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た、立場が変わっちゃうっ!そんなのってない!それだけは嫌!イヤなの!

―ボルフォード公爵家所有物―

―カーディルの持ちソフィア


「良い出来でしょう?貴女の装具を作らせている職人に、

今日の日取りに合わせて仕上げさせた物なのよ。

首に取り付けて前後に垂れ下がるから。後ろからでも前からでも。

貴女がカーディルの大切な「物」だって解るのよ」


そう、説明された時…

もうボルフォード家に「私」の居場所はないって思い知らされたのよ…

侍女達の手によって私に身に着けさせるために前後に分割されたそれを…

一度壁に繋がったチョーカーを一度外されて、

首が繋がれた感覚が無くなって嬉しかったのもつかの間。

すぐさま、ボルフォード公爵夫人が見守る中、

侍女達の手によってその革の涎掛けは首に宛がわれて、

圧着してからパチンパチンって音を立てて金属の何かが、

ベルトに嵌め込まれたのよ。

その瞬間クッと首が押し込められるような圧迫感が襲ってきて…

身に着けさせられたのを自覚せざるをえない状態にされたのよっ!

「ぁっっぁ!ぃゃぁ…!」

そうやって必死に絞り出していた声を…

更に邪魔するように嵌められて…名前付きの首輪よ!こんなの!

それから左右の肩に乗る様に南京錠が乗せられる形で鍵留めされたら…

もう、そこに…

人間としてのソフィアはいないって事になってしまったのよ。

俯く視線の先に垂れ下がる所有物としての証。

そして所有物程度の価値しかないと判断されてしまったって事は…

私はもう何も言う権利を与えて貰えないって事なの?

けれど呆然としている余裕はなくて。

またチョーカーを首に巻かれ直せば…


―ガツン―

って、音がして、私はまた壁に繫がれ直おされたのよっ!

もう、もう十分でしょう?

十分私に好きな物を取り付けて満足でしょう?

執務室に行かせてよ!

大人しくエルゼリアから返してもらった本を運ぶから…

けれど私の惨めな気持ちとは裏腹に…

今日、最後の催し事が行われる事になるのよ。


それは私の努力した集大成。

ボルフォード公爵夫人と3人の侍女達が私を評価した結果を、

屋敷で働く人々に知らせるって事だったのよ。


「さぁ、では次代を担う公爵家の夫妻候補を正式に発表致しましょう」


それは私がこのボルフォード公爵家でどういった立場になるのかを明確に、

公表する場として用意された場だったのよ。


侍女達の手によって椅子は配置換えが行われて、

テーブルは撤去されて私の右手に側にボルフォード公爵夫人の椅子が置かれて、

反対側にはカウチが2つ並んで置かれてその前には侍女達3人が。

そして椅子にボルフォード公爵夫人が座れば、

私と公爵夫人の間にカーディルが立つのよ。

それはボルフォード公爵夫人を中心とした未来の序列の並びだったのよ。

使用人達を招き入れる為に扉は開かれて、

そこには外で待機していたのか多数のメイドや使用人達が入って来ては、

部署部門ごとに集まって整列していくみたいだったの。

けれど入ってきた人達は一様に私の方を見てその前に、

取り付けられてしまった銀板を何度も見て確認するの…

「へぇ」「やっぱり」「そうなるよね」「まぁ仕方ないよね」「当然じゃない?」

「だってアレ…」「御仕置き用品…」

メイド達は皆口々にそんな事を呟いて…

「まぁ未熟でしたし」「そうなりますな」「仕方がないですな」

使用人も納得と言った言葉を漏らしていたのよ…

がやがやとしてた応接室は家令の号令によって整列が始められて、

序列があるのかスッと列が形成されて整えられたのよ。

それは一瞬の出来事で皆が解っている動きをしているって事だったの。


「奥様、屋敷で働く人員。現在警備に当たる者を残して皆揃いました」

「そう。では始めましょうか」


全員が揃った後、一人だけ優雅に椅子に腰かけて一人だけお茶を楽しんでいた、

ボルフォード公爵夫人はゆっくりと立ち上がって皆の視線を集めたのよ。

私を叩いた時のセンスはもう持っていなくて新しい扇子に持ち替えていたの。

公爵夫人はその扇子をパシンと閉じるとゆっくりと語る様に話始めたのよ。


「皆も知っての通り、この度カーディルが学園を卒業して帰ってきました。

本来なら未来の伴侶となる「エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢」を、

連れて来る予定だったのですが、学園で「革命」が起きたそうです。

それは素晴らしい「革命」だったぞうよ。

「悪」の「エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢」は断罪されました。

「エルゼリア」は不正を働いていたので「ボルフォード家に相応しくない」と…」


私に近寄って来たボルフォード公爵夫人は、

その新しい扇子で叩かれた私の頬を撫でたのよ。

ヒリヒリと痛むその上からふさふさの羽飾りがついた扇子で撫でられれば、

ぴりぴりと頬が痛んで、私は顔を逸らそうと動いてしまうの。

けれど…その私の行動を観た侍女達が私の顎を掴んで真正面を向かせたまま、

顔が動かせなくなるように掴み続けるのよ。

その扱いはもう…

注目を集める私を使用人達全員の視線が集まってくるのが解るのよ。


「そこにいる「ソフィア」が決めたそうです

そして正しい「正義の行いをした」ソフィアは国に求められて、

エルゼリアの代わりに当家の公爵夫人に「ソフィア」が納まる事になりました」


ボルフォード公爵夫人の言った「正義の行い」と言った瞬間、

使用人達全員が愕然としてそして私を見る目が変わったのよ。

それは私には一種の呆れと失望の表情に見えてしまったの。

どうして?私は正しい行いをしただけなのよ?

で、でもその正義が…

今の私の足を引っ張り続けているのよ。

今までの3カ月間でそれは痛いほど思い知らされたのよ。

事あるごとに侍女達から言われる「正義の行い」は素晴らしい事だから。

私は多数決で決められた「枷付きのハイヒール」を穿かされ続けて…

「正しい公約夫人の姿」になる為に矯正具を身に着けさせられ続けているのよ。

その事は理解したくないけれど、しなくちゃいけなくなっているの…

でも、でもね…


「わたくしはソフィアが優秀だと思っていたのです。

けれどこの3カ月の教育の成果と、ソフィアの能力を正しく判断した結果、

ソフィアは公爵夫人となる許可を王妃様から得るのには数年かかってしまうと、

半断ぜざるを得ません」


…そんな。



私の努力は…

苦しい生活は…

ボルフォード公爵夫人に全く認められていなかったの?!

けれどその言葉を聞いた使用人達の大半は、

安心したほっとした表情をしていたのよ。

ほとんどの使用人達は一様に頷いて、

ボルフォード公爵夫人の言っている事が正しいて!

皆そう思っているって共感しているみたいだった!

なんで?どうして?だって、ほとんど私と接点がない使用人達まで、

そんな判断をしているの?意味が解らないわ!

私の頑張りを見ていないくせに!

だって、だって!私は頑張っているのよ!頑張って学習して覚えているのにっ!

その努力している姿を見ていない人が何で私が駄目だって頷けるのよ?!

「ぁっぁっ…」

反論したかった!

反論したかったけれど…

ペチンとボルフォード公爵夫人の扇子が私の口に当てられて…

その口が言葉を漏らせない様に防がれてしまうの。

けれどその事をボルフォード公爵夫人に注意する人はいないのよ。


「マナー・教養・立ち振る舞い全てが駄目なのです。

今、侍女3人掛かりで基礎教育を仕込んでいる所ですが…

何時になったら他の貴族にお披露目出来るのか見当もつかない位なのです。

その為、エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢に再婚約を打診しましたが、

本日「正式」にお断りされました」


またザワリとして直ぐにため息が聞こえてくるの。

「エルゼリア」が、もう嫁いでくる可能性がなくなってしまったという事実に!

どうして?そんなに「悪」のエルゼリアが良かったの?

その為息は私よりエルゼリアが良かったって事なの?

嘘よね?

嘘って言いなさいよ!

「ぅぅっぅ」

もちろん、扇子でふさがれた口から音が漏れる事は無くて…

微かに空気が通る音がするだけ。

決して私から漏れ聞こえる声が使用人達に届くことはないのよ。


「現在当家が持ちうる手札で、王妃様のテストを受ける権利を所有しているのは、

言うまでもなく婚約者の「ソフィア」だけです」


ボルフォード公爵夫人は私の方をもう一度見て来て…

ニタリと笑ったのよっ!

それは私に対する合図だったのよ。

私は必死に首を振って否定しようとするのだけれど、

今は侍女の手が顎を掴んでそれも叶わない。

何かを喋って公爵夫人の宣言を止めなくちゃ!

止めなくちゃって必死に考えて!

けれどそんな方法はもう、ない、のよ…

言われる。

宣言されてしまう。

私にとって悪夢の宣言。

怒鳴り散らしてでも止めたい宣言なのよ。

けれど、何も言えない言わせてもらえないの!

この期に及んでって思うかもしれないけれど、

これが私が楽になる事を許されなくなる最後の宣言になるのよ。

絶対!ぜったい誰にも言わせちゃいけない言葉なのよ!


次回の更新は20~20時30分の間で投稿します。

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