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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第二章 不死鳥護衛編
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二十死話 不可能

お待たせいたしました。二十死話です。どうか楽しんで頂けたら僕嬉しいです。

「おいヴァプラ、もっとスピード出ないのか!」

「これでも全力だ……!」

ヴァプラは空中でカイムを追跡し滑空。時折翼を羽ばたかせて、高速前進するが、それでもフェニックスを追いかけるカイムとの距離は徐々に離されてしまう一方だ。あのカイム相当早いぞ。俺が乗っているせいでその分重くなり思うように速度を出せない原因かもしれないが、不幸中の幸いか、空中で暴走するフェニックスは生徒二人乗せているのにもかかわらずカイムとほぼ同じスピードだ。だからカイムがフェニックスに追い付くということはない。力強い飛びだ。

「まあいい。空中戦は俺も得意だ」

レメゲトンの第三部『アルス・パウリナ』を開き、詠唱。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

レメゲトンから七十二ページの紙々を分離させ、紙ドクロに変える。

「さあ、行け」

七十二ページの紙ドクロはヴァプラよりも早く横に飛び、カイム目掛けてレーザービームを放つ。対するカイムは背後からのレーザービームの線々をいとも容易く左にくぐり抜けて、華麗に避ける。横方向だけのレーザービームでは避けられてしまうだけか。

「ならば、これはどうだ!」

更に七十二ページの紙ドクロをレメゲトンから放ち、上空に送りつける。次に横に飛ぶ紙ドクロの群れを散らばさせ、遠隔自動追尾モードにさせる。カイムをただひたすら追いかける紙ドクロの群れは、各々が自動的にレーザービームを放つが、カイムは後方からのレーザービームの軌道を逆手に読み、次々と華麗に避ける。一方、俺は第一部『ゴエティア』を開き、詠唱をした。

「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり」

俺の後方に紫色の魔法陣が出現し、カイム目掛けて七十二本の柱槍を解き放つ。闇のレーザービームと七十二本の柱槍で遠くのカイムに攻撃する。

「数 ちゃ当たる作戦はやめておけ!」

カイムは再び観覧車のように上空に回り込みながら滑空し、第一部『ゴエティア』の柱槍を避ける。

「俺はそれが狙いだ!」

上空に送りつけた紙ドクロの群れは一斉に口を開け、曇天を貫きレーザービームの雨を降らせる。舞い上がったカイムにレーザービームの雨は避けられまい。

「甘いわっ!」

ダーインスレイヴの剣身をレーザービームの雨に向けて差し、剣先から赤い傘が開いた。

「傘?! なんでダーインスレイヴから傘が開いてんだ。なんでもありかよ今時の魔剣は」

赤い傘の表面はレーザービームの雨をまともに受け、貫通しない。レーザービームがその頑丈さに打ち負けている。

「ダーインスレイヴは血を吸う魔剣だと言っていたな。恐らくだがダーインスレイヴ本体は血を操る能力があって、カイムの血をダーインスレイヴに送り、剣先から血で出来た傘を開いたんだ」

血は鉄分を含む。すなわちあの傘は鉄そのもの。だからいくら第三部のレーザービームでも破れないというわけか。

「避けるも上手いしガードされる……これでは攻めても俺の魔力が無駄に消費するだけだ」

こちらが無暗に柱槍やレーザービームで攻撃しても当たらなければ意味はない。計画的に詠まなくては。

「いや、ただひたすらレーザービームを吐きまくるのも一つの作戦だな」

どっちみち攻撃しなければカイムは止められない。少しでも攻撃を重ねてフェニックスにたどり着くのを防がなければ。

 レーザービームの雨を全体に降らせ、カイムの前進を少しでも防ぐ。だがカイムはレーザービームの雨を血の傘で防ぎつつ悠々に前身する。その血の傘がどこまで耐えきるか見物だ。レーザービームの雨を血の傘に一点集中させ、雨はカイムに全て向けられる。血の傘は上空からの七十二本のレーザービームに押され、カイムは下降していく。

「ちょちょ……野郎……調子に乗りやがって!」

そして血の傘に亀裂は走るのを確認し、もうすぐで破壊される。そのとき、カイムが翼を力強く羽ばたかせて、一気に前進した。一点集中のレーザービームから逃げ切った。だったらもう一度全体的に降らし、もう一度一点集中させるのみだ。

 そのとき、前方奥の不死鳥から大量の火の粉が舞い出てきた。火の粉をまき散らし、後方の者にも攻撃を与える作戦か。火の粉は後方にも舞い、肌に当たるとチクっと刺さるような熱さで痛い。自動追尾の紙ドクロまでもが無数の火の粉で焼かれ、焦げている。

熱痛あついたっ!」

「耐えろヴァプラ! 一旦自動追尾の紙ドクロは休ませた方が良いか」

火の粉がまき散らされたこの環境では、第三部『アルス・パウリナ』は無力だ。紙ドクロたちを一旦レメゲトンに戻させ、紙に変える。

 今度は不死鳥は分厚い灰色の雲を突き破り、上空圏に入っていった。カイムも続いて身を雲を突き行った。

「追え!」

ドラゴンヴァプラも分厚い曇天に突っ込み、俺も雲の中を通る。雲から抜けると、そこは天々と晴れた青色の空に、少しばかり星が輝いていた。雲を下にする感覚は初めてだ。

「はっ、しまった!」

不死鳥が上空に飛んだことで、上空圏内にも火の粉が舞い、待機している紙ドクロが燃えてしまった。

 第三部『アルス・パウリナ』が封じられた火の粉の環境では、俺にできることは第一部『ゴエティア』を詠み、柱槍を放つことしかできない。カイム相手には命中不安定だ。だがこの炎天下、悪魔であるカイムやフェニックスは太陽の光に長く当たることはできない。そのうち下降するだろう。さすれば再び上空圏に紙ドクロを配置させて、レーザービームの雨を降らせるのみだ。今は待機時だ。

 だが不死鳥は下降するどころか更に上空に羽ばたき、上昇した。

「フェニックス、いったい何を考えている……!?」

フェニックスも太陽の光に長時間当たることはできないはずだ。なのに上昇した。暴走だから何も考えられないのか?

「くっ……さすがにまずい……」

ここでヴァプラが一言を呟く。

「何がまずいっていうんだヴァプラ」

「これ以上、光に当たれない!」

ヴァプラは俺の許可無く、勝手に下降し、雲を突き破り下空に戻った。

「おい、お前善魔だろう! 何勝手に下降している! これでは奴らを見逃してしまうではないか」

「善魔であっても肌は悪魔だ。光は未だに苦手なんだよ……!」

「……まあ、いい。そのうちカイムも下がってくるかもしれない……」

ヴァプラも下がったってことはもうすぐカイムも下降するかもしれない。むしろカイムに集中できる良い機会だ。上の分厚い雲のおかげで火の粉が防がれ、下空に火の粉が舞い降りない。

 っと思ったそばから、奥にカイムが雲を破り下降した。よし今だ。再び第三部『アルス・パウリナ』を詠唱し、レーザービームで攻撃だ。

 そのとき、灰色の雲から突然と豪雨が降りだした。大きい雨水の弾丸がマシンガンのように力強く降り注ぐ。火の粉で雲が温められて雨が降り出したか。

「雨……? よしヴァプラ。お前雷を操ると言っていたな。雲を雷雲に変えることはできるか?」

「それなら容易い事だ! だがいいのか? それだとお前までもが危険に巻き込まれるぞ」

「俺なら問題ない。雷を無力化するのは容易い」

「よし、じゃあ行くぞ!」

ヴァプラは首を上げ、口から雷の太い光線を雲に放つ。すると豪雨振る雲が雷雲に変わり、自然現象で雷が落ちるようになった。

 俺は第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』を詠唱し、闇の塊を傘に変え、雷を防ぐ。一方、カイムは雷を防ぐ術はない。

「うお、危ねっ!」

雷がカイムの元に落ち、間一髪カイムは後退して避ける。雷雨に加えてレーザービームで更に追い詰めてやる。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

再びレメゲトンから七十二体の紙ドクロを放ち、カイムへ自動追尾させる。各々が追尾する紙ドクロたちは奥のカイム目掛けてレーザービームを放つ。カイムは後方からの七十二本のレーザービームを次々と避けていくが、そのとき、雷がカイムに直撃した。

「ぐふあああっ!」

レーザービームに避けるのに意識させて、雷が落ちるのを待っていた。そのダメージで下降し始めた。

「よし、ざまあみろ!」

「いや、まだだ……雷程度で終わるとは思えない」

暗殺の執念が強い男だ。それに奴は空を飛ぶ。雷に当たる覚悟無ければ空は飛べまい。下降したカイムは再び翼を羽ばたかせて、上昇した。

「雷ならいくら喰らってもまだ飛ぶだろうなあいつ……だったら、レーザービームで蜂の巣にして息の根を止めてやるまでだ」

雷で弱ったところがレーザービームの狙い時だ。確実に狙って倒そう。

「……!? おいレハ、奥に不死鳥が!」

前方奥に不死鳥が下空に舞い下りた。流石に長時間は炎天下は飛べまい。

「おいまずいぞ。不死鳥は火の鳥だ。雨を喰らったら弱るんじゃないのか!」

ヴァプラが俺に追言した。確かに、火の鳥が雨を喰らったら弱ってしまい、暴走が解けるかもしれない。

「……ああまずいな。この状況で暴走が解かれてしまうのはな」

今フェニックスはカイムに追いかけられている。飛行中にフェニックスが雨で弱まればカイムに追い付けられてしまう。カイムがダーインスレイヴでフェニックスの血を吸い取れば俺たちの負けだ。

「上がれ、フェニックスウ!」

上空圏へ上がり豪雨から避難するよう叫ぶがフェニックスは今暴走状態。俺の言葉を聞く耳は持たないか。それにフェニックスも悪魔の肌だ。太陽の光に長時間当たるのは流石に無理か。雨もダメ日照りもダメ、これではフェニックスがいくら暴走といえどどっちみち弱るのは時間の問題だ。そうなればカイムがフェニックスに追い付く。それだけは防がねばならない。

 そう思ったそばに、フェニックスは徐々に力なく下降していく。スピードも落ちていっている。まずい、これではカイムに追い付かれてしまう。

「どうした不死鳥! 雨で弱ったかあ? 鬼ごっこもここまでだ!」

対するカイムは雷に打たれてもそのスピードは弱まるところを見せず、それどころか翼を羽ばたかせて、スピードが上がった。不死鳥に迫るカイムはダーインスレイヴを左腰辺りに差し、いつでも居合斬りの準備に掛かった。

「そうはさせるかっ!」

上空圏に派遣させた紙ドクロを横に整列させ、下空に向かってレーザービームを放つ。複数のレーザービームは雲を突き破り、真下に向かって伸び、整列させたことによって縦網状の壁をカイムの前に展開させ、カイム前進を防ぐ。だがカイムは身を縦にさせて滑空し、レーザービームの隙間を通る。俺たちも通るため、整列させた紙ドクロたちにレーザービーム放射を辞めさせ、カイム追尾を命じる。レーザービームの壁が消えた今、ヴァプラも全力で空中を滑るが、カイムにはなかなか追い付かない。それどころか、カイムの間合いにあともう少しで不死鳥が入ってしまう。

「フェニックス!」

イヤダメだ。フェニックスを守ることができない。カイムの間合いに下降していく不死鳥が入ってしまい、追い付かれてしまった。

「くらえ死ね、不死鳥!」

ダーインスレイヴを横に振るい、首目掛けて居合斬る。その刃は不死鳥の首を裂き、そして斬り終えたと同時に首が撥ねた。

「そ、そんな……ばかな……」

俺たちはその有様を悠々に見届けてしまった。見届けるしか方法がなかった。それ以外何もできなかったのだから。

「俺たちは、護衛を失敗してしまった……?」

トドメを刺された不死鳥の頭はそのまま落ち、そして肉体も力なく下空の下へ落ちていった。

「やったぞ、これで、俺に不死の血が……!」

ダーインスレイヴは剣身に付着した赤い血を吸い取り、カイムに血を送った。

「フフフ……分かる。分かるぞ、細胞が漲ってくる! 俺は不死身になったのだ! フハハハハッハハハハハハハハハハッハハハハアハハ!」

心身的な変化は見られないが、確かにダーインスレイヴの剣身に付着した赤い血が剣身に染み消えたのは肉眼で把握できた。奴は不死身の血を吸い取ったのだ。奴は不死身になってしまった。

「この俺様こそ、不死鳥フェニックスだあ!」

奴の肉体から紅の炎が湧き出てきた。あれはカイムの能力ではない。アモンの炎だ。アモンの全力の炎を見たから分かる。カイムはダーインスレイヴでアモンの血を吸い、炎の能力を得たな。

 炎に加えて不死の血を得れば、確かに不死鳥フェニックスだ。無敵にして全てを焼き尽くすその力は、留まるところを知らない。奴は確かに不死鳥フェニックスになってしまった。

 カイムもとい不死鳥フェニックスは後方にふり向き、俺に鋭く睨み付けてきた。

「さあ、今度はお前の血だ。お前の血を吸い取り、その謎の魔術書を俺様の物にしてやるっ!」


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