怒り?の早足
「さっそく、鍛冶の依頼が来た」
「そういや、手伝い、って何をすれば良いんですか?」
「…………」
無言のアバターと化したクウシェさんを、ジト目で見る。絶対考えていなかったよな?
「……何だろう?」
クウシェさんが、可愛らしく首をコテッ、と傾げる。
「何でしょう?」
騙されないぞ、と僕も、それを真似しながら、オウム返しで聞いてみる。
「鍛冶、してみる?」
「鍛冶スキルないですよ?」
「なら、とれば良い!」
……何だろう、このパンが無いならお菓子を食べろ!的な言い分。
「SP足りませんよ、多分」
「鍛冶スキルとかの生産スキルは、SP1が多い。だから、大丈夫」
そういわれて、探してみると……本当だ。鍛冶スキルはSP1で取得可だった。
早速ポチる。
『鍛冶スキルを取得しました!』
「一応、鍛冶スキルとってみたんですが…………」
「ん。ただ……」
「『ただ』?」
「生産系スキルは、『繊細』とかのスキルも取らなきゃ、失敗率が高い」
「…………」
「…………」
「「…………」」
こいつ、騙したな?
「SPって、レベルアップで貰えるんですよね?」
「その通り」
「必要なスキルってどれくらいなんですか?」
「『繊細』と『器用』と『強運』の3つを合わせて、SP9ぐらいかな?」
「……分かりました、レベルアップしてきます」
「え?ちょーーーー」
僕は、クウシェさんの声が聞こえるよりも早く、その場を去った。
◇◆◇
向かった先は、
竜鉱山の頂上ーーーーつまり、竜頭だ。ここには、危険度Aのフィールドボス『レッドドラゴン』がいるらしい。
早くレベルアップをしたいのなら、強敵を倒す。これが一番だ。現に、そうして異世界でもやって来た。
だから、出来るだけ早く、竜頭を目指す。
九尾の尻尾の残り全てに移動速度が上がる効果を付与する。
『移動速度上昇(大)』『移動速度倍加(大)』『AGI上昇(大)』『AGIアップ(大)』『AGI倍加(大)』の5つだ。
狐人族ということも重なって、AGIがとんでもなく凄いことになる。
そして、あっという間に、竜頭に到着した。
しかし、肝心のレッドドラゴンがどこにも見当たらない。空から飛んで出てくる訳でもない。
どうしたものかと、困り果てる。そして、探索をしてみる。
すると、怪しい穴を見つける。後から分かったことだが、そこは竜頭の先端、竜口だった。そこから、奥に、転移門のようなものが見える。
ーーーーあそこに入れば、レッドドラゴンがいるのだろうか?
多分、そうなのだろう。そう言うことならば、話は早い。
選択肢などただ1つ。飛び込む。
黒革のコートがバサバサと音を立てる。そしてーーーー
ーーーー僕は、レッドドラゴンの住処《竜鉱山・竜心》に到達した。