継いでいる以上、触れると生命力が奪われるのが普通だ。だからヤロベアムは極めて異常な存在だ。

「ヤロベアムは暗殺部を使って、あなたを殺そうとしている。それがいったい何の企みが動いているのは私も謎だけど、とにかくヤロベアムの行動が怪しいから、私は裏歴史のアプロディーテ様のご命令で表歴史にやってきた。それが私の正体。サキュバス専門学校の生徒会長というのは、この表歴史で過ごすのに使っているいわば身分隠しね」

裏歴史の天使であるアンリデウスは裏アプロディーテの命令で、ヤロベアムの真相を暴くべく表歴史にやってきた、というわけか。

「じゃあ、なぜ冠を盗んだんだ? 俺を淫魔街の王子にさせるというのはいったい……」

「淫魔街の王子にさせるというのはアスモデウスの考えよ。私は端から、あなたを天界の王子にさせるために動いているわ。きっと、表アプロディーテ様からもそう仰られたはずよ」

「淫魔街の王子なのはアスモデウスの方か……! え、じゃあアンリデウスは裏アプロディーテの命令で冠を盗み、俺を王子に……?」

「盗みは私の独断だけど、裏アプロディーテ様の命令はまさにその通り」

「表アプロディーテと裏アプロディーテの考えていることは同じか。いやはや歴史が違えど似た者以上の性格だな」

表歴史と裏歴史の同一女神王の考えていることが同じなのは面白い。偽王国を滅ぼすことと、俺を天界の王子にさせることで俺の心の傷を性的に癒したがっていること。歴史を越えても考えが同じなのは、流石は表裏一体の同一人物だな。或いは単純な性格なのやら。

「わざわざ盗んだのは、アスモデウスを使ってあなたに直接会う口実を作るため。私がアスモデウスに会う前から、アスモデウスはレハベアムを狙っていた。その性欲の矛先を敢えて共感し、利用した。全てはレハベアム自身が私の元に来るように」

「なぜそんな面倒くどい招き方でしたんだ。もっと別の方法があっただろう。お前が俺に会いに行ったり、盗むのではなく、直接表アプロディーテに話つけてきたり」

盗む行為は悪魔と同じことやっていることだ。天使が行うような真似ではない。

「その二択は不可能だったの。もしあなたがヤロベアムと同様に邪悪に染まっている存在か否やを確認する必要があった。会ったら私はまだ殺されるわけにはいかないからね。だから会いたがっているアスモデウスを経由して、その様子を事前に聞く必要があった。聞いた話じゃ善魔生徒会という、善の心を持つ悪魔が集まった部活に入ったようで、私もホッとしたわ」

「なるほど。だからアスモデウスはスパイなのか。じゃあアスモデウスはいわば囮や生贄みたいなものか。その性欲を利用したり俺に送って事前に調べたり」

道理でアスモデウスは俺にべったりとくっつくわけだ。俺の治療に手伝うのにはアンリデウスの思惑があったのか。

「言い方は少し気になるけどまあそういうことね。勿論死なせたくないけど、利用してしまったのは事実だし。表アプロディーテ様に直接話をつけるというのもダメなのは、言うならば私は異世界からやってきたような天使。表歴史の天界の者ではない。表アプロディーテ様に話をしたいだけで天界に行っては、私は怪しまれるわ。だから私は、表アプロディーテ様があなたを天界へ連行するだろうと予測し、予測したうえで冠を盗んだ」

「予測?」

「ええ、私の予測通り、天使たちはあなたを連行し、アプロディーテ様から話を聞き、聖なるベールを着せられて、冠を取り返すようここにやってきた」

「アプロディーテも俺もお前の予想にまんまと動いたというわけだな」

「ええ、そして冠を奪還できたあなたと一緒に天界へ行けば、あたかも懺悔しにきたように見える。その時に私の正体を打ち明かしたい」

もし予測通りに動かなかったらどうする気でいたのだ。ただ現実はアンリデウスの思惑通りに進んでしまった以上、俺もアンリデウスに協力せざるを得ない。

「はあやれやれ。なんとも無茶苦茶で大胆に動く奴だ。分かった。どのみち俺は冠をもって天界へ行かないといけないんだ。その時にアンリデウスを連れてって、俺が話つけてやる。アンリデウスはきちんと謝って、自分が天使だというその翼を見せろよ」

「ええそのつもり」





……回想を終え、そのことを俺とアンリデウスで口で説明した。アンリデウスは黒いコートを上半身だけ脱ぎ、黒ビキニ状態から背の素肌から白い天使の翼を生やした。この翼こそアンリデウスが天使だという証。

「……と、いうことなんだ。普通の悪魔なら天界にたどり着いても、この光には耐えられない。だがアンリデウスは余裕に耐え、冠を盗んだんだ」

アプロディーテや他の爆乳天使たちはアンリデウスやヤロベアムの正体にダイナミックに驚く。

「はい、本当に申し訳ございませんでした……」

アンリデウスはアプロディーテに一礼するも、アプロディーテはまだ信じておらず、口を開く。

「確かに、この世に二つと無いはずのレメゲトンが二つある理由を聞いてしっくりありますが、この私が裏歴史に居るというのはどうも……」

レメゲトンが二つあるという理由は証拠としてある。俺が操作するレメゲトンと、暗殺部をサポートし任務を進めてくれるヤロベアムのレメゲトン。これらは確かに天界の目でも確認済みだ。だが、アプロディーテ自身は、裏歴史にもう一人いるということ自体はとても信じていない。

「そんなこともあろうかと、裏アプロディーテ様から表アプロディーテ様に伝言があります」

「で、伝言……? 歴史上同一人物なのに、私から私宛へ伝言でなんだか複雑ね」

「ただ、この伝言は、アプロディーテ様ご自身しか知らない秘密です。もし表アプロディーテ様が信じなかった場合、アプロディーテ様しか知らないご自身の秘密を言えば、納得できると裏アプロディーテ様が頬を赤々と染めながら申されたのです」

確かに、アプロディーテしか知らない自分の秘密を第三者から言われれば、アンリデウスが裏からやってきたという証明になる。

「わ、私しか知らない秘密といえば……!」

「はい、そのパレオの下のことです」

「ギグっっ!」

当然、裏アプロディーテは自身の秘密を恥ずかしながら、表歴史へ旅立つ前のアンリデウスに告白したのだ。であればアンリデウスはそれを伝言、つまり表歴史と裏歴史の証明を紐解く鍵ということを言い、表アプロディーテの秘密を言ってしまった。

「パレオの下? 下ってお前、何も履い」

「それ以上言わないでっ!」

たまたまチラッと見えたが、アプロディーテの奴、パレオの下は何も履いてないじゃないかと、言おうとしたが、俺が言っている途中で区切りやがった。どうやらそれがアプロディーテの秘密らしい。

「え、なになにアプロディーテ様の秘密がパレオの下?」

「なんか超気になるし……!」

「さぞかし美しいTパンツを履いておられると思われ……!」

背後の爆乳天使たちはアプロディーテ様の秘密にウッキウキとざわめいている。なんともくだらない秘密でほざいている。本当に天界の民たちは暇だな。

「まあそういうことだ。アンリデウスは、裏歴史の魔王ヤロベアムが計画の元、表歴史へ何かを企んでいるということを伝えに来てくれた」

アンリデウスの本当の目的とは、裏歴史の魔王ヤロベアムの謎の企みが表歴史に関係していることらしく、表歴史に行き、俺たちにそのことを報せに来てくれた。確かにヤロベアムはレメゲトンを使って、暗殺部を依頼し裏からサポートをしている。天界の目ですらヤロベアムの居場所が突き止められない原因というのは、おそらくヤロベアムは裏歴史の場所から、歴史の狭間を越え、表歴史の暗殺部本部室に依頼や魔法を送っているということだろう。

「そして、暗殺部の部長アンドロマリウスが言っていた。『裏から攻めさせてもらう』と、『歴史の狭間で会おうぞ』。奴らは聖魔戦を仕掛けるつもりだ。アンドロマリウスが本部室に居なかったのは、奴らは裏歴史の王城に行って、ヤロベアムに寝返ったからだ。つまり、ヤロベアムの目的は聖魔戦を引き起こすこと……!」

ヤロベアムの企みは当初は分からなかったが、アンドロマリウスが最後に行った一言で合致した。アンドロマリウスら暗殺部の上級生は裏歴史に行き、ヤロベアムと一緒に聖魔戦を行うつもりだ。アンドロマリウスらは、ヤロベアムの正体を知っていたのだな。オロバスの子供軍団を作りたがっていた理由も、全ては聖魔戦に備えるつもりだったか。

「ただ、聖魔戦っていうこと自体が俺は分からない。アプロディーテ、聖魔戦とはいったいなんだ?」

アンドロマリウスは、聖魔戦のことを正と負を決める戦争と呼んでいたが、ぶっちゃけ意味はまだ理解できていない。

「残念ながら私たちも知りませんが、その歴史の狭間という言葉が非常に気になります。まるで、表歴史と裏歴史を融合させるような言い方……どのみち、ヤロベアム率いる裏歴史魔王軍がこちらに戦争を仕掛けてくるというのは間違いないです」

全知全能がウリの天界ですら聖魔戦という言葉は知らないようだが、ある程度の考察はかなり進んでいる。

「つまり、俺たちの相手は二つになったということだな」

「二つ? もう一つがヤロベアム率いる魔王軍として、もう一つは?」

そういえばウァサゴやアンリデウスには、俺とアプロディーテが進めている話を知らないな。今のうちに教えておくか。

「表歴史の偽王国だ」

「ぎ、偽王国……!? え、は、早すぎじゃない?!」

偽王国を倒し、魔界を一から平和へやり直したいという善魔生徒会の宿願が早まったことにウァサゴも驚きが隠せないようだ。

「ああ、悪いが俺は急がないといけない。人間界に俺の妹が暗殺部とヤロベアムに狙われている。だから妹を俺の手で救わないといけない。そのためには偽王国の王城を制圧し、人間界と魔界の世界の壁を崩さないといけない」

「世界の壁?」

「卒業証書がないと異世界へ行けないだろう? 卒業証書の有無で、二世界の間にある世界の壁がそのヒトを通してくれるか判断する壁があるのさ。だが俺たちは卒業証書は無い。更にはお前から手に入れたフライングチケットも、効果は卒業を一年で早めてくれるだから、今は使えない。俺が人間界へ行くためには、偽王国の王城を制圧し、世界の壁を無くす必要があるのだ」

「え、じゃあさっさとやろうよ。腕っぷしなら自信あるわよ」

「さっさとできない理由があったんだ。偽王国を潰すには、俺が天界の支援を受ける必要があった」

「支援?」

「ああ、俺が天界の王子として偽王国に戦争を仕掛ける必要性ってことだ。だから、その冠がサキュバス専門学校に保管されていたから、まずはアスモデウスの依頼を受けた」

「ダイナミック理解。レハベアムは冠を被っていたわけねっ!」

「今やその依頼もクリア。冠も無事に奪還でき、天界の王子になることができた。俺たちはヤロベアムと戦うのではなく、まず最初に偽王国を倒し、ヤロベアムに連れ去られる前に俺の妹を救う。打倒ヤロベアムはその後だ」

俺は最初からメナリク救出のために動いていた。そのためには偽王国を倒し、世界の壁を取り除いて人間界へ進出することを一番の目的としていた。だが、ヤロベアムの謎が解けたことでややこしくなってしまったが、ヤロベアムが使う暗殺部の魔の手がメナリクに当たる前に、俺がその魔の手を振り払うことを念頭に置いている。ヤロベアムや暗殺部上級生を倒すのはその後だ。


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