輝き
カンナはあの後、歳三と少し話して、早々と部屋を出た。
未来から来たことを言ったりはしなかった。
知られてもどうにもならない。
ただ、混乱するだけだ。余計な事を聞かれる前にカンナは歳三から離れた。
しかし、わざわざ離れたのも無駄になった。
「おい、結局お前は何者だ?」
歳三がカンナを追いかけてきたのだ。
「私は・・・・・・・・わからない。
・・・・・ただ、貴方と一緒に戦いたい。貴方の役に立ちたい。」
カンナにとって、歳三はただ一人の信じられる人だった。
親もクラスメイトも誰も信じられなかった。
だけど、歳三だけは信じられた。
何故かは、自分自身でもわかってなどいないのだが。
「だからお願い。信じなくてもいいから少し位頼って。」
わかってる。矛盾してるって。
でも、信じろなんて私が言う資格ないの。
だけど、私は誰かに必要とされたい。
今まで、必要にされたことは無かったから。
カンナの必死な目に歳三は息を大きく吐く。
そして、笑ったのだ。
「何言ってんだ。信じねぇか信じるかなんてお前ぇの行動しだいだろうが。
信じられる努力をしろ。」
カンナにはわからない。
「努力?・・・?」
「あぁ。まずは己がひとを信じねぇと始まらねぇ。」
そう言って笑う歳三の顔は清々しくてこれから先の未来は上手くいくように
思えた。
「ありがとう。・・・トシ。」
急に親しく呼ばれ、歳三は少し戸惑ったが、カンナが笑って歳三を見ているから
良しとした。
・・・と突然、どこからか明るい声が聞こえた。
『あ、土方さんが女の子くどいてる。』
そして、二人が歳三の背後へと視線を向ければそこにニコニコとした総司が幼い子どものように
可愛らしくピョコリと現れた。
「そ『そんなことあるわけないじゃない!』 ・・・・・は?」
歳三がそんなことはないと否定する前にカンナがバッサリと完全否定した。
「だって、トシよ?こんな不器用な男が女の子を口説くなんて信じられないでしょ。
っていうか、それ以前にトシがそんなことしてたら気持ち悪い・・・・」
カンナは本気の顔で言った。
総司は笑いをこらえ、歳三はヒクッと片頬を引きつらせた。
そんな二人の反応にカンナはきょとんと首をかしげる。
その行動が歳三をまた怒らせる。
「誰が・・・気持ち悪ぃだってぇ??・・・」
カンナと総司はただならぬ殺気を感じたために急いで走り出した。
それに歳三は大声を上げる。
カンナは声を出して笑った。
何年ぶりだろう。こんな風に大声で笑ったのは。
すごく気持ちがいい。賑やかで楽しくて、いつまで私は彼らと共に居られるのだろう。
ずっとこんな風に笑って居られればいいな。
そう思う。
遠くである三人の男はカンナと総司と歳三の様子を見ていた。
「誰だ?あの子?左之、知ってるかぁ?」
「ぁあ?知らねぇよ。」
「・・・にしてもさぁ、すっごい綺麗なひとだよなぁ・・・。
見たことねぇぜ。」
そして、三人は最後までカンナ達の様子を見届けたのだった。