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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第三章 鷹獅子護衛編
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二十八話 イコール

「ウァサゴ先輩、ただいま戻りましたあ」

フェニが開けながら引き戸を引き、善魔生徒会室に入る。その奥、ウァサゴが両脚を社長机に乗せ、ひとり優雅に過ごしていた。

「おい貴様。部下を見回りに動かして貴様はのんびりか。随分とお偉い存在だな」

善魔生徒会の役員を昼休みの間、学校中の見回りに行かせて、自分ひとりだけ危険にさらされる心配もなく過ごしているとは、舐められたものだ。こちとら命をはって改善活動をしているというのに。

「そりゃあ私、このゲーティア高校の生徒会長なのよ。お偉い存在なのは確かなことじゃない?」

本来なら獄立ゲーティア高等学校の生徒会長という肩書だけで、数ある異世界にその危険度が伝わるほどの実力者なのだが、ウァサゴは善魔だからか、その危険度が薄く、逆に異世界に渡っている悪魔達に危険が及んでいる。当然、獄立ゲーティア高等学校の生徒会長という玉座は、そう易々と手に入れられるものではない。学校内での戦争、抗争を勝ち抜いてウァサゴは生徒会長になれたのであろう。だからある意味お偉い存在なのは間違いない。

 隣のフェニもやや不満そうに眉間にしわを寄せている。フェニよ、間違ってこんな先輩になってはダメだぞ。俺たちは室内に入り、逆U字型机の右に俺の席に座り、フェニはその隣に座りながら、とある質問を投げた。

「そんなお前に聞きたいことがある。セーレについてなんだが」

「セーレ先輩が言ってましたよ。善魔生徒会の活動なんて無駄って。なのになんであんなヒトを生徒会に入れたのですか?」

率直に聞き申し上げると、ウァサゴは両脚を下ろして、肘を机に置き、手を組んで顎に乗せた。

「それ、ちゃんとセーレに許可を得た?」

「許可? 何の事だ」

「セーレ自身に聞いたのかって話よ。セーレにまつわる話の詳細を。セーレ自身が私に聞いていいよって許可がないと、私はセーレの話言えないのよ」

なんと、セーレの許可がないとウァサゴからセーレの話が聞けないらしい。なんて手回しが効いた小細工なんだ。

「あのセーレが許可を下すとは到底思えないのだが」

ヒトや俺達生徒会の仲間にも冷たく接するからな。それは仲間を信用していない証拠だ。

「まあそうでしょうねえ。あの子、自分の話をするの苦手だし、知られるの物凄く嫌がるでしょうし。だからもし万が一、他のヒトが私にセーレのことを聞かれたら秘密にして、って口留めされちゃったのよ」

「そうですかあ。興味あったのになあ」

フェニが期待を外れたように頭を下げ残念がる。

「なんでそんな質問してきたのか、なんとなく察したわ。セーレの本性を知ったのね」

「あのセーレには、どうみても善魔らしさがないのだが。正直己の耳を疑った」

「ですよねレハ。あんなヒト、善魔生徒会に居るべきではありませんよ……!」

「まあそんなこと言わずに。あなたたちはセーレの隠された力を知らないだけであって、あの子自体非常に悩んでいるのよ」

「隠された」

「力?」

セーレはセイレーンという人魚の化身者だと聞き、水の力を持つが、それ以外にもとある能力を持つのか?

「あらやだ言っちゃった。まあいっか。どうせバレることないんだし」

ついセーレの秘密の一部を言っちゃうウァサゴ。それでもどんな秘密なのか想像がつかない。

「そんなことより、見回りはどうしたの? まだチャイム早いわよ」

「だったらお前も行け。俺たちはお前の部下じゃないんだぞ」

「そ、そうですよ会長。ひとりだけずるいっですって」

「何を言うのあなたたち。ここをお留守にさせたら、もし相談者が来たらどうするのよ」

ド正論をぶちかまし、真顔で己を守る。流石の俺も屈せざるを得ない。

「ほ、本当に来るんでしょうか……」

フェニが果たして本当に相談者がやってくるのか、と心配そうに呟いた。

 そのとき、とてつもない激しいノック音が一回、この室内に響く。

「ヒヤアッ! な、ななななんでしょう!?」

思わずフェニが驚き、皆引き戸に注目する。どうせ悪魔の悪戯だろう。気にすることはない。

「入ってどうぞ」

呑気にウァサゴがノック音に対し、室内の立ち入りを許可した。ウァサゴめ、これが悪戯だと分かっていないのか。

 しかし引き戸は荒く横に引かれ、壁に衝突した。開かれた引き戸の前には、黒いゲーティア制服とスカートを履いた女性で、茶色のロングヘアーで凛々しい表情をしており、左目が青で右目が赤のオシャレなオッドアイの女性だ。そしてなんと、背中に茶色の翼が生え、尻尾はスカートからはみでている。

「け、化身者?」

普通の悪魔にはせいぜい尻尾か様々な形をした角が生えるが、動物的な部位は生えない。生えている悪魔は、とある動物や幻獣に化身することができる能力者だ。翼が生えているということは、鳥系の化身者ということになる。

「ほら、相談者が来たじゃない」

呑気なウァサゴが荒い登場をした来訪者を相談者と呼んだが、相談しに来た雰囲気ではない。殺気が物凄く伝わってくる。

「レハベアム・モーヴェイツって、アンタだな」

化身者が俺を見るやすぐに名を確認してきた。

「ああそうだ」

殺気を出すということは殺しに来たということだ。俺は机の下で右手にレメゲトンを召喚し、臨戦態勢に入る。

「何か用か?」

「暗殺部のセンパイさんがよお、アンタを殺してって頼まれて来たんだぜ」

女性の割には男勝りな口調で、暗殺部というパワーワードを発した。

「あ、暗殺部……!」

フェニが過去の経験か咄嗟に構える。だが今回の暗殺対象は引き続き俺らしい。なんで人間の俺が暗殺の対象になるんだ毎回。

「というわけで、さっそくその命、食わせてもらうぜ!」

化身者が翼を羽ばたかせて宙に舞い、俺へ滑空してきた。そして、口を大きく開け、その鋭い牙をむき出しにした。

「レハっ!」

フェニが席から離れ、二歩下がり、対する俺は椅子に座り、相手が俺の間合いへ入るのを待つ。いつもどおり、レメゲトンの表紙で化身者を叩く作戦で、この突っかかりのドアホを対処しようか。

 向かってくる化身者。だがそのとき、翼を折り畳み、真下に落ち、逆U字型机の中心にうつ伏せになって落ちた。

「……へっ?」

なぜ翼を折り畳んだのだろうか。そのまま向かって襲えばよかったものの、なぜか突進を止め、そのまま落ちた。そればかりか、床に落ちた化身者は起き上がらず、倒れたままだ。流石のフェニやウァサゴも、この謎の展開に思わず一言が零れる。

「ご、ごめん……なさい……」

倒れた化身者から弱った声がし、しかも謝罪を申し上げてきた。

「謝罪?」

化身者は手に床を置き、上半身を起こして、四つん這いになって、俺へ見上げてきた。このとき俺は、この化身者から殺気が消え失せたのを感じた。

「私のラボラスが迷惑を掛けて……ごめんなさい……」

「私の?」

「ラボラス?」

フェニとウァサゴが、謎の発言『私のラボラス』に着目した。流石の俺もこの化身者の展開に頭脳の判断が追い付かない。いったい、どういうことだ。

 化身者は立ちあがり、体の前を正々堂々俺たちに向けた。

「おい、お前なんなんだ?」

殺気が消えるなり謝罪するなり謎の発現するなり襲う途中落ちるなり、理解が追い付かない。率直に聞いてみると、その化身者が口を開けた。

「先にもうしあげ……」

っと、化身者が先手の発言を途中で区切り、突然と止まった。

「おいグラシャっ! なに邪魔してんだ!」

すると突然、化身者がグラシャという名を言い、誰に向かって分からないが突然と怒鳴り始めた。

「待ってラボラス! あなた騙されているのよ!」

更に先ほど言った謎のラボラスに向かって意味不明な発言をし、

「はっ、何言ってんだグラシャ。契約の箱で約束してもいいって言ったんだぞあのブネって奴。契約の箱で約束できるって発言はすなわち、確実にできるって自信の表れなんだぞ」

「でもおかしいよラボラス! 相手は暗殺部だよ、何か企んでいるんだよあなたを使って」

まるで一人二役の演劇だ。化身者はグラシャとラボラス、二役の名で一人会話を始めた。

「「ど、どゆこと?」」

フェニとウァサゴが一人二役の演劇に一言を零す。

「おいお前……ら? と呼ぶべきなのか分からないが、この状況を説明しろ」

俺はとにかくこの化身者に説明を求めた。すると化身者は、青い左目で見つめ、赤い右目で睨み付けてきた。

「あ、すみませんでした」

「黙れてめえ! 私に指図すんな!」

化身者が一つの口でなんと二つの発言を繰り出してきた。

「お、おおう……そ、そうか」

一回の発言を二個繰り出せる話術はなんとなく知っていたが、まさかここでお披露目されるとは思わなかった。そんな話術に加え一人二役を演じる化身者、芸能人なら最適すぎる者だが、あまりにもどこか違和感がある。まるで二重人格者だ。

「あ、今から少しラボラスを落ち着かせるのでちょっと待ってください!」

「あああっ? この私を騙させるだとお? やれるもんならやってみなっ!」

すると化身者は己の尻尾を掴み、引っ張った。すると、

「ぐふあああああああああっ!」

己の意思で尻尾を引っ張ることでダメージを負わせ、己の口からクリティカルヒットをくらったかのような断末魔の雄叫びを上げた。はたから見れば、自分で自分にダメージを負わせ、ドМを披露する芸にしか見えない。そのとき、赤い右目にやや影が覆ったのを見えた。

「……ふう、なんだか大変お恥かしい所をお見せしてしまいすみません……」

さっきの男勝りな口調と打って変わって丁寧口調になった。化身者は尻尾を離し、その尻尾は力なく下にぶら下がった。

「あの……あなたなんなんですか?」

フェニが恐る恐る謎の化身者に質問をした。すると化身者はフェニに体を向け、口を開いた。

「私の名は、グラシャ=ラボラス、と言います」

「グラシャ?」

「ラボラス?」

ついさっき、グラシャ役とラボラス役らしき二役が一人で言い争っていた芸を見たが、その二セットで実名なのだろうか。いやそれだけではない。間にイコールが挟まるということは、この悪魔は、俺やウァサゴのように苗字と名前に分かれているということなのか?

「この青い左目がグラシャで、赤い右目がラボラスです」

右手の人差し指で青い左目を向けグラシャ、赤い右目を向けラボラス、と目の色を分けて説明した。

「早いが話、私、二重人格者なのです」

「「に、二重人格者あああっ!?」」

フェニとウァサゴが二重人格者の存在に仰天する。

 まさか本当に二重人格者だとは、俺も内心仰天だ。どおりで二つの人格で喧嘩していたというわけだ。はたから見ればまさに一人二役の演劇だ。

「この私がグラシャで、もう一人の人格、ラボラスを今さっき気絶させました」

殺気は全くない。どうやら本当にグラシャのようだ。ラボラスという人格から放たれる殺気がなく、口調も穏やか。二重人格者というのは本当のようだ。どうやら尻尾を引っ張ることで赤目のラボラスという人格を治めることができるらしい。

「私のラボラスがレハベアムさんに危害を加えようとしたこと、このグラシャが代わって謝罪いたします。誠に申し訳ございませんでした」

グラシャは俺に向かって再度謝り、頭を下げる。悪魔できちんと礼儀作法ができるとは、とんでもなく珍しいな。よほど家計が富豪なのかなんやら。

「そ、それはいいが、気になることがある。さっき、暗殺部がなんちゃらかんちゃら言っていたが……」

そう、今さっきラボラスと呼ばれるもう一つの人格が、暗殺部の者から暗殺依頼がやってきたらしくて、俺を殺すつもりようだった。

「あ、それは昨日のことです。昨日、ブネっていう暗殺部の三年生のヒトがラボラスに、レハベアム・モーヴェイツさんを殺して、って依頼をしたんです」

「ブネ、か。ウァサゴ分かるか?」

暗殺部の三年生なら、この前カイムを倒したな。ではそのブネはカイムと仲間なのか。同じ三年生のウァサゴにブネというものを聞いてみる。

「いえ、分からないわね」

前と同じく、ウァサゴですら分からない存在か。なんでクラスが被らないのだ暗殺部の者と。

「更に、レハベアム・モーヴェイツさんを殺せば、暗殺部の幹部に立たせてあげるって言いだして、挙句、ブネのペットになれるって取引してきたんです」

「ペット? どういうことなの?」

ウァサゴがペットという発言に着目し、グラシャに聞いてみた。

「わ、私にも分かりません。でもラボラスは否定したんです。あなたのペットにはなりたくないって。そうしたら、生体実験でラボラスを強くさせてあげるって持ち掛けてきたんです。するとラボラスはまんまと生体実験の交渉に釣られて……」

「なるほど。つまり俺を殺すことができたら、ラボラスは生体実験を受けられることになった、ということだな」

「はい……誠にすみませんでした……」

「いかにも暗殺部らしいやり方だ」

俺の命を報酬に生体実験を受け、更なる強さが手に入れるという闇の取引が裏で行われていたようだ。

「あの……ひとつ質問です」

フェニがグラシャに質問を持ちかけてきた。

「はい、なんでしょう」

「あなたが二重人格者なら、なぜその取引の最中にグラシャさんがラボラスさんを止めなかったのですか?」

確かにその通りだ。どうやらラボラスとブネという間で取引が行われたようだが、そのときなぜ、今さっきのようにグラシャがラボラスを闇の取引から救わなかったのか。疑問だ。

「普段はラボラスが表に出ていて、このグラシャが裏で待機しているんです。だから日常生活のほぼ九割がラボラスなんです。そのときたまたま私、寝ていて……そして気が付いたらラボラスが闇の取引を受けているって知って……」

「なるほどな」

一つの体で二つの人格、そのうち表と裏に存在するグラシャとラボラス。その九割がラボラスが表を仕切っているのか。確かにラボラスの性格はいかにも悪魔らしいものがあった。それに比べてこのグラシャには悪魔らしさがない。あまりにも礼儀が正し過ぎる。このグラシャには殺気や悪の意思の波動が伝わらない。

「はっきり聞くが、アンタは善魔なのか?」

「はい、よく分かりましたね」

見抜かれ、少々驚きながらも即答だ。やはりグラシャは善魔だったのか。でなければおかしかったところだ。ウァサゴやフェニのような善魔らしい、優しき善の意思の波動が感覚として伝わる。

「過去に、私が表に出ると他の悪魔からイジメられてたんですが、ラボラスが表に出ると逆にイジメに入るんです。その度に私がラボラスを止めようとするんですが……そういうわけでラボラスが私に、『お前は弱いから隠れてろ』って言われて、いつも裏にいるんです」

だから九割がラボラスなわけだ。確かに弱い側のグラシャでは魔界を生きるのは難しい。だから強い側のラボラスが表に出て、他の悪魔と渡り合っている。グラシャでは仮に目覚めていたとしてもラボラスを止められなかったであろうな。

 青き目を持つ善魔グラシャに、赤き目を持つ悪魔ラボラス。まさに光のような優しさと闇のような怖さ、水と油の性質を持つ者だ。世にも珍しき存在だな。

「本当は私、この善魔生徒会に入りたかったんですよ。でもラボラスが絶対に認めるわけがないから諦めていました。そればかりか、ラボラスはレハベアム・モーヴェイツさんを殺そうとし、暗殺部のトップに立とうと騙されている。そうなると、もう私、どこにも表に出る場所が無くて、私は善魔なのに、悪魔のラボラスの影に隠れて様々な悲劇をただひたすら見守るしかできなくて……それがもう辛いんです」

青い左目の方から涙が溢れてきた。赤い右目からは涙が出てこない。そしてグラシャの体が真下に倒れ、両脚をくの字にして座り込んだ。左手で左目の涙を拭き、涙をたくさん零す。

「ウッ……もう……辛くて……」

「グ、グラシャさん……!」

フェニが逆U字型席の外側から内側へ回り、座り無くグラシャに寄り、背を撫でる。

「今まで辛かったんですね……」

流石は心優しきフェニだ。弱き者に寄り添える性格を持つ。

 ウァサゴを見詰め、様子を見る。すると同時にウァサゴも俺を見つめて目が合い、なんとなくウァサゴの考えが伝わった。『この子を助けてあげましょう』と。

「では、グラシャ。俺達がその暗殺部とラボラスをどうにかする」

するとグラシャが俺を驚いた表情で見つめてきた。

「えっ! でも、それじゃあなたたちに迷惑じゃ……」

「安心しろ。俺たちはお前が憧れる善魔生徒会だ。必ずグラシャの悩みを解決させる。それが善魔生徒会のヒト助けだ」

するとフェニとウァサゴが頷き、グラシャは更に涙を零し、今までの苦悩に差し伸べてくれた手に感動した。

「よし、これでやっとこさヒト助けのサポートできるね。よおし気合入れていくわよおお」

ウァサゴが椅子から立ちあがり、両拳を合わせて骨をポキポキ音を鳴らす。

「まずはだ、そのブネってのが問題ね」

全ての発端はブネ。生体実験とやらでラボラス、もといグラシャ=ラボラスを強くさせてあげるという条件で、俺の暗殺を頼んだ。とりあえず闇の取引先を倒せば、グラシャ=ラボラスは救われる。どのみち暗殺部だ。俺達が倒すつもりでいる組織である。

「なあグラシャ。俺を殺せばグラシャ=ラボラスは強くなるっていう条件だろ。その取引先の場所はどこだ。そこに行けばブネを捕まえられるかもしれない」

闇の取引先が行われた場所でならブネに会えるかもしれない。事の発端地の場所が大切だ。

「ここから北にある一本のビルです。確かそこは、アモンという先輩がアジトとして使っていたような」

「アモンか。なるほど分かりやすい」

まさかここでアモンという言葉を再び聞くとはな。

 アモンは、ある意味俺とウァサゴを引き合わせてくれた者で、アモンのアジトで俺の心がガラリと変わってしまった場所。更にアモンの紅の炎をカイムがダーインスレイヴで吸い取り、紅の炎と不死の血で不死鳥になったという。アモンを倒して二週間が立つな。再びあのアジトに向かうわけか。

「出会う約束はしていませんが、たぶんブネ先輩はそこで待っていると思います。本来ならレハベアム・モーヴェイツさんの心臓を持って行って」

「では行くわよ。アモンのアジトへっ!」

「学校終わってからな」

ウァサゴが北の方向へ指を差した。今は昼休みだから、学校が終わってから向かうべきだな。

 そのとき、引き戸が開きっぱなしの廊下から、ドダドダと床を叩く音がした。その音は次第に近づいていき、引き戸から汗だくのヴァプラとシトリーが現れた。

「どうしたのふたりとも」

二人はゼイゼイと息を切らしながら、何か言おうとした。まるで何らかの緊急事態発生のような慌ただしい雰囲気だ。

「た、たたたたたた大変ですっ!」

「がっ、学校の皆が……黒い犬になりましたっ!」

「「「「く、黒い犬だとおおおっ?!」」」」

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