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悪の令嬢が今更なんの用なのよ?まさかっ!カーディル様が変わってしまったのって…

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

「今日はエルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢がいらっしゃいます」


あの悪魔のエルゼリアが一体何をしに来るって言うのよ?

そう気持ちが動くのだけれど、ボルフォード公爵夫人がそう言うのなら、

きっと、あの日…

卒業式のパーティー会場での事を、謝罪させるために呼び出したのね!

そうよ!きっとそうに違いないわ!


「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補が使う、公爵家へ嫁ぐ者が、

覚えるべき事柄を記した資料を返却してもらう事になったのです。

今の彼女には必要の無い物となったと…判断せざるを得ません。

叶う事なら…

いいえそれをここで口にしても仕方がない事です」


公爵夫人はため息を付きながら小言で言ったのよ!

「これで…本当に縁が切れてしまうわね」

それって悪のエルゼリアと公爵家の縁が切れるって事で物凄い喜ばしい事よね!

あの悪の巣窟!貴族恥さらしのファルスティンの影響を受けなくても良いって!

それでボルフィード家は救われるのだから、私の行った最高の功績じゃない?!

そう思うと私の胸は躍るのよっ!

きっと婚約破棄されたエルゼリアは故郷で多大な叱責を受けて、

見捨てられたボルフォード家にご慈悲を賜りに来るのね?!

そこで私が「許す」とか言えば、公爵家の評価が上がるって形になって!


「なので、ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補。

貴女が使う事になる資料です。しっかりとその身で受け取りなさい。

応接室に貴女の待機する場所を用意しておきます。

エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢の努力をその身で感じるのです。

その時間が来るまでは、いつも通り執務室で学習に励みなさい」


私はその日、久々に体に身に着けさせられている物の事も忘れて、

気分が上向きになっている事を自覚したの!

だって、あの卒業パーティーの時に聞けなかったエルゼリアからの謝罪の言葉を、

聞く事が出来るのよ?

彼女が敗北を認めて私に頭を下げる所を見れるって思えば!

嬉しくない訳ないじゃない!

私の正しさをこのボルフォード家の使用人達に見せる事だって出来るのだから!

これで私に対する評価は絶対に代わる。

私に対しての扱いだってきっと上向くのよ!




そう、思っていたのだけれど…

私に用意されていたのは跪いて許しを乞う、

エルゼリアの前に立つ事じゃ無かったのよっ…

学習の時間を一端区切られて応接室に案内される事になった私には、

ちゃんと「カート」が繋がれて歩かされることになったのよっ。

どうして?って質問をする事も許されず重たいカートを押して歩かされて。

私が連れて来られたのは公爵家で一番豪華に作られた応接室。

その応接室の一角に用意された使用人達が立つ場所で、

壁際に作られたお出しする物を用意しておく場所だったのよ。

普通なら主人が合図をしたら、メイドがお茶をお出しするカートが、

並べて置かれるための場所だったのよっ!

けれどその場所には壁に取り付けられたばかりの器具が光っていてっ!

カートに繋がった私を大人しくさせて「置く」場所だったのよ!

執務室を出る時に取り付けられたケープの上から巻かれた、

可愛らしいリボン付きのチョーカー。

けれどそのチョーカーは特別製で物凄く頑丈に作られていたのよ。

そのチョーカーの後ろ。

丁度私のうなじに当たる部分にはビス止めされたリングが付けられていて…

そのリングに簡単なフックを引っかける形で留められただけで、

もう私は自由に歩けない。

壁に頑丈に設置された金具から延びる鎖の長さは、

私が背筋を伸ばして立っている長さに調節されているから。

座るどころか軽くお辞儀をしようと上体を倒す事も許されないの。

そして両脇を固める様に侍女が立って、

「カート」の押し手を持ち続ける枷を見る事しか出来ない様にされたのよっ。


「エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢様を迎え入れるのに、

失敗は許されないのです」

「大人しく呼ばれるまで、壁の一部となって下さいませ」

「出番がとなられたら私達が誘導します」

「それに従っていれば宜しいのです」


けれどそれだけで私の立たされた場所だけでっ!

今日来るエルゼリアが謝罪する立場でやってこないって事だけは理解できるのよ。

そして私は御令嬢を迎え入れる為の場の一部にされたのよっ!

未来のボルフォード家の公爵夫人となる私がっ!

呼ばれるまで壁に背を付けて動くなってどう言う事なのよ?!

けれど私の不満を他所にそうやって所定の位置に使用人達が立って、

応接室の場の雰囲気は整えられたのよ。

後はお客様を迎え入れるだけ。

それだけ状態になって、

軽やかの足取りのもとボルフォード公爵夫人を先頭に、

エルゼリアが入って来て…

私は一瞬はっとしてしまった。




綺麗だった。




見惚れるほどに「綺麗なエルゼリア」がそこにいたのよ。

令嬢として気品ある姿で正装しているボルフォード公爵夫人に引けを取らない。

私が見た事もない美しいデザインのドレスを身に着けていた。

学園にいた時の様に眉間に皴を作って不機嫌そうな表情はしていなくて…

その笑顔は見る物に安心感を与えて、一息ついてしまいそうな雰囲気。

彼女に合わせて作られたと思われるドレスはより彼女を優美に見せている。

優しく綺麗な…

正に整えられた美の集大成の完成系がそこにあったのよ。

入室してきたエルゼリアに皆見惚れていた。

見惚れて、侍女達からもポロリと言葉が漏れて来たのよ。


「美しい…」

「本当にそうね」


嘘。


嘘よ別人よ。

あんなの悪のエルゼリアじゃない!

彼女はもっと醜くて、醜態を曝す様な伯爵令嬢でしょう?

それがなんで?

どうして、あんなに綺麗なの?

それにエルゼリアが着ているドレスは私が芸術祭で袖を通したドレスの、

デザインを更に美しく仕上げた形になっていたのよっ!

訳が分からないわ?!

あのドレスはカーディル様が私の為に用意してくれた思い出のデザインなのに。

それを汚すなんて最低よ!許せない!

それにどうしてボルフォード以外の場所で、

あんなに美しいドレスが作れるのよ?!

ドレスの製法技術は王国一だって学習室で習ったばかりなのよ?!

それがどうして?おかしいわ!絶対におかしいのよ…

きっと、盗んだのね?

ボルフォード公爵夫人に言ってやらなくちゃ。

あのドレスはボルフォード家から盗まれた物だって!

私は直ぐに真実をボルフォード公爵夫人に伝える為に、歩こうとしたのよ!

この場に及んで、ボルフォードのドレスを盗んで着ているなんて、

許せるはずがないじゃない!

けれど、一歩歩こうとした瞬間っ!


ガツンって音が鳴って首が締まったのよっ!

それは首に付けられていたチョーカーがっ。

私の首に繋がった鎖が、壁に固定された留め金が私がその場から動く事を、

阻止した音だったのよっ!


「お静かに」

「まだソフィア様は動く時ではありません」


だって、あんなものを着ているエルゼリアを許せるの?

許して良いの?

駄目でしょう?

侍女達は決して動かないしチョーカーに繋がるっ鎖だって外してくれない。

嘘でしょう?彼女の不正をまた私は見る事になるの?

そんなの…そんなのってないよ!

私は悔しくて…涙を自然と流し始めていた。

けれどその涙を拭き取ってくれる侍女はいなかったのよ…


そんなエルゼリアに続いて入室してきた人もまた綺麗な姿をしていた。

メイドなのだと思う。けれどその姿はエルゼリアの色を纏っていて、

ドレスに匹敵するような繊細な刺繍とアクセサリーを身に着けた人だった。

彼女はカートを押して何かを運びながら入って来たの。

その人も、綺麗と言うだけでは済まない美しさで。

良い意味でエルゼリアとバランスが取れた格好であってスタイルさえ、

磨き上げられた、どこかの伯爵令嬢と言えるほどの容姿だったのよ。

その後ろにはカーディル様が入室してきて…


その顔は…学園時代に私にしていた様な見惚れている姿だったのよ。

うそ…嘘よねカーディル様?

そんな顔を私に見せないでっ!

その表情はまるでエルゼリアに惚れているみたいに見えるわ!

違うでしょう?カーディル様は私と婚約しているでしょう?

けれど、その表情はもう…

変わらなかったのよ。私がここに立っているのにも関わらず。

それに気付きもしないで…

エルゼリアの姿を必死に追っていたのよ…

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