五十五話 鉄の巨人
「アハハハハ、フヘハハハハハハ。そんな小せぇ身体で、俺の可愛いロボットに勝てると思ってんのか?」
頭上が曇天の雲スレスレなみの図体。対する俺たちは蟻みたいな小さき生き物。蟻も群れればいくら大きい相手でも果敢に立ち向かい、餌にするほど勝利を得るが、俺とアンリデウスの二人だけ。勝機は薄いかもしれない。だがそれでもやるしかない。
「お前こそ、そんなガラクタに頼らないと俺たちに勝てないのか?」
挑発には挑発返し。オロバスの声に怒りが混じる。
「こんのおおおおお……いくら雑魚だからって好き勝手言いやがってっ!」
思う通り挑発に乗せられる馬鹿な男だ。だが、怒りに身を任せた一撃には警戒しなくてはならない。ただでさえ俺たちの足元はサキュバス専門学校を守る要塞。崩されたら学校も危ない。
「俺のエロ雌に浮気し、本来の夫を貶す人間……こんな不倫クソ野郎から舐められたら、そりゃあ怒りまくるよなあっ!」
「私たちがアンタみたいな豚野郎の雌前提で喋るの辞めてくれないかしらっ! さっきから非常に不愉快なのよっ!」
たまらずアンリデウスもオロバスを豚と罵り、怒りの声を放つ。
「豚? 馬鹿野郎っ! 俺は種馬だ。同時に、お前らサキュバス共に究極の遺伝子を与える選ばれし男神でもある。そんな高潔な男神の下品な性処理奴隷に手を出す人間風情には、きっちりと罰与えねぇとなあああっ!」
自らを種馬と名乗り、更に男神だと表す。いったいどっちなのだというツッコミは無しだ。どのみち生かしておかない。
オロバスが操縦している巨大ロボットヘイキ。左腕を動かし、その掌と指先を俺たちに向けた。掌の中心と五本の指の先端が縦に開き、それぞれ大きな砲口を出した。何かを発射する気だ。爆弾なら俺の闇でも防げない。
「おい人間。お前の弱点知ってるぜ。お前さんの闇は能力や魔法を無力化するんだよなあ? だが爆弾やミサイルは流石に防げねぇってことは計算済みなんだよっ!」
流石にレメゲトンの第四部の弱点は把握済みか。だとすると六つの砲口から放たれる爆弾で俺を消し炭にし、要塞の屋根に甲板貫くつもりだ。
「くらえ、死ねえっ!」
六つの砲口からミサイルが放たれた。要塞の屋根に向かっている。淫魔街を滅ぼしたミサイルとはサイズが違うが、それでも爆破や爆風は俺たちとしても致命傷は免れない。
まずい、詠唱が間に合っても防ぐことはできず、そもそも詠唱が間に合わない。あのミサイルが要塞もろとも直に受けてしまう。
「任せなさいっ!」
飛んでくるミサイルの前にアンリデウスが立ち、左手に小さなギロチンを複数召喚させた。
「手裏ギロチン……!」
左手を振るい小さなギロチンを高速に投げた。ギロチンはミサイルに衝突後、圧倒的な切れ味は小さくても破格か、ミサイルを正面から断ってみせた。その後爆破し、要塞や俺たちに当たらずに済んだ。
「さあ今よっ!」
爆破のフラッシュでオロバスは俺たちが見えていない。この隙に俺は第三部を詠唱し、数を増やす。
「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」
七百二体の紙ドクロをレメゲトンから放出。フラッシュが止むと瞬時に各々が自動的に行動し、分析。ロボット機体の周辺に浮き、囲い込む。
「さあ、放てっ!」
紙ドクロが一斉に口を開け、レーザーを放つ。七百二本のレーザーが機械鎧の各部位に当たり、全方向からダメージを与えていく。
「俺の闇ではどのみちお前はハチの巣……いくら図体が大きかろうが意味はない」
鎧を貫き、機体は穴だらけ。身体が大きければむしろ的を広げ、回避を大幅に下げているだけに過ぎない。
「そんなか細いレーザーで倒そうってかい? ミルク並みに甘いなっ! 俺が本物のレーザーを見せてやるよ……!」
右手に持つレーザーソードを横に振るい、前方の紙ドクロたちに一閃。光る剣身で前を一掃し、腰周りが回転。
「エアーっ! 回転斬りぃぃ」
上半身が何度も回転し、レーザーソードの回る斬撃で囲んだ紙ドクロたちが斬られていく。レメゲトンに再生されていくが、再びレメゲトンから紙ドクロを送らなければならない。
「はい更に回転斬りぃぃぃぃ」
ロボは一歩前進し、回転斬りの間合いを要塞の屋根に入れた。右方向から大きな剣身が俺たちへ薙ぎ払おうとしていく。アンリデウスと俺は右から襲い掛かってくる剣身に対し、己の剣で防御。回転の大きな勢いを耐えて踏ん張り、受け止めることに成功。回転を阻止するも、俺たちの剣とレーザーソードの剣身が擦る度に火花が発ち舞う。
「ふん、小人の分際で巨人の剣を受け止めようとか、おこがましいわっ!」
左手も柄を握り、両手で剣身を振るう。両手分の力が加わった剣身に俺たちは押され、踏ん張りきれない。耐えられるか非常に怪しい。
「そこまで俺の本気のレーザーを受けたいかい……っ!」
最後に詠んだ第三部『アルス・パウリナ』より、レメゲトンから多くの紙を放出。七千二百万枚の紙ドクロが上空へ行き、一堂に集う。紙が重なり合い、同時に折られていき、巨大紙ドクロが形成した。
「ああ? なんだこいつ」
巨大紙ドクロは口を開け、バーストビームをロボット機体に発射した。
「そうはさせるかよ!」
軌跡をバーストビームに変更し、レーザーソードで突いた。衝突し、押し合う二つの巨大レーザー。これにより注目は紙ドクロに向き、ロボットヘイキの胴体ががら空きだ。残りのページ分の第一部を開き、詠唱する。
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり」
俺の背後に魔法陣が出現し、七十二本の柱槍を胴体へ放つ。
「胴体串刺しにしてやる!」
柱槍は機肌に特攻。七十二本の柱槍が当たろうとしていた。だが、その直前に下半身から上半身が分離し、切断面から青い炎を噴射させて浮かせた。七十二本のうち七本が腹部に突き刺さり、貫いたにせよ大ダメージには至らなかった。
「そんな見え見えの反撃、分かってないとでも思ったかっ! この馬鹿め」
同時にバーストビームも避けるが、紙ドクロは目で上半身ロボットヘイキを追いかけ、再度バーストビームを放つ。しかし軌道は直線的という弱点を把握済みか、上半身ロボットは軌道に入らまいと左右に移動し、更に左掌の砲口を紙ドクロに向け、六発のミサイルを放つ。ミサイルは巨大紙ドクロの顔面に直撃し、爆破。瞬く間に焼却された。レメゲトンに再生されたが、第三部の詠唱をもう一度しなければ、紙ドクロで反撃が出来ない。
「ふっふふんどうするよ。言っとくけど、詠ませる隙は与えねぇぜ」
上空に浮く上半身ロボット。まさか体まで分離させることができるとは驚きだ。しかも機械だから能力ではない。
「そんじゃあよう、悪いが早速破壊させてもらうぜぇっ!」
右肘を引き、レーザーソードの剣先を要塞に向けた。突きで要塞の屋根に繰り出すつもりだ。
「そうはさせない……!」
突きの軌跡上にアンリデウスが立ち、処刑執行用の剣で防御の構えに。
「アンリデウス!」
「あなたは今のうちに詠唱を!」
巨大な突きをアンリデウス一人で受け止めるつもりか。流石に危険すぎるが、詠唱しないと俺が攻撃に転じることが出来ない。賭けだがアンリデウスを信じるしかない。
「ああ、分かったっ!」
「さあくらえ女……! 俺のデカくてヤラしい卑猥な突きを!」
上半身ロボットの右肘が伸ばされ、突きが要塞へ落ちてきた。アンリデウスは剣身で突きを受けるが、その重さや衝撃で足元が後方へ引かれ、屋根が大きく凹む。
「お、重い……!」
重圧な突きにアンリデウスが耐えられる時間は少ない。今がチャンスだ。再び第一部を詠唱。
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり」
俺の後方に魔法陣を再度浮かばせ、上半身ロボットへ七十二本の柱槍を放つ。
「おいおい、俺ばっかに注目してねぇか?!」
下半身ロボットがジャンプし、キックで七十二本の柱槍の軌道をずらした。そのせいで七十二本の柱槍があらぬ方向へそのまま飛び、命中が外れた。下半身ロボットは城門前に地に着地し、その振動で要塞が揺れる。
「ブハハハハッハアハ、いくら天才頭脳明晰エリートな人間でも、下半身も動くとは思いもしなかっただろう」
下半身から切り抜けだけではなく、下半身も操作可能なのか。上半身ロボットにだけ気を取られていた。
「元々は一心同体だったがよお、てめぇらは二人なんだ。じゃあこのロボットも二分割して相手するべきだよなあっ! 二人掛りで攻めようなんて甘いんだぜ。搾りたてのミルクみてぇになあっ!」
これからは地を踏む下半身ロボと、宙を浮く上半身ロボと相手なのか。こちらが二人で人数有利を持ち、的が大きい相手だが、相手が体格差を誇り、二分けして襲ってかかるとなると、こちらが不利だ。
再び下半身ロボットが飛び、要塞の屋根に着地。上半身分の体重がないから屋根が崩れなくてよかったが、要塞の屋根に居続けられると大穴が発生して崩れそうだ。
「なあアンリちゃあん。どんだけ俺の超絶卑猥な突き耐えられるか見物だけんどよお、とりあえず俺の玩具がさんざん地面踏んでんだ。だから舌で舐めて綺麗にしてもらおうかよおっ!」
下半身ロボが右脚を上げ、突きの重圧を防御し続けているアンリデウスに足底を下そうとしてきた。
まずい、あんな巨大な踏みをまともに受ければ死亡になる。魔法も間に合わない。こうなれば俺が守るしかない。
踏みがアンリデウスに下る前に、突きを受け止めているアンリデウスの元に急ぎ、腰を抱くように体当たり。その勢いで前方に飛びこみ、突きと踏みを一緒に回避。飛びこみ回避からのうつ伏せで床に倒れる。
「大丈夫かアンリデウス」
「ええ……なんとか助かったわ」
急いで立ち上がるが、上半身ロボの目が俺たちを見外さず、睨みつけている。
「このおぉぉぉ……俺の妻を浮気しただけでなく、俺の目の前でハグするとはあぁっ! ふざけやがってぇ!」
アンリデウス絶体絶命のところを俺が抱いて一撃の軌道から無理矢理外したことを怒っているらしい。
「だから私はアンタみたいなクソに浮気された覚えはないわっ!」
「黙れ黙れぇっ! サキュバス共はオロバスの性処理奴隷なんだ……俺の血を濃く継いだ最強の子供を量産するんだ。つまり俺の妻以外なにがあるってんだあっ!」
オロバスの血を継ぐ最強の遺伝子を持った子供を量産する目的だけで、奴隷にされるサキュバスたちの気持ちは一切考えていないのか。これほど腐った男は魔界でもなかなかいない。
「私たちサキュバスはあなたに屈しないわ。絶対にっ!」
アンリデウスも固い信念で屈しないと発言。何度でも繰り返される対立化にオロバスは腹を立てる。
「だったら……このままお前を強奪するのみだあぁ!」
左掌をアンリデウスに向けた。あの掌から再びミサイルを放つつもりか。だが、放たれたのは左手そのもので、手首の切断面から一本の線で繋がっている。
「なに……っ。か、回避が間に合わない」
予想外な攻撃手段に回避が間に合わず、放たれた左手が屋根に衝突。アンリデウスは左手に押しつぶされ、握られてしまった。
「アンリデウスっ!」
手首の切断面に連なっている線が引かれ、同時にアンリデウスが握られた左手も戻っていく。
「ぐははははははははアンリちゃんはこのままお持ち帰りして、可愛がってやるからな……!」
そう言うと上半身ロボの切断面から噴射している青い炎がより一層勢いを増し、後退しつつ上空に飛ぼうとする。オロバスめ、上空にアンリデウスをかっさらうつもりだ。
「れ、レハ……!」
左手に握られているアンリデウスが必死の瞳で俺を見詰め、助けを求めている。アンリデウスは強いにせよ、オロバスとの二人っきりの空間は生理的に絶体絶命だ。
「待ってろっ! あのロボットめ逃がすか……!」
ここは冷静に立ち止まり、第三部を詠唱。紙ドクロのレーザーで左腕を切断し、アンリデウスを救出だ。
「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を」
詠唱中に俺の足元に濃い影が。上を見ると、巨大な足底があり、俺を踏みつぶそうとしてきた。詠唱を中断し、急いで左へ回避。その直後に足底が鉄の屋根に下り、再び要塞が踏まれた。
「下半身ロボ、あの人間を潰せよ。俺はアンリちゃんとゆっくり空の新婚旅行すっからさあっ!」
上半身ロボの顔から送られる機械越しの声に応じ、下半身ロボが救出したい俺を妨害。まずい、このままではアンリデウスがロボに連れ去れてしまう。
「アンリデウスっ! くそ、こいつが邪魔だな」
下半身ロボが立ちはだかり、救出に行けそうにない。それに、巨大な下半身が爆撃を二度も受けた鉄壁の要塞の屋根に長時間立てば、重みで崩壊してしまう。早く下半身ロボを壊さなければ。
こうもしている間に上半身ロボとアンリデウスが曇天を突き破り、大空へ消えていった。上空に行けば行くほど空気が薄く、長時間空に居ると気を失ってしまう。そうなればあとはオロバスの思う通りの奴隷になってしまう。幸い、アンリデウスはアスモデウス同様、陽光に耐性がある性質を持ち、光に溶けないがそれでも心配だ。
再び右脚を上げ、足底を俺に向けてきた。図体が大きい分間合いも当然広い。間合いに入られたら詠唱する隙が無い。こうなれば剣で叩っ斬るしかない。
「ダーインスレイヴ、悪いが今回の相手は生物ではない。だから血はないぞ。でも手を貸してくれ」
隕石の如く足底が俺に落下し、俺は後方にバク転して回避。足底が屋根に衝突し、俺の剣の間合いが足に入ったところを見計らって、剣身に殺気の刃を纏わせる。
「くらえ」
左肘を引き、突きの構えに。即座に放ち、剣先から根本まで深々と、踵の機肌に刺す。これに終わらず、自分の両足で奴の足元から脹脛、腿まで上に進みながら刺したダーインスレイヴで斬る。尻まで達すると、一度剣身を抜き、切口の上に再度横薙ぎ。一閃で右脚の付け根を断ち、右脚は崩壊した。
「どうだ」
最後に尻にキックし、同時に足底を機肌から離し屋根に着地。左脚のみで立つことになった下半身ロボはキックによりバランスを崩し、屋根の上から城門前の地へ派手に転落。これで下半身ロボットは倒した。あとは上空へ消えた上半身ロボを追いかけるのみだ。
「待っていろアンリデウス。助けるからな……!」
レメゲトンの第三部を詠唱し、再度七千二百万の紙ドクロを解き放つ。紙ドクロ軍団を上空へ送り、逃げた上半身ロボへ追尾、追撃を開始させよう。
しかし、送るまえに目の前に、要塞の下へ突き落した下半身ロボが左脚一本で立ち上がった。
「あれ、まだ立ち上がる機力があったというのか……!」
下半身ロボの機肌は傷だらけで、バチバチと電気が撥ねる音が響く。右脚の切断ダメージと転落によって相当負担を掛けることができたようだ。だが、上半身を離した切断面から、数多のミサイルが続々と真上に放たれた。ミサイルは曇天を突き破り、数秒後、要塞真上の曇天に濃い影が映った。
「ま、まさか……!」
曇天を下から突き破り、放たれたミサイルの雨が要塞へ落下。下半身ロボめ、最後っ屁として装備されたミサイルを撃ち、道連れを図るつもりだ。
「くっ、あれを撃てっ!」
召喚させていた紙ドクロ軍団は至急、降ってくるミサイルの雨にレーザーを放射。下からレーザーを放ち、落ちてくるミサイルを貫き、上空で爆破。多くの爆破が連鎖的に多くのミサイルを破壊し、合わさって大爆発が発生。圧倒的な爆風と衝撃波で要塞に強い圧がのしかかる。俺の身体も押しつぶされ、屋根に亀裂が発生した。
「ぐふっ……ま、まずい……!」
亀裂は瞬く間に広がっていき、遂に鋼鉄の屋根が崩壊。破片諸共、俺も半壊の学校に墜落してしまう。
「くそ……なんて酷い機械だ……だが、運が良かったな……」
不幸中の幸いなことに、瓦礫や破片が落ちたのは運動場。半壊の学校には落ちず、砕くことには至らなかった。
俺もまた瓦礫の板に捕まり、その上にまた瓦礫の挟み板にならずに済んだ。だから俺は軽傷だ。
「もう一生、機械を好む機会はない。奇怪な機械め」
何もかも人間界の機械のせいで学校や俺の魔法が砕かれていく。俺は人間界へ帰りたいと思っているが、苦手な機械が山ほどある環境では、生まれ育った魔界の環境の方がある意味マシかもしれない。機械に慣れるにも相当な時間を要するだろう。
それよりも学校の守りに穴が開いてしまった。戦車やロボットから再びミサイルが放たれれば、今度こそ要塞や学校は終わりだ。一刻も早くオロバスの作戦を壊さなければ。
瓦礫をどかす暇はない。すぐに立ち上がり、アンリデウスをさらった上半身ロボへ追いかけなくては。
しかし、心なしか空気の流れを感じる。
「……風……?」
瓦礫が落ちた衝撃で砂埃が舞うのは当然だが、ただでさえ雌の匂いに充満した、一切換気などしない、できない密室空間の要塞に風が通っている。換気するのには風の通り道が二つ必要だ。一つ目が屋根の崩壊した穴。ではもう一つの風の通り道はいったい。
この要塞にヒトが入る二つのルートと言えば、城門と屋根の床扉だ。当然屋根に大穴がぶち抜かれ、侵入しようと思えば上からが非常に容易い。試しに城門の内側を見てみると、驚くべき景色がそこにあった。
「城門が……溶けている……?」
硬く閉じられたはずの城門の壁が溶解しており、淫魔街の景色や下半身ロボの倒れ様が見える。溶かされたのであれば城門からでも侵入は可能だ。
「しかしなんで溶けているんだ。あれはどう見ても爆破のダメージではない……」
爆破によってこじ開けられた鉄は砕かれているが、城門の扉は砕かれておらず、ドロドロに溶かされている。今までのような爆破でないのは確実だ。しかしいったい誰が城門を溶かしたというのだ。何にせよ城門が開けられたのであれば、もうこの要塞の守備力は零。サキュバスたちは絶体絶命になってしまった。
「……キャアアアアアアアアっ!」
「い、いやあああああっ!」
「助けて……!」
サキュバス専門学校から、数多の女性の叫び声が運動場まで響いてきた。考えた側から彼女らが危険だ。
「し、侵入者か……! くそ、城門を溶かした奴か……!」
巨大ロボットヘイキに気を取られて、暗殺部部員の侵入を許してしまったか。しかもオロバスが操縦する上半身ロボによってアンリデウスと俺を分けるとは、まんまと策略に引っかかってしまった。
「アンリデウスは強いし、最悪一人でロボはどうにかしてくれる。俺は急いで侵入者を殺さなければ」
ロボに連れ去られたアンリデウスだが、機体ぐらいギロチンで切断は容易いはず。それよりも戦闘能力が薄い護衛対象のサキュバスたちを護りに行く方が優先度は高い。
「今行くぞ……!」
瓦礫の山から飛び降り、急いで正面下足室へ走る。
~『ソロモン校長の七十二柱学校』のあれこれ~
●第三部『アルス・パウリナ』
レメゲトンの紙を分離させ、ドクロ状に自動的に折りたたまれる。これで遠隔監視、遠隔射撃が可能な浮遊体の紙ドクロが完成する。自動的に魔術師やこの場の状況によって最適な行動をし、操作も可能。紙ドクロの視野は魔術師の脳に繋がっており、遠隔監視が可能。口から闇のレーザーを放ち、相手を貫く。群れることで本領を発揮し、非常に厄介になる。
弱点は炎と、紙そのものを送るから残った紙で詠唱しなければならないこと




