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their is no other way
神皇の日常について、語るほどのことは殆どない。教会で祈り、親しい友人とランチを食べ、午後は科学省で事務的作業を行う。夕方には自由時間があり、彼は夕焼けが綺麗に見える公園で読書に明け暮れる。そして夕食と入浴を行い、床につく。もちろん毎日が同じ繰り返しではない。休みの日には畑仕事に精を出し、時々友人を招いて夕食を食べたり、近所の人たちと何気ない会話で盛り上がることもある。しかし、ただそれだけだ。
神皇はそんな日常に満足している。いや、満足するだとかしないだとか、そんなことを考えたことがないのだ。身の回りのあらゆる事象をありのまま受け止めている。そこに満足不満足などといった感情的要素は介在しない。
「気にするな、っていうのは無理なのかもしれないけど、そんなに気を病むことはないよ、神皇。こういうのは仕方ないことなんだ」
神皇と哀鬼の共通の知人からは、このような聖皇を慰める声が聞かれた。彼らの眼中には神皇がおり、哀鬼は既にそこにはいなかった。
「こういうのは仕方ないことなんだ」