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コドモノ国  作者: Ex
11/18

オトナ保険


「私は、身体は子供、頭脳は大人、その名もグッドモーニングマン(仮)でございます」


 カラダハコドモ、ズノウハオトナ・・・。グッドモーニングマン(仮)という奇抜なネーミングもさることながら、また訳のわからないキーワードが飛び出してきた、と哀鬼は思った。一瞬、これは相手の意味のない冗談だと笑い飛ばしそうになった。しかし、身体は子供、頭脳は大人、という変換を経て思考を巡らすと、それは笑えない冗談であった。


「・・・それってもしかして、『コドナ』ってことかい?」と哀鬼は尋ねた。


「そうなんでございますよ、こちらの世界の言い方でいう『コドナ』でございます。いや~、それにしても、ワタクシが『コドナ』だと一瞬で見抜くその推理力、ワタクシ脱帽でございます」と目に見えない帽子を脱ぐ仕草をした。


 なんなんだこいつ・・・、「コドナ」云々というより、こいつは何なんだ、という気分になる。「コドナ」とはみんなこいつみたいな奴らなのか、と哀鬼は思った。


「それにしましても、哀鬼様は『コドナ』であるワタクシに驚かれないご様子で、逆にワタクシが驚かされている具合でございます」


 「コドモノ国」において、咎落ちとはすなわち「オトナ化」であり、全時代的解釈とは異なっている。また、「オトナ化」とは年齢の区分といった解釈ではなく、オトナのように邪気を蓄え、私利私欲に走り、世界を暗黒へと染めてしまうような思想、もしくは思考傾向のことを示す。つまり、「コドモノ国」にとって「よろしくない」人のことである。

 また、「オトナ化」という原因に対して、「オトナ」と「コドナ」という二つの結果がなされる。「オトナ」とは、まさに字の如し、頭から足の先っぽまで「オトナ」に染まった人を指す。そして、「コドナ」とは、半分はコドモのままではあるが、もう半分がオトナに染まっている人を指す。だからといって、「イノセント」で裁かれるとなれば、あいつ(かみみ)の言葉を借りれば「安楽な死に方はできない」ということでは同じであり、その区分にはあまり意味はない。ただ、症状が軽度か重度か、ということを知るだけである。症状の進行程度で刑罰が軽くなったり重くなったりすることはない。どんな些細な危険分子であっても、それを根元から撲滅する、というのが「コドモノ国」のルールだ。割れた窓が一つあれば、そこから治安の悪化が始まる危険があるとかいう理論と同じである。


「・・・いや、だいぶ驚いてるけどさ、あんたからあまり危険な匂いがしないからさ」と哀鬼は返事をした。


 グッドモーニングマン(仮)が驚くのも無理はない。「コドモノ国」では「コドナ」含め咎落ちした者を、悪魔的な対象として教育する。哀鬼が(割と)冷静だったのは、哀鬼本人は無意識であったかもしれないが、それこそ咎落ちの初期症状であったと言えるのかもしれない。


「・・・って、もう前置きとかいいよ。でさ、何しにきたわけ?」と哀鬼は尋ねた。しかしその直後、この前置きを今まで長引かせていたのって俺じゃないのか?、と自嘲気味になって、そんな自分が少し可笑しかった。


「あ、はいはいはい。それでですね、今回哀鬼様のご自宅に伺わせていただいた用件はですね、『オトナ保険』についてのご案内でございます」とグッドモーニングマン(仮)は言った。


「オトナホケン?」と哀鬼は耳に馴染まないその言葉を呪文のように繰り返した。



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