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北へ・・・   作者: Haruka
4/51

会合


今、カンナは窮屈な思いをしていた。

これも、あの訳の分からない男のせいである。


「ちょっと、何すんのよ。きつい・・・。」




・・・・ー


「どうだい?」


男はひょっこりと顔を覗かせた。

・・・目が輝いている。


「あぁ。・・やっぱり、君にはその着物が似合ってる。綺麗だよ。」


カンナは、目を細め、さらに眉間に皺を寄せた。

着物の帯を思いっきりしめられ、窮屈で仕方がないという顔だ。


「・・・あんた嫌い。・・じゃ。この着物、ありがと。」


着物を着たままその呉服屋を出ようと一歩ふみだす。

しかし、2歩目はかなわなかった。


「ちょっと、まちなよ。着物を贈ってあげたんだから、すこし付き合って。」


男は、ニヤリと笑った。

カンナに、この男の感情は読めなかった。


「何処?」


「ちょっとした宿に。これから、大事な集まりがあるんだよ。」


(・・・幕末6月5日の集まり・・・?)


カンナは、歴女としての知識を掘り返していた。


「あたし、カンナ。あんたの名前って、桂小五郎?だったり。」


男は、表情も変えずにくすりと笑った。


「さぁ?どうだろうねぇ。 僕もわからないよ。どれが、本当の名前かなんて。」


(こんなホストみたいな男が、後の木戸孝允?

・・・維新の三傑(さんけつ)の?)


「まぁ、だとしたらちょうどいいかも。 会いたい人が居て。」


「そう? 良かったよ。」


桂は、少し疑うような目つきをしたが、すぐに元へと戻した。



 

 

 カンナは、確信していた。

この集まりが、倒幕派の会合であり、

企てている計画が、失敗に終わることも。

そして、カンナの持つ刀の持ち主が現れることも全て。


(桂には悪いけど、あたしは、佐幕派なの。尊敬してるひとがそうだから。

着物の借りは、いつか。)




宿に着いて、カンナはひとり、部屋の隅で座り、刀を見つめていた。

相変わらず、変な視線は感じるが気になどしない。


(やっぱり、あの池田屋事件か。・・・ちょっと危ないかも。)


カンナは、静かに立ち上がり、厠だと言って少し抜けた。

外へ出て、周りの様子をうかがい、ある男と目が合う。

見かけは商人。・・・でも確か・・・


「ちょっと、そこの薬屋さん。あたしに薬をうってくださいな。」


カンナがそう言うと、男は、じんわりと汗をかきながら来た。


「今、胃が痛いの。それに効くものはある?」


「へぇ・・。」


男は、カンナを敵だと思いこんでいる。

カンナは、薬を受け取って、その薬の包みにボールペンで何かを書き出した。


ー会合は池田屋。副長へ報告を。ー


男は、目を丸くしてカンナを見た。

カンナは、頷く代わりに瞬きをする。

そして、この文を残さないために、水も無いまま薬を口に放り込み、

包みは粉々に破って、男の頭の上に散りばめた。


「見て。紙吹雪。・・きれいでしょ。」


久しぶりにカンナは笑った。

男の、驚いてから一気に気の抜けた顔が面白くて。


「あぁ、ごめんなさいね。 お仕事の邪魔しちゃったかしら。」


「いえ。ありがとうございました。」


カンナは、早歩きで去っていく男の後ろ姿に手を振った。


(良かった。ちょっと、安心。・・・後は、待つだけか。)



だんだんと日が暮れ、志士達も酒で酔ってきたようだ。

そんな時でも、刻一刻と、あの歴史的大事件は迫っていた。














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