死十話 じんせい
「話は長くなったわね。さて、早速本題に移りましょうか」
するとセーレは左手に水色の魔法陣を浮かし、そこからハープを出す。
「本題?」
「この私が善魔生徒会に居る理由を、皆に言う時が来てしまった」
「居る……理由?」
そういえばセーレは善魔生徒会所属のメンバーに相応しくない態度が目立っていたが、その点についてウァサゴに聞いてみたところ、どうやらセーレの許可がないとウァサゴは話せないと言っていた。どうやら、セーレ自ら許可を下したようだが、今から何をするつもりなのだろうか。
「皆、私の態度がイマイチ気に入らなかったのかもしれない。でも今から居る理由を言うわ。……いえ、言う、というよりも、見せるって言い方の方がいいわね」
そう言うとセーレは俺の側を通り、グラシャが寝るベッドに寄る。
「グラシャ。話が長くて置いてけぼりでごめんなさい」
グラシャ=ラボラスの元へ近寄り、軽く挨拶の言葉を交わす。グラシャは弱った瞳でセーレを見詰める。
「あなたは……?」
「私はセーレ。……あなたと同じ、二重人格者よ」
「「「「に、二重人格者ああぁ?!」」」」
ウァサゴ以外の生徒会役員がセーレの言葉に驚愕する。
「今の私と、世界を滅ぼすほどの怒りを持つ海神。二つに分かれるの」
「怒り……まさか、あの怒りが……セーレのもう一つの人格……」
街を幾度も沈めた怒りの荒波。感情で海を操ると言っていたが、怒ったときのセーレが、裏の人格だというのか。クールで嫌味を垂らす人魚ととにかく怒り狂う海神。静かな性格だけど怒りやすい、という単なる理由ではないのか。
「に、にじゅう……じんかくしゃ……わたしと……一緒……」
そういうとグラシャは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「……いい、今から私はあなたに残酷な話がある。心の準備関係なく、今からばっさりと言うわ」
セーレお得意のばっさり発言が、心の準備時間は待ってあげないが、前もって言うのは俺が見る中で初のケースだ。
「あなた、ラボラスと別れたい?」
ストレートすぎて意味が深い一言がグラシャ問わず、皆の耳に突き刺さる。
「そ、それはどういう……?」
当然の衝撃発言にグラシャは弱った瞳に感情を揺らして動揺する。セーレは落ち着いた表情で淡々と語る。
「今あなたの内に眠るラボラスが非常に苦しみ、もう虫の息。フェニックスの回復の炎でも治せないんじゃ、せめてなら最期は苦しまずに逝かせてやりたいか、という意味よ」
セーレの隠された力が説明され、皆動揺し、意外過ぎる情報に理解が追い付かない。
「セーレ、詳しく説明しろ。いったいどういうことだ」
俺からセーレに対し説明を求めると、セーレは俺の方へ顔を向かせて、口を開いた。
「ケルベロスは犬の身体を司るラボラスを元に造られた魔物。ラボラスの献身的な肉体の差出や殺戮意欲を買われ、ブネは喜んでグラシャ=ラボラスの身体を手術した。結果、大きな力の代償に、ラボラスの生命力はほぼ一欠片程度。生きるとしても、もう長くはない。当然、それはグラシャも同じこと。人格を共有するこの身体なのだから、グラシャもこの先生きるのは難しい」
ばっさりとグラシャ=ラボラスの寿命宣告を言い切り、その真剣な瞳で生徒会役員を訴えかける。そしてグラシャを見つめなおし、次の発言を出す。
「でも、僅かな可能性を掛けてグラシャが生きる道もあるかもしれない。それはグラシャの気力次第よ。その一方で、生きることが出来たとしても、グラシャが復活すれば当然ラボラスも復活する。必然と元の生活に戻り、グラシャは苦しんでしまう。だとしたら、今しかチャンスはないの、弱ったラボラスを殺すには。それが私の鎮魂曲よ。それであなただけの魔生を描くことができる」
グラシャが生きることができたとしても、もう一つの人格ラボラスも生き返れば、またブネの実験台になるかもしれない。このまま死ぬか、生きてまた影に潜み苦しむか。その二択にもう一択追加したのが、ラボラスを殺すか、ということか。
「鎮魂曲で、瀕死のラボラスを逝かすことができるのか?」
「普通、鎮魂曲は死を悼む目的のものだけど、私の場合は、言うならば安楽死を齎す曲。無条件に聴いたものを安楽に殺す曲よ」
「……ってことはセーレ先輩、俺たちも聴いたら俺たちも死ぬんすかっ?!」
「ええそうよ」
躊躇なくばっさり且つあっさりと言い捨てる。
「ひえ、ひええええええええっ!?」
両手を上げて大仰天するヴァプラだが、他の皆もオーバーリアクションはしないものの驚きが隠せず、表情に溢れ出ている。
「待って。普通に耳栓すればいい話じゃない。そうすれば聴けないわ」
聴いたら死ぬから耳栓すればいい話とあっさり言えるのは、なんとなくセーレがサイコパスっぽく見えてしまうのだが。いやもとからなのか。
「いい、はっきり言っておくけど、それほど私たちセイレーンの歌声や演奏は危険極まりないものよ。聴いた相手は曲に魅せられ、音色に導かれ、やってきたところを渦潮で引き釣り、沈んだところを食す……不幸に見える定められた遭難。それがセイレーンよ。今から行おうとする曲は、ラボラスをそんな気分にさせて、脳の中でその人格を最後に海へ沈める。息ができず溺れ、そのまま海底の一部に。それがセイレーンによる海の鎮魂曲」
伝承によるセイレーンの記述が本当だったとは。毒舌なセーレの血や肌には、しっかりとセイレーンの華麗な技術が受け継がれているのだな。
「どうするグラシャ。二人で死ぬか、一人で苦しむか、友人を見送るか」
ラボラスと共に死ぬか、ラボラスと共に生き、グラシャだけが苦しむか。はたまた、魔生を本当の自分一人のものにするか。グラシャは弱った瞳を下へ沈めて悩む。
「急かすつもりはないけど、早々に決めないと、ラボラスが何をするか分からないわよ。いくら弱りすぎているとはいえ、グラシャと共に自害するかもしれないし、海の鎮魂曲を辞めろと説得するかもしれない。弱っている今がチャンスだということを忘れないで」
弱っているからラボラスはグラシャの人格の後ろで休んでいる。もし万が一人格交換し、ラボラスが表に出れば、今度は何を企むか知れたものではない。今しか決めれないということか。
「……」
益々落ち込むグラシャの隣で、セーレはベッドに座り込み、その手を握る。
「もし決めるのが難しいのなら、一つアドバイスするわ。私三年生だし、下級生の相談に乗るのも上級生の役割だから」
グラシャはセーレを見て、目線があったところで、次に口を開いた。
「私から言えるアドバイスは、たった一つ。――生きなさい――」
「生き……なさい……?」
「なんでもかんでも、辛いから苦しいからって理由で、楽になりたいから死ぬのは間違い。どちらかと言えば、あなたが死ぬことで、あなたを大切に思う者までも苦痛な辛い想いをする。せっかく会えた、あなたを必要とする仲間にも、後々の運命に大きく響く」
「必要とする仲間……」
グラシャが俺へ視線を移した。目を合わせると、俺はグラシャに応えるよう頷く。
「一つの死が、これから先の未来、皆が不幸になる。それともあなたは、皆を不幸にさせたいから死にたいの?」
「そ、そんなこと……私のせいで回りのヒトまで不幸にさせたくない……」
「だったら、生きなさい。生きて、私たちと共に進みましょう。孤独なことはない。仲間はたくさんいても、困らないから」
「……セーレ……先輩……ウッ……」
グラシャから涙が溢れ、次々と出てくる。皮膚を通して一粒一粒が流れ、雫となって落ちる。
「今まで辛かったでしょう。なにせ、あなたはラボラスの影として生き、ラボラスのせいで他のヒトたちが血を流すところを、あなたは何もできなかった。抵抗することも、止めることも。影にいる間は話し相手すらいない。今まで肉体の中に隠れてきたから」
思えば、グラシャの今までの魔生は壮絶なものだ。ラボラスという人格のせいで、ヒトを散々傷つけ、ラボラスの凶悪な姿を見ることしかできなかった。反面教師としてグラシャは一つの肉体の中で善魔の自覚を身に着けるも、身体の支配は多くはラボラスだった。善魔だから尚更、ラボラスの行為がグラシャの優しき心を育てていった。なのに、ラボラスのせいで、グラシャまでもが傷ついてしまった。グラシャの生様が第三者としても考えるだけで悔しい。
そして、あんなに優しいセーレを見るのは初めてだ。毒舌ばっか吐いているのにもかからわず、あんなに弱者の相談になれるとは。真に寄り添えるセーレの本当の優しさに、俺も二人から何も口出しできなかった。
「……影、か……」
狂犬ラボラスの影と、海神の影。二人の二重人格者。強い者と弱い者。あの二人にそんな共通点があったとは。二重人格者にしか悩めないものなのだろう。
「……決めました。私は、生きます」
グラシャの口から、生きる、という強い言葉が出た。
「でも、ラボラスを殺してもらうっていうよりかは、もう楽にさせてあげたいです。罪の償いも大切かもしれないけれど、でも十分にラボラスは苦しんでいます。だったら、あとは私に任せて、ラボラスはどうかもう休んで、と……」
散々ラボラスを苦しめてきたグラシャから、ラボラスの死をも労わりたいという。その要求にセーレは頷いた。
「ええ、端からそうする気よ。一応、ずっと海の中で息ができず、永遠に苦しみを味わわせる曲もあるけどね」
「それは可哀想です……」
やはりそこは毒舌家か、ばっさりとサイコパス発言するセーレに対し、グラシャはそんな曲をラボラスに聴かすことに可哀想と言える優しさ。あの二人は相性が良すぎる。
「さて、準備に取り掛かるから待ってて」
ベッドから立ち上がり、俺らの元に寄り、ポケットから大量の耳栓を出して、両掌に広げる。
「念の為にもう一度言っておくけど、これは聴くと死んでしまう曲。いくら歌声が良さそうだからと言って耳栓外すのはダメよ。それでも聴きたいなら話は別だけど」
「聴いたら死ぬのに歌声は良いんだな」
「ええ、私はあのセイレーンのセーレだから」
単純な理由をつけるほど歌は綺麗なのだな。まあ今回は聴くことはできないから耳栓は付けるしかあるまい。俺たちはセーレの手に集まり、耳栓を二個ずつ取る。
「あ、ついでに私も」
善魔生徒会役員ではない、自称俺専属看護師アスモデウスもちゃっかし耳栓を取る。お前は聴かなくてもここから出て行けばいいだろう。
そしてセーレの両掌から耳栓がなくなった。耳栓は売り切れだ。
「あ、あの……俺の分は……?」
なお、唯一耳栓が取れなかったヴァプラがセーレに問う。
「あら、そんなに私の歌声が聴きたいの? じゃあファンとなってあの世に行って、私の事をたくさん宣伝してね」
「い、いやだあああああああああああああああああああああっ!」
そもそも役員ではない部外者のアスモデウスが役員のヴァプラの分の耳栓を取っているから、ヴァプラは両手を耳で防ぐしかあるまい。或いはここから出て行くか。もっとも、両手で耳を防ぐことができたら、端から耳栓は用意されていないだろうが。
「じゃあグラシャは肉体の中に隠れて、ラボラスに交代して」
グラシャの元へ寄り、ベッドに座った。
「分かった……でも、最後に良い? せめて、ラボラスと話させて……」
「……ええ、勿論よ」
するとグラシャは瞼を下ろし、一時的に睡眠に入った。どうやらあの肉体の中は、二つの人格同士が会話できるらしい。最初出会ったみたいに、一人二役のような会話はしないのだな。
「ウァサゴ……お前は最初から知っていたんだな。セーレの本当の姿を」
小声でウァサゴに聞いてみた。毒舌家でヒトのことを散々小馬鹿にしズケズケと言い張り、印象は悪いが、蓋を開けてみれば、とてもとても優しい性格だ。あの姿や姿勢こそ、本当の意味の善魔だ。
「セーレ自身、自分があんな性格しているとは気が付いていないようだけどね。この魔界で生きていくためには、善魔を隠すか、堂々と見せびらかすしか方法はない。だから悪魔の皮をかぶって、でも心の内には善魔として弱者を労わっていた。ホント、素直になれないわよね」
「デレのないツンってわけか……」
善魔であることがバレたら、悪魔から忌み嫌われ、生きづらくなる。だからあえて悪魔の皮をかぶって、悪魔に成りすまして生きてきた。だから俺たちにも悪い言葉遣いをしていたのだな。
善魔を隠して生きてきたグラシャとセーレ。本当に共通点が多いのだな。だからセーレはあんなにグラシャに優しくできる。
「疑って悪かった、と、とても思う」
善魔生徒会内のセーレやスパイとして俺と出くわしたときは、俺の内からも憤りがありセーレを追い詰めてきたが、真の優しさに気が付けなくて、本当に申し訳なく思う。
「……最後に話せました。もう、悔いはないです」
グラシャの口から言葉が出て、瞼を開けた。
「今から、ラボラスに交代します。もしかしたら、最後の力を振り絞って襲ってかかるかもしれませんから、私を拘束してください」
「分かったわ」
ベッドについている鎖を掴み、グラシャ=ラボラスの手足首を縛った。
「さて、じゃあ早速始めるわよ」
セーレはハープを肩に構え、右手で弦に触った。他のヒトの心の準備お構いなく始めようとするから、俺たちは急いで耳栓を耳の中に塞ごうとする。
「じゃ、じゃあ俺は逃げますのでっ! まだ演奏しないでくださいねっ!」
当然、ヴァプラはこの教室から出ざるを得ない状況に。しかしここでセーレが追い打ちをかけるような一言を出す。
「ちなみに言っておくけど、この曲は爆音波だから、半端な距離だとあっという間に鼓膜潰れるわよ」
「そ、それを早く言ってくださいよおおおおお!」
青ざめたヴァプラは一目散にこの教室から出て行き、竜の翼を展開して窓から外へ慌てて飛び出していった。
「……セーレ、それは本当なのか? それともヴァプラをおちょくっているのか?」
僅かだがセーレの口角が上がっていた。ほんの僅かな微笑みだが、セーレの毒舌からして本気の発言なのか、分析が難しい。
「それは自分の耳で確かめたら?」
危険極まりない音の破壊力を自分の耳で確かめろと無責任なサイコパスが籠った悪意のある発言。俺までおちょくられている気がする。
「じゃあグラシャ。あなたは生きて」
最後に告げると、グラシャは頷き、瞼を下ろした。それから数秒後に瞼が開けられた。
「……っ!? な、なんで私がこんなところにいるんだ」
一気に口調が荒くなった。これはラボラスだな。弱っていても言葉遣いは相変わらず強いようだ。
「おいてめえ! なんだこの鎖は。この私を縛るとはなかなかの度胸じゃねえか。こんなもん……!」
ラボラスは自力で先端部分を上げて、縛る鎖に抵抗するが、鎖は引きちぎれなかった。鎖同士が擦る音すらしない。
「……クソ、なんで引きちぎれねぇんだ。いつもならできるのに……」
「それがあなたの力の代償よ。ラボラス」
セーレがラボラスに強い姿勢で強く言う。
「ああ? 誰だてめえ」
「私は善魔生徒会のセーレ。今から、あなたに裁きを下す者よ」
「はああ?! なんでこの私が見ず知らずの善魔野郎に裁きを下されないといけねぇんだっ!」
「まあ、あなたからすればそう見えるのも無理はない。逆の立場だったら私もそう思うわ。でも、あなたは善魔生徒会に喧嘩を売った。でもまあ、最期だもの、せめて良い曲聴かせてあげるわ」
「っざけんじゃねえええっ!」
憤怒するラボラスが暴れるが、鎖一つとして微動だにせず、まったく動けていない。
「あ、おい人間っ!」
ここでラボラスが俺に向かって怒鳴る。
「二度も負けてしまったが、次こそはぜってぇ負けねえっ! この私がなにをされようとも必ずっ! その汚ぇ首食いちぎってやるからなっ! 覚えてろっ!」
威勢だけは一丁前だが、生憎ラボラスが俺を襲うのはもう来世になるだろう。どんなに吠えようが、何も怖くはない。負け犬の遠吠えだ。
「ふん、やれるものならな。お前が次襲い掛かってくるのが楽しみだ」
「ああ楽しみに待ってな。そん時は派手に血祭りだっ!」
「そうだな、尻尾引っ張られないよう気をつけろ」
最後にそれを言うと、ラボラスの表情に紅色の照りが出た。
「うっせぇっ! ヒトの弱点言いやがって」
心底恥ずかしそうな表情だ。尻尾を引っ張られると気絶するというのは、戦闘狂の弱点としては随分と可愛らしいものだ。
「では、レハベアムの代わりに言わせてもらうわ。……私たちはあなたに訴える。それ相当の裁きをね」
セーレが俺へ顔を振り向かせ、その目線が意味するメッセージ的な何かを受け取った。直感的な受け取りだが、『今から演奏するから耳栓して』だろうか。とりあえず耳栓で自分の耳を塞ぐと、セーレは頷き、ラボラスへ振り向いた。
ここからは完全に無音の世界。他の仲間が何を言おうがセーレの歌が凄かろうが、俺には全く何も聞こえない。だが、もうじき行われよう。セイレーンによるセーレの精錬された聖なる死のセレナーデが。
セーレが右手でハープの弦を引いた。すると、弾かれた弦から水の音符が撥ね、空中に浮遊する。華麗に指を撫で、弦が音を奏でる。その度に水の音符が辺りに舞い飛び、保健室はあっという間に芸術的な楽譜の世界と化す。水の音符同士が当たると、空中に水の波紋が広がり、広がり終えると儚く消える。音が聴こえなくともこの目だけで十分すぎるほどのオーケストラを視れる。まさに視るオーケストラだ。
「す、凄い綺麗だ……」
自分の声すら聞こえないのに、つい言葉が零れるほど。ここにいる仲間やアスモデウスも水の音符による芸術に驚き、感動する。
一方ラボラスはというと、両瞳に海が映っている。第三者から見ても、今ラボラスは海を冒険する船に乗っているのが分かる。そして、ラボラスが乗る船に、北風に乗って空中を漂う水の音符が現れた。ラボラスは水の音符に注目し、船を北へ方向転換させて進んだ。本当にラボラスはまんまと歌声と水の音符に導かれたのだな。言うならば、セイレーンの罠に。とそのとき、海に突如と渦潮が発生し、船は海の中へと引きずり込まれた。ラボラスも海の中へ沈んでしまう。だが、海の世界は、例えるなら宝石が眠る宝箱の中。ありとあらゆる宝石のような輝きが海の中に広がっていた。溺れたラボラスの周りに、貝ビキニを着た美しきマーメイドたちが現れ、ラボラスの手を掴んだ。そしてマーメイドたちがラボラスを引っ張り、一緒に海の中を泳ぐ。そのときのラボラスの表情はとても楽しそうで、海の中だというのに全く酸欠で苦しむ様子はない。現実のラボラスも同じ表情をしている。曲で聴いた相手を惑わす幻術な芸術。そして瞳に映る映画に、徐々に輝きが失せ、最期は映画そのものが消えていった。だが、ラボラスの表情はなんとも快楽に死んだかのような安堵の笑み。
そのとき、赤い右眼が青色に染まっていき、オッドアイから両目の色が青へ統一された。
「赤い右眼はラボラスを表す……ということは、ラボラスは死んだか」
セーレはハープの演奏を止め、右手を下ろす。直後に辺りに浮く水の音符も消え、視るオーケストラは終わってしまった。俺たちは耳栓を取り、グラシャの元へ集まる。するとグラシャは青い両目で俺たちを見詰め、口を開いた。
「……私を、善魔生徒会に入れてください。今は病弱ですけど、復帰したら絶対に皆さんを光で守ってみせますから……」
改めて、グラシャの口から善魔生徒会への入会の言葉が聞けた。グラシャを邪魔するもう一つの人格ラボラスがいなくなった以上、ようやくグラシャの希望が叶ったというわけだな。グラシャは元々、ウァサゴの力強い演説に救われ、善魔生徒会に入りたいと言っていたからな。
それに対しウァサゴは涙ながら頷き、
「ええ、それまでは私たちがあなたを守るからね……」
入会を即座に受け入れた。次にグラシャは俺を見て、右手を俺に伸ばしてきた。俺は右手を掴み、その温度を確かめる。僅かだが、ほんの少しだけ冷めた温度から温かくなってきている。
「レハベアムさん、あなたは私の……いえ、ラボラス含め、私たちの命の恩人です。私も救ってくれて、あなたを殺そうとしたラボラスさえも、死を見送ってくれて……本当にありがとうございます」
「当然だ。お前の悩みを解決するお手伝いをするのが、俺たち善魔生徒会の仕事だからな。一早く、俺たちの仲間として来てくれるのを待っているぞ」
「はい……ありがとうございました本当に……」
これにてようやく始まったというわけだな。グラシャだけの魔生が。魔生の第二スタートが今この瞬間、ゴールへ歩み出た。
「確かにラボラスはひどかったヒトです。でも、それでもいつでも私の隣に居てくれたヒトですし、それに、いくらラボラスの希望とはいえ、ラボラスをあんな獣にさせたブネを許せません……! いつかラボラスの仇を討ちます。だから、ラボラスの名前は私が引き継ぎます。今日から、私の名前はグラシャだけではなく、ラボラスのために、ラボラスと一緒に名乗ります」
「分かった。グラシャ=ラボラス。いつか、お前にブネの仇を討たせてみせる。全力でサポートするからな」
「はい、ありがとうございます。レハベアムさん……」
ここでグラシャ=ラボラスは会話に疲れたのか、首をこけっとベッドに枕元に落とし、そのまま睡眠に入った。
「……寝ちゃったわね」
「ああ、このまま寝かせておこう。ただでさえグラシャ=ラボラスは疲れているんだからな」
よくここまで頑張ってこれたな。ただでさえ弱っているというのに、よく俺たちの会話に付き合ってくれた。
「生きるっていう意思を持つと持たないとでは、だいぶ違うな……」
何が何でも、俺は生きるという意思を持って今まで生きてきた。ケルベロス戦だって、絶望な状況でも生きてみせるという強い意志で俺は生きた。確かに、生きるって意思を持とうが絶対的な力の差では俺は死んでしまうだろう。それでも生きる意志を諦めなければ、活路は開ける。生きることを諦めたら、どのみち死んでしまうのは避けられないのだ。
それはグラシャもそうだった。セーレが生きる意志の尊さを教えた。だから、グラシャは生きることを決意し、善魔生徒会に入ってくれた。もしセーレの説得が通じなかったら、今のグラシャの体は魂が抜けた空っぽの死体だったかもしれない。これが、生きる意志の有無の差か。
「彼女は俺の城で預かろう。いくら保健室だからといって、ここはゲーティア高校。悪魔が下手にグラシャに触るかもしれないからな」
「そうね。それが良いわね」
では、あの白ビキニが埋もる部屋の掃除としなくてはな。これはまた大変なことになりそうだ。
「じゃあとりあえず皆お疲れ様。本当に長い一日だったわねえ」
「ホントだな」
グラシャ=ラボラスが生徒会室に来て、バーゲストの妖精が襲来。アモンのアジトに行って、海神セーレを倒し、魔物も倒し、ケルベロスが分裂しまくり、逃げられるもグラシャ=ラボラスの救出に成功。とてつもなく長い一日だった。
「城に戻って祝賀会としますか。グラシャ=ラボラスの入会祝いも含めて」
ウァサゴが勝手なことを言うと、皆がどんよりした表情で嫌そうなブーイングする。
「ええええ……」
「そ、そんな……もう休みましょうよ」
「言っとくけど、もう私クタクタだから参加はしないわ」
フェニックス、シトリー、セーレがウァサゴの底なしの体力とポジティブさに呆れている。
「……ウァサゴ、お前に一つ良いこと教えてやろう。一種のなぞかけでな」
「あら、レハがそんなこと言うの珍しいわね」
「悪に蔓延る世界と掛けまして、汗を流す重労働と解きます」
悪に蔓延る世界とは、まさにこの魔界で、汗を流す重労働とは、今日この事である。悪の世界の大事件で俺たちの身体には、とてつもなく重い何かがどっしりとのしかかっている。
「その心は?」
「疲労は遅れてやってくる」
「おお、レハっちですねえ」
「上手いっ!」
「それもそうね……私も疲れたわやっぱ。実はまだ回復しきれてないし……」
こうして、犬との壮絶な戦いは終わりを迎えたが、肝心の暗殺部のブネはまだその首を撥ねていない。だから安心するのは早い。これから暗殺部の攻撃はもっと強くなっていくことだろう。仲間を守るため、世界を守るために、運命に立ち向かって行こう。うぬぼれているわけではないが、どっかの中二病善魔みたく、人間界を守るヒーローとして。
「グフアッ……!」
ブネの右肩に針状の光線が貫く。ブネは倒れ、光で肉が徐々に溶かされ、次第に溶解は弱くなっていく。
「俺が部長である限り、生命の尊さを傷つける輩は誰であろうと処罰を下す。これであの人間の前に立っても、俺は堂々と居られる」
ブネはアンドロマリウスを睨み付けながら立ち上がり、壁に寄り掛かる。
「はぁ、はぁ……っ。本当に善魔並みの甘さね。命なんて、利用するものでしょう。弱者なら尚更」
「強くなれるのなら命は道具なのか」
「ええそうよ。弱くて、訓練しても強くなれないのなら、身体の構造ごと、自分好みにイジくればいい。改造次第ではとても強いのよ。強ければ負けないし、野望も目的達成しやすくなる……!」
「強さがそれほど大事か……。力を大切とする者は、力のありがたみを知らない」
「だから力を求める……! 私たちはより多くの生命体を殺したい……その本能がアンタにないわけ?!」
「ない」
アンドロマリウスのその発言に、ブネは呆れる。
「はあ、これだから部長は」
「俺の目的はただ一つ。魔界と人間界の平和を創ること。俺が言う『平和』とは、お前には具体的な意味が分かるだろう」
するとブネは、アンドロマリウスが語る『平和』について頷く。アンドロマリウスはブネに向かって、『平和』の持論を語り始める。
「ウァサゴが語る『平和』とは、例えるなら、荒地に花を咲かせることだ。そんな無駄な命を増やすことは神の冒涜だ。命の分だけ、対立が生まれる。命と命の衝突は命を減らす。正義を貫くあまり、悪の命をもっと減らされる。完全な正義を目指すあまり、悪の命を根絶やしにせんと戦う正義の姿が、本当に正義なのか……? 命を減らしてまで勝利を得た正義は、平穏に浮かれ、そのくせに命を増やす。そして、命の数だけ、日の目と影、どちらかを浴びる。そうして再び正義と悪の衝突が展開される。ウァサゴが目指す『平和』とは、命繁栄のこと。命の衝突こそが、正義と悪の均衡を崩すもの」
アンドロマリウスは左手を握り絞めると、顔を上げて瞳から涙を一滴零しながら、次なる言葉を出す。
「俺が語る『平和』とは、例えるなら、花園を全て刈り取ることだ。このような偉大なる命を減らすことは神の偉大だ。命の分だけ、対立が生まれる。正義と悪の衝突。正義は正義なりの平和、悪は悪なりの平和がある。これ以上、正義側の命は繁栄する必要はない。余計多く、争いの火種を生むだけ。何人たりとも、悪の平和を乱す者は俺が許さない。俺が目指す『平和』とは、命の均衡を保つこと。均衡こそが、争いを無くすこと。すなわち、『人間界と魔界の平和の在り方』だ」
右手で涙を拭くと、右手が光を放った。
「正義には分けて二パターンの、正の正義と負の正義がある。真に正しき正義だと言い張る二つの勢力は争う……そう、命を減らしてまで、な。だが、悪はどう転んでも悪は一つしかない。真に間違った悪で争う勢力がこの世にいるか? 間違いを言い張る悪は、それでこそ完成形の悪だ。こんな魔界に突如と真に正しき悪魔、すなわち善魔が誕生した。よって、正の悪と負の悪の衝突ができあがってしまった。正の悪を掲げる善魔生徒会め、許すまじ。負の悪を掲げる暗殺部が必ずやその首を撥ねてみせる」
握りしめる左手を、光る右手で包み込み、骨をポキポキと鳴らす。
「今こそ悪の命を滅ぼさんとする正義に、負の悪を変えんとする正の悪に、争いの火種を生ませたとして徹底的な罰を下す……この俺の手で」
暗殺部部長アンドロマリウスの演説劇に、ブネは全く理解が追い付かないような険しい表情をしている。
「ああその……何を言っているのか全然わからないんだけど」
「なんかこういうパターンいるよな。難解すぎる悪とか正義とか均衡とか語る大きい妄想する奴」
ブネの背後から、ゲーティア制服を着た人馬型の悪魔が、腰に剣を差して部室へ入ってきた。
「オロバス。アンタいつの間にか来ていたの」
「だがまあ、アンドロの言いたいことはなんとなくだが分かる。要約するとだな、偽善者全て切り捨てるってこったな。正義のヒーローとか正の悪を掲げる善魔とか、見てると我慢ならないようだな」
「そういうところは悪魔っぽいわね。殺戮本能がない変わった奴だけど。命がどうのこうのうるさいしね」
「……それ以上、俺をディスるのは辞めだ。俺はあくまで、真の負の悪のために戦う。それこそが『平和』へ繋がることなのだ」
「ああはいはい分かった分かった。それより、俺はいよいよアソコに進撃してもいいよなあ?」
オロバスはアソコの言い方に独特なイントネーションをし、部長に確認する。
「サキュバス専門高校か」
「ああそうさっ! 俺のもう一本の特別なダイケンでタネをバラまいてやるっ! 俺の立派なオオきさに驚き、サキュバス共興奮して飛び掛かってくるだろうなあ、二へへへへ。まさに極上のハーレム。あああ金属製の分厚いパンツがまた貫通してしまいそうだぜ。もう軽く一マン個のパンツが犠牲になったかな。魔界一硬い金属なのによお」
「……ねえ、大胆にセクハラ発言やめてくれない? 私も引くから」
「ブネのように命を壊すなよ。あくまでオロバスの遺伝子を広げるのが目的だからな」
「任せろっ!」
すると人馬型のオロバスは喜んで部室から飛び出して、その目的地まで行った。
「オロバスの遺伝子はまさに究極体。全ての生物のデータを持つ。未来の暗殺部はオロバスの子供たちが受け継ぎ、これ以上のない最凶の組織が出来上がることだろう」
「……ハレンチが極まると種馬となるのね、男って」
「正義や正の悪は次第に勢力を増していく。ならば悪もこの先強くなければならない。そのためにはオロバスの遺伝子が必要不可欠なのだ。悪の『平和』を支えるのはオロバスと言っても過言ではない」
「女の敵であるのは間違いないけどね」
暗殺部の次なる策が、ゲーティア高校だけならず、他の学校にまで悪の手が差し伸べようとされている。これに善魔生徒会はどう動くか。
~完~
「ふうう、さてと。ようやく鷹獅子護衛編書き終えたああああ。あとはハーレム編ね」
画面がついた方をキーボードに下ろし、ノートパソコンを閉ざした。私は背筋を伸ばし、眼鏡を外して机に置いた。そして椅子から立ち上がり、私のベッドにダイブする。母性のように柔らかいお布団が、座りっぱなしで疲れた私を包み込む。
「……他の皆、どうしているんだろうな。もう今頃書き終えているんだろうか……」
今は夜の十二時。子供は成長のために寝て、大人は怠惰のために夜更かしする時間だ。というのは完全な偏見だけど。それより他の作家たちはこの時間に、それぞれの作品を書き終えたのか、なんとなく気になった。
「まあ、いいか。寝えちゃお」
気にしたからといってどうこうする立場ではないし、寝ていたのなら連絡したら起こしてしまうし、何もしないことにした。瞼を下ろして、そのまま寝ることにした。
「……んん。誰か居るな、この部屋」
この私、語聖 澪亜が書くライトノベル小説『ソロモン校長の七十二柱学校』。書いている最中や休んでいる最中、たまに背後に誰かが私の文章を見ている気がする。また、何かを喋っている気がする。しかも二人だ。いや、正確に言うならば、気配Rと気配Yというように、二人同時が来るのではなく、一人ずつ。そのうえ、なんとなくではあるが、その気配の主が発する雰囲気が空気の流れを変える。だから直感的で確信はないが、気配が二つなのだ。
書いている間は気配Rだったが、今の気配はYだ。気配Yがなんとなく私を見詰めている気がする。Rの気配は守護神のような優しいオーラを発している……気がする。対し、Yの気配は言うならば殺意に満ちた悪霊。とてつもなく悪い気を発している……ような気がする。とても確信はない。
「まあいいか。別に」
なんとなく気配を感じても、今は逢魔時。幽霊が夜の世界を漂う時間。人間がなんとなく感じるのもしょうがないことだ。気にしない気にしない。気にしたら負けだ。
そのとき、私のノートパソコンから着信音が着た。知り合いからのコメントだ。
「おっ、誰からだろう」
瞼を開け、ベッドから立ち上がり、いつもの椅子に座る。ノートパソコンを開き、マウスを右手に置き、コミュニケーションアプリ VINEをクリックする。すると個室の縦一覧表の一番上に、コメントの人、剣ヶ道 紋刃さんの個室が来た。部屋に入るまえにコメントが表示されており、その内容が『澪亜さん、起きてる?』だ。個室をクリックし、中に入る。
「『睡眠に入ろうとする直前だったから、起きてるよ』っと」
キーボードで文字を打ち込み、ワンクリック。私の画面にそっくりそのままの文を送った。
剣ヶ道 紋刃さんは、私と同じ時期にラノベ小説家デビューした仲。年齢も奇跡的に同じで趣味も似たようなものだったから友達だ。
すると剣ヶ道 紋刃さんは『ごめんごめん』と軽い謝罪の二言後、次なる文章を送ってきた。『相談なんだけどさ、いや、実に下らない相談なんだよ。聞いてくれる?』。私は『勿論』と文字を打ち、クリック。送信する。
改めて、剣ヶ道 紋刃さんとは、小説『アースサノ家の剣士』を書く女性作家。
主人公はとある王国の姫で、王国全土に護りの結界を張る司祭。兼、恋人が居るのだが、その恋人が、魔剣族と呼ばれる邪悪な剣の悪霊によって殺され、結界は崩れ、王国と世界が崩壊する。崩壊寸前、姫は崩壊する運命を変えるために、パラレルワールドへ赴き、まだ恋人が生きており崩壊する未来へ辿る世界へ到達した。が、崩壊したパラレルワールドが多すぎて、姫たちが大勢、恋人を中心に一同に集まってしまう。司祭兼恋人を何としてでも守るため、様々な能力を持った姫たちが、魔剣族の悪霊に立ち向かう。要はハーレムと戦闘が織り交ざったラブアンドコメディの小説だ。ちなみに姫たちは恋人が好きすぎて、変な性癖で恋人を逆に苦しめるほど。主人公だったら己の脇を恋人に舐めさせるほどだ。それで主人公は快楽している。
『私ね、アースサノ家の剣士を書いている最中ね、休んでいる最中でもあるんだけど、たまに背後に二人の気配がするときがあるの』
「え、それって……私も……」
似すぎた奇遇に驚き、鳥肌が立つ。私が気配Rと気配Yと、二つの気配を感じるのと同じだ。即座に文章を打って共感する。
『怖いぐらい奇遇だね。実は私もそうなんよ』
『え、澪亜さんもそう? それに、一つの気配はなんともないんだけど、もう一つの気配がとても怖い……』
『とことん同じだねそれ』
『昼間書いててもそうなるの。正直怖いよね。私の部屋に悪霊が居るのかな……』
偶然とは思えないほどの一致。明らかに私と紋刃さんの身に何かが起きている。いや、まさかこれは、と嫌な予感が私の脳裏に走った。
『もしかして、もしかしてだけどね』
『うん』
『ツクヨレーネ校長が敢えてそうさせているかもしれない』
『……やっぱりそうよね』
私や剣ヶ道 紋刃さんと、あと残り三人の仲間は、私たちはデビュー作家であり、とある高校の午後六時過ぎ、逢魔時に行われる定時制の教師をしている。作家と教師、二つの仕事をしている。逢魔時の高校の校長の名は、ツクヨレーネ。私たちの校長が何かを企んでいるかもしれない。逢魔時という時点で私たちが働く夜間学校は、ただの定時制ではない。その校長ツクヨレーネも同じく、あれは只者ではない。奇を最大限にまで極めたあの学校が、この『地球』の運命を大きく左右する。
というのも、現時点でツクヨレーネ校長の企みをどうのこうのできる立場ではない。怪しい上司ではあるものの、私たちの学校職場は別にブラックではないし、良い相互関係はできている。企みを阻止する、という大袈裟なものではない。ツクヨレーネ校長の企みに私たちは巻き込まれているだけ。そう深刻なものではない。悪霊の気配がする時点で被害ものだが。
『ああそうだ良いこと思いついた。今から私んちに来なよ。一緒に寝ようよ』
悪霊に見つめられている環境の中一人はとても酷であろう。ならば一人より二人。仲間がそばに居れば怖い物はない。
『でも良いの? 怖い気配が二重にならないかな』
『見つめられている気がする個室の中、一人よりは遥かにマシよ』
『それもそうね。じゃあ今から向かうね』
『ついでに有紗さんも誘って、女子会しようかっ!』
『賛成!』
紋刃さんからのオーケイを貰うと、すぐさまパソコンを閉じ、椅子から立ち上がって財布を取る。語聖 澪亜こと私、剣ヶ道 紋刃さんと、『ニュウエルフの性姫騎士団』作家の草村 有紗さんの作家による仲良し女子会は楽しいだろう。今からクッキーやコーラ買って準備に取り掛かろう。
~鷹獅子護衛編、本当に完~
えええ何気に、鷹獅子護衛編が終了しました。ついに死十話突入です。
次は死十一話で、新たな編スタートとなります。
暗殺部の部長に歴史を越えた魔王に魔界の運命を書く作家。そして作家の仲間と謎の上司。レハベアムの身に何かが大きく渦巻いておりますね。これからも読んでくださるととてつもなく嬉しいので、よろしくお願いします




