第03話 理不尽な死(5) それぞれの地獄
その夜、ヤマト家の三兄弟は、一つの毛布の下で、眠れぬ夜を過ごしていた。
テルは、目の奥に、おばあちゃんの最期の顔と、どこにも繋がっていなかった、途切れた道路の映像を焼き付けていた。
カイは、スズキさんとタナカ巡査の血の温もりと、何もせずに立っていた自衛隊員の、悔しさに歪んだ顔を、繰り返し思い出していた。
サクは、瓦礫の暗闇の中で感じた絶対的な飢えと、自分を救い出してくれたショベルカーの、力強い光を、交互に思い浮かべていた。
それぞれが、それぞれの地獄を体験した。
彼らの心には、決して消えることのない、大切な人の「死」の記憶が深く刻み込まれた。
そして、その傷口から、巨大な問いが、芽生え始めていた。
なぜ、おばあちゃんは死んだんだ?
なぜ、スズキさんとタナカさんは、殺されたんだ?
なぜ、僕たちは、飢えなければならなかったんだ?
なぜ、こんなことが、起きるんだ?
その問いに、まだ誰も、答えることはできなかった。
日本の、そして彼ら三兄弟の、長い夜は、まだ始まったばかりだった。
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