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第一章 チュートリアル イベントマップ

 

「……教室棟。距離はそれなりにあるが建物は直接繋がってるか」


 自身のスマホを取り出してなにやら確認しているリーマン。

 まるでマップアプリを見ているような……もしかして?


 俺はスマホの画面を見下ろす。



 画面の文字が変わり、


 アラートアリ!


 確認して下さい。



 とあった。


 消音にしていたから気づかなかったらしい。

 タップすると、


 校舎内に敵が現れました。


 敵2体 ゾンビ ファースト


 迎撃、もしくは逃走して下さい。


 ファースト迎撃P 1体につき10


 

 イベントマップに移動しますか?



 迷わずイエスをタップする。


 すると画面が切り替わり、いくつかの建物が並んだ大きな敷地内の画像が。


 建物の一つはコの字型になっており、その建物と東側にある別の建物は渡り廊下で繋がっている。

 建物の前には広い庭。

 隅には3つ、倉庫らしい小さな小屋。

 建物の奥には中庭らしき空間を隔てて体育館だろう長方形の建物とプール、テニスコートらしきもの、グラウンドらしき柵に囲まれた空き地があった。


 試しに建物の一つをタップすると『実習 職員棟 正面玄関』という文字が。

 別の建物をタップすると『南 部室棟 北 教室棟』の文字が。

 コの字型になった建物の南側が今俺たちがいる部室棟、北側が化け物のいる教室棟ということらしい。


 そのまま長押ししていると、赤と青の光点が3つ教室棟に2つ部室棟に1つ表示された。赤の2つはゆっくりと1つは上に、一つは部室棟の方へ移動している。


 赤が敵。

 青が自分ということだろうか。


 画面左下方に『マップヘルプ』の文字。

 タップすると、思った通り



 マップ上をタップするとその場所の名称が記載されます

 ただし、ブラックボックスと呼ばれる地域や、イベント上秘匿されている場所については記載されません。

 長押しすると敵が近くに存在する場合光点にて居場所を確認することができます。その場合、赤の光点が敵、青の光点がプレイヤー自身の位置を表しています。


 フレンド登録をしたプレイヤーが近くにいる場合、フレンドは黄の光点にて記載されます。

 フレンドが死亡、もしくは発病した場合光点は黒になります。


 プレイヤー自身が滞在する場所をダブルタップすると付近50メートル圏内のマップデータが画面に写し出されます。

 プレイヤーが移動するとマップも同時に移動します。



 また出た。


 ーー発病。


 なんなんだ、これ。



「ちょっと、これ、1体近付いて来てる!」


 女性の声にスマホから顔を上げた。


 フリーターか、OLのどちらかだろう20代前半らしきパーカーにジーンズという軽装の女性。


 女性は彼女とカスミちゃん(?)の二人だけしか残っていない。

 校庭にいた時には確か5人ほど女性がいたはずだが。


「ほ、本当だ!なあ、あんたらどうしたらいいんだ?ここから離れた方がいいんじゃないのか?……そうだ、今のうちにさっきの職員棟の方に」


 わたわたと喚き始めたのは作業着のおっさん。

 二人とも口を開くなと言われたのを忘れているのか、それどころじゃないというのか。まあ、状況が変わったんだし、説明どころでもないし、もう口を開いてもいいだろうという判断なのかも知れないが。


 俺的にはまだ止めといた方がいいと思うけどね。


 リーマンはちっ、と舌打ちすると、


「口を開くなっつってんだろうが。行きたきゃ勝手に行け」

「なんだその言い方は!あんたら指導員なんだろ?俺たちを助けるのが仕事なんじゃないのか!」


 あー、こりゃダメだ。

 化け物への恐怖がリーマンを上回ってるんだろうけど。


「まあ、指導員だけどな。別に気に入らない奴らを助ける必要はないな。まして他人の言うことを聞かないクソわ。教えておいてやるよ、指導員ってのは人助けがしたくて希望してやるわけじゃない。ランダムにある程度の熟練プレイヤーが選ばれてんだよ。つまり強制イベの一つだ。好きでやるわけじゃない」

「けどそれだと俺らが死んだらイベ失敗になるんじゃないっすか?」


 恐る恐る、口を挟んだのはジャージ。

 ただし、リーマンからは距離を取って、間に俺とカスミちゃん(?)を挟んだ状態だ。


「50万」

「……へ?」

「おまえら一人当たりにつきの俺らの報酬だ。クリアしたルーキー一人につき50万。たいした額じゃない。他にペナルティはないしな」


 だからあんま俺らに期待すんな。


 そう言ってリーマンは作業着のおっさんに歩みよった。

 後ずさるおっさん。


「な……なに……!」

「いや、二度目はないって言ったよな?」


 ニヤリと唇の端を持ち上げるリーマン。


「……あ、いや、悪かった。もうなにも言わな……ひぃっ!」


 ーーどんな腕力してんだよ!


 片手で猫でもつまみ上げるようにおっさんの襟首を持って軽々と持ち上げた!


「さて、どっちにしようか?外に投げるか?それとも寄って来てるファーストのエサになってもらうか。足でも折ってその辺に転がしといたら時間稼ぎくらいにはなるだろ。やつらも喰ってる間は動かないからなあ?」


 待って!待ってくれ!と懇願するおっさんの身体が無造作に床に転がされる。

 その足の上に降り下ろされるバット。

 嫌な音がして、悲鳴を上げたおっさんの足が凹む。


 金属バットで殴ったにしても不自然なほどに。


「あ、悪い。折れたんじゃなくて潰れたか?ま、自業自得だよな。……よっと」


 悲鳴を上げ続け転げ回るおっさんの襟首をまた持ち上げると、スタスタと廊下に出ていく。

 遠ざかっていく足音。


 しばらくして、何かが階段を転げ落ちたような音と甲高い悲鳴が聞こえてきて、その後は戻ってくる足音だけが響いた。



 赤い光点の一つはもうすぐ部室棟に入ってくる。








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