二十三話 不意打ち
大変遅くなって申し訳ございません。きっちりと投稿させていただきましたので、どうか読んで頂き、少しでも読者の楽しみになれば私は幸いです。では、二十三話の世界をお楽しみください
護衛二日目の朝。フェニックスを学校まで護衛した。その時間帯は特に何者から襲われることなく、無事に学校に送り、そして四つの授業をこなした。その間の休憩タイムも特にフェニックスの周りに不審者は現れず、平和に過ごすことができた。
そして、昼休み。暗殺部も善魔生徒会もフリーな一時間が今日もやってきた。俺はフェニックスがいるA組まで迎えに行き、フェニックスを善魔生徒会室まで共に急いで向かった。
「よし、フェニックスちゃんを無事に送ることができたわね」
フェニックスを善魔生徒会室に入れて、シトリーは扉の前に空間バリアーを張った。俺たちは廊下に立ち、ウァサゴが俺たちをまとめる。
「とりあえず、私たちは今からカイムという者と、暗殺部の本部室の場所を突き止めるわ。そこで私セーレシトリーと、ヴァプラレハのチームに分かれて探す」
するとヴァプラが俺をキラキラした目つきで見つめ、
「よろしくなレハ後輩!」
腕を俺の背へ組んできた。
「近寄るな、あと触るな」
ヴァプラの胸を叩き押し、距離を離すとヴァプラの表情が悲しげになり、瞳に薄ら鱗が浮かんだ。
「ううっ……レハ後輩から近寄るなって言われた……おれたち、なかまじゃ……ねえのか……? 同志、じゃ、ねぇのかよ……?」
「仲間だが同志ではない。あと近寄られるとイラってくる」
パーソナルスペースに侵入されると誰しも不愉快になるのは当然だ。こいつは中二病患者同士の仲だと勘違いしている。俺は中二病ではない。
「今は二つの情報がない。だから無暗に探しても見つからないわ。だから悪魔に情報を聞き出して」
「「え゛っ」」
シトリーとヴァプラが実に嫌な表情を浮かべた。善魔だから悪魔に話しかけるのは躊躇いがあるのは当然か。人間の俺としても自分から気さくに悪魔に話しかけたくはない。
「嫌なのは分かるけど、でも集めないと見つからないのは言うまでもないわ。だから頑張って」
情報を聞く、ということ自体は無茶難題なことではない。ただ心の拒否反応とどう立ち向かうかが情報集めの鍵となる。
「分かった」
俺やセーレは嫌な表情を浮かべず、頷いた。
「敵に空間魔術師はもういないはず。だから空間バリアーを破られる心配はいらないわ。フェニックスちゃん一人で心配にさせてしまいそうだけど、でも頑丈だから大丈夫。ねシトリー」
「はい。空間をバリアー化させたら破ることなど不可能です」
なお俺の第四部の闇ならば溶けてしまうが、レメゲトンの闇を俺以外に持つ者などいない。心配など必要ないか。
「私たちが暗殺部の本部室を、あなたたちはカイムを探して」
「ああ」
「じゃあ行きましょうか。もし危険な目にあったらすぐさま連絡してちょうだいね」
「了解しやした! じゃあ行くぞ、我が友モーヴェイツよ!」
「仲間だが友ではない。あと下の名で呼ぶな」
ウァサゴら女子チームは左へ、俺ら男子チームは右へ、一方通行の廊下を左右に分かれた。俺たちはカイムを探しに情報を聞き出す。場合によっては即座に拷問をして情報を無理矢理聞き出してもいいかもしれない。
「しっかし、カイムは三年生で、一年生たちは顔すら見たことが無い……」
「ああ、つまり一年生に情報を聞き出したところで何も得られない。三年生の教室へ向かうぞ」
するとヴァプラは驚きの表情を露にして俺を見つめる。
「はあマジレハ後輩!? 俺三年生というこの学校の鬼畜さを耐え抜いた真の悪魔が集う場所に行く勇気ないぞ……」
たかが体育祭の練習で、遅いランナーを魔物が喰い、追い詰めたぐらいの鬼畜さだからな。学級が上がれば上がるほど、それはつまり学校の試練を乗り越えてきた悪の精鋭たちだ。真の地獄を知る悪魔たち。ただの悪魔とは訳が違う。
「お前二年生だろ。多少の鬼畜を越えたんじゃないのか」
「まだ二年生だよ! それでも三年生たちには敵わねえよ!」
「ったく、善魔のクセに頼りないな。なんでよりにもよって俺とヴァプラを組ませたんだよ……」
「あの……レハ後輩、俺、先輩なんすけど……その口の聞き方辞めてもらっていいすか……?」
「断る」
「ガビーン」
ヴァプラは両手を上げて、ショックを体で表している。いちいち体が賑やかなこって。
「とりあえず上がるぞ」
三年生の教室へ繋がる上の階段を踏む。だがヴァプラは階段を上がろうとしない。それどころか戸惑っている。
「……上がらないのか?」
「いやだって、俺自信ないし……」
「お前はそれでもダークヒーローなのか?」
「……!」
「勇気を込めて階段をあがれ。それがお前のヒーローとして育てていく階段だ」
俺一人で階段を上がると、程なくしてヴァプラも階段を上がり、俺の側にまで近寄ってきた。
「俺、ダークヒーローになるために頑張るよ!」
「じゃあ情報収集するぞ」
「おう!」
三年生の教室の廊下まで上がると、流石に上階は高いな。
三年生となると流石にカイムという名前や顔を知る者は必ず居る。必ず探し出せるはずだ。
「てめえがレハベアム・モーヴェイツだな」
そのとき、背後から鋭い殺気を感じ取った。ポケットに入れている闇塊を即座に取り出し、コピシュに形変える。そして背後に振り向くと同時に斬り上げた。すると俺のコピシュは背後からの暗殺者の剣と衝突した。
「何者だ」
「ほお、勘が素早いな」
その者は口が黄色い嘴で黒い翼を生やしていた。ぱっと見烏の化身者かと思ったが、嘴が黄色いから烏ではない。クロウウタドリか何かの化身者か。
そしてその剣は、剣身が内側にカーブして剣先が鋭く尖っている。デザインも禍々しいのが特徴だ。
「俺様はカイム。暗殺部の副部長だぜ」
「カイム……!? そうか」
まさか情報を聞きまわる前に自分から姿を現すとは思いもしなかった。こいつがカイム。この不死鳥暗殺計画を企んだ暗殺部の者だ。
「てめぇを殺すと一億シェケルが手に入るのでな、まずは依頼を完了させる」
「依頼……? 誰が俺に暗殺の依頼をした」
誰かが俺に暗殺の依頼でも頼んだのか。それは気に食わない話だ。俺はこの学校を卒業しなければならないのだからな。
「てめぇに教えるほどでもねえぜ。何せあんちゃん今から死ぬんだからな」
「寝言は寝てから言え」
右手に魔術書レメゲトンを召喚させ、表紙をカイムの部位にどこか適当に当てようと振るう。だがその前にカイムは一歩後退し、表紙をよける。
「知ってるぜその魔術書。表紙を当てると力が吸い取られるんだってな。名前までは知らねえけどよ」
流石に表紙を当てる作戦は裏では有名になっているのか。これはまずいな。だがレメゲトンという正体までは知っていなくてよかった、というところだな。
「だが、このダーインスレイヴは血を吸う魔剣なんだぜ。ダーインスレイヴでてめぇの体を突き刺し、血を俺の体内に巡らせる! すると悪魔の力を吸い取る力はよう、誤魔化せて、てめぇの魔術書も触れるようになるって寸法よ。どうだいいだろう」
「寝言は寝てから言え。たかだか血を吸うだけでこの魔術書を触れるものか」
っとはいうものの、このレメゲトンはモーヴェイツ家の魔術書と言われている。俺のモーヴェイツ家特有の血を体内に取り込むことでレメゲトンの認証回避ができるって話は、案外とまかり通る可能性がある。それにレメゲトンはまだ暗殺部ですら知られていない伝説の魔術書だ。もし仮にこのカイムにレメゲトンが渡れば、後々レメゲトンを分析され、正体がバレてしまう可能性がある。それだけは避けなくてはならない。
「ダーインスレイヴ……なんてカッコいい名前の武器なんだ……! 中二病過ぎる……!」
隣の阿保はダーインスレイヴというネーミングセンスと武器のデザインに感動している。
だがダーインスレイヴは伝説の魔剣だ。生き血を浴びて完全に吸うまで鞘に納まらない魔剣と言われている。まさか実在しているとは思いもよらなかったな。
「おいそこの善魔。てめぇに用はないぜ。さっさと立ち去りな」
カイムはヴァプラに眼中になしのようだ。だがヴァプラは立ち去ることなく、俺の前に立った。
「いえ、悪いですがカイム先輩、善魔として、ダークヒーローとして、ここで消えるわけにはいかないんですよ……!」
「ダーク、ヒーロー? なにガキ夢見てんだてめぇ。そんなに殺されてぇのなら、まずはてめぇからだ!」
カイムは黒い翼を羽ばたかせて、空中に舞い上がり、ダーインスレイヴを頭上に持ち上げてヴァプラへ滑空した。対するヴァプラは拳を引いて、拳に電気を纏わせた。
「ヴァプラ、お前は相手するな。俺が相手をする」
「何を言うレハ後輩。カイムはお前を狙っているんだぞ」
「だからこそだ。まずはどけ」
ヴァプラは素直にどいてくれて、俺は襲い掛かってくるカイムの前に立つ。
「死ねえ!」
コピシュの剣先から闇の壁を出し、カイムの攻撃を防ぐ。対するカイムはそのダーインスレイヴで闇の壁を縦に斬り下した。裂かれた闇の壁は左右に倒れ、カイムはその間を通り抜ける。
「無駄だあ!」
しかし闇の壁から黒い蔓が生え、カイムの足を縛る。
「な、なんだこりゃあ!」
黒い闇の蔓は次第に足から脚へ、上半身へと侵食していき、徐々にコーティングさせていく。
「この、離しやがれ!」
さて、カイムがもたついている間に俺は第一部を開き、詠唱する。
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり」
俺の後方に闇の魔法陣が出現し、カイムに魔法陣を向ける。左手を中ぐらいに上げ、いつでも砲撃できる準備をする。
「お前が今から死ぬ前に一つ聞くことがある。暗殺部の本部室はどこにある?」
闇にコーティングされていくその体で、七十二本の柱槍の砲撃は避けられない。つまりカイムは今から死ぬわけだ。だったら暗殺部の本部室の場所を知っているを吐かせるのみだ。もっとも、素直に吐いてくれるとは思わないがな。
「な、なにい……おれが死ぬ前提で聞きやがって……! なめるな!」
カイムはダーインスレイヴを構え、己の両脚へ斬り下し、切断した。
「なに……」
「自分の脚を……斬りやがった……!?」
いとも容易く両脚を斬ったぞ。そこまでこの俺を暗殺することに意味があるというのか。
闇の蔓で縛る両脚から解放されたカイムは翼を再び羽ばたかせて、空中を維持する。
「俺は暗殺部の副部長だぜ……? 両脚を切断するという覚悟ぐらい容易い。てめぇのような死ぬ覚悟の無ぇ奴とは違う。学校で培ってきたものがあんだよ……!」
ただならぬ気迫と覚悟だ。暗殺という強い執念を感じる。こいつ、見た目より精神共に強いぞ。
「だったら、俺も覚悟を決めてお前を倒さなければな……善魔生徒会の一員として」
「善魔でもねえ奴が……人間が覚悟を語るなぁ!」
再びダーインスレイヴを上に構えて、俺へ滑空してきた。俺は左手を下げ、魔法陣から高速に次々と柱槍が解き放たれた。だがカイムは観覧車のように滑空しながら上へ回り込み、複数の柱槍を避ける。回避された柱槍はそのまま壁に衝突し、闇壁を木端微塵に突き砕く。
「甘いぜ人間!」
七十二本のうち四十一本の柱槍を放ち、残り三十一本の柱槍しかない。今さっきの回避の仕方から見るに、正直当てずっぽうで残りの柱槍を当てられる自信はない。ただ壁や物、天井を壊すだけだ。
「仕方ない。解除だ」
魔法陣を消し、第一部『ゴエティア』を元に戻す。そして第三部を詠唱する。
「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎」
「詠ませるかっ!」
詠唱中にカイムが下る観覧車のように空中を回り、そのまま俺へ滑空して、ダーインスレイヴを脳天斬り下してきた。俺はその前に一歩後退し、斬撃を避ける。
詠唱が途絶えてしまった。そして俺の間合いを容易く侵入されてしまい、接近戦に持ち込まれてしまった。まずい、これでは詠唱ができない。
「おうらっ!」
斬り下したダーインスレイヴを上げながら突き、俺は横に避ける。カイムは横に避難した俺にダーインスレイヴを横に振るうが、俺はバク転で後退する。バク転を繰り返し距離を離す。
「逃げんな!」
カイムは低空中を維持したまま翼を羽ばたかせて、後退した俺へ高速に間合いを詰めてきた。ダーインスレイヴを居合斬りし、横に薙ぎ払うが、その前に俺は床に寝そべり、斬撃を避け、両脚をカイムの顎目掛けて放った。だが俺の足底はカイムの左腕で防御された。カイムはニヤリを表情を浮かばせ、ダーインスレイヴの剣先を床に寝そべる俺に向けて、突き下してきた。対する俺はレメゲトンの表紙を剣先に当て、剣先はレメゲトンを貫通し串刺しにされた。貫通されたレメゲトンを左に動かし、突きの軌道を変え、突きは俺の顔ではなく、左耳元の床に突き刺さった。
「俺はこの接近を待っていた。このゼロ距離を」
最後に詠み終えた第一部『ゴエティア』の魔法陣を、俺の背と床の間に再び展開させた。
「なに……!」
「残り三十一本の柱槍を喰らえ……!」
すかさず砲撃し、三十一本の柱槍をゼロ距離に浮くカイム目掛けて真上に解き放つ。カイムは一瞬早くダーインスレイヴを抜き、真上に飛んだが、柱槍はカイムの翼や脚の傷口に当たり、そのまま貫通する。
「ぐふあああっ!」
もろに三十一本の柱槍の砲撃を喰らい、カイムは吹き飛ばされる。不幸中の幸いか、腹や胸など致命部位には刺さらず、決定打にはなっていない。床に落ちたカイムは、ダーインスレイヴを床に刺し、膝立ちして重心を魔剣に寄る。足を失い翼も負傷し、立派に立つことも飛ぶこともできなくなっている。この勝負は俺の勝ちだ。俺のレメゲトンも無事、再生が完了し、傷口は塞がっている。あとは詠むだけだ。
「れ、レハ後輩が……三年生に勝った……!?」
「お前の負けだ。おとなしく本部室の場所を教えろ」
「フフフ……」
するとカイムは不敵な笑いを見せ、俺へ睨み付ける。
「おい、窓を見てみろ」
ここで意味の分からないことを言いだすカイム。もしや俺が素直に窓を見つめて、その隙に接近しようと企んでいないか。いや、その脚に負傷した翼で俺にいきなり接近することなど不可能。仮に接近できたとしても隣には中二病患者がいる。俺によそ見の隙などない。素直に左の窓を見て、奥の景色を眺める。
「……! な、なんでだ……」
すると疑う光景があった。フェニックスが、あの暴走時と同じ、巨大な不死鳥に化身し、空を飛んでいた。
「なんでフェニックスが空を飛んでいるんだ!?」
「それだけじゃないぞ。フェニックスの背に誰かがいる!」
不死鳥の背には生徒二人が乗っていて、空を激しく滑空する不死鳥に振り回されないように必死に毛を掴んでいる。
「えっ、でもそれはおかしいぞ。フェニックスは空間バリアーで塞がれた生徒会室に居たんだ。それはつまり、フェニックス自身も外に出ることは不可能だ!」
「なのに外に出て、挙句暴走している。更には生徒二人が乗って襲っている」
生徒会室の扉の前に空間バリアーを張り、外側からの奇襲はおろかフェニックス自身が外に出ることもできなくなっている。だが今はフェニックスは暴走状態で空で激しく飛んでいる。明らかに矛盾している。
未だに不敵に笑うカイム。明らかに暗殺部が小細工を仕掛けたな。
「おい、貴様どういうことだ!」
「おめぇの暗殺依頼主がくれたんだぜ……空間バリアーを溶かす魔法をよ……そいつを空間バリアーに張った。俺の仲間がな!」
「俺の暗殺依頼主が……? しかも空間バリアーを溶かす魔法……?」
この俺を暗殺を依頼する者に関して思い浮かぶ者はいない。更にはあの空間バリアーを溶かすというそんな所業をこなす奴といったら、かなり限られてくる。あの空間バリアーを無力化できるのは空間か闇の魔術師だけだ。
「おい、その依頼主はいったい誰だ!」
「教えるかよ……フフフ。それよりもいいのかい。フェニックスを助けに行かなくてもよお?」
不敵な笑みを浮かび続けるカイムは、ダーインスレイヴの剣身に溢れ出るエネルギーを己の体内に吸い取った。すると翼の貫通した傷口が塞がり、翼が回復した。
「なに、翼の傷口が塞がっただと……?」
「まあ、そう易々と助けに行かせるわけがあるわけがねえがなっ!」
カイムは翼を展開させ、羽ばたいた。空中に浮き、左の窓に突っ込み、打ち破り外に出た。カイムは暴れるフェニックスに向かって滑空した。
「あのカイム、ダーインスレイヴで不死の血を吸い取るつもりだな。そうはさせるかっ!」
今までカイムはシトリーのバリアーによって近づくことができなかった。だがフェニックスがバリアーの護衛範囲から抜けた今、カイムが最も求める不死の血を手に入れるために、対象を変えた。あのカイム、ダーインスレイヴで暴れるフェニックスを斬りつけ、不死の血を体内に吸い取り、己が不死身になるつもりだ。だからフェニックスに暗殺者を送りつけていたのか。
「ヴァプラ、お前空飛べるな?」
「ああ!」
鮫肌の翼を展開させ、空を飛べるアピールをしてくる。空さえ飛べればなんでもいい。
「竜に化身しろ。俺たちが直々に奴らを追い払う」
「分かったぜ」
するとヴァプラは鮫肌の大きな翼を己の身に包み込ませ、激しく放電してきた。そして肉体が大きくなっていき、制服が鮫肌に変わっていく。大きくなっていく鮫肌の肉体は翼から溢れ、竜に化身した。二足歩行で凛々しく立ち、腹筋が割れている。見た目だけでこの威圧感。相当のプレッシャーだ。
「さあ、俺の背に乗れ」
ヴァプラは手腕を床に置き四足歩行の姿勢になり、背を平らにした。俺は咄嗟にヴァプラの背に乗り、ヴァプラは翼を羽ばたかせて、空中に浮き出した。拳で窓ごと壁を殴り、破壊した、空に飛び、フェニックスを追うカイムの追跡を始めた。
「フェニックス……今から守るからなっ!」
ウ「え゛、なんでフェニックスちゃんが外に居るの……?」
シ「ええええええええええええええっ!? しかも不死鳥に化身して暴れているではありませんか!」
セ「シトリー、あなたの魔法でフェニックスを閉じ込めているんじゃなかったの?」
シ「そ、そのはずなんですけど、わ、私にもよく分かりません……でも不可能なはずなんです! フェニックスさんが外に出れるはずがありません!」
ウ「待って、フェニックスの上に誰かがいるわよ!」
セ「それだけじゃないわ。ヴァプラが竜に化身して、その上にレハベアムがいるわ」
ウ「事情はよく分からないけど、たぶん不死鳥の上に居るのが暗殺部の奴らね……! だからレハたちが追跡しているんだ」
セ「どうするのよ。私たちも追いかけたいところだけど、空飛べないわよ」
ウ「う゛う゛ん?!」
シ「ど、どうしましたかウァサゴ先輩……?」
ウ「不死鳥とヴァプラたちの間に飛んでいるあのクロウタドリ……」
シ「え? あ、確かに黒い鳥いますね」
セ「ウァサゴ、あの鳥がなんだっていうのよ」
ウ「……あの鳥がカイムよ!」
シ「ええええええっ!?」
セ「どういうことよウァサゴ、なんであれがカイムだと言えるのよ」
ウ「……おもいだした。二年生の時、クラスおんなじだったわ」
セ&シ「おい」




