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#異世界のカードゲーマー というお題から→暗黒の儀式。死霊の迷い辻。アルバイトの巫女

作者: 茶屋ノ壽

 「雅楽とか鳴り響く中、決められた手順で身体を捌くと気持ち良くありませんか?」

「はあ、そんなものでしょうかね?」

 赤白の巫女服を着た女の子さんと、黒いローブ、フード付きの魔法使達が、奇妙にずれているようなそれでいてしっくりしているような会話をしています。


 怪しげな魔法陣を囲んで、3人ほどの黒ローブ呪術使いが佇んでいまして、そこは、ぼんやりと薄く蝋燭の灯りで照らされている感じの明度の場でございます。


 3人の呪術者たちは、皆、くるりと、身体ごと、視線を、魔法陣の外側に現れた巫女さんへと向けていますが、なんだか、信じられないものを見ているような、ひどく驚いた表情をしています。


「ですので、この儀式はとても美しいと思うのです。何より、聞いたこともない響きが素晴らしいのです」熱弁している巫女さんでございます。

「ええとどなたでしょうか?……ふーあーゆー?」

 基本的な質問をする黒ローブのリーダさんでございました。

「私は、しがないバイト巫女でございます。現在は、氏神さまからの依頼のようなもので、こちらにお邪魔したわけでございまして」丁寧に説明をしてみます。

「はあ」黒ローブさんは、疑問が尽きないようではございます。


「本業は、”黒”の魔法使いですね。つまり、ネクロマンサーという奴、なんですねこれが」朗らかに笑いながら、ぽオンと、自らの頭を叩きながら、宣言する巫女さんでございます。

「あ、ご同輩で?しかしどうやってこの儀式場へ入り込んだのでしょうか?」それが、大きな疑問だと、リーダ以下たの二人も、頷きます。うんうんと。


「どうも、こちらの神事とそちらの儀式が干渉てしまったようでして……、ちょっと不具合が出そうだと、出張を依頼されまして」やれやれと肩をすくめる巫女さんでございます。

「はあ、こちら、頻度も高い結構メジャーな儀式ですが、何回も繰り返してきて、これは初めての事例ですね」驚いている黒ローブリーダーさんです。

「の、ようですね術式から見ると、単純に”マナ”の増幅のようですし」

「そうです。その後の展開を有利に進めるために、速度を速めるための、典型的な初手の一手でありますね、もう何百回も繰り返されたルーチンワークでありまして」うんうんと3人合わせて頷きトリオでありました。


「タイミングの妙でしょうかね?方角とかも関係しているのかもしれません、17次元的な何か?」巫女さんが指摘します。

「いやそんないい加減な……それで、これからどうされるおつもりで?」呪術師、黒ローブのリーダーが尋ねます。

「とりえず、”この”場を整えることになりますね」


 でわ、と、巫女さんは、鈴を束にしたようなものを、手にとって。一つ舞を奉納いたしますと、どこか遠くの方へ、宣言いたしました。


 どこからか雅楽の音が聞こえてきます。

 巫女様、ゆらゆらと、体が振れて、何かに触れていきます。

 それでいて芯はぶれていない、不思議な歩法で舞い、踊っていき、

 笛の音と、調和するように鈴の音を、世界に響かせていくのです。

 

 それと同時に、何かが、そこに満ちています。

 此方から彼方へ、

 此岸から、彼岸へ、

 ただ通り過ぎるだけの影、

 頰を撫でながら、何も語らない無声の意思無き意思の群れ、


「あ、それは次に呼び出そうとした”スペクター”ですので連れて行かないでください」呪術者のリーダーが注文をつけてました。

「おや、これは失礼いたしました」器用に、舞に謝罪を混ぜる巫女様でございます。



 道が混ざり、7叉路からなる交差点、時も間も越えていけ、

 たゆたゆと、流れ行く、単調な笛の音に、

 踊れ踊れ、円環を、

 螺旋に加えて、中へ、外へ、

 極中へ、辺境へ、

 紛れて、混ざれ、

 練られて、慣らせ、

 鳴いて、歌って、響いて、軋め、

 弾いて、つまんで、揺らげて、刎ねろ、

 無数に分かれて、一つに惹かれ、

 暗い明かりに、灯す火は、

 白墨のごとし、



「この歌はどなたが歌っているのでしょうかね?」呪術師トリオのリーダが不思議ですねと声を出してとうてきます。

 誰も答えませんし、それを期待している風でも御座いません。



 吹い消して、あやふやへ、朧のごとく、霧の中

 優しい暗闇、包みて抱く、

 腕に来るは、鶫であるか、

 夕闇一声、

 幕は落ち、

 玄霧に、場が満ちれば、

 一礼とともに、でわ、おさらば、


 ぺこりと、巫女様が頭を何かに下げますと、周囲は闇に包まれるのでございました。




 一枚のカードが、舞い踊っています。

 絵柄は、3人の黒ローブの呪術師、それが描かれている魔法のカード。

 宙に舞うそれを、すうっと、手に取るのは、美貌の巫女さまの白く細い指でござい。



「どうされましたか、バイトの巫女さん」それを、神主様が見てござった。

「いえいえ、今しがた、カードの国から帰ったところでございます」振り返り軽く応える声は、どこか楽しげで。

「それは良い旅でしたね」微笑む神主様でございます。

 

 そうして、


 巫女様が、妖しく笑いまして、お話はここまでございます。


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