第4話 アンチマナダイト粒子
国境沿いの小さな駐屯地に、轟音が鳴り響く。
帝国軍フレーム部隊の先頭に立つのは、漆黒の機体を駆る男――レオン中尉だ。
肩部のランチャーが火を噴き、白く濁った霧が駐屯地全体を覆っていく。
「アンチマナダイト粒子……こいつさえあれば、敵などいない」
レオンが口元を歪める。
「ええ、大尉。我々は対アンチマナダイト粒子コーティングがありますからね」
隣のフレームのコックピットで副官機が笑いながら応じた。
「王国軍のフレームは、ここで全部鉄くずになりますよ」
駐屯地のマナダイト駆動機が次々と膝を折り、炎を上げる。
その光景に、レオンは勝利を確信していた――その時。
――――
山側から、一条の光が走った。
次の瞬間、副官機の胴体が爆ぜる。
「なっ――!?」
視界の端で、副官の機体が粉々に吹き飛び、通信が途絶える。
続けざまに放たれた砲撃が、レオンの機体を直撃。
装甲の半分が吹き飛び、警告灯が赤く点滅する。
「くそっ……どこから撃ってきやがった!」
――――
視点は、カイへ。
フェニックスの両腕に装着された古式のライフルが、青金色の閃光を吐く。
フロギストンの燃焼が放つ熱と衝撃は、アンチマナダイトの霧をものともせず、帝国軍機を貫いていく。
「……効いてる!」
カイは息を詰め、照準を合わせる。再び引き金を引くと、もう一機のフレームが爆炎に包まれた。
――――
「全機、山に向けてアンチマナダイト粒子弾を撃て!」
レオンは脱出ハッチを開けながら怒鳴る。
砲口が山頂を狙い、粒子弾が着弾。
白濁した霧が一帯に広がる――しかし。
「止まらない……だと……!?」
双眼鏡を覗き込むレオンの視界に映ったのは、古びた装甲を纏いながらも悠然と動くフレーム。
砲撃を続け、帝国軍の隊列を切り裂いていく。
「……ずいぶんと古い機体だな。第五世代でないのは当然だが、まさか第一世代か……」
――――
「撤退だ。フレームを半数失っては、作戦の継続は不可能だ」
帝国軍は半数のフレームを失い、レオンは撤退を決断した。
残存機が黒煙を上げながら村を離れていく。
そこへ王国軍のフレーム部隊が到着。
先頭の機体のコクピットで、ミリア・クラウスは双眼鏡を覗き、撤退する敵影を捉える。
「……エリアスの仇!」
ミリアはスロットルを押し込み、撤退する帝国軍を追撃するべく前進する。
その背後、戦場の中央に立つ古びたUNKNOWN機――フェニックス。
味方識別信号はなく、王国軍の誰もが正体を知らなかった。




