第十一話 私が消える
世の中には知る必要のない情報が転がっている。インターネット上にある膨大な情報量から必要な情報を 取捨選択して蓄えている。情報をどう扱うかはその人次第なのである。そう、自分が影響を受けない理由を自らの意思で選んだのだが、こんな理由なら今にでも忘れたいものだ。
自分だけが覚えている、其のことを理由に社会から切り離され孤独を感じていた私がそもそも社会と相反する存在であったことに笑い転げたかった。人が集まって社会は形成されていく。社会にはぶれてしまった人々は二種類の道しか残されていない。省かれるか溶け込むかだ。そして、私の場合は省かれる方なのだろう。
部屋に足音が聞こえてくる。大人数が外から押し寄せてくる。ゾンビ映画でもよくあるが、出口は一つしかなくそこには大量のゾンビが押し寄せてくる。室内では今にでもストレスが爆発して責任の擦り付け合いが始ま。俺は悪くない、私は悪くない、そんな戯言はこの状況をより悪化させてしまう。絶体絶命で誰もが死を直観する中、一人だけひれ伏せない奴がいる。何としてもこの状況を変えようと頑張ろうとするやつだ。今、私が欲しいのはそんな人物だ。友人に一人いたが一回で死んでしまっている。彼が死んでいる時点で私も死ぬ運命だったのだろうか。
次に彼の頼みだが、悩みどころだ。壊すなんてものは簡単だ。そんぐらい自分でもできるだろ、と言いたい。百歩譲って出来なかい理由があったとしても私を巻き込まないで欲しかった。あと、もしもの話だが私がこれを壊さなっかったら世界はどうなるのだろうか。死んだ人の記憶を忘れられるなんて良いことではないか。もし、私も忘れ去る事が出来れば謎に恋焦がれて死ぬ必要もなかったはずだ。
そしてだ、私はどうしたいのだろうか。このまま壊して死んでも、感じていた孤独は払拭しきれないし逆に増すばかりだ。私が反社会的人物なら社会に傷跡を抉るため壊す選択が正しいのだろう。私以外にも少数が感じていた孤独をみんなに知って大いに荒れてもらいたい。ただ、壊したら彼らが今まで踊ってきた劇が無駄になってくる。私たちからすれば異常なのはこの状況に踊らされている彼らなのだろう。このまま永遠に踊ってもらって私は愉悦を一人だけで浸ることも可能だ。
死んだ友人の頼みもあるしここは壊しておこう。社会にもそれに属する人も混乱するだろう。出来るだけ大いに荒れてほしい。私はもう忘れ去られる存在だがな。
私はPCを投げた。むき出しのコンクリートに当たり鈍い音が部屋の中で響く。時間がある限り私はそれを行う。私が皆から忘れ去られる前までそれを行う。私が生きていた情報が皆の記憶から亡くなるまでこれを行う。誰からも忘れ去られるまで行う。
ドアの方から足音が聞こえたと思ったら音が止んだ。どうしたのかと思い、私は向かった。その途端に爆音が響き、熱風が私を焼き押しのけた。刹那に私はこいつらがアホだと思った。大切なものがあるのにもかかわらずやり方が無理やりすぎると。単に知らないだけだったかもしれないが。
熱風と共に吹き飛ばされ意識が朦朧とする中、私の中から光が消え皆の中から私が消えた。




