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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第死章 淫魔護衛編
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死十六話 強襲

 だが様子がおかしい。暗殺部部員は片づけたというのに、まだ気配がする。しかもドス黒い獣が吐く気配だ。

「まだ誰かいるな……」

そのとき、上から白い糸が複数垂れた。白糸の先は倒れた部員の頭にくっつき、白糸を引くと同時に部員たちが吊られて上がっていく。俺も上へ目を向けると、灰色の分厚いくもに巨大な蜘蛛くもが逆さになって足を引っかけていた。

「あれはまさか!」

蜘蛛の肌の表面には様々なヒトの肌であろう多くの部位が縫われている。ヒトの肌が縫われた魔物といえば、以前にもアモンのアジトにて巨大な手の魔物が現れ、表面に腐った様々な肌が糸で縫われ張っていた。その手の魔物を生み出したのは暗殺部の三年生、ブネだ。

「ブネの奴、また飼物かいぶつを造ったらしいな。今度は何を企んでいる」

暗殺部部員がセクハラ行為で淫魔街に来たかと思えば、わざわざブネの飼物かいぶつを寄こしたのだ。暗殺部め、今度はあの学校に何の企みがあるというのだ。

 それはそうと暗殺部の飼物ペットである蜘蛛は釣った暗殺部部員を口の中に入れ、むしゃむしゃと噛む。ゴリゴリと骨を噛み砕く音が漏れ、更に口から大量の血が零れ落ちている。死んだから用済みの部員は食ってしまえという躾けをしているのか。おかげで埋葬する手間が省けたが、いくら死体を下手に利用するとは、空っぽとはいえ命の尊厳を傷つける行為はなんとも度し難い。俺にでも怒りが増す。

「あんな飼物かいぶつがこの街に来たとなると、当然倒さなければならない。暗殺部の攻撃から守るのも仕事だ」

右手にレメゲトンを、左手にダーインスレイヴを召喚し再び戦闘態勢に入る。第三部『アルス・パウリナ』を開き、詠唱する。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

唱えることに成功するとレメゲトンから七百十二枚の紙を放出し、紙ドクロ軍団を形成。人肌蜘蛛に特攻させる。対する人肌蜘蛛は口を開き、血に染まり尖った糸を放出。糸は紙ドクロの頭蓋骨をいとも容易く貫き、紙ドクロの襲撃を返り討ちにした。

「貫いても無駄だ。俺の紙は、今まで奪ってきた悪魔の生命力を持つ……」

貫かれた紙ドクロは一時撤退し、風穴に紙が自動的に生成。復活した紙ドクロは離れた位置からレーザービームを発射し、人肌蜘蛛に的中。七百十二の闇のレーザーがあらゆる部位の肉を貫く。

「ギュアアアアガアアアアアアアっ!」

多くのレーザーを喰らいながらも怒鳴る余裕を持つ人肌蜘蛛は、雲を進み、レーザーから逃げるように走る。その最中にお尻から無数の卵を出し、街に落とす。無数の卵は地上に落ち、その衝撃によって割れてしまう。その中から、蜘蛛の背に上半身のヒト型が生えている魔物が誕生した。

「どこまで生命を侮辱する気なんだ……! あんなおぞましいもの造って!」

ヒト型の瞳は確実に死んでいるが、意識があるのか、死んだ瞳で俺を見詰め、脚を動かし俺に向かった。俺は第五部『アルス・ノウァ』を開き、詠唱。ダーインスレイヴを地に刺し、予め左手を空けておく。

「憎き大天使ミカエルよ。 光で死した死者の祈りを聞きたまえ。我の願いを叶い、滅びたまえ」

左手に赤き魔力が煮え始めた。ヒトが生えた蜘蛛たちが俺に向かってくるなか、地に掌を置き、周囲に亀裂が広がる。亀裂した地は崩れ、蜘蛛たちは足を引っかけて転倒していく。俺はその間に地に眠る悪魔の魂を呼び起こす。

「死んだ者たちからよく聞けっ! 好き勝手に造られた命がどれほど悲劇を生むのかを」

亀裂の奥から死者の魂の雄叫びが発生。空気すら遠くに弾くほどの大音量で蜘蛛たちの鼓膜を破壊。同時に精神、心理に多大な死の恐怖を飲み込ませ、精神をも粉々に破壊していく。辺りの建物さえ木端微塵だ。

 雄叫びが鳴り止むと蜘蛛たちは次々と倒れてしまう。一方、人肌蜘蛛はレーザーから逃げつつ、糸の矢を放ち、紙ドクロ軍団に応戦している。だが、連続してお尻から卵を落とし、淫魔街中にヒトが生えた蜘蛛を大量生産している。

「奴め、孵化に終わりがないのか? さっきのような蜘蛛が生産されたら淫魔たちが危ない」

ダメージレース的に言えば人肌蜘蛛は不利だが、孵化するたびに進む街の被害は時間が経つにつれて深刻化している。一早く仕留めなくては。

「手っ取り早いのは第二部の『テウルギア・ゴエティア』……蜘蛛は上空にいるから、暗黒星を直に当てることができるが、重力のバランス崩壊や生じる爆風で街が滅んでしまう。鉄の要塞も」

いかなる鋼鉄の要塞であれ、世界を粉々にする暗黒星の前ではその辺の大地に等しいもの。あっという間に吹き飛び、粉微塵にしていくであろう。それが魔界へダイレクトアタックしなくとも、重力転換や闇の爆風でその地は完全に消し飛ぶ。今回は淫魔を守るのが仕事だ。護衛対象も殺しては意味がない。

「あの人肌蜘蛛に接近して、大きな一撃を与えまくる。それしかない」

生憎、俺が空を飛ぶ能力はない。紙ドクロを踏み台にして空へ上がらなければならない。この街で一番高い建物の上から紙ドクロに運んでもらって空中へ進もう。

「どこか高い場所は……」

辺りを見渡し、この街で一番高い建物を探す。俺の視界で一番高い建物が映ったのは、サキュバスを守る鋼鉄の要塞。学校の上に更に建設しているのだ。高いといえば当然高いか。

「城壁によじ登り、あそこから接近しよう」

あくまで要塞の中に入らず、城壁をよじ登り、要塞のてっぺんから人肌蜘蛛に接近する。城門の壁に向かって、一気に走り出す。連続して地を蹴り、城門に衝突する寸前に跳び、足底を城壁に付け、重力に引っ張られる前に天空へ向かって壁を走る。ヒトの背の何百倍もある高い城壁だが、猛ダッシュで走り三分かけてようやく、要塞の屋根である破風に到着。破風は平な地形で広大だ。ここから紙ドクロを踏み台にして人肌蜘蛛に立ち向かう。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

再び第三部『アルス・パウリナ』を詠唱し、レメゲトンから紙ドクロを放出。俺の足元から段ごとに上へ行くよう並ばせる。俺は紙ドクロの頭を踏み、上空へ駆け走る。踏み台といえども紙だ。零点五秒とも紙の上で止まっては体重でちぎれてしまう。

「ダーインスレイヴっ! お前の大好きな血があそこにあるぞ。やる気出して斬りかかれっ!」

血を求める魔剣、会話や意思の疎通こそできないが何かしらの生命力を持つ。血を欲するあまり強欲さが目立ち、時に魔法陣から勝手に出てくることもある。その度に俺が落ち着かせるが、ヒトを襲う魔獣ならば好きに血を吸い取るがいい。

 柄を強く握ると、それに応えて剣身が微動に震えた。これは振動だ。ただの斬撃に振動が加わるとより圧倒的な切れ味を帯びる。なかには振動を利用して兵器を造り出し、いとも簡単に地震を引き起こすほどの力を持ち、悪用すれば世界を砕くことすら可能だとか。魔獣を倒す手段ならばどんな手も使おう。

 段を踏み進むごとに人肌蜘蛛に大接近。すると人肌蜘蛛の無数の瞳に俺が映る。

「ギャアアアアアアアアアゴオオオオオオオっ!」

接近する俺に威嚇し、口から先端が尖った糸の矢を無数吐きだす。紙ドクロの段は一本道。回避するため踏み誤れば地に転落。ならば襲い掛かる矢の雨に真正面から向かうのみ。ダーインスレイヴを連続して高速に振り払い、糸の矢を弾き飛ばす。

「うおおおおおおおおおおっ!」

紙耐久の階段を進みながら斬撃を繰り返し、糸の矢を弾き斬る。そして蜘蛛の口前に到着し、瞬時にダーインスレイヴに俺の血を流し込み、魔王の血による斬撃を喰らわす。

「ブラッドブレイクっ!」

左から右へ薙ぎ払い。赤く染まった斬撃は口から頬を裂き、右へ振り終えると流れるように回転し、左下から右上へ斜め斬り。斬り上げたところで再度回転し、今度は左上から右下へ剣身を斜めに下す。重い斬撃は人肌蜘蛛を真下へ落とし、その身は鋼鉄の要塞の破風に強く衝突。俺も紙ドクロの階段から落ち、追撃としてダーインスレイヴの剣先を真下の人肌蜘蛛に向け、下突きの構えに。対する人肌蜘蛛は咄嗟に立ち上がり、顔を俺に向けて糸の鞭を吐きだしてきた。糸の鞭は落下する俺を縛り、人肌蜘蛛は顔を回し、糸に縛られる俺もおおきく振りかぶられ空中を踊らされてしまう。

「うう、目が回る」

回転させられるから向かい風の圧が強く、非常に苦しい。回転に満足したか口から糸の鞭を切り離し、回転の勢いで思い切り糸の鞭ごと飛ばされてしまう。飛ばされた俺は背に壁を強くぶつけてしまい、骨まで折れてしまう。口から血を吐きだしてしまう。

「グフアッ!」

どうやら俺の背後にはちょうど塔があり、遠くに飛ばされずに済んだが、かなり痛いダメージだ。

「ふっ、怒ったか? 顔に切れ込み入れたからな。安全な場所から落とされたからな」

雲から地上の建物へ突き落されたのだ。優雅に遠くから襲える安全な場所から俺の間合いに入ったんだ。仮に逆の立場なら俺も怒る。俺は魔術師。援護魔法が最も得意だからだ。この蜘蛛は攻撃性は低く、ヒトが生えた子供の蜘蛛に任せっきり。最後はハイエナのように弱ったヒトの体を奪う。なんとも外道なやり方だ。

「だが、俺はもっと怒っている。もしこの街の住民が人間ならっ! 人間の環境に土足で踏み込み、平気で襲うお前ら外道な悪魔に魔獣にっ! 俺は負けるわけにはいかないのだっ!」

正直、善魔生徒会の仕事だから淫魔を守るが、端から悪魔の命なんてどうでもいい。人間に危害を加えるのなら死んだっていい。だが、俺の祈りは叶うことなく、悪魔は人間を襲う。この魔物がもし人間界に降り立ったら迷わず街を破壊し、人間を食していくであろう。悪魔のせいで一方的に被害を喰らう人間。これ以上惨劇を繰り返させるわけにはいかない。だから俺はこの怒りを行動に移す。

 背後に叩きつけられた壁に足底を置き、しゃがみ、一気に壁を蹴り出す。思い切って壁にキックし、高速で空中をまっすぐ進む。まっすぐ人肌蜘蛛に向かって突撃し、秒数で間合いに入ると瞬時にダーインスレイヴを振るう。圧倒的な斬撃は人肌蜘蛛の口から上、下へ真っ二つに切断し、互いの切断面の間を通り、人肌蜘蛛の背後の破風に着陸する。

「ブネが造った魔物なんだ。切断程度では生き返る。だから再生不可能なほど木端微塵にしてやる」

切断されても、弱ってはいるが手足や裂かれた口を動かし、俺を睨んでいる。そんな死の手前一歩で苦しんでいる魔物に対し、慈悲か無慈悲か、トドメを実行する。俺はレメゲトンを開き、第一部『ゴエティア』を詠唱。

「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり」

人肌蜘蛛の真上に魔法陣を浮かせ、砲口から七十二本の柱槍を突き落す。柱槍一本一本が人肌蜘蛛の裂かれた体を強く突き、貫く。

 圧倒的なトドメ。第一部『ゴエティア』の柱槍を喰らい、動き共に生命は完全に停止した。

「……死をもって償え。そして悲しめ。自分が造られた命だということを。流石の俺も情が出る」

ひとまずは安心。暗殺部部員と人肌蜘蛛は倒した。あとは誕生させたヒトが生えた蜘蛛の大群の駆除を第三部『アルス・パウリナ』の紙ドクロに任せるだけだな。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

詠唱し、レメゲトンから多くの紙ドクロを放出。街全体に散らばせて、各所を襲う子蜘蛛をレーザーで殺す。

「一匹たりとも逃がすな。必ず息の根を止めろっ!」

紙ドクロの総出な駆除に蜘蛛たちは手も足も出ずにレーザーに貫かれていく。程なくして淫魔街を襲った蜘蛛全て倒し、暗殺部と魔物は全滅した。紙ドクロたちはレメゲトンに戻り、紙になって帰っていく。全てページになるとレメゲトンを魔法陣の中に消し、駆逐は終了した。

「とりあえずこれで平和になったか。一時的なものかもしれないが」

暗殺部がなぜ淫魔街を襲ったのか不明だが、少なくともセクハラ目的だけでサキュバス専門学校に嫌がらせしにきたわけではなさそうだ。でなければわざわざ飼物かいぶつなんかよこさない。何らかの目的や企みがある以上、第二部隊が来てもおかしくはない。

「あれが人間……?」

「なんてカッコいいの……?」

「わ、私たちの救世主……!」

一方、突如として街に活気が戻り、何やら騒がしい。破風から街全体を見渡すと、地に立つ黒ビキニ姿のサキュバスたちが専門学校周辺を埋め尽くし、高く立つ俺を見続けている。

「あれが夢に出たサキュバスたち……」

早朝を襲った悪夢どおり、たわわなモノをぶら下げて黒ビキニを着、九割美肌をさらけ出しているサキュバスが群がっている。

「変態に蜘蛛を倒した人間っ!!」

「きゃああっ! カッコいい!」

「今すぐ犯したいっ!」

俺を英雄視、救世主視し、こともあろうか悪魔が人間を崇めている。もっとも、サキュバスにとって俺という人間は精子の塊でしかないだろうがな。所詮餌でしかない。

「サキュバスたちはあなたに夢中ね」

後ろから声がして振り向くと、早速黒ビキニに着替えているアスモデウスと、瓜二つの顔を持つが褐色肌の黒ビキニ淫魔が居る。

「初めましてレハベアムさん。私はカイトロワ・アンリデウス・サンソン」

「アンリデウス……」

褐色肌バージョンのアスモデウス、アンリデウスが早速現れてくれた。こいつが天界に侵入し、王子の冠を盗んだ悪魔。何気ない様子で俺に接近し握手を求めようとするが、俺は一歩後退し、握手に対しノーと掌を示す。

「あら、握手が嫌なんて、それとも女性が怖いかしら?」

ニヤニヤと笑みを浮かべながらも握手を拒んだ俺に挑発。

「単純に悪魔が嫌いなだけだ。そうやって魅力的なボディで虜にさせて、懐に入れたところで一気にナイフを突くっていう女のしょうもない武器、ド古い戦法が先入観としてだな」

挑発には煽りで返し。対してアンリデウスはフフッと微笑みを零し、トロけるような変な表情に。一切イラつきなどと表情を見せない。

「ああ好みねえ。最っ強に好み。サキュバスのたわわボディに一切魅了されず、谷間にも興味がないように目を向けない。ダイヤモンドよりも美しく、女神よりもエロい女体を前にしても、男としてどうかしているその姿勢。プラスポイントとしてひねくれ者で素直になれないけど、ヒト一倍努力する、そんな高校一年生。こんなの、女としての本能が滲み出るわっ!」

アンリデウスが早速と俺を好み、早くも発情してきた。いきなりとヤバい性格でアンリデウスのペースについていけない俺を助けるようにアスモデウスがフォローをしてくれた。

「実はね、私たち、姉妹なの。ごめんね、変な性格の姉で」

「どうりで顔が瓜二つと思えば」

肌色は違うものの、顔に関しては全く同じだ。だが妙だ。カイトロワとサンソンという名だが、天界で不思議に思った通り悪魔の名前にしては極めて異質だ。ウァサゴ・ロフォカレと同じく、苗字や他の名前さえ持つ悪魔は極めて珍しい。理由は後ほど教えるが、とにかくそれ以外はシトリーやフェニックス、バルバトスにアモン、フルカス、ブネにカイムにアンドロマリウス、皆定められた単名を持つ。対してアスモデウスは、本名がカイトロワ・アスモデウス・サンソンということになるが、どこか違和感がある。言葉では言い表せないが、とにかく違和感がある。聞いたとこがない、というよりかは、伝承に存在しない名前というかなんというか……。それを同じくして、アンリデウスという名前も正直聞いたことがないような気がして、謎の違和感が頭から離れない。初対面なのになぜこの違和感が。

「でも、アンリデウスの言う通り、一早くレハを犯したいのは共感するわね。ねえ皆!」

「「「「「「イエスっ!!!!!!!」」」」」」

アスモデウスの呼びかけに下のサキュバスたちがノリよく答える。

「悪いが俺はお前らの餌になるために来たのではない。あくまで用心棒として来ただけだ。そのことを忘れるな……うん?」

もっとも、俺の肌には女神たちが施した聖なるベールが染みており、サキュバスたちが俺を触ることは難しいがな。よって犯すことなどできはしない。と、心の中で呟いたその瞬間。もう一つ違和感ができた。……なぜアスモデウスは、俺を触ることができたのだ。

 アスモデウスは俺の腕を引っ張り、サキュバス専門学校まで連れてってくれた。このときアスモデウスは俺を触ることにさりげなく成功できている。聖なるベールの効果がアスモデウスにまるで効いていないようだ。異質な名前にせよベールが効いていないのせよ、デウス姉妹、やはり何かがおかしい。

「「どうかしたの?」」

デウス姉妹が考え込む俺に不思議そうに見つめてくるが、俺は首を振り、なんでもないと示す。

「いや、いい。ついでだ。この学校の内部の調査をしてもいいか?」

男子禁制のサキュバス専門学校の生徒会長室にあるという冠を取り返すため、調査と嘘をつき内部へ入らせてもらいたい。

「いいけど、どうして?」

アンリデウスの当然な質問に対し、

「泥棒がいないか確認したくてね」

と、俺の心の中ではアンリデウスピンポイントな答えをし、泥棒というパワーワードでアンリデウスの図星を突くが、平然と表情を驚かせない。

「なに、あの騒動の中で、万が一でもサキュバス専門学校に侵入したって可能性もないわけではない。お前らの下着ビキニが盗まれたらヤだろ?」

どうやらサキュバスというのは嫌な男性に好まれるのは嫌らしい。でなければ、よっぽど人間オンリーな歓迎はしない。そんな心境のなか、変態が侵入不可能な要塞にもし仮に侵入されたとして、万が一にでもサキュバスが着たビキニを盗まれたとしたら、サキュバスは絶対に嫌な反応を示すはず。ぽっと出の嘘だが、説得力は十分ある。

「これまで変態おとこが侵入できたってことは一度たりともないけど、あんな魔物まで出して襲われたのは初めてだわ。それもそうね。ビキニ盗まれたら一生拭えることが出来ない恥だもの。ぜひ隅々まで調査してちょうだい。もとより、学校の中に招き入れるつもりだったけどね」

アンリデウスの許可も降り、端から俺を学校内に入れるつもりらしく、合意に成功。これでサキュバス専門学校の中を歩くことができるようになった。

「じゃあ早速歓迎祭としようじゃない」

サキュバスたちによる歓迎祭が、どう想像が転がしても俺に対し集団逆強姦をする未来しか考えられないのだが、きちんと平然な祭りをするのだろうか。いや、悪魔共に常識な考え方は期待してはいけない。このデウス姉妹、もしや俺を早速犯そうと考えてないか不安なのだが。

「……でもアンリデウス、街は気色悪い虫で転がっているよ。まずは掃除しようよ」

「何言っているの。確かに虫は気持ち悪いけど、虫は無視して、お客様を歓迎するのが先よっ! でなければ失礼でしょ」

「平然と死んだ虫を無視して祭りを開催するなんて、そっちのほうがレハに失礼なんだから! ……アンリデウスの気持ちは分かるけど」

アスモデウスとアンリデウスが言い争いしているが、俺としてはどうでもいいからさっさと学校内を調べたいのだが。一早くここから立ち去りたい。

「姉妹仲良く喧嘩に水を差して悪いが、下に降りればどこに行けばいい」

要塞の破風は真っ平な地形で内部へ降りるような階段が見当たらない。となるとこの二人はどこからここへ来たのだ。

「中央の床に出入口があってね、そこからイけるわよ」

アスモデウスが破風の中央の床に指を差すと、縦に開く式の窓がある。この二人はそこから入ったのか。さりげなく要塞内の出入口を聞いたことで、緊急脱出する際はあの通路を利用しよう。

「俺が掃除するから二人はせいぜい歓迎祭の準備でもするがいい」

掃除当番に名乗り出ることで集団逆強姦から一時的に逃れることが出来る。掃除を終わらせても、俺の身体には天界より宿らせた聖なるベールがある。怪しいデウス姉妹ならともかく、他のサキュバス共に俺は触れない。

「ええでもいいの? ただでさえレハは用心棒としてお願いしているというのに、学校のお客様に掃除なんか……」

「そうよ。この街は広いし、一人でできっこないわよ」

淫魔街の全体的な汚さを放置しているこいつらに掃除なんかできるのだろうか。掃除好きな俺に任せてくれた方がよっぽど綺麗になると思うのだが。

「頼むから俺にさせてくれ……」

俺の切実な願いにデウス姉妹は渋々ながら頷いた。

「わかったわ……でも、無理とは言わないけど早く終わらせてね」

早く終わらせてくれという条件付き。サキュバス共の発情の限界を心配しているのかは知らないが、時間制限内に広い街の死んだ害虫駆除とはかなり鬼畜というかなんというか。ギャラがないと納得できない仕事だ。サキュバス共に取り囲まれるよりかはマシだが。

「ふう……」

「そのため息は、安心したから? それとも賢者モード入った瞬間のモノかしら」

挑発を繰り返すアンリデウスは俺を見ながら終始ニヤニヤして、まるで可愛い小動物を見てて癒されているような表情だ。

「ほざくな」

要塞内へ続く床の窓とは真逆に、破風の崖に歩み、二人は俺に声を掛ける。

「レ、レハ? どこに行っているの?」

「まずは掃除だ。こっちから飛び降りた方が早い」

城壁を走ったんだ。ここから跳び降りることも俺には容易いことだ。

「い、いやいや危険だからアソコから下ろうよ」

「そうよそうよ。ってか、そもそもどうやって要塞の一番上に来たのよ。確かに門は閉まっていたはずなのに」

アスモデウスが床の窓に指を差し、アンリデウスは当然なことに疑問視する。

「そんなの、城壁を走ったのに決まっているだろう。どうせ街に降りて掃除するんだ。ここから降りた方が早い」

「いやいや、城壁って走るわ降りるわって……」

「他所の悪魔でもそんな芸当できるわけ……とにかく、一旦学校の中に入りましょ。ね」

やけにデウス姉妹が止めるが、面倒に思った俺は独断で崖から身を出し、地へ自分を落とす。

「レハっ?!」

「え、自分から落ち……え、ええええええええええ?!」

デウス姉妹の叫びが聞こえたが、落下中の俺には応答ができるはずもなく、足底に壁をつけ、壁キック。一気に真横に飛び、要塞から淫魔街の出入口に向かい、要塞の地に待つサキュバスたちから大きく離れる。

「……ねえ、あの人間。本当に人間なの?」

「実はね、ちょっとおかしいの彼。戦闘中に壁から見てたんだけど、さっき指で銃弾斬ったし」

「ゆ、指ッ?!」

「学校では気合でガラスを触れずに割るし、そのせいで教室では常にレハの殺気が充満して、他の生徒が授業できないんだって。黒獄の天秤戦ではウァサゴの鉄拳が直撃しても耐えたし。他には噂でしか聞いたことがないけど、単独の体術だけで何百匹の大熊も倒すし、大空から落ちても普通に着地できるし、深海に潜って、多大な水圧の中で深海の主を素手で捕まえたとか」

「ちょっと待って。桁外れの体力持ってるけど、どう見ても人間越えしているじゃない。悪魔ですらそんな芸当できないよ。なに平然と怖いことしているの」

「その割には自然に優しく、花を摘んだり踏むと怒るんだって」

「なにそれあまああい。甘すぎて引くんだけど……」

「アイキュウは七百二だって。だから成績も断トツ一位」

「謎の魔術書とか剣がなくても強すぎて、更に頭脳も飛びぬけて、なのに自然と弱者に優しい……何から何までエリートじゃんっ!」

「これは急いで公表させなきゃね。そしたらサキュバスたちがびっくりして喜ぶわっ! もっとメロメロになって発情をより増進……!」

「ええ今すぐ集団逆強姦かんげいさいの準備に!」

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