第十三話 時間はなかった
私の選択は間違っていたのかもしれない。貴重な時間ほど溝に捨ててしまいがちだが、科学者の死に際に放ったどうしようもない言い訳を知ったとして何の益にもならない。
これをわざわざ選択肢に残す方がどうかしてると思いつつ、私たちが忘れるようになった原因はこの科学者のエゴだということが分かった。彼は彼なりに楽になりたかったのだろう。彼のエゴが皆の欲しているものと同じかどうかなんて分からないが、この世界も求められた一つの世界なのだろう。
私はこの世界に干渉すべきなのだろうか。これはこれで一つのユートピアではないか。もし、私も忘れることが出来たら死なずに済んだ。人は亡者に躍らせられて前に進めなければ、永遠に過去に囚われてしまう。確かに、前へ進める人はいるだろう。誰にも頼らずに一人でやっていけるものもいるだろう。だが、皆が皆一人でやっていけるほど強いわけではない。だから、必要なのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、出口から衝撃が走った。ドアの破片が飛び散る中、蛆のようにドアから人が湧いた。私は為すすべなくその場でとどまった。今更何ができるのだろう。考えているうちにタイムリミットで終わり、友人の頼みさえ聞けなかった私は今から死のうとしている。彼らが私をどうするかなど知っている。
そう心の中で呟いた。多くの弾丸が私を貫いた。体の中にとどまるものもあれば、いたずらに駆け回り貫通したものもあった。言葉で表せないほどの衝撃が体中を駆け巡った。穴から噴き出す血が生暖かい、心臓は血液を回そうと鼓動数を上げる。あげるたびに噴き出す血の量が増える。血が脳へ回るまでこの地獄は私を起こしてくる。痛め、もっと痛め、そのように私へ押し寄せる。当に地面へ転がっている私はいったい何を求めてここへ来たのだろうか。
終わり




