第10話:八百万の神々の胎動(4) 深海の訓練場
その数週間後。
日本の最南端、石垣島。エメラルドグリーンに輝く、観光客で賑わう美しい海の、その地下深く。
そこには、もう一つの、決して知られてはならない顔があった。
カイの部隊は、量産された12機の『零潜』と共に、この島に秘密裏に建造された、前線基地へと、その拠点を移していた。
海中の岩盤をくり抜いて作られた、巨大なドック。そこから、『零潜』の群れが、次々と音もなく出撃していく。
彼らの訓練場は、東シナ海の、世界で最も複雑で、最も緊張に満ちた海域だった。
複雑に入り組んだ海底地形。予測不能な潮の流れ。そして、アトランティス、万里、日本の艦船や潜水艦が、常に行き交い、発し続ける、膨大な音響データ。
それら全てが、『アマテラス』にとって、最高の教科書となった。
『零潜』たちは、ただ泳ぐだけではない。
東シナ海の複雑な海流の中を、互いに衝突することなく、まるで一つの生命体であるかのように、完璧なフォーメーションを組んで泳ぎ続ける。
1機の『零潜』が、海底に潜む、万里軍の最新鋭潜水艦が発する、微弱な磁気異常を捉える。その情報は、量子相関音響通信によって、瞬時に他の11機に共有される。上位の命令を待つまでもなく、群れ全体が、自律的に、その潜水艦を追跡・監視するための、最適な監視態勢を、自動で形成する。
司令室の、巨大なホログラムスクリーンを見つめながら、カイは、その完成度を、確信していた。
「もはや、個の能力ではない。個々の『零潜』は、この群れの、目や耳、あるいは指先に過ぎん。この『群れ』そのものが、一つの、巨大な知性なのだ。誰にも見えない、深海の結界となる」
それは、万里の物量でも、アトランティスの精鋭でもない、日本が初めて手にする、全く新しい概念の「力」だった。
そして、その力が試される日は、彼らの想像よりも、遥かに早く、訪れようとしていた。
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