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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第一章 黒獄の天秤編
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十死話 宿命


 ふと目が覚めた。まず視野に映ったのは黒い天井と、窓に映える黒い空と雷雲。時々黒雲と黒空全てを白に染め、ゴロゴロと轟音がなり響く。

 上半身を起こし、濃い影を覆うこの部屋はここは治療室だと認識する。

「俺は.......どうしてたっけ」

アモンを殺し、シトリーがウァサゴとバルバトスを救った。生徒会に入って、フライングチケットを得ることに成功した。その後が思い出せない。そもそも何故俺は病院の治療室で寝ているのだろうか。

「目覚めたようだな」

そのとき、渋い声が俺宛てに聞こえた。咄嗟に声の方向に振り向くと、スーツ姿をした老いた男が立っていた。

「誰だ」

「私はバエル。獄立ゲーティア高等学校の二代目校長」

「.......バエル?!」

肩が跳ねるほど驚き、仰天。咄嗟にベットから降りて床に立ち、ベットを挟んで間合いを取る。

「何故生きている。お前はウァサゴに殺されたはずだ!」

バエルと言ったら、魔王ソロモンの右腕にして、偽王国の生きる伝説、そして超名門校ゲーティア高校の校長だ。しかし入学式の生徒会長演説でウァサゴによりいとも容易く殺された。死んだはずの大物が何故ここに。

「この私があの程度で殺されると思ったら大間違いだ」

殺されたかと思われた伝説の悪魔バエルは生きていた。それどころかウァサゴの圧倒的な能力を前にして余裕の一言。流石は悪の繁栄期を創ったひとりだ。

「それより、だ。レハベアム・モーヴェイツ。お前に伝言がある」

「伝言?」

「お前の父からだ」

「なんだって、今、父と言ったのか?」

大変予想外な展開だ。なぜここで、この時で、名も顔も知らない、父という言葉が出たのだ。謎の父の伝言といったい.......?

「一度しか言わぬ。全ての言葉一つ一つ聞きしみて受け止めよ。魔王の息子よ」

「ま、魔王の.......息子?」

更に天地逆転するような発言。俺が魔王の息子? いったいどういうことなのだ。考える間もなく、バエルの口が開いた。

「『ゲーティアを卒業した後、エルサレム神殿に来るべし。魔王伝承の儀式を執り行う。――ソロモンより』」

「そ、ソロモン?!」

この俺が.......魔王ソロモンの息子だというのか? いやだが、ソロモンは既に死んでいるはずだ。なのに魔王伝承の儀式とはどういうことだ。

「お前は魔王ソロモン様の息子だ。二代目である我がゲーティアを卒業してから行くがいい」

「おい待て。なんで俺が魔王の息子なんだ。なぜ死んでいるはずの奴に魔王を引き継がなくてはならないんだ」

「二つの問いの答えは既にお前が持っている。」

「俺が.......持っている?」

そのとき、頭の中であるキーワードが浮かび上がった。

「はっ.......! まさか、レメゲトン」

レメゲトンは魔王ソロモンの魔術書だ。そして、俺は物心が付いた時には両親は居らず、顔すら知らない。この時には俺の隣にレメゲトンが置かれていた。この二つのキーワードがとある確信を産む。

「俺は.......魔王の息子.......だから、顔は知らないし、レメゲトンを扱えるのか.......」

ソロモンは凹成の変わり目と共に死んだ。悪の繁栄期に終わりを迎えた時期だ。当時の俺は赤子だ。父の記憶は持つことが出来ない。

 俺は、魔王ソロモンの息子。それ故俺は魔王の魔術書レメゲトンを扱えることが出来る。更に父の顔の記憶がないのは、ソロモンは既に死んでいるから、だったのか。

「レメゲトンを受け継ぐお前は、既に魔王としての道を歩んでいる。」

レメゲトンを扱える俺は、魔王の素質があるということなのか。

「だが待て。なぜ死人のソロモンが俺を魔王にさせたがる?」

何度も言うようにソロモンは既に死んでいる。なのに魔王伝承とはどういうことだ。この問にバエルは口を開いた。

「ソロモン様は、死んではおらぬ」

「死んで.......いない?」

ソロモンは病死で亡くなった、というが伝説の最後だ。なのに死んでいない? 伝説とは違う内容ではないか。これはいったい。

「言ったであろう。エルサレム神殿にてお前を待つ、と。ソロモン様は息子であるお前が来るのを待っているんだ」

エルサレム神殿とは、偽王国王都ヴェルサレムの中心地にある神殿だ。ソロモンはそこで生きている、とでも言いたいのか?

「ソロモン様は三代目の魔王をお前に引き継がせ、この魔界を再び統一させようとお考えである」

「俺が.......魔界を支配しろ、と言いたいのかソロモンは」

「それがモーヴェイツ家の宿命だ」

俺の苗字モーヴェイツとは、魔王の一族だったのか。

 この俺が、魔王になって魔界を支配する? そんなこと、ありえるのか.......?

「以上だ。お前は人間界へ帰るためにゲーティアへ進学したつもりだろうが、そうはさせぬ。我が主ソロモン様のご希望に沿って、お前は魔王になる。宿命を抗うなどやめておけ」

そう言うとバエル校長は俺に背を向け、歩き、濃い影の中にへと消えていった。扉を開ける音が響き、バタンと、この部屋から出て行った。

 黒空が瞬く間に光る。五秒後に轟音が鳴り響き、雷は山に落ちる。

「俺は.......人間界へ帰るつもりなのに、魔王になるというのか.......?」




黒獄の天秤編 完

黒獄の天秤編、遂に終了しました。次は第二編を送り致しますので、お時間をくださいまし。では

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