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フェニックス計画――老兵たちの夢と若き継承者――   作者: 工程能力1.33


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第5話 古い周波数

 帝国軍の影が遠ざかっていく。

 ミリアはスロットルを押し込み、追撃態勢に入った――その瞬間、計器が赤く点滅した。


「……え? 動力喪失……!?」


 警告音が耳をつんざく。

 操縦系統が反応を失い、機体ががくんと膝をついた。

 同時に無線がノイズを吐き、音声が途切れる。まるで、何かが機体の命を握り潰したかのようだった。


「どうして……? さっきまで正常だったのに!」


 必死に再起動を試みるが、計器は沈黙したままだ。

 その間にも、敵は黒煙を引きながら国境の向こうへ退いていく。


「……エリアス……っ!!」


 喉の奥から、抑えきれない叫びが漏れる。

 婚約者の仇を目前で逃がした悔しさが、胸を締め付けた。

 操縦桿を握る手が震え、視界が涙で滲む。


――――


 その時、視界を覆う影。

 顔を上げると、そこに立っていたのは古びた装甲を纏った正体不明のフレーム――UNKNOWN。

 焼け焦げた外装の隙間から、まるで呼吸するような熱気が漏れ出している。

 その姿は、まるで自分を庇うように立っていた。


 次の瞬間、周囲の霧が押し流され、通信系統が突然復旧した。

 まるでこのフレーム自身が、霧を払いのけたかのようだった。

 耳慣れぬ軍用周波数の呼び出し音が、スピーカーから響く。


『――応答願います。こちらフェニックス』


「……古い軍の周波数……?」


 ミリアが怪訝な表情で通信を受けると、若い男の声が返ってきた。


『俺はカイ。祖父と一緒に乗っている。この通信を、アーノルド・クラウス大佐に繋いでほしい』


「……大佐? あの人は私の曾祖父よ。もう軍を引退して何十年も経ってるし、大佐だったのなんて……50年前よ」


『それでもいい。伝えてくれ――コードフェニックス、と』


――――


 ミリアは数秒、言葉を失った。

 しかし、軍人としての本能が警鐘を鳴らす。

 さっきまで自分を含め全ての機体が沈黙していた中、このUNKNOWNだけが動いている――これは明らかに未知の兵器だ。

 放置すれば、敵か味方かもわからぬ存在が戦場を歩き回ることになる。


「……わかった。ただし条件があるわ。あなたとその祖父、正式に拘束させてもらう。


 戦場で正体不明の兵器を放置するわけにはいかないの」


『構わない。とにかく伝えてくれ』


 ミリアは本部回線に接続し、コードフェニックスの名を伝える。

 数十秒後、驚くほど早く返信が届いた。


『該当機および搭乗者を丁重に扱え。フレーム回収部隊が到着するまで、その機体を死守せよ』


 ミリアは息を呑む。

 戦場で誰もが正体を知らなかったこの古びた機体は、

 曾祖父の過去と深く結びついた存在だということだけが、今はわかった。


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