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2、浅田次郎という小説家

 何度も書いてますが、いよいよ噂?の浅田次郎さんについて書きたいと思う。


 さて、浅田次郎と聞くと皆さんは何を思い浮かべますか?


 まずは「鉄道員(ぽっぽや)」かな。これが代名詞みたいなものだからね。


 とりあえず本ならよく読む、なんて人は「蒼穹の昴」や「中原の虹」などを思い浮かべるかも知れませんね。

 ※「中原の虹」は個人的に国内最高峰の文学賞だと思う吉川英治文学賞を受賞されています。


 映画、特に邦画が好きな方は「壬生義士伝」や「地下鉄(メトロ)に乗って」でしょうか。


 まあとにかく様々なジャンルを書くわ書くわで……お腹いっぱいなのにお代わりをしてしまう、そんな方です。


 現在は日本ペンクラブの会長をされています。

 適任ですよ、はい(何様)


 さて、周りでは浅田次郎ファンがあまりいない。

 なんでも、年寄りのジジババが好むそう。


 本題。

 何が好きなのか。


 前回の「ライトノベルと歴史小説」にも書きましたが、たくさんありすぎます。



1、泣かせ屋・笑わせ屋


 言わずと知れた醍醐味です。ただ、真面目な小説を書いていながら、クスリ、ではなくゲラゲラと笑えるシーンはなかなかないですよね。このおじ様は平気でそれをしてしまいます。特に「プリズンホテル」シリーズは電車の中で読んでいたら要注意。あまりのニヤニヤ顔で周りから不審者に思われること必至でしょう。


 また、ボロボロ泣くシーンを要所要所に入れるこの人は悪魔です。これもいわずもがな電車の中で読んでいたら要注意。あれ?失恋でもしたのかな?と思われるぐらい涙が溢れます。


 まあここまでは他の作家さんでも稀にありますが、このおじ様。ここから「畳み掛け(・・・・)」をしてきやがるのです。


 悪ふざけの度が過ぎるぐらい日本語の羅列で呼吸を奪う。

 もういいよ、って思うのに、まだまだ泣かせようとする。


 テンポの良さがそるをさせるんだね、きっと。



2、現地取材を極力しない


 これが非常に作風にいい影響を与えていると思う。

 曰く、「イメージを大事にしたいから」との事。

 当然事前のお勉強はするみたい。それもとことん細部まで。

 だけど土地や建物などに関しては違うみたい。読み手の想像力を掻き立てるための方法らしい。かの新海誠とは正反対ですね。


 だから浅田次郎の風景描写は、上手い、とか、繊細、ではなく、「綺麗」なんです。うまく言えないけど。短編の「霞町物語」を読むと分かるかな……。どことなく日本語の旋律が非常に綺麗。



3、人情と言葉


 まずは「江戸っ子」の定義から。「江戸っ子」とは三代続いて東京(江戸時代も)に住んでいれば、そうなのだそう。


 俗に云われる「ちゃきちゃきの江戸っ子」はどこかつっけんどんな物言いと言動で有名だけど、これは下町の人情が厚いから成り立つ文化。当の浅田次郎さんも「ちゃきちゃきの江戸っ子」家系なのだから当然その文化に明るい。よく幼少時の事を短編で書かれているが、鰻屋の話は特に印象深い。


「店に入るなりものの数分で出てくる鰻屋は鰻屋でない。美味い鰻屋は注文をもらってから鰻を焼きたれを塗るから、時間が掛かる鰻屋の方が良い」⬅こんなかんじの台詞


 とまぁ、これが「ちゃきちゃきの江戸っ子」の粋なところですかね。「鉄道員(ぽっぽや)」収録の「角筈にて」なんかも土地風俗が綺麗に書かれていて素敵です。



4、フィクションとノンフィクションの境目がない


 浅田次郎信者になったきっかけ「日輪の遺産」がまさにそうでした。これは僕が書いた短編「空の上」の動機にもなった長編だけども、おそらくノンフィクションだよと言われればそのまま信じてしまうかも知れない。これは、終戦後マッカーサー元帥の遺産を巡るまだあどけない女工達の悲しい物語なんだけど、マッカーサーの遺産「M資金」を本気で調べようとしちゃったほど。


 まあないんだけどね。フィクションだから。

 それだけ手が込んでるというか。



5、実写化がことごとく失敗(例外あり)


 一番の味噌。鉄道員や壬生義士伝は映画で大成功したけど、他が正直ダメだった。特に「蒼穹の昴」。ふざけんなNH○!てかんじ。なぜ西太后慈禧シータイホウツーシー)が日本人なんだ!


 浅田次郎さん本人も「小説と映画は完全に別物だ」って仰ってました。逆をいえば文学としてのみ成り立つ物語が多いということ。「壬生義士伝」なんかはテレビ版の方が原作に近かったし、浅田次郎さん本人も出演されてたので好きだけど。


 ここらへんで辞めときます。止まらない(笑)



 最後に。

「圧巻」と「破天荒」という言葉。

 これは「蒼穹の昴」で成り立ちを読み、大いに頷いた。


 まずは「圧巻」。

 中国では今でいう国家公務員の官僚試験を「科挙(かきょ)制度」と呼びました。千年以上続く由緒ある制度です。

 官僚になるには地方試験(県試)を経てから県の中央試験(府試)、次に院試と、都合数回の試験を行う必要がある。

 最後の試験が、数日小屋に籠って論文を巻物に書くというもの。その論文の内容が一等良かったものが、全ての丸めた論文(巻物)の一番上に置かれる。これが巻物を圧することから「圧巻」という言葉になった。


 つぎ「破天荒」。

 中国では昔から上記の科挙の合格者が何年も出なかった際、これを「天荒(てんこう)」と呼びました。

 これを打破するものを「破天荒」と呼ぶことがきっかけだそうです。


 以上うんちく

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