表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェニックス計画――老兵たちの夢と若き継承者――   作者: 工程能力1.33


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/24

第1話 軍靴の音

 アウスヴァルト帝国軍の参謀会議室。長机を囲む将官たちの顔には、薄暗い照明の下で刻まれた皺が陰影を落としていた。

 壁には地図が広げられ、赤い駒が国境付近に密集している。

 アウスヴァルト帝国は四十五年前、ヴァルディア王国と戦争になる。あと一歩でヴァルディア王国を降伏させられるかという状況で、和平交渉が成立し停戦となった。

 当然国内では軍や民衆からの不満が爆発。しかし、帝国としてもこれ以上戦争を続ける体力がなかったのである。

 その悔しさから結成されたのが、軍内部の派閥主戦派である。

 緊張が漂う中、ひとりの主戦派将校が立ち上がった。


「四十五年前、我らは勝ちながら退いた……。停戦という名の屈辱で、帝国の剣は鞘に収められた。だが――我らは敗れてはいなかった!」


 将校の声が石壁に反響する。周囲の若手士官たちは目を光らせ、年配の参謀すらわずかに肩を動かした。


「ヴァルディア王国の軍はマナダイトとそのフレームのみで構成されている。そして――」


 マナダイトとはこの世界で採掘される鉱石であり、ここからエネルギーを抽出することで文明が成り立っている。

 この便利な電池のような鉱石のお陰で、内燃機関や蒸気機関というものは発達しなかった。

 また、フレームとは人が登場して操る巨大ロボットである。

 その動力源としても、マナダイトは使用されていた。


 将校は机上に置かれた黒い筒状の装置を持ち上げた。


「アンチマナダイト粒子。我らが技術陣が完成させた新兵器だ! これを浴びせれば、奴らのフレームはただの鉄屑と化す!」


 ざわめきが広がった。誰もが、その言葉がもたらす意味を理解していた。四十五年前に奪われた勝利を、いまこそ掴み取れるという確信。


「もはや停戦の鎖に縛られる理由はない!」


「帝国は立ち上がるべきだ!」


 熱狂が会議を包み、穏健派の声はかき消されていった。


――その光景を、若き中尉レオン・ハルトマンは黙って見つめていた。


 彼の拳は机の下で固く握られている。四十五年前の戦いを知らぬ世代であっても、屈辱の記憶は血に刻まれていた。

 本来会議に出席出来るような階級ではないが、主戦派は今回の作戦を彼に任せるつもりで、傍聴させていたのである。


「……証明するのは俺だ」


 小さく呟いたその声は、誰の耳にも届かなかった。

 やがて会議は解散し、主戦派の熱狂は軍全体を揺さぶるように広がった。

 兵舎の闇を抜け、レオンは自らのフレームへと歩む。

 その胸には、使命感と焦燥、そして昂揚が渦巻いていた。


「雪辱の狼煙は……俺が上げる。アンチマナダイト粒子の力でな」


 エンジンが轟き、鋼鉄の巨体が目を覚ます。

 帝国の野望を背負い、レオンの機体は夜の空気を切り裂いて出撃した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ