五十話 拷問
「まさか女子高校で男子高校生にとっ捕まえられるとは思いもしなかったな」
「その言い方だとまるで俺が変態のような感じだな」
「事実だろ、侵入している時点で」
「特大ブーメランが刺さってるぞ」
とりあえず全裸の上に透明マント着ているから、これだと絵面が不愉快だから、下半身だけマントを巻いてもらって、地下の牢獄室にぶちこんだ。
「さて、変態クズ。アンタに聞きたいことが山ほどあるの。まさか言わないことないわよねえ?」
憎しみを最大限にまで込めて言うアンリデウスの脅しに、侵入者がビクビクと怯えている。それもそのはず、侵入者は十字架に吊らされて、掌に釘が打ち込まれて完全固定。首の上にはギロチンがぶら下がっている。アンリデウスが鎖を持ち、それを引くだけでギロチンが落ちる仕組みになっている。侵入者の僅かな希望である生存は全て、アンリデウスの気分次第だ。
「ぐへへへ……ちゃ、ちゃんと言うよお……だから、まだ、殺さないでくれェへへへ……」
怯えているのにも掛からわず、雄の野生本能は相変わらずか、視線が完全にアンリデウスの谷間に釘付けだ。よだれまで垂らして、更に腰まで上下に振っている。手に釘が刺されているというのに、瞳は乳に釘付けとは、余裕の証拠なのか雄の塊なのかどっちなのやら。完全に乳に注目しているから、俺の質問にきちんと答えられるか心配だ。その度にちょっとずつ鎖を引き、ギロチンを近づけさせればいいが。
「ホントキショイ……もう見詰められるの耐えられない……!」
男の視姦に耐えられず、更なる屈辱を受けたアンリデウスの機嫌が悪くなり、鎖を思いっきり引こうとした。不味い、これでは拷問する前に殺してしまう。
「待てアンリデウスっ!」
鎖が引かれる前にその右手首を止め、死刑を止める。なんとかギロチンが落ちずに済んだが、引く力が強い。一秒遅ければ確実に死刑が完了していたところだった。
「こいつから暗殺部の情報を引き出すんだ。まだ殺すな」
なぜ襲撃したのか、なぜ侵入したのか、なぜアスモデウスを殺したのか、なぜ学校を爆破させようとしたのか、今後の動きはどうするのか、様々なことを聞かなくてはならない。まだ生かすうちに聞き込みだ。
「俺が拷問するから、アンリデウスはとりあえず引っ込んでてくれ」
男からの変態視姦が嫌なら俺に任せればいい。これ以上アンリデウスをここに置いておくと下手に行動移しそうだ。
「分かったわ……」
右腕の力を緩め、鎖を離してくれたところで俺も右手首から手を離す。今は憎いだろうが我慢するのだ。
「俺から情報を引き抜く? そこのサキュバスがデケぇ胸を使って俺の中身からイロイロ引きヌければいいがな」
挑発とも聞けるセクハラ発言にアンリデウスがブチ切れ。
「こ、こんのおおおおおっ!」
「落ち着けアンリデウスっ!」
怒鳴り、アンリデウスを騙させる。
「レハベアム……!」
俺に振り向くが、その瞳には強い憎しみが露出ている。
「こいつから情報を搾り取らないと、今度暗殺部の男共が何をするか分からない。聞いて事前に対策することでサキュバスたちを守るんだ。それが一番の最良だと分かるだろ?」
暗殺部が一度の襲来で終わらせるとは思えない。前々から男共を向かわせて、サキュバス専門学校の周辺で侵入できるか伺っていたのだ。それが今、最悪のタイミングで侵入される形となり、暗殺部にとってこれは好機のはず。明日や明後日、下手すれば今日にも攻め入りそうだ。
「今は落ち着くんだ。拷問を終えたら好きに殺せばいい。だから今は引け」
俺の説得にアンリデウスの瞳に少し冷静さが見えた。表情や瞳、身体の力みも薄くなり、静かに頷いた。
「……そうするわ」
大人しくアンリデウスは引き、侵入者に背を向けてこの牢獄室の扉に向かった。
「おい、俺のンンンポ舐めなくていいのか? めちゃめちゃ美味しいぜっ! だから舐めていけよっ! パイでズリズリしたらもっと美味しい汁出るぜっ! なあ返事しろよ、このデカ乳ドスケベ女っ! デケぇ乳ぶらさげて群がりやがって!」
女の尊厳を踏みにじる発言を繰り返し罵倒。だがアンリデウスは無視し振り向くことなく、扉を開けて、バンと強く閉めて出て行った。
「必ず俺や仲間がお前らを精子漬けにして孕ませるからなっ! 覚悟してやがれっ!」
侵入者の虚しい最後っ屁だけが響き渡り、二人っきりとなってしまった。男は腰を振るのを辞めて、発情をなんとか収めたようだ。
「さて、と。お前何気に、俺や『仲間』が孕ませる、と言ったな。ということは仲間もここに来るのか?」
拷問による質問攻めが始まった。質問に応じなければその首を切断するまでだ。
「へ、答えなければ首を切断しようってのか。悪いが俺はまだ生きる必要がある。俺のこの美しい遺伝子をサキュバス共に植え付けるまではなっ!」
それはつまり、質問に応じるというわけか。鎖を引く脅しをしなくとも勝手にベラベラと話してくれそうだ。これは立派な偏見だが、女を性道具としか見ていない発情変態の遺伝子はとても汚さそうだ。事実、こいつの精液は濁っていたしな。勿論、産まれてきた命は皆平等に美しいものだがな。
「ふへへそうさ、俺の仲間たちが明日と明後日、サキュバス共を捕らえるために縄をもって襲ってくるんさ」
六月の三十日と七月一日に襲来するということだな。縄で捕らえて性道具として扱うというわけか。
「発情に飢えた奴らめ、流石にお前らが人間界へ行くととんでもない地獄絵図を見そうだな」
女体を性道具と見るこいつら悪魔男共が人間界へ行けば、人間の女性を好き放題にしそうだ。人間の同種族として俺も到底許せない奴だ。
「なに、俺たちも犯すが、多くは我らが男の中の男オロバス様に献上するのさっ!」
「オロバス? 誰だそれは。暗殺部の三年生か?」
まさか部員から三年生のオロバスを先輩ではなく様付けして呼ぶとは、それほど人気が高い男だというのだろうか。
「ああ、オロバス様はな……めちゃめちゃ立派なモノ生やしてるんだ。そのモノでサキュバス共の体内へ遺伝子を注入っ! 今回の作戦は、オロバス様に捕らえたサキュバス共を差し出し、遺伝子を飲ませて、子を産ませるっ! そうすると究極の遺伝子を持つオロバス様の血を継ぐ子供軍団が出来上がるってわけだっ!」
セクハラ行為を通り越して妊娠させるのが目的だというのか。お下劣が過ぎる作戦だな。
「その究極の遺伝子とはなんだ。なぜ子供を産ませる」
「へっ、それは悪魔という身体に大きく、革命を引き起こすためさ」
「革命?」
「オロバス様の遺伝子は、とにかく究極すぎて説明できないが、その遺伝子を継げば誰でも最強になれるんだ。なんなら小指のデコピンで学校を吹き飛ばすレベルさっ!」
こいつも具体的に何が究極なのかは理解していないようだが、とにかくオロバスの遺伝子を継いだ子供は身体能力が格段に高く、総合的な戦闘能力が完成されるというわけか。そんなオロバスの子供たちで最強の軍団を作るというのが、今回の暗殺部の仕事だというのか。
「だからエッロいサキュバスの身体を選んで、捕らえようとした。だから俺は侵入したんだ。お前がサキュバス共に歓迎されたおかげで、学校門が開かれてその隙に侵入した。マジお前には感謝してるぜ」
どうやら俺がサキュバス専門学校の鍵で、俺が入らないとこいつも侵入できなかったというわけか。まんまとこいつの考えに俺が動いてしまったというわけか。まさか俺の嘘が事実になるとは思いもしなかった。
「それにこの学校には、あの天界で創られた王子の冠があるというっ!」
「やはりその目的も一緒か」
なぜ暗殺部が天界の王子の冠を知っているのか、と不自然に思うほど第一に思っていたが、こいつは俺の後につけてたんだ。俺と同じ目的で冠を奪おうとしたのだろうとは薄々気が付いていた。
「なぜそれを狙う」
「単純な話、冠をオロバス様に被せたら、男の権力が強調され、サキュバス共はオロバス様に跪くからだっ! オロバス様はただベッドの上で転がるだけ。あとは冠による権力と絶対的命令でサキュバス共を従え、立派なモノを舐め回させ、究極の遺伝子がたっぷり詰まった液を性処理奴隷共に分け与える! これで遺伝子を継いだ究極にして最強な子供軍団の完成さっ!」
偶然なのか性欲の奴隷が考えることは同じなのか、アンリデウスとオロバスの企みがほぼ同じだ。アンリデウスも冠を使って俺を王子にさせ、その権力でサキュバス共は俺の支配下に置かせる目的があった。オロバスの場合は、本人が冠を被り、絶対的権力でサキュバス共を支配下に置かせ、命令でそのモノとやらを舐めさせ、遺伝子をサキュバスたちに分け与えて、最強の子供を作るのが目的か。女は俺に従いたいと思い、オロバスは女を従えさせたい。権力の象徴をもつ冠によるアンリデウスとオロバスの戦いが渦巻いていたということだな。
「じゃあなぜ学校を爆破させた。場合によってはサキュバスたちが死ぬところだったぞ」
あの複数の爆弾で学校を木端微塵に壊せば、崩壊しサキュバスたちが瓦礫に潰されて死ぬはずだった。オロバスとしても子を産んでもらうならば生かせるべきだ。オロバスに被せるべき冠も下手したら壊れてしまうところであった。
「本来はこの要塞を内側から怖そうって思ってたんだがな。だが、女の良い香りに誘われて、学校内に入っちまったぜ。匂いを嗅ぐだけでこんなに男のホルモンが激増するとは、なかなか罪深ぇ学校だぜ」
「うっかりミスというわけではないようだな。なぜ要塞を内側から?」
「こんな守りに特化した要塞ぶち壊してしまえば、サキュバス共が安心して隠れる場所が無くなる。そうすればあとは捕らえ放題ってわけさっ!」
三億人が集う女子高校を守る要塞。その外壁は鋼鉄で分厚い。生半可な爆薬では壊せられないと踏んで、内側から怖そうと企んだわけか。内側は守りが脆い。この男がとんだ馬鹿なおかげで命拾いしたな。
暗殺部部員が侵入した理由をまとめると、部員たちは外壁周辺でセクハラ行為をしつつ内部の出方や侵入方法を探り、天界の王子の冠とサキュバスたちを奪おうとした。手に入れた冠をオロバスに献上し、権力でサキュバスを強制的に従えさせ、部員曰く究極の遺伝子をサキュバスたちに分け与える。それを継いだオロバスの子供を量産させ、最強の軍団を作ろうとするのが今回の作戦というわけだな。
何が究極なのかは不明だが、オロバスの子供はとにかく強いらしい。そんな軍団が形成されると今度の未来、人間界や他の異世界に壊滅的な影響を及ぼす。それだけは避けなくてはならないというわけだな。もし完成してしまったら、肉体を分裂・生成が可能な不死身の飼物たちとオロバスの子の軍団で、魔界の兵力が格段に増え上がってしまう。そうなるともう誰にも止められない。この世の終わりだ。
「最後に聞く。なぜアスモデウスを殺した?」
アンリデウスが一番怒っている要点だ。俺としてもアスモデウスに警戒はしていたものの命を救われたことは多々ある。殺したのは俺も許せないことだ。
「そりゃ、あんなエロいボディしてたらバッキバキにタッチまうだろ? しかもゲーティア高校に居た頃から俺はアスモデウスに夢中でしょうがなかったんだ。あいつのせいで授業に集中できず、授業中にコシコシしたぜ。それに成績が悪すぎて退学処分も近かった。だから退学する前に犯し、そして一生俺の思い出の中で生きさせるために殺したっ!」
男の勝手な性欲ただ一つのちっぽけな理由で、しかも成績不良を言い訳にして殺し、犯したというのか。とんだクズめ。
「制服の状態でもエロいのに、この学校だとビキニだぜっ! あんま谷間さらけだしたら黙ってられるかよ。あっちからぜひ犯してくださいって言っているようなもんだろっ! 男として俺様はめちゃめちゃ正しいことしてしまったぜっ! しかも誰の精子でも汚されていないダイヤモンド純度百パーセントみてぇな穢れの知らない女体っ! 俺様はアスモデウスの第一犯罪者ってわけだ。もうこれだけでもフル立ちになるぜ。ああおっぱいめちゃめちゃ柔らかくて何度でも揉めたな。指が沈むぐらい柔らかいんだぜ。しかも揉む度に乳がでできてよう、その味といったら男の本能くすぐられたなっ! ああもう一度犯してぇなあ……」
アスモデウスが殺された理由が、こんな一億年放置されたゴミみたいな男の性欲なのだ。しかも暗殺部には多大な性欲でサキュバスを犯したいと狙っている男共が、明日や明後日にも襲い掛かってくる。これを知ったらサキュバスたちは毎日不安で生きていられない。外壁周辺のセクハラ行為でモチベーションが下がるサキュバスたちの気持ちも多少分かるな。
知らず知らずのうちに俺の右手が鎖に伸びる。引力のように右手が鎖に引っ張られる。全くの無意識だ。しかし、こいつの話を聞いて無償にも憤りを感じる。この許せない気持ちが右手に反応し、今すぐにでも処刑したいと鎖に釣られてしまう。
「なあっ! 俺たち男だろ? ゴショーの頼みだ。アスモデウスの死体をここに持ってってくんねぇかな? もう一度あの身体を犯してぇんだっ! いや、もう俺にくれっ! どうせ俺は退学しちまうんだ。働くのも面倒だし、スネップとしてずっとアスモデウスを飼ってやるからさっ! な、たの」
もうこいつの言葉を聞くのが耐えられないと咄嗟に鎖を引き、ギロチンが男の首に落下。死刑はたった今完了された。鎖を強く握りしめていたのを気付くが、握力を緩め、それを離した。
「……やはり、悪魔はこの世から抹消しないとな。誰一人として、未来に悪魔の遺伝子一匹とて逃がしはしない」
こんな悪魔が複数当たり前のように生息しているだけで、現在や未来に多くの生命に危害を加える。人間界なら尚更だ。
結局俺もアンリデウスと同様、漲る憤りを優先に死刑を下してしまった。必要な情報聞けただけ良いが、もっと根掘り葉掘り聞けたかもしれない。
俺も牢獄室から出ると、扉の側にはアンリデウスが立っていた。
「終わった?」
「……ああ、すまない。俺が下した」
妹の仇である以上、アンリデウスがその手で死刑を下したがっていたが、俺も感情に惑わされてつい鎖を引いてしまった。仇を直接取らせてあげなかったことに深く申し訳ないと思う。
「いいえ、むしろありがとうだわ。私があのクソに会いに行けば、またセクハラ発言出してたでしょうし、それに私自身耐えられなかった。だからあなたに任せたいって後から思っちゃったの」
「そうか、それはよかった」
偶然の一致というわけだな。たまたま俺が死刑を下したのが、アンリデウスにとって最良に変更されてよかった。確かに、アンリデウスが暗殺部部員のセクハラ発言を聞いて、やや怯えていたところもあった。これ以上精神を蝕むような発言は聞きたくないだろう。だが、現実は非情か、明日にも暗殺部が襲来するということを教えなくてはならない。前々から怯えていたサキュバスたちの悪夢がまだ続くということを。
「いいか、暗殺部部員曰く、明日と明後日にも暗殺部が襲撃してくるらしい」
「え、ウソ……まだ来るの……?」
「ああ。奴らの目的は、お前が俺に被せたいという天界の王子の冠と、この場にいるサキュバスたち三億人だ」
「冠と私たち……?! なぜ暗殺部が冠の存在を……」
「それは知らない。だが、どうやら暗殺部は、今回の主犯格に冠を被せて、男の権力を実現化させ、捕らえたサキュバスたちを性処理奴隷にしたいらしい。そして主犯格の子供を産ませるのが最大の目的だ」
「な、何よそれ……そんな汚らわしい性欲で権力を握り、私たちを性処理奴隷にして子供を産ませる気……っ! なんて気色悪いのその男!」
俺から言わせてもらえば、アンリデウスが企む計画も汚い性欲で俺を王子にさせようという魂胆だ。オロバスもアンリデウスも企む計画力は団栗の背比べだな。とはいえ、オロバスの計画の方がよっぽど危険性があり、周囲に甚大な被害をもたらす。アンリデウスの計画が実現され、俺が王子になったところで、俺自身がサキュバスたちを従えさせようがなかろうが、周囲に悪影響は全く無い。強いて言えば俺の大切な一人の時間が減るだけだ。食い止めるべき計画はオロバス率いる変態暗殺部だ。
「あ、あああああ明日にも気持ち悪い男たちが襲い掛かってくると……も、もう私死のうかしら……」
オロバスの計画を目の当たりにするとアンリデウスが微動に震え、寒いように両腕を己に抱いた。表情は真っ青で影が濃い。激しく絶望している。
「待て、早まるな」
俺はアンリデウスの肩に手を置き、慰める。
「えっ……?」
アンリデウスは絶望しきった貧弱な瞳で俺の瞳を見詰めた。
「アスモデウスがなぜ俺に依頼したか分かるか。助けを求めているからだ。簡単に死にたいなんて言ったら、それこそ助けを求めて死んでしまったアスモデウスに会わせる顔があるのか?」
およそ九割が俺を王子にさせようという魂胆、一割がセクハラ男子を追い払うという依頼内容で俺はサキュバス専門学校に来てしまったが、その一割でもサキュバスたちは本気で怯えている。本気で助けを求めているんだ。アスモデウスが俺に託した依頼は、この学校に在籍している三億人の命が掛かっている。助けを求めた声の希望を、むざむざと破れさす真似はさせない。
「アスモデウスがお願いした依頼は、俺が絶対に遂行させる。その依頼には三億人のサキュバスの命が掛かっているんだ。これを失敗しては、俺こそアスモデウスに会わせる顔がない。だから、俺に任せてくれ。俺がお前らを守ってみせるから」
アンリデウスの策略により俺はサキュバスに囲まれてしまったが、俺視点からすれば周りのサキュバスたちは敵だ。だが、助けを求めている。ならば俺がやることは一つだけ。善魔生徒会のスローガンである『ヒト助け』だ。
「……ほ、本当に、私たちを守ってくれるの……?」
「アスモデウスが本来、そのように依頼したんだ。学校門の前に立って用心棒として守ってくれって。俺は受けた依頼は見捨てない。絶望している奴らの盾となり剣となるのが、俺の仕事だ」
まさかこのような性欲の渦が事件を引き起こすとは思いもしなかったが、暗殺部の企みを絶対に阻止したい。だからこれ以上の犠牲者は出さない。俺がサキュバスたちを守ってみせる結果こそが、死んだアスモデウスに対する礼儀だ。
「レハベアム……」
「まっ、お前ら悪魔からすれば、俺の言葉なんて綺麗事で青臭いだろうがな。だが俺も仕事上やらなくちゃいけない部分がある。用心棒として学校門に立たせてもらうぞ」
善魔でもないのに悪魔に青臭い台詞を言ってしまった俺が恥ずかしい。言ったって返されるのが罵倒。俺が悔しがるだけで終わる。が、どのみち暗殺部の企みが叶うのが俺が嫌なのだ。守るのはついでだっていう認識でやらせた方がこいつら悪魔にとっても良いかもしれない。
肩に置いた手を離し、アンリデウスに背を向け、一階への階段を踏みだすその時。
「わかった……サキュバスの未来はあなたに託すわ」
アンリデウスの声が俺に響く。
「もし私たちを無事に守ってくれたら、冠はあなたに返すわ」
アンリデウスの口から冠を返す保証が言い渡された。
「返そうが返しなさそうが、そんな悪魔の口約束は信用する価値はない。暗殺部の企みを阻止できたら、間違いなく冠を奪い返す」
アンリデウスの手元には、約束を必ず果たすよう保証が渡される契約の箱がない。お互い騙し合う悪魔たちにとって絶対的な約束において契約の箱が存在しないことはあり得ない。アンリデウスの言葉だけで俺が動くほど甘くはない。
「ただ潔く返すことを条件に、私から一つお願いがあるの。なんなら依頼を出すわ」
奪った冠をただ返してくれるわけではないようだ。その条件をクリアしないと返してくれないのであれば、迷いなく強奪するが。
「なんだ」
「……この私を、あそこに連れてって」
「あそこ?」
「ええ、そこでその女王に私から言いたいことが。この私の、本当の計画を」
――この後の会話は、運命を大きく引っ掻き回す謎の者の真の企みに近づけるものであり、後の大きな展開へ進む鍵となった――




