第11話:静かなる介入(5) 台湾海峡の夜明け
第二章 最終話です。
2月11日建国記念日に新章開幕予定です。
夜が、明けた。
台湾海峡に、穏やかな朝の光が差し込む。
その光が照らし出したのは、信じがたい光景だった。
万里の誇る大艦隊が、まるで巨大な鯨の死骸の群れのように、台湾海峡の真ん中で、静かに、そして、無力に、漂っていた。
そのニュースは、衝撃波となって、全世界を駆け巡った。
『万里艦隊、原因不明の大規模機能不全で、洋上に立ち往生』
『原因は、大規模な太陽フレアか? あるいは、アトランティス軍の新型電子攻撃か?』
世界のメディアは、憶測と混乱に満ちた報道を繰り返した。
だが、その真相を知る者は、誰一人として、いなかった。
石垣島の地下ドック。
最後の『零潜』が、静かに帰投し、ドックに収容される。機体に、傷一つない。
一機の『零潜』が、沖合で回遊するイルカの群れに紛れ、本物のイルカが呼吸をするように、ごく自然に海面に背を覗かせた。その一瞬、機体と一体化した背びれそのものが、微かな光の粒子を放ちながら指向性アンテナとして機能。圧縮された膨大な戦闘ログデータを、瞬時に衛星へとバースト送信した。
司令室のメインスクリーンに、作戦の全貌が、初めて確定情報として映し出される。森田の推論は、99.9%の精度で現実と一致していた。
『全機、帰投完了。機体、乗員共に、損害ゼロ』
部下の報告に、カイは、静かに頷いた。
彼は、ホログラムスクリーンに映し出される、無力な敵艦隊の映像を、見つめていた。
その瞳に、勝利の昂揚はなかった。
あるのは、十七年前の、あの震災の日から始まった、自分たちの長く、暗い戦いを、静かに振り返る、深い感慨だけだった。
力なき正義は、無力だ。
だが、制御できない力は、ただの暴力だ。
その二つの絶望を乗り越えた先に、自分たちが見出した、答え。
この力は、破壊のためではない。
支配のためでもない。
ただ、守るためにのみ、存在する。
「――これが、俺たちの戦い方だ」
カイの静かな呟きが、ドックに響いた。
それは、この国の、新しい時代の幕あけを告げる、産声だった。
そして、日本を百年近くも縛り続けてきた、黒く、錆びついた【軍事の鎖】に、深く、そして、取り返しのつかない亀裂が入った、静かなる瞬間だった。
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