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お、おかしいよ!カーディル様が私に優しくないっ!

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

その日の話し合いはそれ以上出来なくて…

私もベッドで眠る事になったのよ…

カーディル様の背中を見ながら…


もう、あの優しいカーディル様は私の前には現れないの?

愛を囁き合って「正義」を二人で貫いた気高い二人に戻れないの?

そんな事を思いながら、わたしは眠る事になったのだった。

私が起きた時はまだカーディル様は眠ってらして…

その後ろ姿を見ながら起きる事になったのよ。

そして朝の御不浄が終わった後、その日からはフィッティングングルームで、

朝食を済ませる音になったのよ…

せめて「楽しい」と思える朝食ですら、「矯正具」と「カート」に「装飾品」を、

見ながらの食事となれば、気が滅入りそうになるの。

もう。それだけだった。


もちろんお着換えが終われば…

そのままメイド達の使う裏口から出され、その日カーディル様にお会いする事は、

ベッドに戻るまで叶わないのよ。

苦しく痛い日々から逃げられない。

それを聞き届けてくれる相手は…

カーディル様には、もちろんそんな余裕は無さそうだけれど…

それでも私が縋れるのはカーディル様しかいないのよ。

その日も苦しい一日をやっとの思いで終わらせて帰って来てみれば、

寝室のベッドは二つに増やされていたのよっ!

それはカーディル様からの明確な拒絶。

けれど私は諦める訳にはいかないの。

ドレスを脱がしてもらえるまでっ!

出ないと私はドレスに締め殺されてしまう。

そんなのは嫌!嫌よ!


ベッドの足枷を繋がれれば私はもうカーディル様の所までいけなくなる。

けれど声を掛ける事は出来るのよ!



「カーディル様!カーディル様!起きて下さい!」


「黙れ!それ以上煩くするなら、使用人を呼んで黙らせるぞ!」

「黙ってほしかったら、私のお願いを聞いて下さい!

お願いします!お願いですから!」

「お前は俺にお願いする前にやるべきことをやれよ!

エルゼリアは、何一つ文句を言わずに俺の命令を聞いていたんだぞ!

エルゼリアより優秀なんだろう!つべこべ言わずに俺の命令を聞けよ!」

「私は精一杯頑張っています!」

「なら頑張りが足りないんだよ!もっと頑張れよ!

俺の為なら出来るだろ!

俺はお前以上に大変なんだよ!公爵家の後を継ぐんだから!」


その目は、カーディル様が私を見ていた目は、

あの日エルゼリアに命令している時の目にそっくりだった。

そう考えれば…

自ずと解る事があるのよ…

私は何時の間にか「エルゼリア」と同じことを求められ始めているって。

けど、それって…



それは…



カーディル様の望む私が頑張る物は直ぐに用意された。

と言うよりも始めから用意されていたのかもしれない。

次の日の夜には、また新しいコルセットが私を待っていた。

昨日より更に臭いがきつくなっていて…

ギリギリまで時間をかけて作られた事が解ってしまう物だった。


「カーディル様より要望がありました。

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補は「教育」が「甘い」のだそうです。

努力が足りないとも仰っておりました」

「明日からは矯正具を一段と締め上げて、

夜もトレーニングさせた方が良いと私達は教育方針を定めました。

苦しいと思いますが愛しいカーディル様の為です。

耐えて下さいませ」


新しく作られたコルセットは明らかにサイズが小さくなっていたのよ。

眠る前に着けさせられる物とは思えない物で…

もちろん素肌に直接巻き付けられる物だったのだけれど。

けれど今回の物は寝具として用意された物とは一段と違うのもだったのよ。

今までは「固い」と言っても柔軟性があってお情け程度だけれど、

ある程度の余裕が用意されていたのよ。

それが今回用意されたコルセットには無いの!

無かったのよ。

まるで昼に身に着けさせられてるボーン入りの固いコルセットと同じ物。

ただ寝具だから表側だけ柔らかく作られているだけ。

身に着けさせられたら昼と同じ様に苦しいだけじゃ済まなくて、

もう腰をまったく動かせなくしてしまう体が休めない悪魔の様な、

出来上がりになっていたのよ。

その上に貞操帯を取り付けられればショルダー付きのコルセットは、

体に食い込んでくるみたいで肩が押さえつけられ続けるのよ!


「そんな…

そんな!ああっ!

苦しい苦しいのよ!

緩めて!お願いだから!ゆるめてぇ!」


用意されていた寝具に絶望しながら…

けれど身に付けないなんて許されるはずもなく私の体には、

白いコルセットが常時身に着けられる状態になってしまったのよ。

終る事のない息苦しさと胴を締め上げる苦しさ。

そして前屈みになる事は許されず、

ベッドの中で自然と体が丸まる事をもう許してくれない。

ベッドの上では寝返りすら眠ったままでは出来ないだけならまだよかったのよ。

今や腕の力だけで寝返りをうたなくてはいけなくて、

その腕だって肩が固定され気味になっているから。

なかなか動かないから寝返りが「難しい」のよ。

それでもベッドに寝れば足には枷が巻かれて…

ほんの少し離れた場所に運び込まれたベッドでカーディル様は眠っているのに。

そのベッドに私の手は届かない。

その上にコルセットの所為で苦しくなって大声が出なくなっていたのよ。

だから天蓋を閉じられればその声だってもう届かない。


「カーディルさまぁ…かーでぃるさまぁ…」


どんなに大声で叫んだつもりでも私の声は小さくて、

その声はもう届いていないって自覚しなくちゃいけなかったのよ…


次の日からは、状況は更に悪化して…

毎日繋がれるカートには良く磨かれた銀板が乗せられたのよ。

ズシリと肩にのしかかる重量は増して…

「気付いていましたか?この「カート」はもっと美しく出来るのですよ」

「ですがソフィア・ボルフォード公爵夫人候補には重た過ぎると「配慮」が、

ボルフォード公爵夫人の判断でなされて外されていたのですが…

カーディル様の要望で、「ソフィア様が頑張る」との事でしたので…

取り付けさせて戴きました」

「ゕぁっ!ぉっぃ!っぃっぁっぁ」

もちろん重さが増えたからタイヤは絨毯にめり込んで押し辛くなって、

肘にも更に負担がかかるのよっ!

それにボルフォード公爵夫人にかせられるノルマが多くなって、

私を「頑張らせる」方針は公爵夫人にも承認されたみたいだった。

増えるノルマの所為で執務室にいる時間は増えて…

遂に、学習時間だけでは足りなくなって…


「本日のノルマは熟せませんでしたね」

「仕方がありませんね、では自習と致しましょう」

「ぃぁっぁ」


それは、それはっ!

学習室の椅子にベルトで固定されて、

明日の朝を迎える事になってしまったって事だったのよ。

筆談で、もう少しもう少しで覚えるからって必死にお願いしても、

侍女達は私の書いた黒板を見る事は無くて…


「では、本日はこのまま自習を続けて下さいませ」

「明日定時になりましたらボルフォード公爵不夫人の朝食を、

取りに行きましょうね」

「それまではお好きに自習なさって良いですから」

「ごゆっくり学習なさいませ」

「ぁっぅぃ」


私の声は聞かなかった事にされて本当に、本当に私を椅子に固定したまま、

侍女達は部屋を出て行ってしまったのよ。

それは長い長い夜の始まりで、明かりこそともされたままだけれど、

私は椅子から立てないし…

手元にあるのは、今日の学習の読み聞かせに使われた本と、

受け答えの為に机に取り付けられた黒板にチョークだけ。

私の手元から落ちない様ご丁寧に手首に紐で本を括り付けて、

侍女達は出て行ったのよ…。

学習室に取り残されるのは怖かったのよ。

人が誰一人いない空間で私はその場所から動けない。

今日はもう体が楽になる事を許されないって事で…

湯浴みをする事もない…

一日6往復の食堂とボルフォード公爵夫人の執務室へ、

お食事を届け、食べ終わった物を食堂へ運ぶと言う事しか、

動いていないけれどそれだけでも、

この苦しいドレス姿で重たくなった「カート」を押す事は重労働なのよ。

思い切り汗をかくしその汗を吸ったドレスからは異臭を放ち始めるの。

湯浴みをして臭いを落とせなければ次の日には、

信じられない位の悪臭を放つ事になるのだけれど。

それは強い香水で誤魔化されるの。

けれど、混ざり合った匂いは漂う分には良い香りだけれど、

振りかけられた私自身は悪臭として感じられて。

けれど逃げる方法は無いから耐えるしかなかったのよ。

そう。

毎日の湯浴みで香付けされた私の体は良い匂いを出しているのよ。

けれど、その手入れとして湯浴みに入らなかっただけで、

私自身だけが悪臭に耐える日々を過ごす羽目になるのよ…

ボルフォード公爵夫人にお夜食を届けた後だって執務室に戻されて、

学習する時間は続くの。

勿論一日着続けたドレスの下は言うまでもなくて汗をジットリとかいているから、

その汗を擦ったドレスは勿論蒸れて来ているのよ。

けれど一日6回のお食事を運ぶ作業の度汗をかいて、

その後の執務室で座らされるからその汗が渇いて…

またお食事を運ぶ作業とやらされれば、

もちろん革で出来たコルセットや矯正具はそんな私の汗を吸って、

普通に一日を過ごしただけで自室に戻される頃には据えた悪臭を放っているのよ。

一番臭うのはもちろん首元で矯正具の間から漏れ出た悪臭は、

ケープによって包まれた上半身はその悪臭を程よく貯めて、

私の首元から放出する形になるのよ。

息苦しいうえに首元から漂って来る悪臭まで加わると、

本格的に我慢できなくなって…

湯浴みをしなかったせいでやってくる悪臭に鼻が馴れる事は無いから…

それだけでドレスを脱ぎたくなるけれど、もちろんそんな事はしてくれないの。

前日から続く悪臭との戦いに耐えて、

その日は何とかノルマを達成したことになって…

自室に帰れたのだけれど…

湯浴みの後に待っている寝具として用意される貞操帯もコルセットもきついまま。

けれど横になって眠れる以上に上半身の矯正具が無くなるだけでも、

嬉しかったの。


そう、私は矯正具を外してもらえるだけで「嬉しい」って思ってしまったのよ。

矯正具なんてなくて当然の生活。

そしてコルセットだって必要な時以外は付けなくたって良いはずなのよ?

なのに私の体には何時だってコルセットが身に着けさせられて、

それが「普通」に思って考えているのよ。

けれど、もうカーディル様とお話する気力は私にはなかったのよ。

どんなに頼んでもカーディル様は私の「教育」を「厳しく」する様にしか、

お願いしてくれないのだもの。


私は同じ寝室で寝ている、

愛しいはずのカーディル様の事が少しずつだけれど怖くなって来ていた。

お願いをしても聞いてくれないのならまだ良い方で…

お話をすれば次の日は高確率で「教育」のノルマがきつくなって、

寝室に戻って来られなくなっていたのよ…

私を愛しているはずのカーディル様は?

もう、どうして?と、聞く事すら許されなくなっていたのよ。

毎日休みなく続く苦しいドレスと矯正具を身に纏った生活。

カートを押し続けて教育が始まった日から私は一歩もお屋敷から出ていない。

それでも、それでも体は毎日締め上げられ、痛み、軋ませながらの生活は、

終わりが全く見えてこないのよ。

矯正具は緩まない。足に取り付けられた矯正具も日増しにきつくなってっ!

余裕がなくなりつつあるのよ…

喋る機会は湯浴みの時だけ。

それ以外は声を出す余裕すら与えられず…

こんな生活は何時まで続くのよって思って3カ月近くたった頃…

朝のご予定をボルフォード公爵夫人に聞きに行った私はそこで、

久しぶりに予定以外の事を聞かされたのよ。


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