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第12.1話:地獄の円安 (7) 四面楚歌 ― 官邸包囲

 内閣支持率、四・二%。

 その数字を見た時、藤堂総理は胃薬のボトルを傾け、錠剤を二粒口に放り込んだ。窓の外には、「円安反対」「反原発」「ヤマト辞めろ」の三色の幟旗を持つデモ隊が、首相官邸を取り囲んでいる。太鼓の音が、建物の壁を通して伝わってくる。鼓動のような、圧迫感。


「テル君……衆議院の解散を検討するべきじゃないか。このまま抱えていれば、与党そのものが崩壊する」


 藤堂が、テルに言った。その目には疲弊が滲んでいた。政治家として長年鍛え上げてきた鋼の精神が、この数か月の消耗戦で、初めて翳りを見せている。


「解散はしません」


 テルは即答した。


「今選挙をすれば、負けます。そして日本は永遠に浮上できなくなる。選挙がないこの二年間、我々は泥を飲み続けることが、唯一の責任の取り方です」


 藤堂は、テルの横顔を見た。この男は何を支えにして立っているのか。支持率が一桁で、四方から叩かれ、デмо隊に包囲され、それでもなぜ、微動だにしないのか。


「……君は、怖くないのか」


 テルは少し考えてから、答えた。


「怖いですよ。間違えているかもしれないという恐怖は、毎晩あります。でも、正しいと信じることをやめる恐怖の方が、大きいんです」


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