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やっと私の出番なの!いま正義の鉄槌を下してあげるわ!な、なのにどうしてこうなるの?

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

さぁここからは私の出番で、エルゼリアに色々と言ってやろうと思ったのよ。

貴女はカーディル様と私の間に入る権利なんてないって!

けれどエルゼリアは私の方をほとんど向かないで、

ボルフォード公爵夫人との会話を続けるのよ。


「…ボルフォード公爵夫人。

私の持ってきた資料は全てソフィア・ボルフォード公爵夫人候補の、

お持ちになっている「カート」に乗せてしまっても構わなのですか?」

「ええ。彼女も鍛えております。

必要な資料を何度も分割して運ぶほど、暇じゃないのですよ…

そして暇でいられなくなるのですよ」

「そうですか。ではリラーナ全て載せてしまいなさい」

「畏まりました」


私はエルゼリアの方を向いて、エルゼリアを見下ろしてやったのよ。

それで、エルゼリアも公爵家と伯爵家の格の違いって奴を教えてやれるって、

思っていたの。

けれど…

私の姿を見るなり憐れんでいたのよっ。

何よ!貴女はカーディル様に婚約破棄された哀れな女なのよ!

カーディル様は私を選んだのよ!

さっきのカーディル様が貴女に囁いたのは気の迷いなのよ!

私が!私が勝っていたんだから!


そう、思っていても…座って扇子を手にしているエルゼリアは、美しかった。

近くで見れば圧倒されてしまう。

上から見下す様に見ても…

丁寧に刺繍されて仕上げられたドレスは訪問着として最高の出来で。

皴一つなく、ちゃんとエルゼリアのサイズに合わされているのよ。

それに合わせて身につけているアクセサリーだって統一感の綺麗なもの。

持っている扇子だって、エルゼリアの持つ色に合わせて用意された物だって、

一目見れば解るのよ。私が見たって解るくらいに良い出来なのよ。

みだりに肌を晒さない様に作られたハイネックの伯爵令嬢用のドレスは…

造り手が着用者の事を考えて作った特注品だって一目見れば解ってしまうのよ。

体のラインを見せつつ、絶対に素肌を晒さない様に作られた、

エルゼリアの色を纏うドレスは所狭しと刺繍が施されていて、

決して作るのは簡単じゃない。

とても辺境の貧乏伯爵家の令嬢に用意出来る姿じゃなかった。

腰も細く見えてパフスリーブも綺麗に膨らんでいるのよ。

コルセットも締めているんでしょうけれどそれでも苦しそうな表情は見えない。

楽に着こなしている様に見えて…

エルゼリアの着ているドレスが欲しくなってしまう…



うら、や、ましいの、よ。



そんなじろじろ私が見ている事に気付いたのか、

エルゼリアは視線だけ変えて私を見たのよ!

カートに繋がれて歩かされている私をっ!


「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補の

矯正具と装飾品の付け心地は良さそうですね。

…良く矯正されているようです」


私はかっとなったのよ!

付け心地が良い訳ないじゃない!

そう言うなら貴女も付けてみなさいよ!

流石に我慢できなくなって…

悪のエルゼリアがそんな事言うなんて許せなくって!

ひっぱたいてやろうとしてカートの持ち手から手を放そうとしたのよ…

「正義」の鉄槌がエルゼリアには必要なのよ!

私は、手を振り上げたの!

振り上げたつもりだったのよ…


―ギギュチ―

「!っぁっぁ!ぁっぁ!」

そんな革が撓る音がして…


手首に嵌められた枷が邪魔をして…

私の手は「カート」の持ちてから離れなかったのよ。

近くに!手を伸ばせれば叩ける距離にいるのに!

エルゼリアを懲らしめられるのに!

手は届かないのよ!


「…早速役に立っているようですね」

「そうね。こんな調子だから王妃様のへのお目通りも当分できないわ」

「ご愁傷さまです」


何よご愁傷さまって!

この場に来ても私の前でカーディル様を篭絡しようとしたでしょう?

そんな女は叩かれても当然でしょう?


「ぁっぁ!ぁっぁっぁ!」


必死に声を上げて私の正当性を訴えようとするのだけれど…

私がしゃべる事は出来ないのよっ!

悔しい!悪のエルゼリアがいるのに!裁きを下せないなんて!

誰でも良いのこの悪女を裁いてよ!こんな女生きていたら王国の毒になるのよ!

けれど私の想いとは裏腹に資料を引き渡す準備は着々と進んで行くのよ。

私の前にはエルゼリアが返しに来た資料が山の様に積まれたカートが置かれて。

エルゼリアのメイドが話しかけてくるのよ。


「それではソフィア・ボルフォード公爵夫人候補失礼致します。

返却する資料のタイトルを読み上げながら移動させたいと思います。

私がお持ちしたカートより一冊一冊間違いがないように中身を確認しながら、

相互に確認しつつ資料を移動させて戴きます。

では、ご一緒にご確認をお願いします」


私の隣には侍女が二人付いているから皆が頷いて計4人での、

確認作業が始まったのよ。

エルゼリアと一緒に来た特別なメイド服を着た子が、

一冊一冊本のタイトルを読み上げると、

その本の内容をエルゼリアが大まかに説明するの。

それを聞いたボルフォード公爵夫人が、

「合っています間違いありません」

と言いながら私の両隣りの侍女がエルゼリアのメイドから資料を受け取って、

その本の中身を確認するの。

そして中身の確認も取れたとして「間違い」がない事を確認が取れた物を

私のカートの引き出しの中に丁寧に閉まっていくのよ。

きっと数冊で終わる程度の事でしょうと思っていたのに…

その本の量は、3段ある私のカートの引き出しの中に入り切れないほどの量で。

その一冊一冊が本当に厚いの。

一冊一冊がカートの引き出しにしまわれる度に、

私の持つカートは重くなっていくのよ。

その重さから逃げたくても、

体に繫がれた装飾品のベルトはピンと張って決して私が逃げる事を許さないの。

ベルトは引っ張られ両肩にそのカートの重さがのしかかって…

けれど本の量は多いから「カート」の引き出しの中だけに載せきれなくて、

カートの上にまで積まれ始めたのよ。

それでも「カート」と私を繋ぐベルトはびくともしないで…

けれど肩にのしかかる重量は相当なものになっていくのよ。

持った事のない重さにまでなって…

肩にめり込むだけならまだ良くて…

ぐぐうぅと矯正具全体を体を押し込めようと動くのよっ。

それでも、乗せられる本とエルゼリアの説明は続けられて…


「ぅっ、ぅっぅ」


苦しさからまた声が出てしまうのだけれど、誰も…

誰も私の苦しさには気づいてくれないの!

エルゼリアの話す内容と公爵夫人の内容確認に皆集中していて…

私が重たくて苦しんでいる事なんて誰も気づかないのよ!?

周囲の関心は全てエルゼリアが持って行って…

私は苦しくて、ルゼリアの話を聞いている余裕なんてななったのよ!

それでも本の受け渡しと確認に私の「カート」への積み替え。

それが終わったらしくて…


「流石。と申し上げた方が良いのかしら?」

「いいえ。時間をかければ覚える事は誰にだって出来ますから」

「そう。ならソフィア・ボルフォード公爵夫人候補に、

何かアドバイスを戴けるかしら?彼女も今一所懸命学習している所なのよ」


何を言っているのよ!

ボルフォード公爵夫人!私がエルゼリアから教わる事なんて何も無いのよ!

だってこの女は、悪女なの!

悪女なのよ!

なんで私がそんな悪女の言うアドバイスを受けなくちゃいけないのよ!

さっさとその場を離れたかった。

けれど、息苦しさと重さが急激に増したカートのバランスが変わった事で、

直ぐに動く事は出来なかったのよ。

でもね。

公爵夫人の言葉を真に受けたのかエルゼリアは私に訳の解らない事を、

言って来るのよ!


「そう、ですねソフィア・ボルフォード公爵夫人候補。

私から言えることは多くはありませんが…。

貴女にお渡しした本は、今持っているカートの重さは、

知識の重さと考えた方が良いでしょう。

貴女はこれから公爵夫人として相応しい知識を持たなければいけません。

忘れないで下さい。貴女がこの本を覚えないという事は、

貴女の知らない場所で人が死ぬという事なのです。

貴女の判断の一つ一つが何処かの誰かを幸せにして、不幸にするのです。

貴女に残された時間がどれだけあるのか私には解りませんが…

悔いのない様に学習に励むと良いでしょう。

早く私の言った意味を理解してくれると嬉しいですが…

理解する事と、覚える事は別ですから。

これからも真剣に学習に励んで下さい」


そんな事言われなくたって解っているのよ!

だから一生懸命に学習に励んでいるのよ!

それを悪女のエルゼリアにわざわざ言われるまでもないわよ!


「ありがとうエルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢。

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補は理解できていないでしょうから。

後で私が躾けて置くわ」


躾けるって?どういうことなの?

けれどそんな私の疑問は直ぐに置き去りにされて、

私は重たいカートを押す事になったのよ。


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