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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第二章 不死鳥護衛編
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十八話 不死鳥の化身者

小説家活動してから半年が経過しましたが、良い感じに小説技術が上達したと思います。それでもまだ詰めが甘いかもしれませんが、読んで頂けることに感謝はもうずっと忘れないように気を付けますね。

「よし……これでいい。とりあえずはな」

ウァサゴとシトリー、各二部屋のビキニ処理は完了だ。部屋はまだ散らかっているが、ビキニ処理の方が大優先だ。あとは燃やすだけ。

 俺は今、城後庭の白ビキニセットの山の目の前にいる。オイルが入ったバケツを持ち、ビキニの山にぶっかけた。そしてライターを点火させ、そのままビキニの山に投げた。すると瞬く間に燃え盛り、ビキニの白は黒に染まっていく。どんどん朽ちて焦げていく。芝生ごと燃やすつもりだ。燃えカスは第二部の小規模暗黒星で滅する。

 燃え山となった大量の白ビキニ。これでウァサゴとシトリーの部屋にビキニはなくなり、この城の俺ですら詳細不明な秘密を守ることはできた。残りの何千のもある部屋は立入禁止とテープを貼っておく。一応呪われている部屋という設定にしておこうか。そうすればシトリーは弱虫だから近寄らないだろうしウァサゴも危ないから大丈夫だ。

「さて、これであとはあいつらが戻ってくるまで掃除をすればいいな」

そのとき、満天の夜空の彼方に巨大な鳥の影が見えた。咄嗟に見上げ、鳥の影に注目する。

「なんだあれは……」

その影は次第に大きくなっていき、真下へ鳥が降りてくる。

「あ、危ない……!」

鳥は燃え山の中心にダイブした。その風圧で燃え盛る火炎は大きく揺れた。強い風圧だ。火種が全方向に舞う。俺は両腕を曲げて顔と胴体を守った。

「いったいなんだった……?」

その後燃え山は何事もなくただひたすら燃え盛り続けた。一方鳥の方は、こちらから姿が確認できず、燃え山の中で燃えている。何のうめき声も上げない。

 まるで鳥が自ら落ちに行ったかのような有様だった。いったいこれはどういうことなのだ。

「キェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」

そのとき、燃え山の方から獣の雄叫びがした。俺は咄嗟にレメゲトンを右手に召喚させ、臨戦態勢を取った。

「なんだ、魔物か!」

すると、燃え山は吸い込まれていくように次第に小さくなっていった。そして巨大な鳥の姿が確認できた。

「……火炎を吸い取っている……?」

吸い込まれていくように、ではない。火炎を肌や翼が吸い取っている。火炎を吸い取る巨鳥、やはり魔物か。

 巨大な足で立ち上がり、そして鋭い眼光で俺を睨み付けてきた。翼を展開させ、同時に鳥の方から熱風が生じ、俺の肌を軽く焼いた。

「あつっ……!」

翼を羽ばたかせて、飛んだ。繰り返し翼を羽ばたかせて空中に浮き、眼光は未だに俺を睨み付けてくる。

「キェエエエエエエエッ!」

「こいつ……俺を警戒しているのか」

威嚇をしている。それどころか獣の殺意が俺の肌に伝わる。こいつ、俺を食うつもりだ。

 火の巨鳥は嘴を開け、火炎を放射してきた。対する俺は右に避け、火炎放射を逃れる。そしてレメゲトンの第四部を開き、詠唱した。

「我は、太陽を囲いし星座十二将の皇帝なり。我が支配を受け入れ、光を閉ざせよ。第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』」

左手に小さな紫色の魔法陣が現れ、闇の塊を召喚させる。一方、巨鳥は再度俺へ火炎を放射してきた。俺は闇の塊を壁に変えて、火炎を壁で受け止める。火炎は闇の壁に衝突するが、壁は一向に燃えず、それどころか無力化されている。俺に能力や魔法は通じないぞ。

 壁から銃弾を連続して飛ばし、巨鳥へ放つ。だが巨鳥は空中で強く翼を羽ばたかせ、舞い上がり、マシンガンを避ける。そして壁の裏側へ回り込み、地上の俺へ滑空してきた。

「俺に近寄るな……!」

回避を余儀なくされ、右に逃げる。巨鳥は滑空の勢いで壁に突進し、闇壁を砕いた。同時に着地し、俺に睨み付けてくる。

「引っかかったな……!」

芝生に散らばった闇の壁の破片を針に変え、巨鳥の足元へ伸ばす。複数の針は奴の脚を貫き、串刺しにする。だが巨鳥は痛がる様子を見せず、激痛を意に介する素振りはない。

「なに、ダメージはないのか……?」

巨鳥は翼を羽ばたかせて上空に舞った。そして嘴を開けるが、嘴からは火炎は出ない。

 第四部の闇は触れている者の能力を封じる効果がある。巨鳥は脚に第四部の闇が貫いているから、奴は火炎を放出することができない。

 首をかしげている。巨鳥自身、なぜ炎を吐くことができないのか、不思議がっているようだ。

「火炎さえ封じ込めればお前はただの大きい鳥。俺を食う資格なぞ存在しない」

さて、あとはレーザービームで翼を切断し、最後は第五部の恨みの衝撃波で脳天かち割るだけか。だがあの巨鳥、嘴で針を啄み、抜いた。

 早くも第四部の闇の特性に気が付いたか。知性はあるようだ。全て抜かれては再び火炎が復活する。そうすればこの俺が火傷を負う可能性がある。そろそろ俺も攻めに転じるか。

 第三部を開き、詠唱する。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ。第三部『アルス・パウリナ』」

第三部のページがレメゲトンから離脱し、紙ドクロの群れを巨鳥へ放つ。口腔に闇のエネルギーを吸収させる。そして、口を開け、一斉にレーザービームを放つ。複数のレーザービームは巨鳥を貫いた。翼までも貫き、これで奴は飛べず落ちることになる。

「落ちろ!」

だが巨鳥はそのダメージに動じることなく、翼を羽ばたかせて空中を維持した。

「なに、落ちないだと?」

奴の体をよく見ると、貫ぬいた風穴から火種が吹き上げ、同時にみるみるうちに風穴が修復されていった。

「自己再生能力を持つのか……!」

風穴は完全に閉じた。これではいくらレーザービームで貫いてもダメージはない。自己再生が間に合わないほどのダメージか、或いは首や翼を切断させない限りあの魔物は倒せない。

 切断作戦で行こう。レーザービームを横に振るい、翼や首を切断する。紙ドクロの群れはそれぞれがバラバラに拡散し、巨鳥を囲むように向かわせる。だが巨鳥は散らばる紙ドクロたちに警戒し、横に滑空した。紙ドクロたちは巨鳥を追いかけ、一方俺は再び第四部を詠唱し、左手に闇の塊を召喚する。上空で逃げる巨鳥の前に回り込み、闇塊を芝生の上に置く。闇塊は壁に変形し、縦に伸ばす。上空にまで伸びた闇壁で巨鳥の前を塞ぎ、逃亡を阻止する。巨鳥は前方の闇壁に突進することなく、急ブレーキをかけた。突進し砕ければ再び闇で火炎が使えなくなるという学習能力を働かせたか。だが俺はそれが狙いであり、急ブレーキをかけた間に追跡する紙ドクロを巨鳥の周りに配置させた。巨鳥の包囲させた。あとはレーザービームで蜂の巣にし、首を切断するだけだ。包囲させた紙ドクロは口を開け、レーザービームを放つ。全方位からのレーザービームで巨鳥は全ての部位を貫かれていく。

「これでチェックメイトだ」

だが巨鳥は全方位レーザービームによるダメージで怯む様子はなく、雄に羽ばたかせている。しかしそんなことは関係ない。一匹の紙ドクロを首の前に配置させ、レーザービームを放った。紙ドクロは放ったまま顔を横にスライドさせ、レーザービームを薙ぎ払う。その首の肉を焼き切り、切断することに成功させた。顔はそのまま落ちていった。

「やったぞ」

「キェエエエエエエッ!」

「.......?!」

首と別れた顔から鳴き声が発せられた。地に落下後も鋭い眼光で睨みつけてきた。

「なに、奴は不死身かっ!」

首を切断されても生きている奴は不死身だ。道理で激痛に怯む様子を見せないわけだ。

 嘴を開け、俺へ火炎を吐いてきた。俺は左へ回避し、火炎を避ける。

 一方、紙ドクロに包囲されている本体から巨大な火種が舞い散り、全ての紙ドクロに付着。その火炎はあっという間に紙を焼き、灰と化した。

「紙は火に弱い.......ちっ」

そして下へ滑り落ち、勢いよく着地。首と顔の切断面を合わせ、肉をくっつけた。そして圧倒的治癒能力で顔は首と繋がり、再生が瞬く間に完了された。

「不死身に加えて再生能力.......だったら、再生する暇も与えずに葬る!」

第一部を開き、詠唱する。

「エロイムエッサイムエロイムエッサイム 我は求め訴えたり。第一部『ゴエティア』」

俺の後方に魔法陣が出現し、不死鳥目掛けて七十二本の柱槍を放つ。魔法陣から次々と高速に放たれる七十二本の柱槍は不死鳥を打ち砕き、荒く貫く。一本目は腹に、二本目は右翼に、三本目、四本目、五本目、次々と風穴を開けていく。そして七十二本目で脳天に突き刺さり、貫通した。複数の風穴は外側に亀裂が走り、その肉体は砕け落ちた。

 だが芝生に散らばる肉片が燃え、炎同士が引きつけ合い、合わさった。そして燃え盛る火炎山の中心から鳥の影が映り、そして翼を羽ばたかせて飛んだ。

「なに、ゴエティアをまともにくらって再生しただと……?」

確かに肉体バラバラに砕け散った。なのに肉片から噴き出す炎であっという間に再生したぞ。本当に不死身かこいつ。

「だったら、木端微塵に消滅させてくれる!」

第二部『テウルギア・ゴエティア』の暗黒星は炎はおろか細胞すら残すことを許さない完全消滅の大魔法。これで不死身を乗り越えてやる。少々世界に亀裂が走るが、この俺の命の問題だ。絶対に殺す。

「待ちなさいレハ!」

そのとき、後方から俺を呼ぶ声がした。後ろにふり向くと手提げ袋をたくさん持ったウァサゴとシトリーが加勢に現れた。

「ウァサゴ、危ないから離れてろ。今から暗黒星を当てる」

「レハ聞いて! あの不死鳥は魔の手によって狙われているのよ!」

「なに、魔の手だと……?」

「暗殺部という部活に不死鳥は命を狙われているらしいの。だから私たちはあの不死鳥を保護しなければならない!」

「おい待て。俺はこの不死鳥に命を狙われているんだぞ。突然と襲来してきたんだ」

「話せば分かるわ。まずは私に任せて」

手提げ袋を芝生に下ろして、手ぶらの状態で前に出た。

「キェエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」

不死鳥はウァサゴを睨み付け、威嚇した。嘴の隙間から火炎が溢れ出ている。いつでも火炎が飛んできそうだ。大丈夫だろうか。

「大丈夫よ不死鳥。私はあなたの敵ではない。味方よ」

威嚇にも怯えずウァサゴは優しい気持ちで不死鳥に訴えかける。だが不死鳥は嘴を開け、火炎を放射してきた。

「ウァサゴ!」

放たれた火炎に対し、ウァサゴは驚異的な脚力で跳び、火炎をなんなく回避。

「不死鳥! 大丈夫私は味方よ。だから落ち着いて!」

重力に従って不死鳥の頭上に落ち、なんと拳を引いた。そして、落下と同時に拳を不死鳥の頭上に叩きのめした。その衝撃は地にクレーターを刻むほどの高威力。不死鳥は頭を地に抑えつけられた。

「おいおい……言ったそばから暴力実行じゃないか……」

交渉を持ちかけたのにほんの三秒で拳をぶつけたぞウァサゴ。己の言葉をすぐに裏切ったぞあいつ。落ち着かせ方が無理矢理すぎる。

「キェエエ……」

だが不死鳥は脳天下ろしで気絶し、そのまま倒れ込んだ。するとその体はみるみるうちに小さくなっていき、鳥の姿からヒトの姿へと変わっていく。

「なに、化身者なのか……?」

獣がヒトの姿に変わるのは化身者だ。魔物はヒトの姿にはならない。つまりあの不死鳥は化身者だ。

 低身長で身肉は小さく、肌はぴちぴちで若い。そのヒトの身体的年齢は幼女だった。だがゲーティア高校の制服を着用している。こいつゲーティアの生徒なのか。

「シトリー、やはりあの小さい子が不死鳥だったんだ!」

「ええどうやらそのようでしたね」

「……?どういうことだ。俺にも説明しろ」

「説明は後。それよりまずはこの子を手当しましょ」

「あ、ああ」

ウァサゴは不死鳥の化身者をお姫様抱っこして、急いで城に走った。俺もウァサゴの後ろに追いかける。




「……なるほど。そういうことか」

とりあえずウァサゴらが買い物の途中で見た小さき女の子は、暗殺部という集団の部員に狙われていたところをウァサゴが助け、その最中にこの子が不死鳥になって城がある方角へ飛んでいったというわけなのか。だがなぜ俺へ襲い掛かってきたのかはウァサゴらも分からないという。

 不死鳥の化身者はソファの上で休んでいる。呼吸は正常で、俺が散々つけてやったダメージの傷跡は、不死鳥の再生能力で治癒され、ほぼ手当が必要ないほど自動に回復している。シトリーはその子の側に座り、見守っている。

「おそらく暴走したのよ」

「暴走……?」

「化身者は精神が乱れると勝手に獣になり、暴徒化してしまう。この子は暗殺部に追いかけられて、精神が不安定になり、暴走。結果的にあなたを襲い掛かってきたのだと思う」

獣ならではの本能か。確かに、意思を持つはずの化身者が俺に襲うのなら、殺意さえ無ければ魔物みたいに襲うのは無い。あの魔物のような暴れ方で化身者なら暴走だというのは、納得のいく説明だ。

 不死鳥は暗殺部に狙われ、精神が不安定になり、たまたま城の方角に飛んだ。そこまでは分かる。だが腑に落ちない部分がある。

「襲い掛かる前にこいつ、火の山に飛び込んだんだ」

「火の山?」

「お前らの部屋を掃除し終えた後、ゴミ(ビキニだけ)を炎で焼き消したんだ。そうしたらこの不死鳥が自ら火の山に飛び込み、火炎を吸収した」

「不死鳥は古来より火の鳥とされているわ。きっと火を取り込むことで何かしらのリラックスを得ようとしたのよ」

確かにこいつは火炎を自由自在に吐くことができる。火を取り込むことで何らかの回復効果がもたらすのはなんとなくわかる。

「なるほど……不安定だからこそリラックスを求める感覚は分かる。だが不安定が勝り、俺に襲い掛かってきた、と」

暗殺に追いかけられ精神が不安定な不死鳥は、たまたま飛んだ方角に火の山を見つけ、そこにダイブ。しかし百パーセントなリラックス回復とならず、不安定は獣の暴走を呼び起こした。これで合点がいく。暴走による不死鳥。恐るべしところだな。

「ん……」

そのとき、寝ている不死鳥の化身者が微かに声を出し、瞼を開けた。

「二人とも、この子が目を覚ましましたよ!」

俺とウァサゴは椅子から立ちあがり、不死鳥の化身者の元へ寄る。そのとき、化身者と目が合ってしまった。まずい、俺は事情を知らずにこの子を殺そうとした。目が合ってはすぐに怯えてしまう。だが化身者は暴走時の記憶が無いのか、目が合っても怯えず、上半身を起こす。

「あ、あなた方は……?」

「俺はレハベアム。あなたが気を失っている所を看護したんだ」

「私はシトリーです!」

「ウァサゴよ。あなた大丈夫?」

すると化身者はふわあっと笑みを浮かべて、微かに瞳に鱗が浮かんだ。

「はああ……この世にあなた方のようなお優しい方がいらっしゃるとは……私、感激です」

「あなた、ゲーティアの生徒のようだけど」

「はい、あっ、名を遅れました。私、フェニックスと言います。よろしくお願いします」

この会話のテンポ、確かに暴走時の記憶が無いように見える。あるとしたらこんな丁寧語はできない。記憶があれば俺とウァサゴに怯え、言葉が震えるはずだ。

「何年生?」

「一年生ですっ」

「俺と同級生か」

身長百三十センチほどの小さき幼女が俺と同級生か。これは意外だ。

「ウァサゴさんにレハベアムさん……はて、どこかで聞いた覚えがあるような……」

名は聞いたことがあるようだ。そりゃあそうだ。俺たちは黒獄の天秤という闘技場で戦ったんだ。全生徒が観客席に居た。そのうちフェニックスも座っていたんだろう。

「はっ、ウァサゴ……生徒会長……! あのバエル校長を殺した……あの生徒会長……!?」

ここでウァサゴの生徒会長演説を思い出す。そうか、フェニックスも一年生だから、新入生として入学式に居たんだ。

「まっ、バエルは生きているらしいけどね。その生徒会長よ」

するとフェニックスは急ぐようにソファから起き上がり、ウァサゴの手を掴んだ。

「た、助けてください……!わ、わっわわっわたし、あ、暗殺部に狙われて……!」

ウァサゴのバエル暗殺に黒獄の天秤の実力を怯えるどころか、あの時の平和への宣言故か、フェニックスがウァサゴに助けを求めた。あの平和宣言がまさかあの新入生で心が響いた生徒がいたとはな。やはりこの世は弱肉強食。弱い立場に立たせられる悪魔が居るのだな。

「落ち着いて。事情は私たちも知っているわ。大丈夫、私たち善魔生徒会があなたを守ってみせる」

ウァサゴの気持ちがフェニックスに共感し、フェニックスは薄らと涙を流す。

「こ、怖いんです……私、なんで暗殺部に狙われているのか……分からないんです」

「その……質問だが、暗殺部とはいったい何なんだ? 部活なのか?」

「ゲーティア固有の部活よ。暗殺や諜報を中心に部活動をする外道な部活」

野球部にチアガール部とも違う、特殊な部活だな。しかも暗殺とは、いかもの悪魔らしい部活だ。

「で、暗殺部に狙われている理由が分からない、か。一方的にフェニックスちゃんを狙っているのか暗殺部は……」

「明らかに暗殺部の企みがあるな」

「その……私の予想なんですけども」

「うん」

「暗殺部は……私の血が欲しいんだと思います」

「フェニックスの血?それはなぜだ」

「私は……死ねない体なんです。いくら生首になろうとも、私は死ねないんです。絶対に」

確かに、俺は暴走時のフェニックスの首を切断したが、見事に再生された。こいつは死ねないのは本当のことだ。

「そして、私の血がもし他のヒトの体内に入ると、その人も不死身になってしまうんです。だから私を狙っている……んだと思います」

「なるほど……だから暗殺部はフェニックスちゃんを追いかけているのね」

「では、こういうことか。暗殺部の部員全てが不死身になるために、フェニックスの血を求めている、と」

「はい……あくまで予想に過ぎないんですが、不死身以外何の特徴もない私を狙う理由なんて、不死身の血以外他にありませんから……」

予想ではあるがフェニックスに心当たるものは不死身の血以外他にないようだ。

 不死身が無限に増殖されると地獄絵図だ。暗殺部は不死身を求めている、となると、不死身増殖は阻止しなくてはならない。

「だったら尚更決まりね。これより善魔生徒会は、フェニックスちゃんを護衛し、そして、暗殺部を倒す!」

「えっ……で、でも……良いんですか?暗殺部は危険ですし、それに生徒会が危険を賭してまで私を守ってくださるだなんて……」

「いいのよ。だって私たち、善魔だから」

守ることに理由はいらない。善魔、という一言で十分だ。

 シトリーはやや誇らしげに微笑し、ウァサゴはどんとした面構えでフェニックスを見守る。俺はただ任務を果たすだけだ。悪魔の思うようにはさせない。野望を阻止することが人間界を守ることに繋がるのだから。

「……あ、ありがとうございます……この恩は一生忘れません……」

「よおし、となると、ヴァプラとセーレにも伝えなきゃね。依頼が入ったということを」

フェニックスの依頼、暗殺部から守る事。まさか不死身の者から護衛をお願いされるとはな。意外な依頼内容だ。

「ああそうだ、レハ。あなたに渡していなかったものがある。これ」

胸ポケットから白い生徒手帳を出し、俺に差し出した。

「生徒手帳か?それなら黒いの持っているぞ」

入学式前に一応これを受け取ったが、正直何も役に立たないから普段は鞄の物陰にいつも隠れている。ただその色は黒であり、ウァサゴが差しだしたのは白色だ。何の違いがあるのだろう。

「これは善魔生徒会専用の生徒手帳。メモる以外にも何と通話機能がついてあるのよ」

「通話機能?」

「試しにこれを耳に当ててみて」

差し出した白の生徒手帳を受け取り、革製の表紙を耳に当てた。ウァサゴは自分の生徒手帳を手にし、それを開いた。指先で紙を突くと、耳元に当てた生徒手帳が微動に揺れた。ウァサゴは自分の生徒手帳に口を近づけ、言葉を発した。

『どう、聞こえる?』

「おお」

革製の表紙からウァサゴの言葉がダイレクトに来た。これは便利だ。これなら遠くでも話すことができる。

「使い方は簡単。生徒手帳に名前を書いて、名前を突くだけで通話することができる。あなたの生徒手帳には既に私たちの名前を書いておいたわ。いつでも連絡して頂戴」

「ああ」

「一応フェニックスちゃんにも渡しておこうかしらね。もしも危機が迫ってきたら同様に連絡してね」

フェニックスにも同様の生徒手帳を渡し、受け取った。

「はい……! ありがとうございます!」

「シトリー、あとで二人に連絡して頂戴」

「かしこまりました」

「じゃあフェニックスちゃん。もう外は暗いし危険だし、まあどの時間帯でも危険だけど、しばらくはこの城に泊まっていきなさい」

「え゛」

「い、いいんですか!? やったあ! 実は実家も暗殺部につけられているから心配だったんですよ!」

この城の主は俺だぞ。なに俺の許可なしで勝手に決めているんだ。まあとはいえ、ちょうどウァサゴと同じことを言おうと思っていたが、ビキニ処理は二部屋しかやっていない。今からするのに時間は掛かる上に、あくまでビキニ処理しかやっていないから肝心の掃除は終わらせていない。

「ウァ、ウァサゴ。悪いがまだ掃除はまだ終わっていない」

「ええええなんで終わっていないの」

「お、思ったよりゴミ(ビキニ)が多かったからだ。そして、俺が掃除した二部屋以外、実は呪われているんだ」

「の、のののののののの呪われている?!レハさんそれ大丈夫なんですか……?」

「ああ、だからフェニックスの分の部屋が容易できない」

だって仕方ないだろう。ビキニが多いのが悪い。この城の元主の責任だ。それにまさか第三者目が来るとは誰が予知できるか。あ、ウァサゴなら未来予知できるんだった。

「まいったわね……じゃあ使える部屋はここ以外何がある?」

「俺の寝床だ。一応このソファも寝れないことはないが……」

「じゃあ、私がレハと一緒に寝るから、シトリー、あなたはフェニックスちゃんと一緒に寝なさい」

「は、はあああっ!?」

な、ななななななななななななんで俺がウァサゴと一緒に寝らなくちゃいけないんだ。女と一緒に寝るなんて俺は初めてだぞ。どこまでも俺のフリースペースに土足で入ってくる奴め。

「あなたが買い物終わるまで掃除できなかったのが悪い。私たち女子なんだから汚い部屋で寝るだなんて嫌よ」

「そうですよレハさん」

「私も……汚い部屋で寝るのは嫌です」

女性三人して俺を責めてくる。

「はあ、分かった。じゃあ明後日までには綺麗にするから」

まあ、ビキニだけ処理できただけまだましか。フェニックス登場によってまさかのもう一部屋のビキニ処理が追加されたがな。本格的な掃除は明日に回すか。

「じゃあ俺は疲れたから先に寝るぞ……」

「私も買い物で疲れたあ」

「私もです……」

「あ、あの……」

フェニックスがウァサゴに問いかけた。

「うん、なあに」

「追いかけられて汗びっしょりなので、シャワー借りていいですか?」

「もちろんいいわよ。で、レハ。シャワー室はどこ?」

「この部屋の向かい側にある。露天風呂だから好きに使っていいぞ」

「露天風呂なの!? あなたの城なんでも揃っているじゃない」

「ええ? ここ城なんですか? 道理でこの部屋綺麗で屋上が高くて豪華だなああって思ってました」

「じゃあ私も露天風呂入ってから寝ます!」

「私も!」

「露天風呂は地下で温められた天然の熱湯が自動的に湧いてくる。だから肌にはいいぞ」

では三人がお風呂に入っている間に、俺はぐうすかと寝かせてもらおうか。

「じゃあ行くわよお! 露天風呂!」

「はい!」

「ええ!」


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