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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第死章 淫魔護衛編
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五十二話 戦争前

「……来た」

朝の七時半にて、淫魔街正面入口前。その先一キロに暗殺部の軍勢が来たことを紙ドクロが確認。すぐさま俺に報せてきた。

「数はどのぐらい?」

隣のアンリデウスも緊張を鋭くして、俺に顔を向ける。

「ざっと百人。この程度の数ならば、紙ドクロだけでも追い払うことは容易い。まあ、追い払うというのは嘘になるが」

「ええ、ぜひ撃ち殺してちょうだい」

百人程度の群れが相手だと、紙ドクロが七体ぐらい上からレーザー放てば、あとは勝手に死んでくれる。学校はおろか入口に近寄ることすら敵わないだろう。

「しかし不味いな」

「え、何が?」

「サキュバス専門学校を守っている魔術師が俺であることを同時に知られてしまう。恐らく奴らは単に向かってくるのではなく、いわゆる偵察隊としてこちらに来ている。倒してしまえば、その報せで暗殺部は俺対策として作戦を変えてしまう」

昨日の襲撃部隊は飼物かいぶつを連れてここへやってきたが、一人残らず俺が倒し、飼物かいぶつもろとも地中に埋葬してやった。その時点で襲撃部隊が学校に戻らないどころか報告もないから、暗殺部本部室もさぞかし疑問に思っただろう。だから偵察しつつあわよくばサキュバスを奪い取ろうとたったの百人で向かい、その状況を報告するのが、今回の朝の任務だろう。俺がそいつら偵察部隊を倒せば、報告を封じることで、本部室は淫魔街に強力な者がいると判明し、作戦を練ってより凶悪なものにさせる。仮に倒す前に報告されたら、紙ドクロを操る魔術師、すなわち俺が守っているということを知らされ、同様に作戦を変えることができる。攻めの方が時間を掛けて作戦を自在に変えることができるから、暗殺部の方が有利だ。こちらはただ守ることしかできない。それに、暗殺部を裏で協力する魔術師ヤロベアムや、ラボラスが媒体のケルベロスもいる。どう転んでも俺たちが不利だ。

「え、でも倒さないとここに襲ってくるわ」

「どのみち倒すが、俺たちが不利な状況は覆させない。主導権はあっちのものだ。今後の作戦が本命だ。気を引き締めて取り掛かれ」

「分かったわ」

「じゃあ、魔法に集中する」

偵察部隊をキャッチした紙ドクロは、他の紙ドクロを呼び集めながら、上空からレーザーを放つ。一本目のレーザーが偵察部隊の真ん中に落ち、一人の脳天を貫くことに成功。奇襲する側の奇襲に成功した。

 上空からのレーザーに驚き、あわめきだす偵察部隊だが、時すでに遅し。仲間の紙ドクロ六体が集まり、七体一斉射撃。七本のレーザーが降り、百人が集う偵察部隊を崩壊させていく。次々と悪魔が殺されていく中、銃を取り出して、上空にいる紙ドクロに向かって射撃し反撃。しかし紙ドクロは宇宙すれすれの大気圏に浮いているため、大気圏を貫くほどの銃弾でない限り、届きはしない。

「予想していたよ。暗殺部の通常武器が銃だっていうことを」

当然、銃弾は雲を貫くことすらできず、そのまま落下していく。

「しかし銃は結構値が張るはず。奴らは学生のくせに、いったいどこから資金を得たんだ……まさか、資金もヤロベアムの仕業だったり……?」

前回、不死鳥護衛依頼にて、裏空間から狙撃してくるスナイパー、名は確かオセと言っていたか。そいつが狙撃銃と火炎放射器、手榴弾を持っていたが、人間界から密輸している銃を、学生の分際である暗殺部が所持しているのはおかしい。銃一個は、ただのアルバイトで稼げる金額ではない。オセは自力で手に入れたにせよ、昨日の襲撃部隊や今日の偵察部隊、皆が持っているとなると、資金も裏で得ている可能性は十分にあり得る。

「え、なに、奴ら銃を持ってるの」

「ああ」

「ええ……じゃあ本当に学生の分際じゃない」

「まあ、その身を護衛するのなら、こんな荒れた環境では銃はむしろ必然かもしれない」

銃は俺が苦手な武器だ。詠唱中も中遠距離から妨害してくる。剣で弾くことは容易いが、魔法による威力は高いから、銃はとても邪魔だ。

「こんだけ大量な銃を密輸されているようでは、人間界もそろそろ怪しいな」

人間界独自の銃が大量に魔界へ流れているところを察すると、もはや悪魔が人間に憑依して、わざと生産し、魔界が武器で潤うように意図的にそうしているようにしか見えない。人間界も大きく利用されまくっている。

「アンリデウス、奴らは拳銃以外にも狙撃銃を持っている可能性がある。その場合、かなり遠い距離から撃ってくるぞ。だから気をつけろ」

「分かったわ。しかし厄介ね。銃を使ってくるなんて」

「ああ、よほど人間界の武器が使いやすいのだろうな。引き金を引くだけで簡単に、しかも中距離から殺せるからな。剣でわざわざ近寄る必要もなく、魔法を詠唱する必要もない。意外と便利かもしれない」

銃の強みは、剣などの近接武器から圧倒的な間合いで撃てること。魔法は詠唱させる隙を与えないこと。または詠唱という隙から撃てること。だが、俺から言わせてもらえば、銃はむしろ弱点が豊富としか思えない。

「だが、銃の弱点は能力に依存してこないこと。わざわざ能力者が銃を使う必要はない。銃ありきの能力はしょうがないとして、一番厄介なのが能力なのだからな。つまり、銃を持つ敵は能力を持たない、銃に依存した雑魚だと、自ら弱さをさらけ出している。それに何回も撃てば必然と弾切れになるし、たかだか鉛玉、鉛筆をへし折る感覚で剣で斬ることも容易い。弾の補充という隙もある。そこを突けばなんてことはない」

能力一つで戦場の状況はいくらでも変わる。ウァサゴ・ロフォカレのような時止め、チャージ一秒短縮、時速移動を操る能力や、ヴァプラの雷竜化身、シトリーの人魚化身、武器の水変化、怒りの津波、フェニックスの不死鳥化身、回復の炎、グラシャ=ラボラスの空間同化、聖なる祈りの光、鷹犬化身能力などなど、善魔生徒会の能力者は暗殺部視点からするとどれもこれも厄介だ。俺の第四部の闇は能力をほとんど封じることはできるが、一度化身した姿は解除できないし、光は無力化できない。銃にしか頼れない雑魚はいわゆる戦場の駒でしかない。烏合の衆で実力のある能力者は倒せはしない。

「……そもそも剣で飛んでくる銃弾斬れるかしら」

「簡単だ。軌道を見れば、あとはタイミングよく剣を振るえばいい」

「分かったわ」

「さて、今頃奴らはどうなっているかな」

紙ドクロを中継して、紙ドクロの視野になって偵察部隊を偵察する。すると奴らの身体はほとんどが貫かれ、部位を切り落とされ、血を出して倒れている。というより、いつの間にか全滅している。俺が話している間に紙ドクロたちが勝手に処理してくれたようだ。

「全滅したな」

「なんかあっけないわね。っていうか私何もしてない」

「今はな。今後が本命だ。俺の魔法でも学校に近寄られると思え」

「ええ、油断はしない」

これで暗殺部は俺がサキュバス専門学校が守っていると把握してしまった。次から作戦が極めて狡猾に動いてくる。ブネのバーゲスト召喚・憑依能力に、アンドロマリウスとオロバスの未知なる能力は勿論、暗殺部の兵力。更には暗殺部を使って暗躍するヤロベアムのレメゲトンの魔法、油断はとてもできない。

「ゲーティア高校は八時半に朝の会が始まる。今がまだ七時半ちょいだが、奴らも仕事のために遅刻はしたくない。おそらく今日の朝は来ないだろう。少し休め」

遅刻は成績を大きく削る。卒業を目指して異世界で悪さをしたい悪魔にとって、日々の学校生活は大事だ。八時半の朝の会までに、多少余裕のある通学はしたいはず。俺は悪魔と一緒な空間が嫌だから、遅刻スレスレを狙って遅く通学するが、基本、誰だって遅刻スレスレで登校するのは嫌だ。奴らはもう来ないだろう。

 アンリデウスは城門前に置いた椅子に座り、少しでも体力の温存をするが、俺に言葉で謝ってきた。

「なんかごめんねレハベアム。私たちのために成績を犠牲にして」

出席よりも護衛を選んだ俺に、成績が減ることに申し訳なさを感じたのか。

「問題ない。俺は常に全テスト百点をキープしている。たまに一問や二問間違えることもあるが、そのせいで全学生の中で成績が優秀なのは俺だ。一度や二度の欠席は蟻に噛まれた程度だ」

もっとも、ゲーティア高校のテストは、主に悪さをメインにした知識の確かめ。俺に悪魔のようなズル賢さや悪の頭脳が無い分、俺から言わせてもらえば子供遊びのようなものだ。

「……あなたって、本当に出来過ぎたヒトよね……顔にせよ頭の良さにせよ強さにせよ武器にせよ……全て恵まれてるわ。人間という身体以外は。サキュバスにとっては人間がベストなんだけど」

「これが天才の元からの素質でも言いたいのか?」

「天才じゃなければいったい何だというのよ」

「努力だ。俺も地道に努力を重ねているんだ。だが結果は時に残酷だ。努力しても追いつけない壁や、天才だからこなせる壁があって、俺も越えられなかったものだってある。でも、努力しないで才能に頼る奴に負ける気はない」

小学生の頃からゲーティア高校の卒業証書を目指して勉強を頑張ってきたのだ。確かに努力だけでは世は渡っていけないだろう。だが、努力しないものに輝かしい未来はない。あるのはその程度の財産ぐらいだ。

「天才肌の裏には努力と苦労があるのね」

「まあな。あと個人的に天才とか才能とかそういう言葉は嫌いだ。成績トップをいつも取ると、悪魔共から天才とか言われるが、まるで俺が生まれつきの天才みたいな感じだからな。だからイラってくる」

「その発言を凡人が聞いてもイラってくるけどね」

「どうせお互いがイラつくんだ。ならば軽々しく天才とか言うなって話だ。天才も努力しているんだ。天才も才能で結果を出しているんじゃない。才能で全てクリアしていたら、誰だって苦労はしていない」

「ふっ、それもそうね」

努力をしない奴に才能を語る資格はない。こんな才能があったらな、とか、なんで俺が天才じゃないんだよ、とか、なんで俺とあいつじゃ差があるんだ、とか。自分が劣っていることも認められないのでは、優れている奴にずっと見下されたままだ。自分が劣っていることを認めて初めて、努力をしようと芽生える。確かに努力しても優れている奴を越えることは相当困難であろう。努力したから結果は絶対に良いとは限らない。達成したい目標が届かなくて自分の非力さに悔やむだろう。その悔しさを何度も味わってヒトは強くなる。優れている奴も、その悔しさを何度も味わっているんだ。だからそいつは強い。

「学校が始まるから暗殺部は来ないと言ったが、俺のように授業そっちのけで来る場合も大いにある。だから常に緊張感は持っておけ」

成績よりも仕事を優先する生徒もいる。失った単位は後で取り戻すと保証もない行動は完全な自己責任だが、こちらとしては厄介だ。

「でもあなたは常に魔法で見張っておくのでしょ? その間に魔力は減っていくし、いざ攻めてきて少ない魔力で応戦されたら、こっちが不利よ。あなたも休んで、私が前に出るから」

椅子から立ち上がり、俺の前に出る。

「分かった。アンリデウスの言う通りだな。ではお言葉に甘える」

「当然よ」

一旦、紙ドクロをレメゲトンに集め、紙にして元に戻させる。七体の紙ドクロが帰ったら、城門前に戻り、椅子に座る。

「ちゃんとミルク飲んでね」

「……分かった」

右ポケットにミルクが入った水稲のことを指摘。一応ポケットから水稲を出し、適量から少しだけミルクを飲み、魔力を補充。

 昨日の夕方から今日の早朝の間、集団逆強姦を受けて朝を迎えたときのこと。サキュバスたちから、わざわざミルクが入った水稲をくれた。このミルクがいったい何のミルクなのか、いったいどこから搾り取られたミルクなのはご想像に任せるが、そういうわけで飲むのには少し躊躇いがある。集団逆強姦の間にたらふくミルク飲まされたからという理由も大いにあるが、やはりサキュバスたちが搾り取ったミルクというワードだけで飲むのに気が引ける。ただ、紙ドクロ七体分の移動、待機時間、レーザーで魔力は消費してしまい、来ない間待機を継続すれば魔力は無駄に消費。暗殺部が来たら俺の魔力がより少ないことになる。

「俺の休憩が終わったら警備を後退して、なるべく体力と集中力の回復に努めよう」

「ええ」

俺の休憩が終わればアンリデウスが前に。アンリデウスの休憩が終われば紙ドクロの警戒網を張り、その繰り返しで、時間によって失われる体力、魔力、集中力を互いに休憩し合った。

 警備から二時間経過し、十時に突入。暗殺部が攻寄る気配はない。

 ここで左胸ポケットに入れている白い生徒手帳が微動に震えた。生徒会メンバーからの着信だ。手に取りそれを開くと、ウァサゴ・ロフォカレの名が震えている。授業の間の十分休憩タイムに連絡か。

「すまないアンリデウス。仲間から連絡が来た。前へ出てくれるか?」

「ええいいわよ」

休憩中のアンリデウスを前に出てもらい、俺は後退。城門の側に立ち、震えている名を突き、生徒手帳を耳に当てる。

『レハ元気ぃ?』

「どうした」

『どうした、じゃないよ。なんで連絡してこないのよ。昨日も連絡したのに出ないとかまるで死んだと思ったじゃない』

「なに、昨日連絡したのか? だが俺の手帳はなんともなかったぞ」

どうやら昨日はウァサゴからの着信が来たらしいが、俺の生徒手帳は震わず、着信の合図はなかった。

『なんでよ』

「お、俺に言われても……」

「ああ、それは要塞の壁が送信の魔波を妨害したからわね」

警備中のアンリデウスが、送信で出てくる魔法の波が要塞の壁で遮ったと説明。

『おろ、そちらは何方?』

アンリデウスの説明を生徒手帳がキャッチしウァサゴの耳に。

「カイトロワ・アンリデウス・サンソンです。サキュバス専門学校の生徒会長です」

アンリデウスが名乗るから、生徒手帳を耳から離し、城門前からアンリデウスに近寄って俺たちの間に生徒手帳を置く。

『あらあらっ! めちゃめちゃ綺麗で上品な声だなって思ったら、生徒会長なんですかあっ! 私はウァサゴと申しますう。あ、ちなみに私もゲーティア高校の生徒会長です。以後お見知りおきをぉ』

ゲーティア高校とサキュバス専門学校の生徒会長が生徒手帳越しに挨拶。なんか珍しい光景だな。

「ウァサゴ、なんかお前らしくない丁重な挨拶だな」

『うっさい……じゃなくてうるさいですわね。わ、わたくしだってお丁寧なお言葉をお使いますわよお』

言葉までおかしくなってしまったウァサゴ。極めて珍しいシーンを見つけられたな。

「変に気を遣うな。……お前、もしかして連絡苦手か?」

『うっさいわよですっ! 単純に私は、相手と目が合わないとうまく話せないのよわよっ!』

語尾に手に取るような違和感。流石のアンリデウスもフフフと笑いが零れる。確かにウァサゴは相手と話すとき、しっかりとその目を見て話す。真っすぐな性格ゆえ、会話しながら視線を逸らすのはあまりない。

「おちつけウァサゴ。声は綺麗でも、ここの生徒会長も下品げひんな性格しているから、変に気を遣わなくてもいいぞ」

「な、なに余計な事をっ! そんなに私は下品かしら」

アンリデウスのありのままを三文字で言ったら怒られてしまった。

『ここの生徒会長もの、もって何よっ! 私はそんなに下品だっけ?!』

ついでにウァサゴも手帳越しに怒鳴ってきた。自分の心に聞いてみろ。

「……アンリデウス、俺を犯そうとし、挙句冠で俺をサキュバスの王子にさせようとしたよな。更に学校の制服がビキニだし、俺が犯されてお前ニチャニチャ笑顔していたよな」

アンリデウスの下品さを学校の内部情報ごとありのままに説明したら、

「サキュバス専門学校のことを言わないでっ!」

処刑執行用の剣を俺に振るい、咄嗟に後退。一閃をギリギリにかわした。

「あっぶなっ! 俺を殺す気かっ!」

『え、なにレハを犯したの? あっらあああ、まあそういう歳だもんねっ! まあ分かってたことだけど』

心に思ったことを素に言ってしまい、天然に煽る。

「別にレハを犯したっていいじゃない。むしろ何かおかしい?」

『おかしいとは言ってないわ。サキュバスが人間を犯すのはもはや誰でも知っていることだもの』

ウァサゴや天界の女神王アプロディーテも、俺がサキュバス専門学校に行ったら間違いなく犯されると言っていた。サキュバスにとって人間は餌だという認識は、魔界にとって当たり前らしい。

「そ、それもそうね。当然ね、人間の精液は栄養だもの」

『で、美味しかった?』

「ええおいし」

「そこまでだっ! なにウァサゴは余計な質問しているんだっ!」

アンリデウスの回答を俺の怒鳴りで遮る。そんな淫女の感想は聞きたくなし、ウァサゴの反応も聞きたくない。反応次第ではウァサゴの奴、今後とも俺をちょっかい出しそうで精神面に多大なストレスが起きそうだ。

「で、何の用だウァサゴ。要件を手短に言え」

昨日から連絡していたということは、何かしらの用ありや伝えるべき内容があるからだ。肉体美共に風紀が下品な生徒会長二人の挨拶はどうでもいい。

『そうそう、暗殺部らしき生徒の群れが昨日から慌ただしいのよ』

「慌ただしい? 具体的に何が」

昨日は暗殺部の男生徒やブネが造った飼物かいぶつのせいで、淫魔街や学校内は既に騒がしかったが、いったい何が起きたというのだ。

『昨日から運動場に見たことのない大きな機械、名は確かヘイキ? とか呼んでたものなんだけど、それがたくさん置かれるのよ』

「ヘイキ? なんだそれは」

『少なくとも魔界の物ではない。それに部員たちのほとんどが銃器を持っていたわ。おそらくそのヘイキも人間界のものだわ』

「部員たちの装備品はこちらでも確認している。昨日と今日の朝にも暗殺部の部員たちが銃を持っていた」

どうやら本当に暗殺部全体の通常装備品が銃になってきているようだ。兵力が格段に上がったということだな。

『で、そのヘイキには大きくて長い銃口があってね、それが全て、南の方向に差しているのよ』

「南……? ま、まさか……」

ゲーティア高校から南に差してある方向と言えば、ちょうど俺がいる位置だ。

『そのまさか。おそらくサキュバス専門学校を狙っているわ。あの大きな銃口から何を発射されるのは分からないけど、気を付けて』

大きくて長い銃口を持つ巨大な機械ヘイキがいったい何なのかは分からないが、嫌な予感しかしない。人間界の銃は俺が苦手とする武器であり、それが大きいとなると、俺の闇魔法でも防げられるかは非常に怪しい。

『私たち善魔生徒会も今日、運動場に迷惑な物たくさん置いちゃってくれてるから武力行使で注意しているんだけど、オロバスという変態がこう言ってるのよ。『俺に味方すればエロい女ここに連れてくぜ』って。そしたら暗殺部でもない男たちが私たちの邪魔して、運動場に進めないのよ。だからしこたま股間蹴りして性器潰してるわ』

ウァサゴならではのパワーワード『しこたま股間蹴りして性器潰してるわ』。男からしたらそれはそれは恐ろしい発言だが、それはともかくエロい女ということは完全にサキュバスを差している。オロバスという名もこちらで確認済み。つまり、狡猾な作戦が進められているということだな。謎の人間界の武器ヘイキを使った、恐ろしい作戦だ。挙句、暗殺部でもない他の男までもエロに巻き込み、味方付けるとは、どうやらオロバスは男勢から相当な人気があるようだ。

「オロバスという名前はこちらでも確認した。奴の狙いはサキュバスたちを捕らえて、自分の子供を産ませる気だ」

『う、産ませる……?! な、なななななななななんて破廉恥なの……!』

恰好が破廉恥なウァサゴが驚くのも無理はない下品な作戦。初めて聞いた俺でも吐き気を催した。

「どうやらオロバスの遺伝子を継げば、誰でも最強の戦士になれるらしい。だからウァサゴっ! 全力で奴の股間をぶっ潰せっ! いや、全力という壁を超越して、宇宙一金玉潰し王になる勢いでやれっ! その威力は時空をも歪ませるほどの」

性器さえ潰せばオロバスの計画も終わりだ。大地も隕石もなんのそのなウァサゴなら、股間を潰すぐらい空気を吸うように余裕で出来る。とにかくウァサゴにはオロバスの股間潰しという、今後の未来に左右する宿命が掛かっている。潰せなかったら魔界の兵力は無限大に拡大する。そうなると人間界や他の異世界は完全に滅亡だ。

『いや、金玉潰し王に私はなるってヤわよそれ……でも、やるしかないわね』

「ああ、そのヘイキも危険そうだから潰してくれ。俺も加勢してくる」

ウァサゴ率いる善魔生徒会ならば、銃を装備した暗殺部の兵力も余裕のはずだ。シトリーのバリアーで銃弾を防ぎつつ、怪我を負えばフェニックスの回復の炎で。地上戦はウァサゴの怪力とセーレの水。空中からはヴァプラの雷で、暗殺部の兵力を圧倒できる。苦戦する要素はブネとラボラスの媒体ケルベロス、部長アンドロマリウスぐらいだ。俺も加勢すれば戦局は変わる。

『いいやダメよ。たった今ヘイキが十台ぐらい、学校から南に出て行った』

「出て行った……? え、そいつら進むのか?」

『ええ、横に長いタイヤみたいなものでヘイキが移動している。絶対にサキュバス専門学校に向かっているわ。レハ、とにかくそのヘイキを破壊しなさい。そして、サキュバス専門学校と生徒たちを守るのよっ! 奴の思うように計画が進んだらサキュバスたちが犯されるわっ!』

「ああ、分かっているっ!」

移動もできる大きな銃口を持つヘイキ。その姿がいったい何なのかは想像もできないが、俺は最初からサキュバスを守るためにここにいる。いよいよ暗殺部の兵力と正面衝突が始まるようだ。

『いい、死守じゃなくて、守るっ! 死んだらそれこそ守れないっていうことを頭に入れておきなさいよ』

「当然だ」

ここでウァサゴとの通信が終了し、重大な話を隣で聞いていたアンリデウスは、緊張塗れな表情を出す。

「さて、ゲーティアでは既に始まっていたようだな、戦争が。淫魔街もいよいよ戦場となる。覚悟はいいな?」

もはや善魔生徒会と暗殺部の戦争突発は前々からのこと。いつでも戦争が起きてもおかしくない。そして戦争の場所が関係のない淫魔街になってしまった。酷いとばっちりを受けたサキュバス専門学校を守るためにも、俺は死なない。

「……ええ。絶対に、勝ってみせる」

アンリデウスの瞳がいよいよ真剣になってきた。

「その意気だ」

警備としてではなく、臨戦態勢として立つ。俺たちの休憩タイムも終わり、二人で戦う時がきた。授業放棄してまでサキュバスを犯したい変態おとこ軍団たちとの戦争が、もうすぐ始まる。

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