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周りの使用人達は喜んでいてっ!けれど!こんなことって!

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

けれど私の擦れる様な声を聴いたボルフォード公爵夫人は、

理解してくれたみたいで、


「そう!そうなの!やっぱり「正義」を語る、

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補はすごいわね!

わたくしでも苦しくて「何とか着られるサイズの婚礼衣装」にしたのに、

「美しく着れる婚礼衣装」が良いのね?

流石ね!「正義」の公爵夫人候補は妥協も許さない、

気高い心を持っているのね!」


う、そ。

ボルフォード公爵夫人が何とか着れるサイズの婚礼衣装だったって事は、

それでけでも苦しい事が解ってしまう。

けれどそれ以上の「美しく着れる婚礼衣装」って事は絶対に着られないわっ!

着られないわよ!やめて!

けれど「その美しい婚礼衣装」とボルフォード公爵夫人は、

満面の笑みで伝えてしまうのよ。

けど、私も諦められない。必死に声を上げたわ。

「ぃゃぁ ぃゃぁ」って!

なんとか意志を伝えようとしたけれどボルフォード公爵夫人が宣言した後は、

周囲にいたメイドさんや針今さん侍女さんも一斉に祝福の拍手をしたのよ!

そして口々に言うのよっ。

「おめでとうございます」「さすがですね」「すごいですね」って。

その白々しい誉め言葉は私の反論を全て書き消して…

ボルフォード公爵夫人と針子さんは直ぐに、

婚礼衣装の製作の予定を話し始めてしまうのよ!


「婚礼衣装を作り始めるのは何時頃からかしら?」

「伝統では輿入れが決まった時からゆっくりと、

公爵夫人候補にお体を調整してもらって…

様子を見ながら作り始める事になります。

ですが…

その…元のお体がこんなにひどい状態なのは初めてで…」

「体の事は心配しなくても良いのよ。

絶対にドレスに合わせさせるから。

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補に限界はないもの。

「正義」って言う揺ぎ無い信念を通して不正なんて許さないのだから。

わたくし達はソフィア・ボルフォード公爵夫人候補の、

正義を信じるだけで良いのですよ。

早速用意を始めてちょうだい」

「…かしこまりました」


そう言って、針子さんの集団は部屋を後にしたの。

一つの波が去って執務室はまた静かになったのだけれど、

ボルフォード公爵夫人はまた私の正面に立って話しかけてくる。


「苦しい花嫁となる覚悟をしておきなさいね。

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補。

貴方はどんな苦しい想いをしても、

エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢より優秀であることを示して、

我が愛しい息子である、カーディル・ボルフォード公爵候補の隣に、

立たなければいけないのです。

エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢に劣る事は許されません」


それは家の格を掛けた勝負が始まったって事だったの。

いわゆる―――

〇〇家の御令嬢より優秀であれという事であって、

私の相手はエルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢って事だった。

断罪されて故郷に追放された令嬢なんて怖くはないけれど…

それにしてはボルフォード公爵夫人は焦っているみたいに見えてしまったの。


「休んでいる暇はありません。

直ちに用意しておいた「ソフィアの執務室(学習室)」へ行きなさい」


そう言われたら私はまた侍女に促されて、

別の部屋へと案内される事になったのよ。

けれど体を動かして歩くのは痛くて…

苦しくて…

けれど今ここから立ち去る訳にはいかないっ。

何としてもお願いして、この矯正具を外して貰わないとっ。

無理だから。

こんなの付けていられないからっ。

お願いっ。お願いだから外してっ。

誰でもいいから外してよっ。

やだ。

ヤダっ!

だれかカーディル様を呼んできて!

それでボルフォード公爵夫人を説得してお願いだから!

言葉にしたくて訴えたくて、

私は苦しさのあまりまた涙を零しながら周りを見るの。

周りのメイドや侍女は私を見つめるだけ。

そしてある物は私から目を逸らしてある者は私に微笑むだけ。

誰も、誰も動いてくれない。

苦しい私を助けてくれないっ!

私苦しいのよ?苦しくて困っているのよ?

未来の公爵夫人が困っているんだから助けてよっ!

ねぇ、誰でも良いから!

けれど私の無言の訴えを聞き入れてくれる人は…

私に手を差し伸べてくれる侍女もメイドもいなかったの…

しているうちに動こうとしない私に耐えきれなくなったのか、

二人のメイドが私を挟み込むようにしながら、

私が動く様に促すの。

違うでしょう!

今は困っている私の為にボルフォード公爵夫人を説得して、

この矯正具は可哀そうだから外してあげましょうって言う所でしょう?

私はイヤイヤと首を横に振って違うの。

早く私の代わりに矯正具を外す様にボルフォード公爵夫人に言ってって、

必死に意思表示するの。

けれど…


「さぁ、ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補?参りましょうね―――」


そう言われるとメイドに両側から手首を掴まれて肘を支えられて、

強引に動かされ始めたのよ。

体をくるりと回転させられて入ってきた扉の方へ誘導されたのよ。

肘と繋がった紐が胴体の革のバスクに固定されているから、

肘を少しでも前へ押し倒されると体が前に倒れようとしてしまうのよっ。

グラつく体を支える為に必死になってスカートの中でまとわりつく、

長すぎるパニエを掻き分けて私は足を動かすの!

でないとバスクに押さえつけられていたパニエがバランスを崩して、

揺れ動くとその反動で腰をねじ切らんばかりに圧迫されるのよ。

くるしいのっ。

苦しくて息をする事が出来なくなるの。

だから足を動かして苦しさから逃げようとするのよ。

止まっていられないの。


「ぁっぁっ」

「はいそうですよ。公爵夫人に相応しい素敵な歩みですね」


私に動かないって選択肢はもう与えられていなかった。

少しで空気を吸いたくて口を大きく広げるのだけれど、

どんなに口が開けても空気は体の中に入らないのよ。

肺が広がらないのっ!

息が吸えないの。

その息苦しさの中で、

動いても上半身の何処かが痛いっ!動かなくても痛いっ!

全身を軋ませながら私はゆっくりと歩くのよ。

全身が訴える痛みに耐えながら…

痛みと苦しさで声も出す余裕はなくて…

ただただ歩き始めるのよ…

両肘を支えるメイドが少しでも歩くペースを上げようと、

肘を押せば今の私にそれに抗う方法は無くて、

ただただ「ぁっぁっぁ」って小さく小さく息を漏らしながら歩くの。

その内に、手首を握られていた腕は、お腹の前で重ね合わせる形を、

取らされていて…


「そうですよ。

動く時はお腹の前で手を重ね合わせて歩くのです。

それ以外の場所に手がある事ははしたないのです」

「歩く時は口を塞ぎなさい。美しくないのです」

「前をちゃんと向きなさい、顎が下がっていますよ。

だらしない」


一つ一つ私の動きがチェックされ始めて…

けれどそんな事聞いている余裕はなくて…

早くっ、早く執務室へついてほしいて思いながら歩いていたの。

その(ソフィア)の執務室って言うのはお屋敷の私の為に用意された、

私室の近くに用意されていて…

建物の内側に設置された部屋だったのよ。

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