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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第三章 鷹獅子護衛編
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二十七話 本性

おまたせいたしました。第三章始まりです! 今回はどんな悪魔が登場するのか、楽しみに読んでくださいませっ!

「へっ! ザコいわねっ!」

鋭き牙と翼が生えた犬の前に、多くの悪魔達がひれ伏し、次々と逃走していく。

「う、うわああああああああ逃げろおおおお」

「俺たちにゃあ敵わねえ!」

暴力団の組員たちはその喋る魔物一匹に力負けし、崩壊していった。

「な、なんて力だ……さすがに負けを認めざるを得ない!」

暴力団の長らしきガタイの良い男が両手を上げ、敗北を認めた。

「負け? そんな程度でこの私が許すとでも?」

「た、頼む! どうか俺たちを許してくれえっ!」

「ふうむどうしよっかなああああ」

その犬は男の前でわざとらしく考える素振りを見せ、男の戸惑う反応を弄ぶ。

「やっぱダメだねっ! この私を、グリフォンを侮辱した罪は重いわ!」

グリフォンと名乗ったその犬は男に飛びつき、肩に深く噛みついた。

「ぐ、ぐああああああああああああああああああっ!」

鋭い牙で肉を抉り、そして肉を引きちぎった。犬はその肩の肉を何度も噛みつき、飲み込んだ。男はその激痛に耐えれず、咆哮を上げた後、気絶した。

「ふん、あっけない。これだから弱者は嫌いなんだよ。もっと張り合いのある生き方がしたいもんね」

すると犬から黒きオーラが纏われ、オーラが犬の姿を溶かし始めた。そして犬の姿からヒト型の姿になり、茶色の毛が黒いゲーティア制服に変わっていく。茶色の翼と尻尾だけが残り、尻尾はスカートからはみでている。

 茶色のロングヘアーで凛々しい表情をしており、左目が青で右目が赤のオッドアイの女性は、犬の構えから起き上がり、右手でおでこにぶら下がる前髪を上げた。

「あああ、ほんと毎日がくうだらない日常だわ。殺してもつまんない。私は、強い者と戦いたいのよっ!」

グリフォンと名乗った犬の化身者は大きい独り言をつぶやき、ただ虚しく薄暗い空間に響き渡る。

「だったら、暗殺部に入らない?」

薄暗い室内にいる化身者に向かって、とある誰かからの一言が出た。

「ああん? 誰だ、どこにいる」

カタッ、カタッ、と歩く音が響き、出入口の影から、ゲーティア制服の上に黒いドクターコートを着た眼鏡の女性が現れた。化身者はその女性に睨み付けてきた。

「私はブネ。暗殺部の三年生よ」

ブネと名乗ったドクターコートの女性は不敵な笑みで化身者に見つめる。

「暗殺部う? はっ、それ、ただ私を駒のように使うつもりじゃないでしょうね。よく聞くわよ。暗殺部に入った友人がさ、駒のようにこき使われているって。特に報酬もなく」

化身者は三年生相手にタメ口で、聞いた情報を頼りに暗殺部を小馬鹿に言いまわす。

「お生憎、私は駒にされる筋合いないの。どちらかといえば私が駒を扱う側にならないと気に食わないの。だから拒否するわ」

暗殺部入部の誘いをスラスラと断る化身者に対し、ブネは未だに不敵な笑みを浮かべる。

「ケッケッケ……威勢の良い小娘は好きよ私。良いわ、私の飼物ペットになりなさい」

「はああ? ちょっとアンタ頭大丈夫? この気高きグリフォンをペットにするだってえ? ふざけていると喰い殺すわよ」

ブネの不気味な言い回しに化身者が苛立ち、ガンを飛ばす。

「あなたが私の飼物ペットになる代わりに、暗殺部に対する不満をこの私が全て振り払うわ。駒を操作する側にもさせてあげるし、強い者だって戦わせてあげる。報酬だっていくらでも払ってあげる。なんなら契約の箱で約束してもいい。どう?」

契約の箱。それは悪魔同士が約束するとき、その約束を嘘偽りのない真実にさせるために、約束内容を紙に書いて契約として箱に入れる機械のこと。すると箱の中で契約の印鑑が押され、真実の約束が成り立った証拠として存在させられる。もしその真実の約束を破ったりしたら、契約を果たした側に雷が落ち、その電撃で死なせられる。だから契約の箱を通した悪魔は、死なないためにも約束を守らないといけない。

 ブネは化身者を忠実な飼物ペットにする代わりに、暗殺部の不満を全て振り払うと約束をした。あとは紙に書いて契約の箱を通すだけだ。

「契約の箱で本当にこの私をトップにさせてくれるならいいわ。でも一つだけ気に食わないことがある。なんでこの私が薄気味悪いアンタのペットにならないといけないわけ? お生憎、私飼われる気サラサラないんだけど」

「このブネの飼物ペットになるということは、かなり名誉のことよ。私の生体実験でよりあなたを強くすることもできる。悪い話じゃないと思うけど」

「ねえ、ペットになるってことはつまり、アンタの駒になるってことよね? 言ったわよね、私は駒になる筋合いないって。本気で喰い殺すわよ。の高いカイヌシサマ」

苛立ちながら断る化身者に対し、ブネは眉間に皺を寄せて口を開いた。

「じゃあ、分かったわ。交渉しましょう」

「交渉? それ、私とアンタが平等な交渉でしょうね?」

化身者は腕を組み、脚をクロスして立つ。

「あなたは強い者を求めている。だから、私の暗殺の依頼を受け取ってちょうだい。その依頼をこなしたら、私の生体実験であなたをより強くさせてあげる……」

そう言いながら、右手にメスを持ち、医者のアピールをする。

「確かに、私は強い者を求めているし、いつだって強くなりたいと思っているわ。そのためなら麻薬でもなんでも使うつもりでいる。じゃあ、念のためその依頼を受け取っておくわ。誰を殺せばいいの?」

「レハベアム・モーヴェイツ。この魔界を滅ぼすことができる危険な魔術師よ」

「レハベアム・モーヴェイツ? それってもしかして、あの人間のこと?」

「奴は得体のしれない魔術書で、うちの暗殺部の副部長を殺し、黒獄の天秤で生徒会長ウァサゴを敗北寸前まで追い詰めた。奴は一年生でありながらふたりの三年生を死まで追い詰めたのよ。これだけで強いっていうのは分かるでしょう?」

「なるほど。確かに聞く分じゃ強そうね。……ん? 聞き逃したけど、いま、世界を滅ぼすことができるって言っていたわね。それって、まさか、あの暗黒星のこと?」

暗黒星。それは今年度の死月と六月のつい最近に、上空に超巨大な暗黒星が発生した。重力が狂い、大地は裂かれ、存在だけで悪魔たちを恐怖のどん底に陥れた。その暗黒星を召喚した魔術師が、人間であることに化身者は耳を疑う。

「ええそうよ。その大魔法で魔界は滅びかけたわ。でも滅びなかった。奴は人間のくせに、この魔界の危険因子なのよ」

ハイスペックな戦闘能力に対し、化身者は頷きを繰り返す。

「ほほおん。じゃあ期待できるわ。でも私が仮に依頼を達成できたとして、本当にこの私を強くすることができるの?」

「できる。契約の箱で約束してもいい」

契約の箱で約束するということは即ち、必ず約束を達成させることができる自信の現れだ。

「余程の自信が無ければそんな発言できないわね……よし承った。アンタのペットにはならないけど、暗殺部に入ってあげるし、その人間を喰い殺してあげるわ。生体実験の準備でも始めておきなさい」

「ええ……期待しているわ。ところで、あなたの名を聞いておかなくちゃね。新部員の入部届を出す準備もしなくちゃ」

「私の名は、ラボラス。鷹獅子グリフォンの中で唯一、犬として生まれた、新しいグリフォンよ」





















「レハ、これ……」

「ああ。やはりこうなってしまったか……」

俺とフェニックスは、一年生が集う二階、その廊下の看板を見つめていた。いや、正しくは看板に貼られているポスターか。

 ポスターの上にひどい落書きがされてある。『善魔生徒会』と書かれた文章が『死ね』『青臭い』『ダサイ』等と上乗りされ書かれてある。そして善魔生徒会のメンバーが恥ず覚悟で決めた身体のポーズの上に、それぞれの首にマジックペンで横引され、処刑を表している。フェニックスはポスターに指を差しながら、

「酷い……なんて酷いんですかこれっ!」

憤りを露にして地団駄を踏み荒らした。

「レハ、落書きしたヒトをやっつけましょっ! これは善魔生徒会に対する宣戦布告ですよ」

「落ち着けフェニ。落書きした奴といっても、誰がやったのか特定できるのか?」

「うっ、それはできませんけど……」

フェニックスと俺がほぼ同時に生徒会に入ってから二週間が立ち、仕事内容に慣れてきた。見回りや注意指示、問題事や揉め事の解決。悪魔相手にこれらの改善活動は極めて厳しいが、なんとかやりくりしている。そのなか、俺たちが作った善魔生徒会のポスターが悪魔によって落書きされているのを発見し、フェニックスが生徒会役員らしく悪魔の悪戯に怒っている。

 入会時や護衛時は物静かで人見知りな雰囲気があったが、いざフェニックスと仲良くすると、意外と随分なほど勇ましい性格をしており、悪や悪戯に対し、初々しさはあるものの正義感のある敵意を示すようになった。いよいよ善魔としての自覚を得たようだが、その分おっちょこちょく危なっかしい性格をしている。だから俺がうまくフェニックスを落ち着かせてサポートしている。フェニックスが俺のことをレハと縮めて呼ぶようになり、フェニックスも名前がやや長いから、フェニと略されて呼ばれるようになり、俺も親しみを込めてフェニと呼んでいる。

「で、でも、これは許されませんよ。落書きしたヒトを必ずや懲らしめてやります!」

まるで護衛時のフェニとは大違いだ。こんなに好戦的だとは思わなかった。

「はあ、いいかフェニ。相手は悪魔だぞ。対する俺たちは善魔。善魔の言うことを悪魔がすんなりと受け入れるか」

善魔は悪魔から忌み嫌われる存在だ。善魔の台詞を悪魔は耳を閉ざすほど嫌がる。善魔の改善活動を悪魔が快く良いと思うはずがない。だからポスターにこんなひどい落書きをしたのだろう。これは宣戦布告という善魔生徒会に面々と向かって喧嘩上等と意味を込めて落書きしたものではない。単純に俺達が不愉快だから、その心境に生まれた言葉をマジックペンで書いただけ。善魔生徒会は嫌われ者の集団だ。

「そ、それを言ったら善魔生徒会の活動している意味がないじゃないですかっ! レハ、実はそんなことを思っていたんですね」

フェニックスが生徒会役員らしく、方針に反意を持つ俺に叱責した。

「内心、お前もそう思っているだろ」

「……実は」

ちょっと右に目線をずらした。ずらしたということは、フェニックスは心の底から生徒会の方針に強く賛成していないという証拠だ。

 表面上はフェニックスのように正義感のある役員を演じてもいい。俺も一応演じているつもりだ。だが心に思ったことは正直だ。俺は心の底から、悪魔に対する改善活動は無駄だと思っている。フェニックスは表は立派な役員だ。だが内心では俺と同様のことを思っていた。

「悪魔の思考を変えるには悪魔自身が行動を変えないといけない。俺達善魔生徒会はその行動をサポートするだけ。それが具体的な方針だ。だがその悪魔が行動そのものを毛嫌いするから、サポートしようにもできないのが現状だ」

悪魔が改善活動を行おうにも、悪魔の悪の意思がそれを邪魔している。その意思が改善活動を阻止し、更には改善を見たとき、反応的にそれを侮辱するよう意思がそう指示する。だから悪魔が改善活動を行うには、まず悪の意思を撤去するしか方法はない。撤去できるのは善魔生徒会ではなく、己自身だ。しかし悪魔達は悪の意思に満足し、自ら撤去しようと考え出さない。だからサポートができないのだ。

「今の俺達がしていることは、サポートではなく、ただの働きかけ。『ああすれば運が良くなり、きっと幸運の女神から祝福受けますよ』みたいな根拠の無い宣伝をしているようなものだ。悪魔から見ればただの不気味な宗教団体だ。近寄りがたい気持ちは俺でもわかる」

善魔生徒会の改善活動そのものが『ああすれば運が良くなり、きっと幸運の女神から祝福受けますよ』宣伝だ。善魔の行いに真似しようとする悪魔はいない。悪の意思が侮辱しようとするからだ。

「レハは現実味のあることしか言わないから、言いたいことは物凄く伝わります」

「会長が理想に突っ走るウァサゴだからな。だが俺たちは善魔生徒会だ。愚痴を言ってでも善魔として悪魔のお手本にならなければ、現状は変わらない」

方針に反意を持っていても、凛々しく正しい善魔生徒会役員を演じなければ現状は変わらないのも事実だ。でなければ本当に改善活動をしている意味がなくなる。本当はウァサゴのように、心の底から方針を信じ、希望を持って改善活動を行うのが役員の理想的姿なのだろうが、現実は厳しいものだ。俺にはそうにはなれない。

「そうですね、無駄口を叩かず、まずは行動に移しましょう、ってことですよね」

「そういうことだ。だがまあ、正直俺が愚痴を言えるのはフェニだけだ。たまには愚痴を言わないと気分が晴れなくてな」

無駄口を叩いたところで現状は変わらない。だが愚痴を言わないと気分は晴れない。俺達必死の改善活動を侮辱し、嘲笑う悪魔達の言葉を受けるたびに、とんでもない殺意が湧く。だがこの殺意を必死にこらえて、今まで注意指示や見回り、改善活動をしてきた。この溜まりに溜まる負の感情は心身ともに悪影響だ。だから愚痴を言うのは心境すっきりさせることは大切なことだ。勿論ネガティブワードを多用するとヒトの印象は最悪に堕ちる。だから俺も多用はなるべく言わないでいる。

「あの善魔生徒会の中で一年生の仲間はレハだけですから、じゃんじゃん私に愚痴言っちゃってください。それだけでも嬉しいです」

「ああ同感だ」

フェニは悪魔といえども心は善魔だ。そして善魔生徒会の中で唯一俺と同じ一年生。更には俺の初の依頼で護衛した対象。そのせいか意外とフェニには親しみがある。ヴァプラは拒否反応がおきるし、セーレは逆に拒否反応されるし、シトリーはウァサゴの理想に毒されているし、完全に支配下にある。俺の先輩たちは相談相手に務まらない。

「ちょっと、あなたたちそこでなにやっているのよ」

ここで不意に俺たちに声が掛けられた。右にふり向くと、奥の廊下でセーレが立っていた。

「げ、セーレ先輩……」

フェニがセーレのご登場に表情を濁らせる。どうやらフェニはセーレの冷たさが苦手のようだ。それにフェニは火に対しセーレは水。能力の相性的にも火は弱点だ。

 セーレはゆっくりとした足取りで、看板前に立つ俺達に近寄ってくる。

「なにサボっているのよ。これだから新人は嫌なのよね。仕事に対する信念が薄いし」

看板のポスターの前に、落書きされて愚痴を言う俺らに対しやや正論の毒舌が飛び込んでくる。そのとき、セーレの瞳にポスターが映った。

「あ~あ。見事に落書きされているじゃない。あなたたちはこれを眺めて休み時間を過ごそうとしていたわけ。ああなるほどダイナミック理解」

セーレはポスターの落書きに対する反応が薄く、更なる毒舌が俺たちを襲う。

「い、いいえっ! そ、そういうことではなく……!」

フェニはセーレの毒舌に屈しながらも抵抗しているが、次の言葉が生まれてこない。その隙に、少しセーレに聞いてみたいことがある。

「セーレ、あなたに質問だ」

「なに」

「セーレはこのポスターの落書きにどう思う」

セーレのポスターに対する反応があまりにも薄かった。反応が濃ければ、それは善魔生徒会の方針に忠義を置いている証拠の現れだと思っているが、その割にはセーレは薄い。いや、それ以前にも、セーレは生徒会室でも方針の議題についてあまり関わろうとしなかった。俺のセーレに対する印象的な評価は、セーレは善魔生徒会に対する忠義は全くないように思える。

「率直に言わせてもらうと、落書きされるのは分かっていたことね。だって相手は悪魔よ。私たち善魔が何言ったって、悪魔達がすんなりと受け入れるわけがないじゃない」

「レハと同じことを言った……」

相手は悪魔だぞ。対する俺たちは善魔。善魔の言うことを悪魔がすんなりと受け入れるか、と俺はフェニに言った。今さっきのセーレの発言は俺の発言に物凄く似ている。

「悪魔相手に改善活動は無駄無駄。ホント阿保らしいわ」

更には俺の内心に思うことと大きく重なることまで淡々と言うセーレ。

「じゃ、じゃあ、セーレ先輩はなんで善魔生徒会に入っているんですか?」

フェニが恐る恐るセーレに根本的な質問をした。

 俺がなぜ善魔生徒会に対する忠義が薄いのにも関わらず、侮辱の雨を受けながら改善活動をしているのか、それは人間界のためだからだ。ここを卒業する悪魔たちに対し、少しでも善なる気持ちが芽生えれば、それだけ人間界は荒れずに済む。だが、俺と全く同じ意見を持つセ―レには、善魔生徒会に入っている割には、正直善魔らしい正義感が全く見受けられず、悪魔の侮辱とほぼ同じことを言っている。善魔生徒会に対する忠義は全くの零だ。なのになぜ善魔生徒会で活動しているのか、誰にでも気になることだ。

「ウァサゴに拾われた。ただのそれだけよ」

一言だけ返すセーレ。まるで仕方なく入っているような意味合いに聞こえる。俺もウァサゴに拾われて善魔生徒会に入った身だが、俺の場合はほぼ九割強引に入会させられたが、セーレもその口なのだろうか。

「じゃあ、極端な質問だが、セーレには善魔生徒会の仲間でいる意味があるのか? たとえば善魔生徒会に入っていることでなんらかの目標があるとか」

先ほども言ったが、俺が善魔生徒会に入っている理由は、人間界を救うため。獄立ゲーティア高等学校を卒業する悪魔たちに人間界を荒れさせないためだ。対するセーレには、仕方なく入っているだけで、議論も積極的ではない姿勢だからか、セーレが善魔生徒会でいる目的や目標が無いように思える。

「ないわ」

即答だ。一ミリも俺の印象的評価に狂いはなかった。

「アンタのような人間界を救うためだとか、ウァサゴのような魔界を変えるためだとか、私からすれば途轍もなく阿保らしく聞こえるの。たった一人の、世界を巡る巨大な目的のためだけに、大人数巻き込むんじゃないわ。はっきり言って迷惑。どうせできもしないのに、なんで巻き込むわけ? そんなに独りが嫌な訳? だから寂しさを紛らわすの? 阿っ保らしいわ。『一人ではなにもできないけど、仲間ならできる』って考え方がウザったいのよ。そういうのいいから、仲間という名の群れに迷惑かけんなっての」

セーレが次々と鋭い毒の剣のような愚痴を言い、本性をいとも容易く公開してくれた。この本性に、善魔の一欠片が全く見当たらない。善魔生徒会の役員と聞いて迷わず耳を疑うレベルだ。

「所詮、仲間の力というのはね、孤独を紛らわす力なのよ。それが活気ついて意気揚々と高ぶって勘違いしているだけ。そんなんで世界を巻き込む目的で解決しようだなんて、現実を見なさい現実を。理想に毒されて、結局解決しないってのがオチ。インテリなアンタなら、私の言うこと分かるわよね? 人間くん?」

最後っ屁にセーレが俺に向かって言うと、背を向け、来た道を返って行った。その後ろ姿は清き水色の長髪をなびかせ、とても美しく見えた。

「……なんだか、圧倒されましたね」

「ああ。かなりな」

善魔生徒会に、善魔の欠片もない存在が居たことに、俺たちはただひたすら無言で驚いていた。

「ねえ、今からウァサゴ先輩に聞いてみませんか? セーレ先輩について。なんであんなヒトを生徒会に入れたのかって」

「……確かに、興味ある」

他人に一切の興味を抱かない俺ですら、悪魔の本性と同一のセーレを善魔生徒会に入会させたのか、なぜセーレは善魔生徒会に居るのか、興味がわいてしまった。

「では向かいましょう。我らの部屋へ」


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