第十二話 人が完全に死なないために
さて、自分を取り巻く謎より世界を取り巻く謎の解明を選んでしまった。どうして人が忘れるようになったのか、そして私がなぜ孤独を感じていたのか、私はそれが知りたかった。もう私が何者かなどどうでもいい、自分が何故忘れられないのかなんて左程重要ではない。気にならないとまでは行かないが、それより死んだ友人が何のためにここまで手の込んだことをしたかったのかが分かった。それだけでいい。
走って枯らしたはずの水分が目から鼻に辿る。外が騒がしい中、水分がコンクリートに溶ける。床には染みが出来て、ただそれだけであった。記憶に踊らされていたのは結局のところ誰だったのだろうか。死んだ人の事を忘れられない彼らなのか、それとも私なのか、もう分からない。
さあ、友人の頼みを聞くとするか。私自身こんな世界が今後あっていいわけがない。人が他人の記憶を無理やり忘れさせることなんて、死んだ人があまりにも報われない。人は忘れ去られるまで死なない、皆の記憶から完全に消えた時、存在そのものが死ぬ、私は存在までも死にたくない。記録に残される0と1で表現される存在にはなりたくなかった。だから、私はこれを壊す。
そして、爆死。




