表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北へ・・・   作者: Haruka
24/51

己の道




 カンナは日に日に笑顔が増えていった。



「いやぁ~。・・・敢菜ちゃんはかわいいねぇ。」


「あぁ。妹みてぇだな。」


永倉と原田は夕餉を運んでいるカンナを遠目で見ていた。

カンナは桃色の新しい着物を着て、そんな視線を感じながらもせっせと働く。


「なぁ、左之。敢菜ちゃんって、異人だろ。」


「ん?・・・そうだな・・。あ、いや・・・日本人じゃねぇか?」


「あ?・・・お前の目、犬か?ちゃんと色見えてっか?

あの金の髪と金色がかった目を見ろ。どう見たって異人じゃねぇか。」


永倉は異人だと言い切った。

しかし、原田は未だ納得出来ないでいた。


「左之?」


「・・・日本人だ。」


原田もまた言い切った。


「はぁ?・・・きいてみっか・・・。絶対異人だ。」





夕餉を食べながら永倉と原田は問いつめた。

自分が正しいと確かめるべく。


「あぁ。そんなことをさっきから話していたの?」


「・・・聞こえてたんか。・・・地獄耳・・。」


永倉はカンナの恐るべき聴力に驚いていた。


「私は、れっきとした・・・ハーフよ。」


「・・・はー・・ふ?なんじゃそりゃ。」


原田は聞き慣れない言葉に首を傾げた。

永倉もだ。


「あ。・・・えっと、異人と日本人との子ってこと。」


どちらとも合っていたというべきか・・間違っていたというべきか。

二人はため息を吐いた。思いもよらなかったことだった。


「ま、そうだよね。」


総司はわかっていたと言うようにニコッと笑った。

歳三も驚いた風もなく黙々と食している。

同じく斉藤もだ。




「あ、ねぇねぇ一ちゃん。あとで試合しよ。」


「・・・俺ではもの足りぬのではないか?」


「ん?一ちゃんは強いもん。稽古見てたらわかる。」


カンナと斉藤は永倉と原田の二人を放置して話し出す。


「なんだと・・。俺の稽古を?・・・いつだ。」


斉藤は眉間に深い皺を寄せてカンナを睨みつける。

そんな睨みを向けられながらも、恐れることなくカンナはニヤリと得意げに笑った。


「そんなの、いつもに決まってる。

毎晩、みんなが寝静まった頃、一人庭で刀振ってる。」


斉藤は、気配に敏感で、総司の隠している気配にすらも気付く。

しかし、カンナの気配だけは感じ取れなかったようだ。



「あははははっっっ!・・一君、カンナちゃんにやられたね。」


総司は耐えきれないと大声で笑い、他の幹部は皆箸を止めてカンナを見ていた。


「敢菜。・・・あんたはどれほど強い?」


「さぁ・・。試合すればわかるわよ。でも、きっと一ちゃんには敵わない。」


そう言うカンナに総司はふふっと笑った。






「敢菜くん・・君はおなごなのだろう?」


局長の近藤は疑問を持っていた。

この時代、女が剣を持つのは普通では無いからだ。


「勿論。」


「あれっ。近藤先生覚えてないんですか?」


総司はからかい気味に言った。


「ん?」


「以前、会ったでしょう?・・・ほら、池田屋の時に。」


「あぁっ!・・そうかそうか!・・君はあの時総司を助けてくれた!」


近藤はスッキリした清々しい笑顔で立ち上がった。


「はい。そうです。」


カンナも思い出してくれたことが、どことなく嬉しかった。


「やはりそうか!!あの時は、何とも肝の据わったおなごだと思ったよ。」


「女なのに会津の応援を口で負けさせちまうし、おまけに自分から血生ぐせぇ池田屋の

中に飛び込んでいっちまうしな。ったく。女じゃねぇ。」


歳三は愚痴を吐くように言ったが、うっすらと笑っていた。

この時代、こんなにも男らしい女が居ただろうか。

いや、ずっと先の時代でもそんな女はいない。


「ぁぁ・・・。敢菜は俺らよりも男なのか・・・。」


藤堂は小さく苦笑いをしながらつぶやいた。


「敢菜ちゃん、そんな事もしてたんだ。僕よりも活躍したみたいだね。」


総司は口元だけで笑った。


「失礼ね。男男って。私は女よ。」


カンナはふくれて機嫌を悪くした。

女だからとなめられるのも嫌がるが、女としては男と言われるのも嫌がる。







カンナはふくれたまま夕餉を食べ終わり、すっと立ち上がった。


「一ちゃん、食べ終わったら すぐに! 庭へ来て。

刀を忘れずにね。・・・真剣で殺るから。・・・ふふっ。」


カンナは黒いオーラを放ちながら去っていった。




「・・・一君、生きて帰ってきて・・・ね?」


総司ですらもああなってしまったカンナを前にしては動けない。

斉藤は息を呑んでから、食べるスピードを早めた。


(・・・・殺る・・・殺る・・・・・? 殺る・・殺られる・・殺られる・・・-)


斉藤の心の中は負のイメージでいっぱいだったという。











斉藤は夕餉を食べ終えてしまい、戦場へと向かい、幹部らもそこへと向かった。

庭に居たのはニヤリと不気味に笑うカンナだった。

斉藤は死ぬつもりでかかった。

しかし、斉藤の負のイメージもあってか、結果は斉藤の完敗だった。

圧勝したカンナは機嫌を取り直した。


「ありがと。一ちゃん。・・楽しかったよ?」


カンナは可愛らしく笑って、後ろに倒れている斉藤の手を取って起こした。

斉藤は死ななかったものの、カンナの本当の恐ろしさを知った。


「俺もだ。・・あんたは予想以上に強かった。・・・またそのうち頼む。」


斉藤はまた立ち向かうと決めた。

組長として、負けるわけにはいかないのだ。


「勿論。」







「そうそう、トシ。一つお願いがあるの。」


「・・・なんだ。」


恐ろしいカンナを見た後では、鬼の副長もびびった。


「私を、新選組の隊士にして。」


「ぁあ?・・・無理にきまってんだろ。女人禁制だぞ。」


「トシ。私ってみんなが言うには男なんだって。そうだ。トシ自身で私の実力

試してみる?・・刀、抜いてこっち来て。」


またもやカンナのオーラが黒くなり始めた。


「わかった!・・考えておく・・。」


「そう?私できれば一ちゃんの隊がいいな。」



カンナは明るく笑って一人部屋に戻っていった。

カンナは部屋に戻ってため息をついていた。

カンナがあそこまで怒ったのも、強い斉藤と試合をしたのにも

しっかりと理由があった。


カンナは随分前に決めたのだ。

死に場所を探すと。戦に出なければ、争いの最前線に出なければ、永遠に死に場所など

見つかりはしない。

つまり、今までは隊士になる為の演技であり、計画だったのだ。

そんな計画に皆あっさりと騙されたようだった。









「自分の進む道は自分で選んで、自分で作る。・・これ鉄則。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://ept.s17.xrea.com/WanNe/rank.cgi?mode=r_link&id=10421
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ