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エディルネ・ボルフォード公爵夫人はバラ色の未来を夢見るのか?

これは公爵夫人から見た可愛い息子であるカーディルとその花嫁となるソフィアの話。


誰よりお美しくそして優美に。

わたくしは立ち振る舞い続けるのです。

幼い頃より決められた幼馴染との結婚。

わたくしはそのこと自体を別に特別な事だとは思っていなかった。

けれど、わたくしの嫁ぐ家は女性からの憧れられる公爵家であったのです。

国の服飾を纏め上げる一族。

その頂点として存在するボルフォード家に嫁いだ子は、

何時でも最新のドレスを着て、

最新のファッションを国に提供す憧れの存在なのです。

けれど、その「憧れ」とは裏腹にボルフォード公爵家に嫁ぐことが、

決まった私には悲しいくらい苦しい矯正具を付けての生活を送る事になりました。

それでも、公爵家の誇りを胸にしっかりとした公爵夫人となったのです。

けれどその苦難を考えれば、

我が子にはそんな苦労をしてほしくないと考えるのが親心というもの。

それが自分が産んだ子ならなおさら苦労を掛けたいとは思いません。

生まれてきたカーディルには、最高の嫁を与える事。

それが、わたくしの生きる指針となりました。

カーディルは多少やんちゃさんに育ってしまったため、

ちょっとメイドを傷つける様な事もしてしまいましたが、

大したことではないのですよ。

駄目なメイドに高貴なる勤めを教えてあげただけなのです。

わたくし達に寄生して生きる事しか出来ない、メイドの一人や二人。

いなくなったところで何の問題にもなりません。

なにやら勘違いした同格の公爵家は、

わたくしの可愛いカーディルの嫁に納まろうとしていたみだいだけれど…

カーディルの高貴なる勤めに恐れをなしてしまった他の公爵家は、

わたくしのカーディルに嫁として出せないと伝えて来たのです。

確かに…

昔、わたくしがカーディルの為に嫁候補として打診していた事は、

あった様な気もしますが、少し成長するれば解ってしまう事。

どの子もカーディルに相応しい子になれる素養を持っていないのです。

そのくせ、カーディルの妻に納まろうなどど愚かしい事を考えていたのですから、

可笑しくて、笑いが零れてしまいました。

わたくしの可愛いカーディルに相応しい子は爵位だけではいけないのです。

もちろん爵位「も」必要ですが、

それ以上に、この国のファッションリーダーとなるべき女性が、

その辺りにいる程度の女子の体格でなれると思っていたら、

ちゃんちゃらおかしいのよ。

ボルフォードの「公爵夫人」は婚礼に用意された伝統ある花嫁衣装を、

身に纏う事が「仕来り」として決まっているのですから。

その婚礼衣装は美しくはあるけれど「美」の塊のような物だから。

「美しく」なければ袖を通す事も叶わないのです。

今時の中途半端な「公爵令嬢」達が簡単に袖を通せる物ではないのよ。

あの婚礼移譲は、長年矯正具とコルセットで体を「美しく」しないと、

着られない物なの。

素敵になる為に、努力し続けた先に用意された物なのよ。

誰だって着られる代物ではないのよ。

あの婚礼衣装を身に纏って結婚式を挙げる事は、

この国のファッションリーダーとなった証でもあるのだから。

わたくしが着て結婚式挙げた時には、その美しさに皆声を上げて羨ましいと、

言われるくらい美しくて豪華な物なのよ。

何年たっても色あせない様に作られたその花嫁用のドレスは、

ボルフォード家の女主人となった証でもあるのだから。

あのドレスを着た時の苦しさと同時に訪れす至福の喜びは、

あのドレスに袖を通した事のある者にしか理解でしかい物なの。

賢く美しい子でなければ、カーディルが馬鹿にされてしまうから。

やっぱり、同格の公爵家は血は良いのだけれど、

高飛車でいざとなれば実家に帰ろうとしてしまうから。

駄目よね。

やっぱり、誠心誠意カーディルに尽くせる子でないといけないのよって、

思った時に、丁度良い「優秀」と噂されたた「子」を見つけたのだけれど…

小汚い血筋で、何時だって捨てられるから、

ちょっと遊んでみようとおもったのよ。

わたくしが遊んであげるなんて、なんて幸運な子なのでしょうね。

きっと泣いて感謝するはずなのよ。


薄汚いファルスティンの娘が、カーディルの横に立つなんて事は、

許せる訳がないのだけれど、婚約者がいないとカーディルも不安になるだろうし。

やはり、カーディルのパートナーは「血筋」も重要視するべき事だから。

形ばかりの婚約者と言う形を取って「良い想いで」を作ってあげましょうね。

なんて優しいのかしら。

わたくしはこの素晴らしい考えを、直ぐに実行してあげる事にしたのです。

カーディルの本命はじっくりと時間をかけて探して挙げれば良いだけの事。

その内メイドに行った「高貴なる者の務め」だって理解する公爵家が現れて、

自ずとカーディルに相応しい子が現れるに決まっているのだから。

でも、そうね。

ファルスティンの小汚い雌がそれなりに使えるようだったら…

使ってあげても良いかもね。


僅かばかりの支援金だって、払ってあげても良いかも知れない。

でも、使えない雌って事にして、支援金を払わないで締め上げてあげるのも、

面白いかも知れないわぁ。

いまから出会うのがとっても楽しみね…


それから私はファルスティンを呼び出して、

国へと婚約者として登録してあげたのよ。

ほら、結婚でなければ、経歴に傷はつかないもの。

それに、小娘を好き勝手いじくり回すのは面白いのよ。

あわあわと慌ててどうしようも出来なくて許しを乞うのよ。

それをどうしようかと悩んだふりをして、必死にお願いしますと言う、

小娘を小突いて遊ぶって言う「高貴なる者にしか許されない」楽しい遊びを、

わたくしもやってみたかったのよ。

学園時代に聞いた、この遊びをしていた大公家の一人娘を見た時、

わたくしもあんな「遊び」をして、威厳を周囲に見せびらかしたいと、

考えたのだけれど手ごろな伯爵家の娘がいなかったのよ。

男爵家の娘ではちょっと派手に踊ってくれなさそうだし、

「踊るのは「伯爵家」の娘が丁度良いのよ」

大公家の一人娘が言っていたのね。

試しに男爵家の娘で「遊び」をしていた侯爵令嬢もいたのだけれど…

そんなに面白くなかったのよね。

直ぐに何も出来なくなって「学園」から去ってしまっていたから。

確かに「大公家」の一人娘が遊んでいた「伯爵令嬢」は、

必死にあの手この手を使って踊り狂っていたから…

アレは見ていて楽しかったけれど、わたくしもしたいって思ってしまったの。

その遊びを出来ると思えば…

胸がドキドキして。

また若い頃の気持ちが戻って来るみたいな気分になっていったのよ。

さぁ。わたくしを楽しませてちょうだいなぁって、思っていたのに。

思いのほか。ファルスティン家の守りが固かったのよねぇ。

婚約パーティーを開いてあげて伯爵令嬢のエルゼリアに、

現実を教えてあげようと色々用意していたのだけれど…

白い髪で青い瞳はまるで宝石のよう…

わたくしには劣るけれど?そこそこ良い顔付きだし?

これから体を思い切り矯正してあげれば、婚礼衣装も美しく着れそうな子だった。

よ、予想していた姿より、良かった事は褒めてあげるけれど?

わたくしの子供の頃に比べればまだまだ劣っているのよ…

そう!劣っているから、わたくしがこの原石を磨かないといけないなんて…

なんて憂鬱な気分になりそう…

けれど、この子が踊り狂う所は面白そうと思えてしまったのよ。

この可愛いお顔がわたくしに許しを乞う為に必死になると考えると、

あぁ…

学園時代やり残した青春の一ページをもう一度繰り返せるって思って。

嬉しくなってしまうの…

それから何度も手紙を出して、

支援金をやるからエルゼリアをボルフォードに来させろ。

カーディルに忠誠を尽せって、言い続けていたのだけれど。

なかなかね。

来ないのよね。

支援金をエルゼリアに取りに来させろと命令したのに。

「支援金は要らない。よって娘はそちらに預けない」

そう言って強がっちゃっていたのよ。

はした金だってあれば領民の一人でも救えるのに。

なんて自分勝手な領主なのでしょうね。

その所為でまた多くの人が死ぬとわかっていないのかしらね?

現実を見れない領主を持つファルスティンの領民が可哀そうで仕方がないわね。

けれど、だからファルスティンなのよ。

自らの愚策で領地を窮地に追い込んでその果てに泣き付いて来ても、

ご慈悲なんてあげないのよ?日頃の「お気持ち」が重要なのだから。

まぁそれでも、婚約はなっているのだから。矯正具をエルゼリアに付けさせる、

「権利」はあるのよねぇ。

一番きついモノを送ってあげましょうね。

そして婚礼衣装を着る時は一番苦しいけれど美しく見れるのもを着せるのよ。

愛しいカーディルの隣に立つには位して当然なのだから。

国に手を回して、婚約者の地位へ据える事が出来たから。

侍女に一番苦しい矯正具を届ける様に言って、

ちゃんと装着しているかどうかを確かめるために、

月に5回くらいの割合で人も派遣したのよ。

そうしたら、ちゃんと着ているらしくて…

そのくせ文句ひとつ言ってこない。

「まだまだ余裕そうでしたね」

なんて様子を確認した使者が言っていから、

なら、今度は公爵家の仕来りを覚えさせるために、

資料を山の様に送り届けてやったのよ、

そしてテストだって言ってまた使者を派遣したのだけれど…

それも易々とクリアーしてしまったみたいで…

なんなのこの「エルゼリア」って子はとも思ったのよ。

けれど、それ以上にこの優秀な子をカーディルに相応しい「嫁(奴隷)」に、

出来るって思うと、カーディルはもっと楽が出来るだろうし。

いままで以上に「自由にしていい」と思えば、

小汚い姿も婚礼衣装を着れば隠せるだろうと思えば…

ファルスティンの娘であることも許せそうだったのよねぇ。

そして「学園」に入学する頃には、矯正も進んでいたから、

理想の花嫁衣装を着る事が出来るほどに、体が出来上がり始めていたのよ。

同格の公爵夫人とのお茶会でも…


「ボルフォード公爵夫人?貴女の所に嫁いでくる「子」はもう決めたの?」

「えぇ。思いのほか小汚いファルスティンの娘はマシな形になったのよ」

「え?」

「一番美しい婚礼衣装を着せる事が出来そうなの」

「…嘘でしょう?」

「アレを着せる気なの?」

「フフフっ。信じられないでしょう?

けれど、着せられそうなのよ。

だから楽しみににしていらして?」

「…ええ。本当に「美しい」婚礼衣装を着れたら…

伯爵令嬢だろうと認めなくちゃいけないでしょうね」

「そ、そうね、あの婚礼衣装は「美しい」けれど、

公爵令嬢ですら着るのが難しい物だから…

本当に「美しく」「着れる」のであればその姿を見るのは楽しみだわ…」

「ええ。きっと皆の期待を裏切らず「着せる」事が出来そうよ」


あはは。うふふ。なんて笑い声を挙げながら…

わたくしはボルフォード家創設以来、

初代公爵夫人しか袖を通す事が出来なかった、

ドレスを思い浮かべていた。


王国の「美」のスタンダードを築き上げたボルフォード家の初代様。

その圧倒的なスタイルの良さを武器に作り上げた究極のドレスは、

見るもを圧倒し、王国の豊かさの象徴の様な姿だった。

全てを「美」に捧げたからこそ出来た姿。

憧れられて同じ物を婚礼衣装にしようとした公爵令嬢達は数知れず。

けれど身に着ける事は決して叶わなかった幻のドレスなのよね。

極限まで細くした腰が前提の装飾と言う名の重たい貴金属品が、

散りばめられた腰回りは、ドレスを着ると言うより、

装具を嵌め込まれると言うのが正しいのよ。

肩は抉られる様な曲線を作り、その窪んだ肩の曲線があるから、

ありえない長くて大きいイヤリングを耳に取り付けられるの。

信じられないくらい強い矯正を掛けて歪ませた肩周りは、

普通の人とは比べられない位、肩幅を狭くして…

そのお陰で、巨大なパフスリーブを取り付ける事が出来るのよ。

大きな宝石を埋め込んた肩回りでも、違和感がない腕の付け根を演出して、

お腹と肩そして首元を「美しい」と思わせる形を演出したのよ。

バスクで固められた上半身は、

その上から更にベストとボレロを重ね着させて膨らませて、

腰のくびれを更に強調するのよ。

スカートの中も特殊なパニエとバッスルで満たされるの。

その重さは「美」の為の重さって言われるくらいで。

スカートも複雑な形で膨らませる為の物で、

後ろには刺繍を重ねた長いトレーン付き。

バッスルを身に着けて作った括れた腰の後ろには、

トレーンへと広がる様に見せる大きな薔薇の花が布と貴金属で、

美しく形作られて乗せられるの。

そのトレーンへと繋がるデザインは芸術的で…

皆その部分に憧れるのだけれど、同時にバランスを取るために、

バスクは重たい重しが縫い込まれた物になってしまうから。

重量がかさんで、ほとんどの令嬢は諦めるのよね。

手首にもドレスに合わせた大きな宝石が埋め込まれた長いブレレットを、

身に着けて…手首が動く度、キラキラと宝石に光が乱反射して、

その光がドレスの腰回りの薔薇や宝石に当たれば更に全身へと、

広がって光り輝いて見えるのよ。

その「美」の結晶は初代様のドレスを見れば誰だって、

「美しい」とおもえるのだけれど、決してそのドレスを身に着ける事は、

叶わない。

美に全てを捧げさせて、そのドレスを着る事を前提に、

何年もの間、ありえない矯正の果てに作られる姿なのだから。

それを着た「人」を用意できるという事は、

ボルフォード家の公爵夫人として最高の栄誉とも言えるのですよ。

その為には、絶対に逆らう事を許さず文句を言わない子が、

必要で周囲に反対意見を言う者が1人だっている事は許されない。

でも奇跡は起きた!

ゴミ溜めに生まれながらも!

いいえ!ゴミ溜めに生まれたからこその逸材!

わたくしに逆らう事を許されないわたくしのカーディルの為の物(奴隷)!


だからこそっ!

わたくしの最高の願いとしても、

最高の「花嫁」はもうエルゼリアしかありえなかったのですよ。


もう少し。


もう少しで、最高の花嫁が出来上がる…

そう思っていた時でした。



ソフィア・マリス



そう名乗る男爵令嬢が、カーディルの前へと現れてしまったのです。

そしてあれよあれよという間に長い時間をかけて作り上げた、

「美」の結晶最高の「妻」となれたエルゼリアに対して、

カーディルは婚約破棄してしまったのです。

…けれど、

けれど、わたくしは慌てません。

慌てる必要なんてないのです。

だって、愛しいカーディルが選んだ「御令嬢」が、エルゼリアに劣るなんて、

ありえてはいけない事なのですから。

初めてのご挨拶から、もうその残念っぷりは憤慨しそうなほどでしたが…

愛しいカーディルが選んだ「公爵夫人候補」なのです。

なら公爵夫人に相応しい子にしてしまえばよいのです。

わたくしは決して慌てません。

わたくしが作り上げた「美」の結晶「エルゼリア」をカーディルに、

捨てさせたのですから。

その棄てた「エルゼリア」の代わりになれるまで、

「ソフィア」を育てればよいだけ。

たったそれだけの事なのです…


だって愛しいカーディルが選んだ子が愚図で使い物にならない子だなんて、

許されないのですから。

直ぐに王都の仕立て屋で登城用のドレスを作りに行ったと聞いたので。

そのサイズを領都の職人の下に届けさせて、

美しい公爵夫人の姿になる為に矯正具を手配する事にしました。

職人からは…


「奥様この矯正具はドレスの下に着る事が出来ませんよ。

ベルトは厚く体を補正するためにバスクと同じ形にするくらい物を作って、

更に胸上から肩を思い切り押し込むベルトの取り付けるとなると…

ドレスの上から取り付ける位の勢いでやらないと…」

「しかたが無いわね。そうしましょう。

そして極力短期間で婚礼衣装を、

「美しく」着れる様にしなくては、いけませんから」

「…はい?

ど、どう考えても、「美しく着れる婚礼衣装」用まで体を歪ませるとなると、

体が壊れますよ?!骨が…

肩の骨や肋骨が折れますよ!?」

「そうね。そうかもしれないけれど、

無様な姿を晒すくらいなら肩の骨くらい折りましょう。

それでボルフォード家の「公爵夫人」と認められるのなら安い物でしょう」

「ギリギリまで緩く作りますが…

加減を間違えると折れる矯正具を作ります」

「別に折れても良いのよ。きついモノを作ってあげて頂戴な」

「わ、解りました」


王妃様からの承認を直ぐに受けられなくなってしまったのは痛いけれど、

エルゼリアが初代様のドレスを着る為に歪んだ体になっても、

「生きていられる事」を教えてくれたのだから。

容赦なく「ソフィア」の体は締め上げる事にしてあげたのです。

その上教育を任せた侍女達からは物覚えが悪い。

全然態度も良くならないと進言が着てしまったから。

3カ月間だけ様子を、見る事にしてあげたのですが、

その事も理解できる頭は無かったから仕方がないのよねぇ。

もう、寛容な結果を待ってあげる時期も過ぎてしまったし…



わたくしは仕方が無く、もう一度エルゼリアを手に入れようと、

動いたのだけれど…



「もうボルフォード家と関わるつもりはありません」



な、なんて生意気なって思っていたのだけれどね。

王国の「正式」な書類でファルスティンの実態が知らされると…

アネス・ファルスティンの態度が、エルゼリアを最後までわたくしの下に、

来させなかった理由を知る事になってしまったのよ…


「そんな…

バカな事がある?」


実態と違いすぎるファルスティン領。

正式な王家からの手紙には、既にファルスティン伯爵領は、

王国と対等に渡り合える力を持っている。

最近世代交代が行われその式典には第2王子も参加したという、

報告書が届けられたのよ。

まさか?どうして?何故王家に関わり合いがある重要人物が?!


ボルフォード家としてファルスティンに近い家だった事もあり、

エルゼリアを「お世話」したことを「大変喜んでいる」らしいから、

これからファルスティン家と付き合う時は慎重になる様にとのお達しだった。


「慎重になれ」


それは言い換えれば王国が認めた爵位とは別に、

慎重に受け答えしなければならないほどの領地の豊かさに差が出来ていると言う、

王国からの警告だった。

けれど、わたくしは侮ったのよ。

そうは言っても娘一人で来れば、屋敷で「おもてなし」をして、

「はいカーディル様の妻となります」

と言わせてしまえば、此方の思ったままに操れると。

けれど、やって来たエルゼリアの姿は、

ファルスティンの伯爵家の用意した「美」の塊だった。

同時に、その「美」は多数の騎士達に守られてボルフォードにまで来たのだ。

総勢50名を超える騎士達とそのお付き者。

合わせれば100名を超える集団で、当家にやって来た。

それは、王族のお忍びの様な厳重な守り。

その姿は正しくファルスティンの誇る「姫」だった。

その姿と騎士団を見た時、私はファルスティンはもう辺境の人棄て山ではないと。

軽々しく懐柔できる相手ではないと認識せざるを得なかった。

王国の用意した厳しい取り決めを搔い潜り、仕上げられたエルゼリアのドレスは、

初代様の身に着けたドレスなんかより、ずっと美しく優美だっだのよね…。

その事に驚きつつ、わたくしは見惚れていたと言わざるを得なかった。

確かにエルゼリアの体は初代様のドレスを美しく着れる様に調整していたけれど、

それを差し引いてもそのドレス姿は衝撃的だったのよ。

重たく苦しいはずの姿なのに令嬢のお手本のような歩行で歩き、

介助を必要としない。

その姿にドレスの重量は抑えられてそれでいて多種多様な刺繍をしても、

決して苦しくない様に仕上げられていると…

ボルフォードが守って来た服飾の「伝統」が崩れたような気がしたのだけれど…


私はボルフォード家の公爵夫人。

ドレスメーカーの代表者として負けを認める訳にはいかないのです。


1つの作品がオースヴァイン王国内に誕生した事は認めて差し上げますが、

それも些細な事でしかありません。

新しい作品に負けないように由緒ある伝統に磨きをかければいいのです。

それならば新しい「美」に負けない様に「ソフィア」を作れば良いとも、

考え付いてしまったのよね。


それはショックでもあったのだけれど。

その事を表に出すほどわたくしは甘くありません。

弱みなど見せず会談は淡々と行われて同時に理解したのです。

もうわたくしの「エルゼリア」には出来ないと。

多少無理な懐柔を企てたけれどエルゼリアは動じなかった。

それ所か「ソフィア」を嘲笑っていたのよ。

その時、ああ、もうボルフォードはエルゼリアを手に入れられない。

「ソフィア」を「エルゼリア」にするしかないと決心か決まったのよね。

それでも最後まで引き留めようとしてしまった辺り、

わたくしも未練がましかったかもしれないけれど。


その後用意していた「激励用品」をソフィアに取り付ければ、

ソフィアは泣いて喜んでくれて…

屋敷の使用人達から激励を貰って楽しい「返事」をしながら、

応接室を後にしたのよ。


次は何を用意しておかないといけないかしら?

まぁ「鞭」は必要よね。

後は「パドル」とか、当分は屋敷から出す予定はないから…

壁には「金具」と繋がる「チョーカー」も必要ね。

あとは…近いうちに音楽会があるから…

練習用に楽器と装具を用意して置いてあげないといけないわ。

ソフィアの生活は忙しいけれど、充実したモノにしてあげなくてはね。

あぁそれから、首の激励用品だけじゃきっと物足りなくなるだろうから、

お腹と足や手に取り付ける激励用品も用意して置いてあげないと…

全身くまなく「激励」されたら、きっと眠る時間も削れるだろうし。

眠りたくなったら激励してあげればきっと、もっともっと頑張れるだろうから。

ソフィアは早くカーディルの為に相応しい「妻(奴隷)」になって頂戴ね。

カーディルが寂しがった時の為に慰める「代り」の御令嬢は何時だって手配できるから。

安心して「躾」られて頂戴ね。

それでエルゼリアの言ったように天使だからと言って「天に帰ろう」としても大丈夫よ。

貴女の教育係として付けた侍女は強い回復魔法の使い手だから。

いくらでも気を失っても直ぐに回復してもらえるから。


早く…

早く愛しいカーディルに相応しい「妻(奴隷)」になりましょうねぇ。

そうしたらわたくしがもっともっと可愛がってあげますよ。


公爵夫人の考えの根底には

「自分」「旦那」「カーディル」「使用人」「カーディルの妻(奴隷)」「その他」

と言った区分けしかないのかも知れません。


婚礼用のドレスは美しい「らしい」です。王国の美的感覚からすればですが。

現代人の我々が見たら、成金趣味丸出しの貴金属と宝石を身に着けた、

ドレスを名乗る宝石の塊か、宝石を置くための台座だと思ってくれれば。

無駄に金属を使っているから果てしなく重く、

言い換えれば人間に宝石を括り付けているだけと、

表現した方が良いかもしれません。

デザインも糞の無いのですが「初代様」が作った「伝統」の

婚礼衣装なので「美しい」という事に「された」モノだという事です。


エディルネ公爵夫人はソフィアを「躾ける」と言い訳をして、

これから色々な物を「揃える」のでしょうね。

「だって必要な物だから」って言い訳しながら。

その与えられた攻め具にに耐えられるのか…

耐えられたらより「酷い」ものが用意されるでしょうしね。

ソフィアが楽になる事は出来ないでしょう。

もちろん演奏会用に用意される「楽器」もソフィアの為の「物」が、

用意されますから。

ソフィアは練習からその「楽器」になれないといけませんね。

本当にソフィアは大変になるのでしょう。


公爵夫人の用意した「楽器」を練習する羽目になったソフィア。

きっと素敵なレッスンが待っているでしょう。

公爵夫人もノリノリで「パドル」や「鞭」を用意しているみたいですから。

座った椅子から立って逃げる「自由」がソフィアにあると良いですね。

寝室に帰る余裕はあるのかな?

楽しみですね!

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