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も、もう役割から逃げられないの?嘘よ?嘘よね?そんなのってないって!撤回してぇ!

けれど、ボルフォード公爵夫人は躊躇わないのよ。


「当家を存続させるために「ソフィア」には絶対に王妃様の課題を、

クリアー出来る様になってもらいます」


言われてしまった。

絶対に言わてれてはいけない宣言を…

その宣言は、使用人達の前で大々的に発表されてしまった事で、

私が王妃様に認められて課題をクリアーする事が「正式」な事に、

なってしまったのよ…

それは「取り消し」が難しくなったって事なの…

この意味は大きいの!

大きいのよ。

執務室の学習で基礎的な所で知っておかなくちゃいけないからって、

優先的に覚えさせられた事だからよく覚えているのよ。

「「正式」な場での発言は、実行できなかった場合手痛い処罰がある」って。

「そして撤回は非常に難しい事」だから、発言には注意しないといけないのよ。

けれどその場は整えられているし。もう発言されてしまったのよ!

もう「正式」な事だからその事を撤回するのは簡単な事じゃなくなるの。

撤回したいのなら今度は私がこういった集まりを開催して!

用意して!

そして最後に、宣言したボルフォード公爵夫人に、

撤回してもらわないといけないのよ。

「正式」な事だから「正式」な撤回が必要になる。

それだけ貴族の平民(使用人達)に対する宣言は重い扱いとなるの。

そして実行できなかった時の処罰だって爵位が高ければ高いほど、

苦しい物になるのよ!

私がこう言った集まりをボルフォード家でする事を許される訳がないのよっ!

その撤回を踏む手順は私には出来ないのよっ!

だから…

もう…


「もちろん「ソフィア」は了承済みで…

大変喜ばしい事に今の彼女はやる気に満ち溢れています」


言われた事が出来ない時には重たい処罰が待っているのよ。

それは仕出かした事大きさに比例するのよ。

カーディル様が国王陛下に跡継ぎとしての許可を取れるのなら、

私の処罰は小さくなるけれど…

そうでない場合は「ボルフォード公爵家」の存続に関わる事になってしまうのよ!

一つの家の断絶なんて事になったら…

そんな事を引き起こした原因って思われたらもう…

私の処罰がどうなるかなんて解りきっているじゃないのよ!

もう出来ないなんて事は許されないの。

そんな事も言っていられなくなるのよ。

けど、どんな出来ないって主張しても…

周囲は「皆」私の事を聞いてくれない…


「わたくし達はこの「正義の行いをした」ソフィアを「褒めて」育てます」

言う事だけを聞かせて「良い子の公爵夫人」にする事に決めました。

皆も協力して頂戴ね。

その為にも、ソフィアには「印」を付けたのです」


「印」それはもちろん私の首から垂らされた「物」を見ながら話すのよ。

私の立場を周囲に知らせる為の「物」けれど、首に巻かれたベルトは、

アクセサリーの様に細かい細工物が取り付けられ、

体の前面に垂らされた涎掛けの部分だって、

縁取りには細かい刺繍が縫い付けられているのよ。

中心に大きく刻み込まれた屈辱的な文書を見なかった事にすれば、

使い方によっては、良い装飾品になるはずの物なのよ。

けれど、不自然に開いたスペース…と言うより、

何かを嵌め込む台座と呼べるものがこの涎掛けにはあって…

それは間違いなく宝石を嵌め込む為の場所だったのよ。


「今その印に皆に褒める為の「お道具」をこの場で取り付けます。

見た事がある者は少ないと思いますが…

昔、当家で使用していた言う事の聞かない「使用人」でも素直になれる、

「素敵なお道具」です。

きっと今のソフィアには必要ですから」


別の侍女が宝石箱の様な物を運んできたのよ。

その箱は、魔術的な封印の施された特殊な物で綺麗な装飾が施されているけれど、

この場に用意される物だもの。

碌な物じゃ無い事位は私にだって想像できてしまうのよ。

カパリと開かれる宝石箱。

その中には美しい黄色の宝石が入っていたのよ。

その宝石をにっこりしながらボルフォード公爵夫人は手に取って…

私の涎掛けの宝石を嵌める穴に押し込めばパチンと小さな音を出して、

その宝石はピタリと台座に嵌りこむのよ。

同時にフワッと周囲が光り輝いて、「何か」が起動した事が解ってしまうの。

私だって貴族だもの。

それが魔術的要素を含んだ何かだって事は即座に理解する事が出来たのよ。

けれど…

同時にそれが魔術的道具だったら――――

なんでそんな物が必要なのとも思うの。

けれど嵌め込まれた宝石が、ただの宝石じゃなくて魔石だったら?

しかもその宝石の色は黄色で…

魔術って言うのは属性を表す色を持っていて、黄色の魔石の示す魔術は…


―電撃―


うそ。

嘘でしょう?

く、首に繫がる装具にそんな物が…

ち、ちがうわよ。

そんな事許される訳ない。も、の。


「見ての通りソフィアはカートを持つのが精一杯ですがそれは些細な事。

これからもっともっと色々な事を教え込まなければいけないのです。

ですが「ソフィア」は、残念なことに頭だけで覚える事が出来なかったのです。

なので、これからは体「も」使う事にしました。

仕方ありませんね。

物覚えが悪いのですから」


最低!最低よ!何考えているのよ!

こ、こんな事が許される訳ないじゃない!

けれど私の方を向いたボルフォード公爵夫人は、

容赦なく私に現実を叩きつけるのよ!

私の両脇に侍女を控えていた侍女が、私に肘の下に肘置きを設置したのよっ!

こ、れって、何かの準備なのって質問したくなるのだけれど、

もちろんそんな事を確認している時間はないの。

公爵夫人は持っていた扇子を侍女に渡すと、

私の前でっ!

私に向かってパチパチと拍手をして来るのよ。

その拍手の音が鳴り響く度に私の涎掛けに付けられた宝石が鈍く輝き出して!


―パチン―

「ゕっぁっ!」


小さな音がして!

体を突き抜けるような痛みが!

全身を襲って来たのよ!

締め上げられている体が勝手に動こうとしてっ!

必死に整えてる呼吸が乱されて、苦しい!痛い!痛いのよっ!

ガクリと崩れ落ちそうになるのだけれど、それはもちろん許されなかったの!

肘置きに置かれた肘が私の全身を支えてっ!

崩れ落ちる自由すら私には与えられなかったのよ!

足から力が抜けていたけれど、もちろん何時までも肘に体を預けて置く事なんて、

許されないのよっ!

引きつった体が矯正具がまた体を締め付けて来てはやく立たないとっ!

更に息が苦しくなるの!

けれど、こんな私の様子を見たボルフォード公爵夫人は、

満足したのかガクガクと震える私が立ち上がるのを確認して、

話を進めていくのよ…


「このお道具を使って「皆」から「愛される公爵夫人」になるまで、

しっかりと「躾けて」あげるのです。

皆協力してあげて頂戴ね」


皆その言葉を聞いて「理解」したのか…

けれど、家令が質問をして来るのよ。


「しかし奥様。

拍手して「未来の公爵夫人候補」を「激励」すれば良いという事は解りました。

けれどその爵位をお持ちの未来の公爵夫人候補を我々「平民」が、

「激励」する事を許されるのですか?」


そう!

そうよ!

私は貴族なの!貴族なのよ!

そ、その貴族の私を傷つけたらどうなるのかっ!

解っているでしょう?

だから使用人達はわたしを…

わたしが、く、苦しい事をしちゃいけないの!

そうよね?家令の言っている事は正しいんだから!

けれどその最後の「貴族」という免罪符さえ私は取り上げられていたのよ。


「大丈夫よ。

これから「ソフィア」がお出かけ(カートに繫がれて移動)、するときには、

周囲を見えなくする被り物の着用を義務とします。

周りが見えてしまうと不安になってしまうでしょうからねぇ」


それは誰が私に対して拍手をしたか解らなくなるって事で…

誰がいつ拍手してくるかも私には把握できなくなるって事なの?

そ、それじゃあ外出の間中(カートに繋がれての移動)、

私は電撃に怯えないといけないって事??

そ、それは重たいカートを押せなくなって休憩している事が、

許されなくなるって事なの?

休む=サボっているって見られるからもう立ち止まる事すら許されなくなるの?

む、無理よ!今だって休み休み運んでいるのよ?


「それに、爵位の事を気にしている子達もいるみたいだけれど…

今の「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補」という立場は、

わたくしが「保証」しなければ、ただの「ソフィア」でしかないのです。

「ソフィア」は、貴族でもなければ平民の立場でもありません。

見ての通り「公爵家の所有物」なのですよ。

その公爵家の所有物を「使用人」達がどう扱おうと、

問題になったりしないでしょう。

もちろん「破損」したら困りますからね?

けれど、備品を多少手荒く扱ってしまう事なんてよくある事でしょう。

良い「お道具」はよく働く「お道具」でもあるでしょう?

働けないお道具に価値はないのだから。

自分で価値を生み出せないのだから、

周囲が使って価値を創出する手助けをしてあげるだけなのよ」


周囲はボルフォード公爵夫人の言葉で納得したのか、

口々に「なるほど」「そう言う事なのですね」「良いお道具にしましょう」

なんて言葉が聞こえてくるのよ。


次回の更新は20~20時30分の間で投稿します。

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