表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/88

第12.1話:地獄の円安(9) 荒れ果てた大地 ― 迫る飢餓

 霞が関、農林水産省の大会議室。

 テルが呼び集めたのは、農水省の幹部官僚と、現場の農政局長たちだ。議題は一つ、「食料の緊急国内増産」だ。

 農水大臣が声を張り上げた。


「輸入食料の確保が困難になっている。国内農業に全力を注ぐ。耕作放棄地の解消を急げ! 緊急増産プログラムを今すぐ——」


 現場を知る農政局長の一人が、苦しそうに手を上げた。


「……申し上げにくいのですが。机上の試算と現実では、大きな差があります」


「どういうことだ」


「耕作放棄地は、背丈ほどの雑草と木に覆われており、トラクターも入れません。重機で整備しようにも、燃料が優先課題で調達が難しい。さらに、円安で化学肥料も種子も以前の三倍以上。燃料もない。そして最も深刻なのは……」


 局長は、ためらってから続けた。


「農村に、人がいません。腰の曲がった老人しかおらず、荒れ地を開墾する担い手が存在しません。政府が号令をかけても、動かす人間がいないんです」


 会議室が、静まった。

 別の局長が、静かに続けた。


「仮に今から全力で取り組んでも、収穫まで最短で半年。その間の食料を、我々は確保できる見通しが……ありません」


 「餓死者が出る」という言葉を、誰も口にしなかった。しかし、会議室の全員の脳裏に、その二文字が浮かんでいた。

 テルは、その絶望の空気を、しばらく正面から受け止めた。

 そして、言った。


「……分かった。一晩、考える。明日の朝、また集まってくれ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ