第5話 道具の話②(選択ツールと塗りつぶしツール)
PCで文章を編集する時には、「カット」「コピー」「ペースト」をよく使います。そして、それは画像編集でも同様です。
実際に文章を「カット」または「コピー」する場合にはどうしますか? そう、まず目的の単語の頭にカーソルを置き、クリック&ドラッグで引っ張って範囲を指定しますね。
同じことを画像ソフトでも行います。ただし、直線を引けば済む文字とは違って画像には「面積」があるので、範囲を指定するためには「線で囲む」必要があります。この、「作業の範囲を指定するため線で囲む」道具が「選択ツール」です。
そして、この選択ツールを使いこなすことが、「レイヤー」の次に、と言ってもよいくらいに画像処理の手抜きのためには重要なのです。
1、長方形選択ツール、楕円選択ツール、投げ縄ツール
作業の実際を見てみましょう。下は前々回のパレット(作業台)の画面です。
対象として「アイコンレイヤー」を選び、長方形選択ツールを使って山のアイコンのひとつを選択してみます。アイコンの左上をクリックしてそのまま右下にドラッグします。
山のアイコンが長方形で囲まれて「選択」されました。この状態でコピーを行うと、「そのレイヤーの」「選択された範囲内」のみが記憶されます。背景の薄桃色はレイヤーが違うので記憶されません。
同様の操作は「楕円選択ツール」でも行えます。「投げ縄ツール」はドラッグではなく手作業でぐるっと囲む道具ですが、効果は同じです。選択範囲は画面のどこかをクリックすれば自動で解除されます。
ちなみに長方形と楕円の選択ツールは shift キーを押しながらドラッグすると「正方形」「正円」の形になります。幾何学図形を描くときに自動で円が作れるのはとても便利です。
では記憶した山アイコンをペーストしましょう。
キャンバス(地図本体)の「山レイヤー」に移り、山を置きたい場所を「選択」します。そして、メニューから「選択範囲内にペースト」を行います。地図本体に山が移植されました。
ちなみに、「選択範囲内」ではない単なるペーストだと、ご丁寧なことに新しいレイヤーが自動で作られて、その中央にぽつんと移植されます。
細かい観察や作業には画面を拡大したほうが便利なので、ここで虫メガネ印の道具を使います。これを選んだ状態で画面をクリックするたびに1段階ずつ拡大表示されます。作業内容には全く影響しません。Shift キーを押しながらクリックすると1段階ずつ縮小します。
さて、ペースト直後は山アイコンが「選択された状態」にある、ということがお解りでしょうか。……う〜ん、少々見づらいですね。山の線がぴったりと破線で囲まれています。実際には破線がぐるぐる回っているので一目瞭然なのですが。
このまま山アイコンを掴んでドラッグすれば動かせて、ペースト位置の微調整ができます。
ただし。ペースト直前に指定された範囲をPCはしっかり覚えています。そこからはみ出すと山がちょん切れてしまうので注意。
2、選択範囲の加工と効果
では、もう一歩踏み込んで「選択ツール」と「選択範囲」について考えてみましょう。
実は、(選択する対象の絵ではなく)「選択範囲」そのものも加工の対象になるのです。例えば、画面の中央を長方形に選択します。
この選択範囲を保ったまま、shift キーを押しながらさらに選択を行うと「選択範囲の追加」になります。離れた場所にも追加することができます。続けて option キーを押しながら(楕円と投げ縄の)選択を行うと「選択範囲の削除」になります。
この加工された選択範囲を極太ブラシで塗ると、こんな風になります。
「選択範囲」とは「作業の効果範囲の指定」なので、そこから外れた部分には全く描画されません。もちろん他のレイヤーは無関係です。
作り始めた地図で選択範囲の加工例を見てみましょう。
まずは地名。作業台に文字を書きます。(ブラシによる手描きではなく)フォントを使って文字を書くと自動的に文字レイヤーが作られます。
文字を書いた後、そのレイヤーにメニューから「レイヤーをラスタライズ」という操作を行います。これを行うと「文字列データ」が「模様=画像データ」に変換されて、以後は画像処理の対象になります。
そして「すべてを選択」し「カット」、もう一度「すべてを選択」して「選択範囲内にペースト」。これで文字の黒い部分だけが正確に選択されて残りました。
次にメニューから「選択範囲の拡張」。すると文字の周りに少し範囲が広がります。これを保ったまますぐ下に新しいレイヤーを作り選択範囲を白く塗りつぶし。この後2枚のレイヤーを結合します。周囲が白抜きされた文字ができました。
あ、塗りつぶしには専用の道具があります。文字通りレイヤー内のすべての選択範囲を同時に描画色で一発で塗りつぶすもの。単純ですが使用頻度の高いツールです。
次の例は地図の標題です。文字を囲むように長方形に選択します。それを保ったまま下に新しいレイヤーを作り白く塗りつぶし。そして選択範囲を拡張。さらにもう1枚新しいレイヤーを下に作り、今度は黒で塗りつぶし。3枚のレイヤーを結合。白地と黒枠で囲まれた標題ができました。
もうひとつ、外枠です。新しく「外枠レイヤー」を作りすべてを選択、そして選択範囲を縮小。選択範囲が少し狭くなります。その後「選択範囲を反転」。外縁の部分だけが選択されました。で、この部分を黒く塗りつぶし。外枠ができました。
このように、「選択範囲」そのものも加工の対象になる、と考えてください。範囲の「追加/削除」「拡張/縮小」「反転」などの細工を行い、さらにそれを他のレイヤーに持っていって使うことで、地図製作は楽になります。
選択範囲を決める、ということはかなり重要なので、画像ソフトでは作った画像データだけではなく選択範囲を同時に保存することも可能になっています。