4、B'zと戦争映画
前回は『火花』について長々と書きました。
一気呵成に書き殴った批評。ちょいと恥ずかしい。
今回は浅田次郎さんから離れてタイトルの件を書きます。
まず、僕はB'zの大ファンである。小さなおじさま二人が奏でる爆音と爆声がなんとも言えず好きだ。もちろん稲葉さんという稀有な歌い手については言わずもがな、である。甘いマスクはかつてアイドル以上の黄色い声援をかっさらい、その反面ねちっこい歌声と脅威のスクリーミングシャウトは他のアーティストでは得られない刺激を世の男性に与えた。松本さんは決して華やかさを売りにせず、冷静・堅実なハイ・テクニカルギターの音色を稲葉さんの歌声に寄り添わせている。
ハードロック・ヘヴィメタルが好きな僕にあってB'zだけはいつになっても特別な敬愛を抱いている。
ちなみに発音は『ビーズ』ではなく『ビーズ』だ。ここ一番注意。
次に戦争映画について。
僕は映画も好きである。邦画洋画問わず見漁る。なろうで好きな作家さんが映画について書いた短編があったので、僕も映画について一家言を列ねたい。
ジャンルも問わず見る。さすがに昔の『ベン・ハー』は見るに耐えず早送りをしたが、時代背景は好きだ。
一番好きな映画は、の問いにはありきたりで申し訳ないが、『ニューシネマパラディッソ』を迷わず選ぶ。あれこそ「映画好きな人のための映画」と声高に言える。主人公サルヴァトーレが幼少時に集めた接吻場面のみを切り取ったフィルム(当時のイタリアの検閲による削除)を再び繋ぎ合わせ、一人試写場で涙しながら見るシーンは、見ている人間全てに憧憬を与える。
大昔にビデオテープでこれを買い、文字通り擦りきれるまで見た。擦りきれていよいよ見れなくなった後に、DVDで同作を買った時は封を開ける前に既に泣いていた記憶がある。
そんな中、石原慎太郎元東京都知事が制作総指揮を執った戦争映画を知った。『俺は、君のためにこそ死ににいく』という太平洋戦争中の特攻隊を描いた邦画だ。まだ古くはない。第二の裕次郎と呼ばれたなんとかって人が主人公を演じた邦画だ。俳優名は覚えていない。
内容は至ってシンプルだ。若くして神風特攻隊に入り、鹿児島県の知覧に召集される若者の生きざまを描いた内容だ。そこにいた実在の女性、特攻隊の母と呼ばれた「鳥濱トメ」さんと特攻隊員の交流を生々しく回想するシーンはお涙頂戴感満載であった。ちなみに映画は大コケしたらしい。
見た感想はと言うと、興行収入に比例するかな、とだけ言っておく。この手の映画は面白い面白くないで判断はしてはいけない気がするから。
しかしこの映画、なんと主題歌をB'zが担当しているのだ。
あらま。
実はだからこそ上映前からチェックしていたのだが。
『永遠の翼』という壮大なロックバラード。もはや商業主義と呼ばれそうなロックバラード。しかし歌詞と作曲は天才的なおじさま二人。何とも映画にマッチすることか。車に乗るときは専らB'zかロックを聴く事が殆どだが、この曲を聞くと、「為虎添翼」と書いた鉢巻を頭に巻いた気になり、背筋が伸びる。
冒頭で今回は浅田次郎さんの事から離れて、と書いたが、少しだけ。浅田次郎さんはピカレスク作の『プリズンホテル』シリーズを、今後の作家人生を予見して「かけがえのない習作」と位置付けた。なんと素敵な言い回しだろうか。
僕はこの「かけがえのない習作」として『空の上』を書いた。もちろん太平洋戦争を副題にしている短編。だからこそ書いた当時のまま拙い文章を載せている。改筆を加えたいのだが、この思いが強くて改筆できないでいる。
大好きなB'zを聴きながらドライブ。僕の息抜きの一つだ。
しかし、『永遠の翼』が流れると、批判に晒された戦争映画と自分の拙い「かけがえのない習作」が脳裏によぎる。
おそらく『永遠の翼』の歌詞は二次なんちゃらに引っ掛かるかも知れないので引用は控えるが、時が過ぎ大人になればなるほど、それが持つ意味やメッセージが重く感じられる。
このエッセイはおそらく数少ない人に読んで頂いていると思うが、是非とも神風を「しんぷう」と読んでもらえる事を願い、水戸黄門さまで知られた俳優の西村晃さんの事を知ってもらいたく締めます。