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フェニックス計画――老兵たちの夢と若き継承者――   作者: 工程能力1.33


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第27話 嫉妬の炎激しく燃える

 朝靄の残る訓練場。フレームの点検に向かう整備兵たちの声が響く中、カイは花を抱えて足早に通路を進んでいた。

 その姿を見つけたミリアが、壁にもたれたまま腕を組み、鋭い目で彼を呼び止める。


「……また病院か」


 カイは立ち止まり、曖昧に笑った。


「クレアさんはまだ怪我が治ってないからな。少しでも――」

「少しでも、ね」


 ミリアは口の端を歪め、冷ややかに言葉を被せる。


「帝国の捕虜に毎日花を持っていく兵士なんて聞いたことない。……王国の切り札様は人が良すぎるのか、それとも女に甘すぎるのか」

「そんなんじゃない。ただ――」


 カイが反論しようとしたが、ミリアは一歩踏み出し、その言葉を切った。


「忘れたの? あいつは敵。エリアスを奪った帝国の軍人よ。……それでも、ベッドの上の女として見てるの?」


 棘のある言葉に、カイは息を詰まらせた。花を抱える手がわずかに震える。

 ミリアは冷たい視線を投げ、吐き捨てるように続けた。


「……あんたがどれだけ青臭い理想を抱えててもいい。でも、敵を“女”として庇うなら、私はあんたを許さない」


 その背中には怒気だけでなく、深い寂しさと嫉妬の影が潜んでいた。


 それでも、カイがクレアのところに行くのは変らない。

 訓練前、カイが軍病院に見舞いに行ったとまた聞いた。


――あの女のところへ。


 ミリアは口に出せず、ただ唇を噛みしめる。


(帝国の捕虜)だというのに、どうしてあんなに気にかける?あの女は敵なんだ。エリアスを殺した連中と同じ帝国の人間だ。それなのに、カイは優しくして、花なんて持っていって……。)


 ミリアの胸の奥がずきずきと痛む。


(わたしはカイの隣に立って戦うはずだった。未来を築くのも、子を残すのも、ぜんぶ自分の役目だと思ってきた。でも、彼の視線はわたしではなく、あの女に向いている。)


 ミリアの目がスッと細くなる。


(……くだらない。嫉妬なんて、子供みたいだってわかってる。けれど、どうしても抑えられない。)


 見舞いの後、訓練場にやってきたカイに、ミリアはきつく当たる。


「カイ、あの女の看病に熱心で、戦う力は残してるの?」


 つい皮肉を口にしてしまった。

 彼が困ったように笑うのがまた腹立たしい。


 わたしは拳を握りしめる。

 帝国の女なんかに、カイを取らせるわけにはいかない。

 ミリアの心の中に嫉妬の炎が燃える。


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