第20話 軍工廠攻撃
クレアは王国軍将校用の濃紺の軍服に身を包み、門衛の前に立った。肩章は将官クラスを示し、胸元には本物と見まがうほど精巧なIDカードが輝いている。
後ろには同じく軍服姿の特務隊員たちが続き、それぞれが偽造IDを手にしていた。
「入場許可証を拝見します」
門衛の兵士がカードを受け取り、端末に通す。数秒後、端末のライトが緑に点灯した。
「通ってよし」
衛兵は疑う素振りもなく敬礼し、鉄門を開けた。
クレアは軽く会釈し、特務隊員を伴って堂々と軍工廠の構内へと足を踏み入れる。
――――
一方その頃、工廠奥の試験棟ではカイがハンスとオットーから改修後のフェニックスの説明を受けていた。
今は会議室で資料を基に、二人がカイに説明をしており、このあと実際に搭乗してもらう予定となっていた。
「出力は従来の三倍以上。推進脚の加速も別物だ」
「装甲は最新の複合材で、一般的なマナダイトガンからの衝撃にも耐えられる」
二人の技術者が交互に説明を続ける中、カイは説明書にある計器表示や整備記録を目で追っていた。
「インターフェースはほぼ同じ。違和感なく使えるようには考慮した」
「ありがとうございます。これなら――」
「なあに、わしらの終わらない夢を託すんだ。出来る限りことはするよ」
カイは早く生まれ変わったフェニックスに乗りたいと、気持ちがはやる。
――――
同じ時刻、軍工廠から南東2キロ離れた地点の側道では、特務の別動隊がトラックの荷台に迫撃砲を組み上げていた。
部下の一人がクレアから預かった暗号信号の送信を確認し、声を上げる。
「射角、良し。装填完了!」
弾頭にはアンチマナダイト粒子を詰め込んだ特製榴弾が収まっている。
「撃て」
発射音が乾いた空気を裂き、榴弾は高く弧を描いて軍工廠の屋根越しに消えた。
数秒後、轟音と爆風が工廠内外を揺らし、白い粉塵が広がる。アンチマナダイト粒子が散布され、付近のマナダイト駆動装置が軒並み停止する。
――――
離れた倉庫で待機していたレオンは、爆発の閃光を確認すると即座に操縦席へ。
王国第5世代型フレームそっくりに作られた密造機が格納扉を押し破って飛び出した。
「……やるぞ」
推進脚が砂を蹴り、レオン機は軍工廠の正面ゲートを突破。
現れた警備部隊が迎撃に動くが、マナダイトが使えない状況では推進も火力も致命的に不足している。
回避も反撃もままならず、次々と押し倒されていく――。
「なんだよ。帝国軍じゃなくて、味方の叛乱か?」
「しかし、マナダイトが使えないのは帝国の技術では?」
「帝国と組んだ連中かもな」
兵士たちはそう言いながら、上官からの指示に従い、迎撃を試みる。
しかし、レオンを止めることは出来なかった。




