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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第死章 淫魔護衛編
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五十死話 人間界の力

 その運動場の先には、地を走るヘイキ戦車チャリオットの群れがびっしりと埋め尽くされているなか、特に目を引く機械の塊が存在感を解き放っていた。

「な、なにあれ……元から置かれていた?」

その機械の塊の姿形から一見、まずは図体の大きさに私や一同が絶句。

「え、なんか人の形をしているんですけど……」

「ってか、デカすぎじゃないあれ……」

人の形をした灰色の機械の塊。戦車チャリオットになんか比べたら、まるで虫。足元に置かれている小石と呼べるほど小さなもの。

 それほど大きな人の形をした、確か人間界の言葉ではそういう姿をロボットと呼ぶのであったか。巨大な機械の身体を持ち、頭が曇天を貫いている。縦幅は勿論、横幅も図々しいほど大きく、図体がこれでもかと言えるほど。隣のゲーティア高校の頭上すらロボット機体の膝に届いておらず、脚一本さえ動かせばついうっかりレベルで、一蹴りで学校を崩壊させられるほど。機体全体がまるで鎧を着て、様々な部位にはあらゆる武器の砲口が装備されている。

「暗殺部って、あんな機械まで買ったんですかっ!? どんぐらい値段するんだろう……」

フェニックスがロボットの値段なんか未知数のことを気になりだす。

「馬鹿ね、学生があんなアニメみたいなドデカいロボット買えるわけないでしょ」

「あんなものがうろつかれたら街はあっという間に崩壊よっ! さっさとぶっ壊すわっ!」

人の形をしているから歩けるだろうが、あんなロボットが歩いたら、地変動が起きてもおかしくない。いとも簡単に街を蟻を踏む感覚で潰してしまう。うっかりレベルではない。気が付いていないほどだ。

「はいっ!」

フェニックスは不死鳥の姿に化身し、セーレはセイレーンに化身。三叉槍を持ち、武装。シトリーも魔術書を開き、いつでも詠唱の態勢に。

 私は右腕に力を込め、尚且つ時の力を解放。丸一日中力を溜め込む時間を一秒に短縮させ、即座に馬鹿力を打てる体勢にさせる。

「言っとくけど、私は小指のデコピンだけでも、こないだ落ちてきた隕石の群れを粉砕玉砕してやったわ。たかだか機体で防げると思わないでっ!」

一週間前か忘れたが、偽王国に隕石の群れがたまたま接近し、とりあえず魔界を守るため十二時間分の力を小指に集中させ、デコピンによる衝撃波で隕石の群れもろとも一掃した。まあ魔界の寿命が伸びてよかったが、全力の一割すら普段から出さないこの私が、全力を出したら、ロボットなんてあっという間に砕ける。暗殺部の思い通りにはさせない。

「パンチの衝撃波で遠くから一撃よっ!」

徒歩や走行ではロボットから距離が掛かり、尚且つロボットが動き出されたら間に合わない。馬鹿力で空気を殴り、その衝撃波でロボットを粉砕だ。

 右肘を引き、解き放つ。拳を空間に叩きつけようとした瞬間、拳に正面から相対する何かがぶつかり、衝撃波が相殺されてしまった。

「なにっ……!」

右腕の拳が衝突したものを注目。するとそれも私と同様、ただの拳がぶつけられていた。

「手出しはさせない、善魔生徒会会長」

その者は私と同様、白い髪をなびかせ、拳には光のオーラが覆っていた。

「久しぶりね、アンドロ」

暗殺部部長アンドロマリウスが光速にして私の拳の前に現れ、私の馬鹿力と同様の破壊力で衝撃波を相殺してみせた。

「あ、ああああアンドロって、あのアンドロマリウス……!? さん……」

「ちっ、まさかいきなり現れるとはね……」

フェニックスやセーレがアンドロマリウスの登場に驚き、その身を一歩退かせた。特にセーレは気まずそうな苦い表情を浮かばせる。

「久しぶりだね、セーレ。スパイ生活はお疲れ様とでも言うべきか」

本スパイとして潜り込み、内部情報を引き出してくれたセーレに丁寧口調で皮肉な台詞を言ってくる。

「ふん、皮肉な労いなんか要らないわ」

「おっと、悪いけど、裏切った部員は罰として死んでもらうってのは無しよアンドロ。どうせあなたはうちのセーレを信用していなかったんでしょ」

拳同士ぶつけられてもなお、相撲のように未だに押し合い、力量比べを続行する私とアンドロマリウス。私もそうだけど、アンドロマリウスの表情は余裕を浮かべ、力んではいなかった。

「正直、本スパイだということは見抜いていたからね」

その証拠に三年生しか知らないという暗殺部本部室を、同じく三年生のセーレは知っていない。そのためせっかく内部に侵入したのに情報量は少なかった。

「この件はオロバスが指揮を執っている。オロバスの計画に手出しはさせない……!」

仲間想いな情報があるという暗殺部部長アンドロマリウスが、同じく暗殺部の部員であるオロバスの作戦に協力的な姿勢を示す。

「しかし、いくら念力だけで衛星を一個粉々にする僕と言えども、レハベアム君を除いた善魔生徒会面々と衝突するというのは分が悪い」

何気にヴァプラの存在を忘れている暗殺部部長だが、アンドロマリウスの戦闘能力ならば私はともかく、シトリーらが瞬殺だ。

「丁寧な皮肉の時点で本当は余裕だっていうこと分かってるわよ。けど、私の仲間にも手出しはさせないわ」

善魔生徒会メンバー総戦力でアンドロマリウスにぶつけても、返り討ちに会うだけ。むしろ私の足を引っ張ってしまう。アンドロマリウスが相手だと、彼女らは戦力外になってしまう。大切な仲間を殺させはしない。

「シトリー、フェニックス、セーレ。あなたたちは先に行ってヘイキや暗殺部部員の相手をして頂戴」

「ウァサゴ先輩……」

「私じゃアンドロマリウスを食い止めるのに精いっぱいってとこね。あなたたちじゃ敵わないっ!」

「分かりました。では、健闘を祈ってますっ!」

私の命令を潔く聞いてくれたシトリーらは、アンドロマリウスの横を避けるように過ぎ去り、運動場へ向かった。

「気が利くではないか。僕がああ言ったのは、ウァサゴ。あなたと久々の喧嘩をしたかったからなんですよ」

「私が満足に実力出せるのはアンドロだけ……まだあの時の遊びは終わってないわ。その続きをしましょうか」

「言わずもがな……!」

ほぼ同時に私とアンドロマリウスの筋力が大幅に増加し、力と力の衝撃がより一層激しくなった。そればかりか衝突による衝撃の波で周囲の空気が揺れ、重力すら狂い始めた。

 そのとき、奥の運動場から地鳴りがこちらの足元にまで伝わった。

「な、なに……この地鳴りは」

その様子に目の前のアンドロマリウスがニヤリと不敵に笑みる。

「遂に向かうようだね。オロバスよ」

地鳴りはより激しくなり揺れ始めた。奥に立ち聳える巨大ロボット、その足元から白い煙が立ちこみ、機体が浮き始めた。足底から青い炎がバーナー状に噴射。その勢いで飛んでいるのか、ロボットが徐々に加速して地上から飛び立っていく。

「あのヘイキで何をする気……!」

「サキュバス専門学校の進撃を食い止めているのは君たちのレハベアム君だ。いくら戦車せんしゃの群れでも魔法には敵わなかった。だから最終兵器さいしゅうへいき、人間界の最高峰の技術が詰まっているというあのロボット兵器を送り出したようだ」

「あくまでアンタの命令ではないのね……?」

「言ったろう。この作戦の指揮官はオロバスだと。それに今回の作戦は授業放棄してまで参加するほどの価値、この先未来の暗殺部兵力拡大の重要な起点になる。オロバスの子供計画の邪魔はさせない」

勢い任せに動く連中や性欲の奴隷と化した部外者共とは違って、アンドロマリウスは慎重に物事を判断し動くタイプ。そんな彼が授業そっちのけで計画に乗り出すということは、それほどオロバスの強姦による未来の影響力が高いということか。オロバスの子供を産ませるのは本気でヤバそうだ。

 奥の運動場にて巨大ロボットの飛行は格段に加速され、あっという間に上空へ全身を飛ばし、消えていった。

「もう一つ言っておくことがある。あのロボット兵器は宇宙戦闘に特化したもの。人間界に進出しているアムドゥシアス先輩曰く、あまり地上で戦うことがない兵器とのこと。僕も詳しく知らないが、そんなロボット兵器がサキュバス専門学校へ向かったら、レハベアム君は全ての武器を阻止できるだろうか、できないだろうか。どっちだと思う……?」

センシャとかいう名前らしいあの戦車チャリオットが何十台も向かってしまったが、レハベアムは全て倒してくれたか。ならばあの巨大ロボット兵器が宇宙特化だろうがなんだろうが、阻止云々の前に倒すことは十分可能だ。

「できるわ。未来視で結果を視ることも容易いけども、まあ視るまでもないわねっ!」

「即答か」

「立場が逆だったら、きっとアンタも即答してたわ」

「ふっ、それもそうだ。さて、この後は特に喋る内容がない。あとは拳で語ろうか」

「ええ……!」








「……なるほど。了解した」

一方、サキュバス専門学校前の俺にシトリーからの連絡。ゲーティア高校の戦局は半々のようで、暗殺部部長アンドロマリウスと、善魔生徒会会長ウァサゴ。このゲーティア高校のツートップの戦いが始まったようだ。更に、人の形をした巨大なロボットが空を飛び、更に今回の主犯格オロバスさえも運動場に居らず、おそらくオロバスがロボットを操縦しているとのこと。サキュバス専門学校に向かっているという情報を頂いた。

『気を付けてください。戦車チャリオットよりも格段に大きく、銃口も何やら多い印象でした。少なくとも一踏みで街一個壊れるほどですっ!』

「それほど大きいのか」

『部員が多いとはいえこっちはなんとかなりますが、問題なのはそっちの戦局です。それにそっちに加勢は難しいところですが、なんとかなりそうですか?』

「戦ってみないと分からないが、少なくとも俺は死ぬつもりはないし、暗殺部の作戦も止める。任せろ」

『はい、最初から信じております。無事ここが落ち着いたら急いで加勢しますのでっ!』

「ああ。無事を祈る」

連絡はここで途切れ、隣でゲーティア高校の戦局の流れを聞いていたアンリデウスは固唾を飲む。

「いよいよ本格的にヤバそうね」

「ああ。真上から空襲するっていう未来が想像できる」

空を飛び、尚且つ銃口や砲口を持つ図体の大きいロボットヘイキ。当然空中戦が得意ということで、要塞の鉄壁を誇るこの壁でも、上から爆弾を放ち、要塞を崩す寸法が想像できる。穴でも開けられたら、半壊している学校は完全に壊れてしまう。

「アンリデウス。念のため俺は天井から見張っていいか? アンリデウスはここを守ってくれ」

「分かったわ。守りを分断させた方が効率良いかもね」

アンリデウスに城門の守りを託し、俺は壁を走り、要塞の屋根に立つ。屋根は平らな地形で広く戦いやすい。要塞正面の硬い城門を打ち破るに対し、屋根は一つの床の扉でただ開けるだけ。容易く侵入できるのは屋根だ。巨大ロボットやオロバスは空から奇襲してくる可能性がある以上、上の守りも固めたい。

「紙ドクロ。上を重点的に見張れ」

命令すると、野原周辺を見張っている紙ドクロの九割を上空に向かわせ、いつ空襲されても対処できるようにより厳重に警備体制にさせる。

 そして、警戒から十五分後、遂にやってきた。ヒューという空気を叩きながら、何かが落ちてくる音が大気圏から聞こえてくる。

「来たか、噂とやら影とやら」

上空に浮く紙ドクロ七十二千万の軍隊が待ち構える。アンリデウスも城門前に立つもしっかりと上を見張り、こちらを窺っている。

「さあ、来い。暗殺部のロボットヘイキ、どの攻撃も機体も全て魔法で破壊し尽くす」

灰色の曇天に上空からの大きい影が映える。その影の物体が曇天を貫いた瞬間、闇のレーザーで一斉攻撃だ。落ちるにつれて影が濃くなっていく。もうすぐ相手が曇天を貫く。俺の視野にしっかりと映ったが最後だ。

 厚い雲が貫かれた。だが、雲が濃厚な層のせいで落下物がそれに包まれて見えないが、今こそ一斉射撃だ。

「放てっ!」

紙ドクロに命令を出した瞬間、対象が包む雲を突き破り、その姿が明らかになった。

「あれは……ミサイル……!」

太長の槍のような、錐体の砲弾ミサイルが落下してきた。おそらくシトリーから情報を聞いたロボットが、はるか上空に留まり、そこからミサイルを放っているのだろうか。となると俺の予想通り、空襲攻撃で仕掛けてくるか。

「やはり真上から空襲か。まずはあれをどうにかしなければな」

命令した通り、紙ドクロ軍団は一斉に口を開き、レーザーを発射。七十二千万本のレーザーがミサイルに向けて逆射撃。あっという間にミサイルの機体を貫き、爆破。だが、ただの爆破ではない。強烈かつ莫大な爆破であり、一瞬にして視野に映る空間全て白一色。強いフラッシュが淫魔街全土に照らし、破壊する勢いの爆風が襲う。

「くうぅ……なんて強い爆風なんだ」

左手にダーインスレイヴを召喚させ、剣身を屋根に刺し、固定。柄を強く握り、爆風に流されないよう耐える。身体が浮き上がるほど強く押しかけてくる。やがてフラッシュと爆風は止み、視界ははっきりした。

 淫魔街の地形を見ると、建物や落下ギロチンが完全に一掃されており、平らな焼け野原と化した。要塞の壁も辛うじて耐えはしたものの、亀裂が発生し、あのような爆発がもう一度起これば間違いなく壊れてしまう。当然、上空に待機していた紙ドクロ軍団は一瞬にて塵となり、レメゲトンの中に復活した。

「なんていう破壊力……はっ、ア、アンリデウス……!」

城門前に立っていたアンリデウスが心配だ。当然、ヒトの身体で爆発を受ければ肉体は微塵となる。急いで屋根の崖に立ち、真下の城門を見る。しかし、アンリデウスの姿はない。

「ま、まさか……死んでしまった……?」

城門前の壁もぶっ飛ばされたギロチンたちに刺され、爆風の圧で深いダメージを負っている。守りがむしろ仇となり、爆風に飛ばされても背後はすぐに城門の壁。圧力に潰され、ギロチンの狙いの的だ。もはやその姿すら無いとなると、生存が極めて怪しい。

 と、そのとき、背後から扉が開かれる音がした。急いで後ろへ振り向くと、さっきまで見覚えのある黒いコートを着た女性が床から現れてきた。

「アンリデウス……! 無事であったか」

城門前に立って死んだと思っていたカイトロワ・アンリデウス・サンソンが要塞の屋根に現れた。

「どうやって逃げられたんだ」

俺はアンリデウスの元へ駆け寄り、アンリデウスも歩きながら寄ってきた。

「流石にあんなブキミなモノが落ちてきたらね、身の危険を感じるのは当然よ。ほとんどが爆発物だと分かっていたしね。咄嗟に城門をこじ開けて、急いで閉めたのよ」

生存本能に助けられたというべきか。しかしあんな分厚い城門をこじ開けるとは、流石はサキュバス専門学校の生徒会長だ。

「にしても凄かったわね、爆発の衝撃。激しい爆音したものだから、学校でも大揺れだったわ」

街を一気に滅ぼすほどの爆発。大地の均一が崩れ、爆破による振動と共に地震が凄まじいのは仕方ないこと。しかし二個目が来ない限り、どうやらもう次は来ないらしい。

「……っ! な、なに……こここれ」

街の有様に言葉を失うアンリデウス。だがすぐに瞳に強い怒りの炎が滲み出ていた。

「許せない……サキュバスへの欲求のためだけに、私たちの街さえ滅ぼすだなんて……!」

今回のサキュバス捕らえ作戦、及びオロバスの子供計画の一部が、要塞の守りを崩すためにミサイルを放ったとみて間違いないだろう。街はそのとばっちりを受けたということか。

 上空の曇天に再び影。しかもミサイルよりも大きく、下から見た時のヒトらしき形をしている。一気に曇天の層を突き破り、重力に任せてそのまま大地に着陸。その衝撃で突風が俺たちを押す。

「来たか……!」

大地に着陸したのは、確かにヒトの形をした巨大な機械の塊。灰色の機械肌の鎧を機体に纏い、右手に赤いレーザーソードが握られ、左掌には大きな大きな砲口が開かれていた。

「レディィィィィィィス、ウァァァァァァァンド、一人だけジェントルメェェェェェェン」

顔の口から機械越しの挨拶。男の声がこちらまで響いた。

「俺はオロバスっ! これからお前らのイイ夫になる男だっ!」

更に名を名乗り、自ら主犯格が現れてやってきた。背後には部下らしき姿は誰一人としておらず、大将が出向いてきた。

「とりあえず浮気は許さねぇなあ。そんな精液の薄そうな人間男を選ぶサキュバス共もどうかしてるぜぇ」

一般的に魔界では人間は悪魔より精子、精液が濃厚だという。それを薄いだと言えるオロバスはやはり、圧倒的な性欲の持ち前にして、自信に満ちた台詞。つまり究極の遺伝子を持ち、子供計画を本当に成せることが出来るとみていいだろう。

「何が浮気よ……! 私たちの王子様はレハベアムのみよっ! アンタみたいなキモチわるい男誰が選ぶの」

アスモデウスの本来の目的を一貫して貫くアンリデウス。ここでも女と男による口喧嘩が突発しそうだ。

「ハハハハハハハハハ言ってくれるじゃねえか、サキュバス専門学校の生徒会長っ! 一度も俺の顔見てねえくせに、俺がキモチわるいだとぉ? どうせすぐにキモチわるいから、キモチイイ……の快楽に変わるんだ。そう焦るなよっ!」

度重なるセクハラ発言で挑発。アンリデウスの表情は勿論、体全体が怒りに震え、凄まじく力んでいる。

「ふざけるなあああああっ!」

アンリデウスがロボットヘイキに向かって走り出し、感情に任せて勇猛に特攻。

「おっ、ハグしに来てくれるのか? 悪いがこの機体に抱きつくのはやめたがいいぜ」

「いちいち癇に障る言葉言わないでっ!」

助走をつけ思いっきり飛び、その身を機体に接近させる。アンリデウスの間合いに入れると、右手に持つ処刑執行用の剣を振るおうとする。

「最初のハグは機体になんかさせねえ……!」

右手に持つ巨大なレーザーソードをアンリデウスに振るい、アンリデウスは瞬時に剣の軌跡を襲ってくるレーザーソードに切り替え、二つの剣身が衝突。だが力の差が歴然であり、斬られなかったにせよアンリデウスは容易く飛ばされ、要塞の屋根に衝突された。

「大丈夫かアンリデウス……!」

立ち上がるアンリデウスだが、俺の言葉が聞こえてないのか冷静ではなく、再び機体へ突進してきた。

「おいおいそんなに俺にハグしたいのかよ。なかなか嬉しいことしてくれるじゃねえか……だが最初のハグはこの機体じゃねえ。俺の肉身にしろおっ!」

オロバスのロボットヘイキも応じて右腕を上げ、レーザーソードを向かってくるアンリデウスに振り下げる。この要塞ごと、アンリデウスを縦に真っ二つにする気だ。

 今のアンリデウスは怒りに全集中して冷静ではない。オロバスの挑発や力で余計怒りを増加させ、奴の思うつぼだ。このままではアンリデウスが殺されてしまう。

 俺も咄嗟に前に出り、ダーインスレイヴを頭上に構える。

 レーザーソードが振り下された。アンリデウスと俺は自分の剣で重い斬撃を受け止め、要塞と自分の身を守る。

「ちい……なんて重いんだ……っ!」

圧倒的な図体から繰り出される攻撃や斬撃。当然、俺たちはチビであり、まともに何度も力の差を受け止められない。

「お、おいアンリデウス……!」

前の怒りに任せるアンリデウスに一言叫ぶ。彼女が聞こえていようがいなかろうが、こればかりは伝えたい。

「怒りで冷静さを欠けるな……! 奴は挑発して自分のペースに持っていこうとしている。それで死んだら、お前はあの世でアスモデウスに会わせる顔があるのか……!」

もしオロバスでアンリデウスが死なれたら、オロバスのせいで殺されたアスモデウスにどう説明をして話をつければいいのか考えているのか。アスモデウスも、アンリデウスが死んでほしくないと思っているはずだし、何より自身の願いや企みも全て、アンリデウスに引き継いだ。託したバトンタッチをむざむざと捨てさせはしない。

「お前が死んだら、下のサキュバスたちはどうなる……? 皆オロバスの奴隷になるんだぞ……! そんなもの、アスモデウスは望んでいないっ! アスモデウスの死を、託したバトンを無駄にしたいのか貴様あっ!」

何よりアスモデウスが好きだったサキュバスたちが奴隷になれば、死んだアンリデウスに怒鳴りにくるだろう。アンリデウスの一つの命が亡くなるだけで、アスモデウスの死の意味や託したもの、サキュバスたちの未来が全て消え失せてしまう。決死な行動は仲間において一番な無責任だ。

「私だって……無駄にしたくないっ!」

ここでアンリデウスの言葉が聞けた。俺の叫びが心に聞こえたか。

「私たちの可愛いくてエロいサキュバスの生徒たちを、メス豚になんかさせたくないっ!」

「だったら……生きる希望を持てっ! 何が何でも守る覚悟を……行動で示せえっ!」

アンリデウスも俺も共通しているものは一つ。守りたい、この一言だ。アンリデウスはサキュバスたちやその未来を守りたいし、俺もアスモデウスの死が無意味にならないよう守りに手伝いたい。ただでさえ依頼主を守れないようであれば人間界も救ってみせるのは難しい。俺も無力だと思い知らされる。だが、無力感に潰れ、覚悟や意思さえも諦めたらそれこそ救えるものも救えはしない。今こそ、守るために足を動かしてみせろ。手を振るい、絶望の壁を切り開いてゆけ。

「当然……!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお……!」」

全身の筋肉をフルに使い、二人掛りで重い剣身をのし上げ、俺たちの剣で撥ね返してみせた。巨大レーザーソードの剣身は真上に撥ね、俺たちの力量の勢いでロボットは一歩後退した。

「やりますねぇ!」

剣を弾いても余裕の一言を機械から漏らすオロバス。

「生きる希望? 守る覚悟? アハハハハハハハ、クゥーだらね。そんな青臭ぇ台詞出せる奴ぁ、まだ魔界にいやがんとはなあ」

更に俺の鼓舞をくだらないと罵ってくる。だが俺はそれを真っ向から反対し、口にして怒鳴った。

「お前こそ、そんな外道に塗れたドス黒臭い台詞を言って、魔王になったつもりかっ! この時代のゴミがっ!」

サキュバスを性処理奴隷として従え、性王になりたがっているようだが、所詮はロボットに頼っているただの腰抜けだ。その大きな鎧から素肌を繰り出してやれば弱気な姿勢を示すだろう。

「な、なんだとおおおおおおおおっ! 人間風情が生意気な口聞くなっ!」

負けじと挑発返ししたら、すんなりと苛立ってくれた。これで奴の心理はこちらのペースだ。

「アンリデウス。俺は詠唱して魔法であの機体を貫きたい。だから詠唱のサポートをしろ!」

第一部や第三部の間接攻撃を軸に攻め、機体にダメージを与える。ロボットは動いても生物ではない以上、殺した数に応じる第五部の魔法や、魔法や能力を持たない上に銃火器で中遠距離から物理攻撃をしてくるため、無力化を図る第四部の魔法は無意味な相手だ。アンリデウスの断つ力で接近戦をお願いしよう。

「任せて……!」

いよいよ最終決戦だ。冠を巡る男と女の戦いの行く末が今、この場で決まろうとする。

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