表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第死章 淫魔護衛編
51/88

五十一話 野望の渦巻き

アンリデウスの本当の計画だという、俺にとっても重大な話を聞き終え、夕方。いつのまにか昼休みから帰りの会が行われているであろう時間となっていた。ゲーティア高校では俺は無断で中退したことになり、成績が少しだけ悪くなったのが確定した。

 地下の廊下から上階へ渡り、一階へ。廊下内の壁や床は爆破の衝撃で剥がれ、ボロボロだ。

「修理代が馬鹿になりそうだな」

学校は十三階まであり、三億人のサキュバスが学ぶ場所。途轍もなく広い学校だ。損害金は億よりも遥かに行くであろう。

「もしサキュバス専門学校が崩壊したら、あなたの城に全員引っ越してもらおうかしら」

もしそうなると、サキュバスたちは喜んで俺の城に入り込みそうだな。超大量の白ビキニが保管されていたあの城は、おそらく女天使たちがぎゅうぎゅう詰めになって生活していた。部屋も不自然なほど多く一つ一つがとにかく広い。おそらく三億人のサキュバスも難なく招き入れることは可能であろう。ただ、スペースや部屋には限りがある。何より一人で過ごしたい俺にとって、一人の有意義な時間を邪魔するサキュバスたちは憎き天敵だ。何が何でも入れたくない。天使たちも同じだ。

「それは断る」

「まあそんなこと言わずに。私たちの可愛いサキュバスたちの安全な住処がないと可哀想だとは思わない?」

「この魔界に安全圏はない。所詮、どこに隠れても襲われるのがオチだ。事実、俺の城も容易く侵入されたしな」

最初はシトリーの空間潜り抜けの魔法。表空間と裏空間を繋ぐ魔法で侵入され、二番目はフェニックスの暴走した不死鳥の姿。三番目は天使たち。主に翼を生やす者たちから、森の上空を飛び越えて、陽光が差さない夜の時間に襲われる。それ以外にも、森に火を掛けられたら、蠢く木々も太刀打ちできない。対策はいくらでもある。

「無いよりはマシよ。まあ、どうするかは後で考えるとして……問題は生徒たちね」

「ああ、かなりショックを受けていたな」

不幸中の幸いか入浴室や彼女らに傷はない。だが、流石に大きい爆音で紙ベアムを犯していたサキュバスの群れも気づき、学校の有様やアスモデウスの死に酷く傷つき、悔やみ、悲しみ、怒っていた。そして明日や明後日にも男たちが襲い掛かってくるという恐怖が上乗せされ、精神面に多大なストレスが重く乗せられている。

「アンリデウス、とりあえずサキュバスたちに慰めの言葉と、その逆境をチャンスに変える言葉を言え」

今サキュバスたちは体育館に避難させて、襲撃に備えて籠っている。いつ暗殺部が襲い掛かってくるか分からない今、毎秒ずつ怯えている。このまま不安な日々を送らせてはストレスはより悪化だ。だからこそ不安に立ち向かわせる救いの言葉が必要だ。

「分かってる。私は生徒会長よ。彼らを導く務めがある」

サキュバスの長という自覚のもと、その瞳は彼女らを思う優しさと強い決心と覚悟、そして憎悪が混じり合わさっている。

「俺からは何も言うつもりはないが、俺はサキュバスたちを守るっていうことはきちんと伝えてくれ」

「まさかサキュバスの餌に守られる日が来るとはね……」

さりげなく人間を侮辱する台詞に苛立ち、その瞳に睨みつけ強く言う。

「ふん、勘違いするな。あくまで仕事を全うするから守るんだ。お前らサキュバス含め、全ての悪魔には死んで当然だと思っている」

改めて俺の人間として、被害を受けている全ての者を代表してその考えをしっかりと伝える。アスモデウスがそう依頼しなかったら、死んでも俺は涙や情は出さないし、一番の理由が冠を手に入れたいから、二番目が暗殺部の企みを阻止したいから、だ。三番目以降のサキュバスたちの命なんぞ興味はない。ついで程度で守るだけ。

「サキュバスたちは餌として思ってはいるけど、勿論守ってくれることに関してはきちんと感謝してくれるはずよ。少なくとも私はあなたのことを餌とは思っていないから安心して。良い男だと思ってる」

平然と悪行をこなしヒトを殺す悪魔だが、その命を守ると一応感謝はするようだな。感謝されたところで一ミリも嬉しくない、むしろ不愉快が湧いてくるが、謝るという意思があるだけそこそこマシな生き物だ。

「ふん、それじゃあ体育館に行こう」

「待って」

「なんだ。慰めの言葉、何を言えばいいか分からないか?」

「もう一つのお願い事なんだけど、今更だけどやっぱり聖なるベールを脱いでもらえないかしら」

「今それどころか。皆を慰めるよりもお前一人の性欲を優先したいのか」

もはやサキュバスに犯されるという学校側の要求は意味をなさない。なのになぜ聖なるベールを脱ぐ必要があるのだ。

「違うそうじゃない。むしろ皆を慰めるには、あなたの存在が大切なのよ」

「俺? なぜだ」

「サキュバスたちの不安を退けるには、やっぱりあなたの肉体で犯してもらうのが一番。彼女らは単純な女たちだから、あなたが犯されてくれればなんとか希望を出して立ち上がれるわ」

「おいおい……目の前の絶望より、そんなに俺の事犯したいのかサキュバス共は」

アスモデウスの死や学校の崩壊、男共の進撃による絶大な恐怖と絶望に見舞われても、俺の身体と性器でそんなに希望を出してくれるのか。目の前の絶望感よりも性欲の方が強いなんて、幾度となく絶望を味わった俺から言わせてもらえば、もはや感動レベルだ。頭の中に広がる絶景なお花畑で、その平和すぎる光景に涙無しでは語れないほど。

「勿論、命は取らせないわ。あなたが死にそうになったら助けるし、それに滅茶苦茶に犯された方があなたも回復するでしょ?」

「その台詞、立場が逆だったらお前も回復するか? 雄臭漂う人間の群れにサキュバス一匹。無理矢理自由を奪われ、山ほど与えられる精液で、さあお前は本当に回復するのか?」

逆強姦で犯されて、回復するのはドMな性癖を持っている男だ、きっと。なぜ男が女性の群れに犯されたら、母性だの賢者タイムだので回復すると勘違いしているんだ。アプロディーテやアンリデウスの淫女の考えがあまりにも予想の遥か斜めを行く。

「いやいや人間そんなことしないでしょ。するとしたら悪魔にとり憑かれているよ」

「するという前提だっ!」

「それに、なんでサキュバスが犯される立場なの。犯す立場よ普通は」

「知るかそんなことっ! このドSめ」

どうやらサキュバスは犯される立場の者の見方は理解しないらしい。私利私欲のために平然と犯す悪魔め、許せん。

「そういうことだから、ね、お願い。どうかサキュバスたちに犯されて。私も手伝うから」

「余計なお世話だっ! なにちゃっかりお前も俺を犯そうとしているんだ」

この学校にせよ天界にせよ、淫女は俺の身体にしか興味が無い。命や運命なんぞ二の次だ。男よりも汚らわしい精神を持っている。

「ふん、本当は嬉しいくせに。素直じゃないねえ」

「喧しいっ!」


――しかしこの後、十三階の生徒会室に無理矢理連行され、アンリデウスのベッドの上にて聖なるベールを脱がされてしまった。二人っきりの空間を楽しまれた後、サキュバスたちが避難している体育館に向かい、その不安を八つ当たりするように、安心を求めるために一斉に全裸になって、俺を無茶苦茶に犯した。――


 サキュバスたちと一緒に激しい性夜を迎え、三十日の朝、六時四十分。疲れ果てた俺の体力と空っぽになった魔力が、こともあろうか完全に回復してしまった。

「ほら、回復したじゃない」

ほおら言わんこっちゃないと誇らしく自慢げに語り、非常に悪意のある憎たらしい笑みを俺に向ける。

 今俺は十三階の生徒会室の椅子に座り、用心棒として学校門に立つ前に休憩。アンリデウスは自分の生徒会長デスクに座り、上から見詰めてくる。

「魔力がたっぷり含んだミルクも美味しかったでしょ?」

俺の口に直接ミルクを無理矢理飲まされた。どうやって飲まされたかご想像に任せるが、とにかくそのおかげで魔力ダムは満たされた。俺にとって魔力は生命線だ。

「おっぱいに囲まれて、それでいておっぱいがンンンポを犯して……全身ミルク塗れのレハベアムといったら、ああなんて可愛らしかったの……思い出すだけでゾクゾクするわ」

俺の黒歴史を思い出し、表情から紅色の照れが溢れ出ている。

「……一度サキュバスに屈した以上、仕返しは覚悟しておくのだな」

身体が途轍もなく軽い。余計なモノ全てヌかれたような気分だ。同時に何かを失ったような後悔の念もあるが、この悔しさを胸に俺はまだ強くなって見せよう。

「まあでも、サキュバスたちの勢いの中よく死ななかったわね。助けるつもりで見てたのに、あなた全然元気だったじゃない」

「……一応、経験しているんだよ。天界うえでな」

三億人の女神と百億の女天使との混浴で、俺に性耐性ができたらしい。要は性的ダメージが軽減され、腹上死しなくなったということだな。今回の相手はたったの三億人だ。なんてことはない。ただし、瀕死を味わっていないため、前回とは違い、犯された間の記憶はしっかりと脳に焼き付いている。一生俺はこの記憶と向きあわなければならないと思うと、激しい憎悪が過激化する。

「あ、ふううん」

「察するな。天界について知っているお前なら、俺がどんな屈辱を味わったか分かるだろう」

「当然よ。今回はたったの三億人だし、お風呂も泡も無かったわ。ごめんね、さぞかし物足りなかった部分があるでしょ?」

「たわけが」

天界では女神や女天使たちがその人数的に物足りなかったとほざいていたが、そんな数の暴力を受けたせいで俺の数的感覚が完全に麻痺してしまった。一兆人の悪魔が俺に攻め寄せても驚かない自信がある。むしろ葬れる自信しかない。

「でもおかげで、サキュバスたちに笑顔が戻ったわ。活気が戻り、絶望に立ち向かえるようになった。本当に感謝しかないわ」

逆強姦が始まる前は皆、表情に影が濃いほど暗い気持ちが顔に浮いていたが、俺が現れるやすぐにビキニを脱ぎ捨てるほど取り乱し、終わると皆さぞかし楽しかったように終始笑顔で解散した。更に、襲ってくる絶望を前にしても学校内は活気で満ち、相手が男でも屈しない確固たる気持ちが現れていた。皆、俺の背を期待し、守ってくれると思っている。

「それは良かったな。それよりも暗殺部の動きについてだが、奴らはたとえ朝の通学でも仕事をこなそうとしてくる。つまり通学ついでにここに寄り道して襲ってくる可能性があるんだ」

フェニックス護衛のときも、俺の城から通学路に待ち伏せをしていたほど。学校の寄り道に向かってくる可能性もある。朝から忙しい奴らめ。

「ゲーティア高校から距離がちょっとだけ離れているのに、暇人なのか急がしいのやら……」

「悪魔の考えていることは分からんな」

「なにそれ、サキュバスやアスモデウスにも言っているの?」

「そいつらも悪魔だろう」

椅子から立ち上がり、扉に向かう。ぼちぼち暗殺部の動きがある時間、七時前だ。

「もう行くのね」

「ああ、奴らは人間界の爆薬を持っていた。爆発は俺でも防げない。だから鉄壁の要塞が壊れるという最悪のケースも視野に入れてくれ。当然、全力を込めて守ってみせるが」

爆発の威力は絶大だ。いくら頑丈な壁でも一発や二発で防げるのは難しい。

「私も戦う」

デスクから降り、右手に処刑執行用の剣を召喚し、その柄を握る。

「アンリデウスも? いや辞めておけ。少なくともそんな恰好では奴らの恰好の餌だ。挙句サキュバスの生徒会長。オロバス率いる変態の編隊がお前を見過ごすわけがない。捕らわれるだけだ」

「だったら捕らわれなければいいわ。大丈夫、ちゃんと戦う服はあるわ」

デスクの左にあるクローゼットの中から、血痕が所々に残っている丈が足元まで長い黒いコートを出し、ビキニの上からコートを着た。

「それに、私も能力者。ギロチンを召喚する能力がある。ギロチン落してしまえば楽勝よ」

「なるほど。死神というわけだな」

「そういうこと。言っとくけど私も強いからね」

「頼りにしてる。それじゃ守るために戦うぞ」

俺とアンリデウスは生徒会長室から出て行き、アスモデウスの血痕が強く残っている廊下を過ぎる。十二階へ螺旋階段から降りると、突如とアンリデウスが無言で廊下まで戻り、血痕床の前でアンリデウスが合掌し、祈りをささげた。

「アスモデウス……どうかわたしを見守って。この私が、あなたが大好きなサキュバスを守ってみせるから……」

俺はその祈り中に言葉を発さず、その様子を見守る。俺も、アスモデウスの死は悔やむべきだ。奴は良い悪魔だった。善魔とは程遠い性格だが、確かに良心はあった。この魔界にも、死ぬ必要はなかった悪魔がいると思うと、意外と魔界も世界が広いと知らされる。この世界も意外と単純で、俺も井の中の蛙だ。

「……よし、ごめんね」

「行こう」

祈りに満足したか、アンリデウスの表情は気持ち的に余裕がある薄ら笑みと、戦う前の緊張が入り混じっている。一緒に螺旋階段から降りると、廊下の先々にサキュバスたちが待っていた。

「アンリデウスさんっ! レハベアムちゃんっ! どうか頑張って!」

「この可愛い私たちをどうか守ってっ!」

「私たちは犯されたくないっ! 自分の意思で犯したいんだっ!」

俺たちを見送り、声援を送る。彼女らの表情はやはりかまた不安に満ちている。でも昨日ほどの絶望ではない。俺たちという希望があるから、俺たちに期待を寄せている。辛うじて希望が残っているけど不安という感じだな。

「ええ、頑張ってくるわねっ!」

より不安にさせないようにアンリデウスは満面の笑顔を浮かばせ、サキュバスたちの声援に応える。

 そして一階の下足室から要塞内の外に出ると、要塞内の敷地でもサキュバスの群れが待っており、戦場へ向かう俺たちに絶大な声援を送った。

「「「「「「レハァァァァァァァァァァァっ!!!!!! だぁぁぁぁぁぁぁい好きっ!! だから頑張ってぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」」」」」」

鼓膜が粉砕するほど喧しい声援で思わず耳を塞いでしまうほど。俺はこいつらのために戦っているわけではないが、一応、反応だけは返し、サキュバスたちの生気を上げよう。

「ああ、お前らを守ってみせるよ」

棒声で言ってしまうも、サキュバスたちが爆発するように歓喜し、巨乳や爆乳を揺らす。

「「「「「アンリデウスさん、どうか無事に生きて帰ってくださいっ!!」」」」」

「ええ、当然よっ!」

対するアンリデウスは笑顔で感情が籠った声で応える。

 城門の前に立つと、地面に振動が伝わりながら扉がゆっくりと開かれていく。

「……もしかしたら、お前にとってこれが最後になるかもしれない。負けたらオロバスの奴隷だ。もう二度とここに帰れない可能性だってある。だから、もう一度お前の大切な学校を、可愛いサキュバスたちを見ておけ」

背後から声援を送り続けるサキュバスたちにもう一度顔を合わせるよう提案する。万が一にも俺たちが負けたら、サキュバスたちはオロバスの性処理奴隷となり、孕ませられる。前のような活気溢れる学園生活はもう二度と訪れないだろう。アンリデウスはアスモデウスの死を乗り越え、そしてアスモデウスが託した願いや依頼が全て、俺たちに掛かっている。もし敗北したら、あの世にいるアスモデウスに会わせる顔はない。だったら、最後にサキュバスたちにその笑顔を合わせられば、奴らも不安な気持ちは多少軽減されるであろう。

「……いいえ、見ないわ。最後の思い出なんて不吉だし、まず負ける気無いもの。私は常に未来を見るわ」

「大した自信だな。そういう勝ち気がある奴ほど負けるものさ」

「レハベアムだってどうなの? 最後の思い出はサキュバス専門学校になるかもよ。サキュバスたちにとっちゃ嬉しい限りだけど」

「悪いが、俺の最後の思い出は人間界で終わると決まっているんだ。こんな場所で負けたら、たいせつなひとに会わせる顔がない」

俺の妹というメナリク・モーヴェイツに悪魔の魔の手が迫っている以上、兄として俺が守らなければならない。お互い顔は知らないだろうし、守ったところで気まずい雰囲気になるかもしれない。でも、少なくとも兄として、妹を守れないようであれば人間界も救うことはできない。

「あなたもなかなかの勝ち気ね」

「ああ、ここで負ける未来はない。あるのは、希望の未来だけだ」

未来へ繋がる扉が開かれ、いざ目の前に広がる街。あの街もやがて戦場となり、家も壊れてしまうであろう。学生サキュバス以外の淫魔も既に要塞内へ避難済み。俺とアンリデウス、暗殺部男たちの戦いがもうすぐ始まる。

「死守はしない。俺は死ぬつもりはないからな。俺が行う仕事は、守る。ただのそれだけ。死んだらそれこそ守れない」

「ええ、未来へ行くために、戦うわ」

俺とアンリデウスは城門を潜り抜け、いざ外へ。淫女の匂いが充満した要塞内は吸うのもためらうが、淫魔街の空気も美味しくない。早く森に帰って新鮮な空気を吸いたい。

「お二人ともっ! どうか生きて帰ってくださいねっ!」

「あなたたちが私たちの希望なのだからっ!」

「レハベアムっ! 帰ってきてくれたら滅茶苦茶に犯すからねっ! 楽しみにしててねっ! だから絶対に生きて帰るんだよっ!」

背後からサキュバスたちが最後の最後まで声援を送り続けるが、城門が閉じられていく。閉じられたら生き残るまで聞くことはできない。隣のアンリデウスを見ると、その表情は深い悲しみで覆われ、涙を流している。涙を見せてサキュバスたちを不安にさせないように、ずっと涙を我慢してきたのだな。

 閉じられる前にアンリデウスは腕を震わせながら右拳を上げ、背で語る挨拶を守るべき者たちへ送る。

「……帰るのなら今の内だぞ」

「何を言っているのよ。私にだって意思がある。覚悟がある。生徒会長として彼女らを守るっていう意思が」

「あんま力むな。いざという時に本領発揮できないぞ」

「あなたこそ余裕の態度すぎない?」

「まあな」

俺も右手を上げ、軽く手を振り、その甲を見せて挨拶しておく。

 そして城門が完全に閉じられた。もはや逃げも隠れもできない。守りの要を守るためにここに立つのみ。

「俺の予想では、おそらく暗殺部は朝の通学時と、昼休み、帰りの会終了後の三つの時間に分かれて襲ってくる」

「朝昼夕ね。確かにその時間なら学生たち空いているものね」

暗殺部は授業中以外ならほとんど活動する。隙あらば任務に動く連中だ。だから三つの時間に分かれて動くだろう。

「暗殺部もハードスケジュールだ。うちの善魔生徒会のスパイ曰く、任務に失敗すると減給するらしく、酷いときは殺すらしいからな。つまり奴らも必死でここに来るはず。まあ、性欲優先で喜んでここに攻めてくるだろうがな」

右手にレメゲトンを召喚させ、第三部を開く。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

レメゲトンから七十二匹の紙ドクロを放ち、淫魔街周辺に送る。いつ何時暗殺部が攻め寄せてくるか、常に監視させておかなければ。

「勿論、街に入る前に俺のレーザーで貫いてみせるが、意地でも入りたがる奴らだし、飼物かいぶつも送るかもしれない。そのときこそ、お前の剣で接近戦を頼むぞ」

「ええ、任せて」

「それと、こいつを渡しておく」

俺のポケットから耳栓を出し、アンリデウスに渡す。

「俺の第五部は音攻撃だ。死者の声を聞けばお前も死んでしまう。地面が裂けたらそれをつけろ」

「分かったわ」

暗殺部の変態軍団との戦いがもうすぐ始まる。俺が淫魔街の王子になるか、天界の王子になるか、オロバスが王子となるか、それぞれの目的や野望が渦巻く冠を巡る戦争の行く末や如何に。

































































































「ふあああ今日も学校か……面倒だなあ」

目が覚め、今日も学校という現実の重さにガッカリしながら上半身を起こし、窓から差す陽光を浴び、精一杯背伸びする。

「ああ今日は晴天か。良い天気だけど、暑い。まあ夏だししょうがないか。もう、ホント温暖化ヤだなあ。地球も大変だねぇ」

まだ六月三十日だが、日差しや気温が暑いから実質夏だ。少なくとも私が小学生の頃はまだ温暖化がどうのこうの話題にならないほど程よく温かったというのに、今年はもう暑い。先が思いやられる。

「でも今日は待ちに待った修了式っ! 明日から夏休みっ! そう思うとやる気が湧いてくるなあ」

六月三十一日から夏休み。二か月間の間は遊び放題で更に中学三年生で最後だ。次からは高校一年生となり、別れる友達と最後の思い出になる。だから名一杯遊ばないともったいない。

 扉の奥からノックが三回。施設のマザーが私を起こしに来てくれた。

梨句りく、独り言漏れてるわよ。いいから起きて朝飯食べなさいな」

「はあいっ!」

言い忘れていたが、私の名は明奈めいな 梨句りく。よく間違われるが、めなりくではない。中学三年生の女の子で、私は孤児。道に落ちていた赤子の私を拾ってくれて施設の人が育ててくれた。だから私は施設生活で生活させてもらっている。

 ベッドから降り、再度背伸び。マザーが作る愛が籠った朝ごはんを楽しみにして、ウッキウキと床を歩く。

 扉のドアノブを触った突如、私は不意にあることを思い出す。

「……そういえば私に……兄がいたような……いたような……いるとしたら、兄も捨てられた身なのかな……」

~詳しく教えてっ! 『ソロモン校長の七十二柱学校』のあれこれ~


●レメゲトンの魔法、第二部『テウルギア・ゴエティア』


長い詠唱が必要な分、成功すれば世界を滅ぼすことも容易くできる禁忌の闇魔法。

 一本の柱槍に闇を取り巻き、喜怒哀楽な表情をする緑色の酷女を召喚。合掌し、掌を開けて闇を集中させ、巨大な暗黒星を創る。それを落せば世界は粉々に砕け散り、世界の命は終わる。地上に落とさなくても重力波の乱れや深い憎悪のオーラで、空間や生体の精神を大きく崩壊させ、その爆発は国七つ分を葬る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ